夕暮れに、「火の用心」のかけ声と拍子木を打つ音が聞こえる季節。
11月の「きょうのちしん」で、火災除けの風習や伝統食をご紹介しました。
この時期に見ごろを迎えているイチョウにも、防火の効果があるといわれています。
イチョウの葉と幹に水分が多く含まれているため、古くから火災から守る木とされてきました。
街路樹としてはもちろん、数々の神社やお寺のシンボルにもなっています。
西本願寺には「水吹きイチョウ」、本能寺には「火伏イチョウ」とよばれる大木があります。
いずれも、天明の大火(1788)の際に、イチョウが水を噴き出して迫る火から守ったのだとか。
仁王門通の由来となった仁王門のある「頂妙寺」の境内も、まさに今、黄金色に。
頂妙寺は、室町時代の文明5年(1473)に日蓮宗の僧・日祝上人によって創建されたのが起源です。
本堂前の宗祖・日蓮聖人像も、イチョウの大木をバックに、より存在感を際立たせています。
落ち葉で黄金色の絨毯が敷き詰められるころにも、また参拝したくなるお寺です。
京阪三条駅の近くにありながら、観光寺院ではないため境内はひっそりとしている頂妙寺。
境内のどこから見ても絵になるイチョウの木を、じっくりと愛でてみてはいかがでしょうか?
あちこちで見られるイチョウの木ですが、じつは現存しているのは1科1属1種のみだとか。
2億5000万年前から存在し、ジュラ紀にかけて繁栄した世界最古の植物ともいわれています。
ジュラ紀にイチョウを繁栄させたのは、なんとあの恐竜たち。
恐竜がギンナンを皮ごと食べ、その種がフンとともに土にまかれたという説があるのです。
その後、氷河期を迎え、恐竜とともにイチョウも絶滅寸前に。
中国の一部地域で、1種類のイチョウだけが存命したとされています。
その1種類のイチョウが日本や世界にも伝わり、人々の手によって育てられてきたのだそうです。
ジュラ紀に繁栄した植物で、今なお残っているのはイチョウだけ。
「生きている化石」ともよばれ、水吹き伝説とともにイチョウの生命力の強さが伝わります。
ギンナンの香りも恐竜の時代から続いてきたのだと思うと、壮大なロマンを感じますね。
イチョウ並木を通るときは、太古に思いをはせてみてはいかがでしょうか?
堀川通や京都大学の北部構内のイチョウ並木なども見ごろを迎えていますよ。
頂妙寺(ちょうみょうじ)
京都市左京区仁王門通川端東入ル大菊町96
京阪三条駅から徒歩5分
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