BLOGフォトストーリー2022.02.02

珈琲をのみながら、手紙を書く人。第4話

休日にはとびきり美味しいものが食べたい。
相棒のタイヤにも空気を入れ、御池通を西に進む。
向かうは喫茶マドラグだ。

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今朝、郵便受けに杏実さんからの可愛い封筒を見つけた。手紙はまだ読まず、手帳に挟んでいる。何が書かれているのだろう...。そう考えながら手紙を少しの間持ち歩く。この緊張感が私は好きだ。

天井が高く、日差しが心地よい店内に入る。注文した玉子サンドを待つ間に、珈琲をのみながら便箋を開いた。

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いつも丁寧に時候の挨拶から始まる。
杏実さんが書く字に愛着さえ覚えてきているが、ある一行に私は固まってしまった。

 文先輩自身、おばけの猫が見えているということにお気づきでなかったら、

私には、おばけの猫が見えているらしい。
私が手紙を見つめていると、広辞苑級の厚さを誇る玉子サンドが運ばれてきた。

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その現実離れした厚さを前に、いったん手紙の内容について考えることをやめた。何事も空腹を満たすことからだ。熱々の玉子サンドをつかんだ。

お腹が満たされると、手紙の返事を考えられる気持ちになった。手紙の衝撃を玉子サンドが和らげてくれたようだ。

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西本様

コンビニでおでんをついつい買ってしまうこの頃、
いかがお過ごしでしょうか。
先日はお返事ありがとうございました。

同じタクシーに乗ったという新入生歓迎会のことですが、
あの頃はお酒の嗜み方というものをまったく分かっていなかったゆえに記憶が...。
申し訳ないです!

無礼なことなどありませんでしたか?

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そして、おばけの猫の件...。
京都が単に野良猫の多い町だと思っていただけなので只々驚いています。
私は猫と話したことはありませんが、野良猫と顔を見合わせる時間は多く、
たしかに町中で出会った猫に「ポテト」と名付けたことは覚えています。
今度見かけたら「おいも」と呼んでみてあげたいと思います。

杏実さんが手紙に書いてくださったことは秘密にしておきますね。

P.S.

喫茶マドラグより、珈琲をのみながら。

冬野文

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喫茶マドラグは玉子サンドのボリュームくらい良心的だ。店内で食べきれなかった玉子サンドを持ち帰ることができる。私は半分を持ち帰ることにした。可愛いステッカーが貼られた容器を受け取り店を出ると、前にも見かけたことのある茶トラの猫がいた。

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私に気がついているのか、いないのか。わざとらしい程に私の側とまったく逆に顔を向けている。私は玉子の黄身のように色鮮やかな、この猫に名前をつけて呼びかけた。

タマゴ~!

すると、こっちを振り向いて...、

「ニャ〜」

目を細め、満面の笑みを浮かべるタマゴに私も頬が緩んだ。

(つづく)


珈琲をのみながら、手紙を書く人。第3話はこちら

作:渡辺たくみ(nidone.works)
イラスト:やまもとかれん(nidone.works)
写真:マツダ ナオキ
文(ふみ):コニシムツキ
杏実(あんみ):日下七海(安住の地)

■喫茶マドラグ

京都市中京区押小路通西洞院東入ル北側
075-744-0067
営業時間11:30〜22:00
Lunch time 11:30〜15:00
L.O. 21:00
(食材がなくなり次第オーダーストップとなる場合があります。)
※お席のご予約は11:30にご来店の場合のみ、店頭及びお電話で受付けております。
定休日:日曜(臨時休業の際はfacebookページ等でお知らせ致します)
※メニューのお持ち帰りはできません。玉子サンドは予約すればお持ち帰り可能。

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