先日の「きょうのちしん」でご紹介した、京都ゑびす神社の「名刺塚」と「財布塚」。
今回ご紹介するのは、安井金比羅宮の「久志塚(くしづか)」です。
「久志」とは、日本髪をとかしたり結い上げたりする「櫛(くし)」のこと。
安井金比羅宮では、例年、9月の第4月曜日に「櫛まつり」が斎行されます。
久志塚の前に、使い古されたさまざまな櫛が奉納される安井金比羅宮の伝統行事です。
昭和期に、氏子の美容家・南ちゑさんから古い櫛の処分について相談を受けたのが始まり。
古い櫛を供養するため、昭和36年(1961)に「第1回櫛まつり」が斎行されました。
風俗研究家・吉川観方さんの賛意を得て、南さんを中心とする多くの美容家により発足。
時代風俗の着付けと結髪の正しい伝承のため、「京都美容文化クラブ」も設立されたとか。
南さんは、その生涯を"日本髪変遷の研究と結髪"に捧げたことでも知られています。
現在の「櫛まつり」は、京都の美容師会が中心の「櫛まつり実行委員会」により運営されています。
境内の久志塚は、「第1回櫛まつり」の翌年、昭和37年(1962)に建立されました。
傍らには「櫛まつり」への貢献をたたえ、吉川観方さんの小直衣像も並んでいます。
コロナ禍のため、2021年の「櫛まつり」も関係者による神事のみが斎行されます。
残念ながら、今年も女性の「時代風俗行列」はありません。
本来なら、安井金比羅宮を出発し、祇園界わいを練り歩くお祭りのハイライトです。
古墳時代から現代の舞妓さんまで、それぞれの時代の衣装に身をまとった華やかな行列。
なかでも、かつらではなく地毛で結い上げられたヘアスタイルは見ごたえ満点です。
「縁切り神社」で名高い安井金比羅宮ですが、9月は「櫛まつり」にも思いを馳せませんか?
来年こそは新型コロナウイルスと縁を切り、「時代風俗行列」が復活することを願うばかりです。
安井金比羅宮(やすいこんぴらぐう)
京都市東山区東大路松原上ル下弁天町7012
京阪祇園四条駅から徒歩10分
2021年の「櫛まつり」は9月27日(月)に斎行されます。
※ただし、関係者による神事のみ。「時代風俗行列」はおこなわれません。
京都ゑびす神社の「名刺感謝祭」 はこちら