"秋の七草"のひとつに数えられる、萩(はぎ)。
梨木神社や真如堂、迎称寺など、京都の社寺で萩の花が見ごろを迎えています。
じつは『万葉集』の歌のなかで、もっとも多く詠まれている植物が萩。
原文では「萩」ではなく、「芽」「芽子」「波疑」と表記されているのも面白いですね。
今回は「萩の寺」とよばれる「常林寺(じょうりんじ)」をご紹介します。
アクセスしやすい出町柳にあり、普段はひっそりとした小さな寺院。
初秋には山門から本堂へ続く参道の両側に、紅白の萩の花がこぼれるように咲き誇ります。
かつてこの付近に砂川が流れ、境内には砂の層があり、萩の生育に適しているのだとか。
北隣の長徳寺、南隣の正定院とともに、"砂川の三軒寺"ともよばれていたそうです。
例年、9月の敬老の日には「萩供養」もおこなわれてきました。
常林寺の萩は早咲きの品種なので、ほかの萩の名所より見ごろが早いのも特徴です。
一説には、天正元年(1573)、念仏専修僧・魯道(ろどう)によって寺町荒神口に開創。
寛文11年(1671)の"寺町の大火"によって、堂宇が次々と焼失したとされています。
のちに現在地の出町柳に移転。
元禄11年(1698)に、栄誉(えいよ)が本堂を再建したと伝えられています。
通常非公開の本堂にまつられているのは、ご本尊の阿弥陀三尊像。
地蔵堂に安置されている世継子育地蔵尊は、常林寺の移転前からあったという説も。
幕末の武士であり、明治政府の初代海軍卿・勝海舟の定宿としても知られています。
萩の見ごろの時期にはススキも揺れ、秋の風情に包まれる境内。
万葉人(まんようびと)を気取って、一句詠みたくなりますね。
常林寺(じょうりんじ)
京都市左京区川端通今出川通上ル田中下柳町33
京阪出町柳駅から徒歩すぐ