総本山仁和寺に伝わるという、『戊辰(ぼしん)戦争絵巻』の上下巻。
戊辰戦争の始まりとなった「鳥羽伏見の戦い」の詳細が描かれた、全39場面の傑作です。
この上下2巻、全長およそ40メートルの絵巻が、超高精細スキャニング技術によって撮影。
歴史資料と専門家の指導のもと、およそ1年をかけて撮影画像にデジタル彩色が施されました。
令和3年(2021)8月、待望のデジタル彩色版のフルカラー絵巻上下巻が完成!
これを記念して、仁和寺に残る無彩色の絵巻が、彩色を加えて一般公開されることになりました。
戊辰戦争の始まりとなったのは、幕末の慶応4年(1868)1月の「鳥羽伏見の戦い」。
慶応3年12月に、仁和寺の第30世・純仁法親王が還俗(げんぞく)されました。
還俗とは、僧侶から一般人に戻ること。
純仁法親王は、仁和寺宮嘉彰(にんなじのみやよしあきら)親王として、征討大将軍に任命。
鳥羽より始まった旧幕府軍との戦いで、仁和寺宮大将軍は新政府軍を率いて勝利をおさめます。
明治の中期には、時代の大転換期に起こった「戊辰戦争」の記録を正確に残す取り組みが開始。
戊辰戦争の体験者らが発起人となって絵巻が制作され、宮中に献上されました。
その2年後には、献上された原本の複製を非売品としてわずかな部数を制作。
ごく少数の人に限定的に配布されたうちの1つが、仁和寺に所蔵されているのです。
そして、明治の中期に制作されたこの『戊辰戦争絵巻』が、令和の時代にデジタル化されました。
「錦の御旗」と純仁法親王ゆかりの品も同時公開
絵巻のところどころで見られる、新政府軍の象徴「錦の御旗(にしきのみはた)」。
今回は、仁和寺に所蔵されている錦の御旗と、純仁法親王ゆかりの品も同時公開されます。
仁和寺では、国宝12件、重要文化財47件、そのほか約2万件もの文化財を所有。
平成24年(2012)ごろより、正確な記録を目的に文化財のデジタル化が進められています。
今回の『戊辰戦争絵巻』の彩色の参考にしたのは、色付き画集『錦の御旗』。
霊山歴史館と、鳥羽の戦いで新政府軍の陣が敷かれた城南宮に所蔵されている画集です。
両者の全面的な協力のもと、その画集をデジタル化し、色見本として使われました。
燃え盛る炎などがフルカラーになることで、戦争の凄惨さがよりリアルに際立ちます。
兵士を染める血の色などは生々しさを和らげるため、色味が抑えられているとか。
その痛ましさに向き合うことで、まぎれもない史実であることにあらためて気づかされます。
画集に使用されている色は、服飾はすべて当時の遺物によることが徹底され、地理は実地調査。
戦役に実際に参加した諸名士の証言を考査し、想像架空のものは皆無で正確な内容とのこと。
さらに、国立国会図書館に所蔵されている絵巻の解説本も参考文献になっているそうです。
今回のデジタル彩色版完成を記念して開催される「戊辰戦争カラー絵巻と錦御旗展」。
歴史資料と専門家の指導によって、写真のように忠実な彩色が施された絵巻を鑑賞しませんか?
総本山仁和寺(そうほんざんにんなじ)
京都市右京区御室大内33
嵐電御室仁和寺駅から徒歩2分
令和版「戊辰戦争絵巻デジタル彩色版」完成記念イベント
「戊辰戦争カラー絵巻と錦の御旗展」仁和寺と明治維新
期間:9月18日(土)~10月17日(日)
時間:9時~16時30分(最終入場は16時)
会場:総本山仁和寺 大内の間(仁和寺御所庭園大玄関より入場してください)
料金:1100円(仁和寺御所庭園拝観料が含まれます)