BLOGニュース2020.09.05

知る人ぞ知る⁉期間限定のサードプレイス 夷川通「夷川サローネ」

昔から「家具の通り」として知られる御所南の夷川通。この通りの一角で、7月末から1017日(土)までの間、自由に利用できるサードプレイス「夷川サローネ」がオープンしています。

3の居心地の良い場所を表す話題の言葉・サードプレイス。夷川サローネのコンセプトは「公園」です。コロナ禍にあって、ソーシャルディスタンスを確保できそうな公園に集う人々を見た大木さんが、その姿を忘れられず、行き場のない人たちが集ったコロナ禍の公園に替わるような場所を作りたいと考えられたそうです。夷川サローネは、本当の公園のようにいつでもだれでも利用することができる場所。おしゃべりはもちろん、読書やちょっとした打合せなど、目的も自由です。空調も効いた室内なので、公園よりも汎用性が高いのもうれしいポイント!

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この場所を提供しているのが<mui Lab>。情報が生活空間を通して自然に生活に溶け込んでいく技術のデザインを意味する、「カームテクノロジー」という概念を提唱しているベンチャー企業です。mui Labは、代表の大木 和典さんが京都の企業で務める中で立ち上げた社内ベンチャーが始まりだそう。アメリカ駐在の経験もある大木さんは、外から日本を見ることで「私たちが提供できることは何か」を考え、設立に至ったのだとか。mui Labは、テクノロジーが人や自然と不調和に在る現状を課題視し、テクノロジーが穏やかに人の生活に佇む未来を目指して、 カームテクノロジーのコンセプトに基づいたUI/UXデザイン、IPを取得した特殊技術のライセンスの提供、プロダクト開発、販売を行っています。デザインと最先端のエンジニアリングを通じて、人とデジタル情報の調和した関係性の構築を、伝統と技術の融合する街、京都からグローバルに発信しています。

家庭向けプロダクトの「muiボード」は、多様なスマートホームデバイスをひとつにまとめることができるインターフェースとしての機能や、人の注意を奪うような現在のメインストリームのテクノロジーのあり方とは逆をゆく、穏やかな暮らしを体験できるアプリケーションを搭載しています。

「夷川サローネ」の由来は、イタリアのミラノで毎年4月に開催される世界最大規模の家具の見本市「ミラノサローネ」。mui Labは、20204月開催のミラノサローネに招待されていましたが、昨今の状況の中、2021年に延期が決定...。「ミラノに行くことができないならば、京都にミラノサローネを作ってしまおう!」というポジティブな考えのもと、解約予定の元事務所を、通りの名を冠した「夷川サローネ」にリノベーションしたのだとか!

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夷川サローネの室内には、100点以上のアート作品やインテリアが設置されていて、鮮烈な赤が印象的な有田焼やスウェーデンのハイクラスブランドの照明、日本の著名ファッションブランドがプロデュースするアート作品など、ひとつひとつに実際に触れることができます。絵画も陶器も、本当に何気なく置いてあるので、思わず「子どもさんが落としてしまったりしないんですか?注意書きとかしないんですか?」と質問。「公園の遊具って壊そうと思っては壊さないし、注意書きもあまりないじゃないですか」と大木さん。なるほど、大人だから子どもだから、というくくりや縛りがない自由な場所なんだなと、空間や大木さんの懐の深さを感じました。

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1階には自社製品の「muiボード」を体験できるスぺスがあります。テーブルの上にある「muiボード」に指で直接書いた文字が別の場所にある「muiボード」にとび、映し出されるというシステム。「夷川サローネに来た人がメッセージを書いて、新たなデジタルコミュニケーションの形を体感してもらえる機会になれば良いなと思っています」と大木さんは言います。友人でも知り合いでもない人同士が、つながりを感じられてすてき! テクノロジーに驚くばかりでなく、私たちの生活にそっと寄り添ってくれるような温かみを感じます。近年、テクノロジーの進化、さらにはコロナ禍において、人との直接的なつながりが遠くなっている中で、テクノロジーの異なるデザインアプローチによって人を近くに感じられるという逆展開がおもしろいな~と感じました。

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2階に上がると、ますますリラックスムードが漂っています。広いテーブルに凛とした存在感のソファー、おしゃれなラグ...アート作品やインテリアが醸し出すぬくもりのおかげか、広いけれども、寒々しくありません。まるでおしゃれな友人の家に来たかのような安心感と、不思議な包容力があります。インテリアは「mui」の世界観とマッチするものだけをセレクトしていて、その多くは、佐賀県の「Ariake」のものを使用しているのだとか。海外デザイナーと日本の職人が共同生活の中で作り上げる「Ariake」の家具は、その仕事の丁寧さと人の手のぬくもりを感じます。3階では、今年中止となったミラノサローネに向け、企画していた現代アーティストとの共同制作アート作品を展示しています。

「コンセプトは公園だけど、お寺のような存在感でもあるかも」と<mui Lab>広報・森口さんは言います。だれもが入ることを許されている空間で、季節の風景を見るようにアート作品を見て、日常から少し離れてぼーっとする...。そこに共存する、「カームテクノロジー」という概念を提示するデジタルデバイスの佇まいが、近未来のサードプレイスのあり方を思わせるような場所にもなり得る。「存在に気づかないくらいさりげないけれど、なくなったらだいぶ困る」。それがmui Lab的カームテクノロジーの捉え方です。

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夷川サローネでは<mui Lab>主催イベントも開催します。951219日には、<mui Lab>が監修した書籍『カーム・テクノロジー(Calm Technology)〜生活に溶け込む情報技術のデザイン〜』の刊行記念として、2020年以降におけるcalm technologyの再解釈と実践について、本書の著者アンバーケースや、瞑想の認知神経科学研究を行う藤野正寛氏などと共に、多角的なアプローチで議論していきます。日常ではあまり触れることのない新たな概念や人間の心身的メカニズム、テクノロジーやデザインの可能性を知り、自分自身の生活に落とし込んで考える。忙しい日常を過ごす中ではあまりできない作業ですよね。でも、そのような穏やかでやわらかな気持ちを創り出してくれるのも夷川サローネの魅力です。

ぜひ、足を運んで体感してみてください。


★データ
<住所>
京都市中京区俵屋町295-1
京都市市営地下鉄丸太町から徒歩7分
<オープン日>
7月31日(金)~10月17日(土)までの水~日曜(月・火曜は休み)
<オープン時間>
13:00~19:00
※室内での食事はお控えください(ドリンクはOK)。
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