京都を代表する和食の料理人に、和食の範疇を飛び出した奇想天外な一皿を作っていただく【割烹知新】。今回は、「祇園 さ々木」佐々木浩さんの「たまご3点」をご紹介します。
奇想の一皿「たまご3点」
白身部分はふぐの白子、黄身はウニ、そして自家製「和のキャビア」を添えて
京都を代表する和食の料理人に、和食の範疇を飛び出した奇想天外な一皿を作っていただく当企画。見た目も味わいも、その発想力に驚くこと間違いなし。京都の和食文化が脈々と続き、愛されてきた理由は、「料理人の柔軟性にあり」と実感できるでしょう。
第1回目は、カウンターでのサプライズ溢れる魅せる妙技で"さ々木劇場"と呼ばれ、客一人ひとりへの親身な対応に多くのファンを持つ、「祇園 さ々木」佐々木浩さんの登場です。
発想秘話
新幹線での移動中にずっと考え続けてきましたが、「見たこともない驚きの料理を」というリクエストに、とても頭を悩ませる企画でした(笑)。
私は2年半かけてオリジナルの「和のキャビア」を開発してきました。2018年の夏に完成したばかりなのですが、せっかくなのでそれをメインに据えて、と発想したのが「たまご3点」です。
「和のキャビア」は普通のキャビアと比べてトロッと糸を引いていますが、これは昆布が入っているからです。宮崎で国産キャビアを製造・販売されている「ジャパンキャビア」の坂元基雄さんに試行錯誤を重ねていただいた労作です。90日間熟成させたこのキャビアは、昆布のおかげでキャビア本来のひねっぽさにミネラルの味わいが加わり、とてもまろやか。そして口の中でいつまでも余韻が残るんです。まるみのある味なので、野菜やお造りなどにもよく合います。
キャビアといえばチョウザメのたまごですが、鶏でも魚でもたまご料理にとても合うんです。そこで今回は、素材も見た目もすべてたまごで統一しました。白身の部分はふぐの白子を裏ごししてゼラチンで固めたものです。成形には鶏卵の殻を使っています。ほどよい弾力に持っていくのが難しかったですね。
そして黄身の部分は、北海道釧路町・昆布森産のウニです。味付けは醤油と塩のみなので、ウニ本来の旨みがしっかりと味わえます。
そしてたっぷりの「和のキャビア」をのせます。さ々木では、ほかの料理でキャビアを使う場合もおひとりに15gはお出しするようにしています。小指の先ほどのほんの少量ではキャビアの味が分かりませんから。15gあれば「キャビアを食べた」という満足感を得ていただけるでしょう。
ウニと一緒にキャビアをすくって食べてみてください。濃厚なウニと、ダシの効いたまろやかな「和のキャビア」との相性のよさを感じていただけると思います。「たまご3点」にはクラッシュアイスにスダチを絞ったウォッカがぴったりです。
もともと自分自身がキャビア好きで、一気に4缶食べたこともあるほどです(笑)。世界三大珍味のトリュフ、フォアグラ、キャビアのなかでも断然キャビア! そこで和食に合うキャビアを作ろうと思ったんです。いずれは「和のキャビア」の販売も考えています。
「たまご3点」の素材は冬のものですので、お店でお出しするとしたら次の冬になるでしょう。ふぐの白子を温めるべきか? 冷たくするべきか? などまだ改良すべき点があります。この冬の到来を、ぜひ楽しみにお待ちください。
撮影 津久井珠美 文 竹中式子
■祇園 さ々木
京都市東山区八坂通大和大路東入小松町566-27
075-551-5000
12:00〜12:30(L.O.)、18:30~
定休日 日曜日・第2・4月曜日・不定休あり(変更の場合あり)http://gionsasaki.com/index.html