美人スイーツ イケメンでざーと
京都在住の美人&イケメンは、普段どんなスイーツ、デザートを食べているのでしょうか? 彼女、彼らの美の秘密に少しだけ迫ります。
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BLOG美人&イケメンスイーツ
2020.03.13
『銀閣寺 㐂み家』の「豆かん」
推薦人:川尾朋子さん書家。6歳より書を学び、2004年より祥洲氏に師事。様々な角度から「書」を捉え、現代の書作品を制作。宙を舞う筆の動きに着眼した「呼応シリーズ」、自身が文字の一部になる「人文字シリーズ」などを発表。近年の活動として、Rugby World Cup 2019 Official Movie、BBC「Art of Japanese Life」、映画「Van Gogh & Japan」出演。現在、京都新聞CM,コカコーラ社「DRAGON BOOST」CM出演中。 銀閣寺からほど近い場所にある小さな甘味処「銀閣寺 㐂み家」。木のぬくもりに満ちた店内には、いつも静かな時間が流れています。「数年前に友人に連れられてここに来ました。豆かんをすすめられていただいたのですが、お豆の美味しさとあっさりとしながらも上品な甘さ、そして、あのつるんと冷たい寒天との絶妙なバランスに感動しました...!」と川尾さん。 それ以来、海外から来た友人を連れていったり、自身も創作で多忙な時期に一人で訪れて、ゆっくり豆かんを食べて心身をリフレッシュして、また創作に取り組むということが多いのだそう。「何よりも、お店の雰囲気が好きなんです。落ち着いた店内やお店の方の物柔らかな接客など、お店自体が癒しの空間になっているんだなあと思います。またこの辺りの銀閣寺界隈には、いつもゆったりとした時間が流れているので、帰りの散策も楽しみなんですよ」どこか懐かしくほっと心安らぐ空間。「銀閣寺 㐂み家」は、北村れい子さんと渡邉裕子さん姉妹が、20年前に始めた甘味処。姉妹二人でいろいろな素材やレシピを試行しながら、豆かんをはじめとするメニューを一つひとつ、大切に作り上げてきました。「実は私たちは東京の出身なんです。豆かんは私自身大好きな味で、東京時代の懐かしい味でもあるので、ぜひお店でお出ししたかったんですよ」と姉のれい子さん。赤えんどう豆がたっぷり入った豆かん630円。寒天が艶やかにきらめいて、とても美しい。黒蜜をかけるとすぐに水っぽくなってしまうので、出来立てをすぐに食べて欲しい。 美しい器に盛られた豆かんは、ほんのり紅みがかったまん丸いお豆がころころとたっぷりと入って、透明な四角い寒天がところどころに見え隠れしています。ひと口いただいてみると、赤えんどう豆はとろけるような柔らかさで、全体にあっさりとした味わいながら、豆本来の甘みとコク、そこに黒蜜がよくからんで、寒天のつるりとした食感と共にスルスルと喉を通っていきます。「赤えんどう豆は、皮が固く、中身が煮崩れやいので、時間をかけて、そうっとそうっと静かに炊き上げていくんです。すべて手作りを大切にしているので、なかなかハードな毎日なんですよ(笑)」と妹の裕子さん。 豆かんとともに、芳しい香りのほうじ茶が供されます。京都の茶舗のもので、いろいろ試した中から、もっとも相性の良い茶葉を二人で選んだのだそう。豆かんの美味しさを邪魔することなく、互いにその美味しさをよく引き立て合っているのがわかります。「ほうじ茶は夏は冷たく、冬は温かくしてお出ししています」。そんな細やかなサービスにも心が和みます。 夏場はひんやりと喉を潤し、冬場は暖かい部屋でつるんと冷たい食感を楽しむ。甘すぎず、全くくどさのない豆かんは、四季折々どんな季節にもよくあって、不思議なことに一度食べると、またすぐに食べたくなる、そんな一品です。 「豆かんはトッピングが多彩で、粒あんや白玉、アイスクリームを載せたものもあって、お友達とそれぞれ違うトッピングを選んだり、その時々で色々な味わいを楽しめるのがいいですね。冬場は季節限定のぜんざいも大好きで、よく注文するんですよ」と川尾さん。 北海道産の小豆を丁寧に炊き上げたぜんざいは、自家製の丸餅をこんがりと焼いてお椀の中へ。さらりとしていて、小豆のまろやかな味わいが満ちて、焼き丸餅の香ばしさがアクセントに。たっぷりと入った一椀もするりと完食。暖かさが体の芯からじんわりと広がっていきます。 赤えんどう豆も小豆も北海道産を使用し、毎日、厨房で炊き上げています。丸餅は近江羽二重を蒸して搗いた自家製、塩こぶも然り。豆かんの黒蜜も波照間島の黒糖などを使用して、丁寧に炊き上げます。「昔は家庭で小豆を炊いてぜんざいを作ったり、おやつもお母さんの手作りが多かったですよね。そういった家庭の台所で普通に作るお菓子にように、気取らない、どこか懐かしい優しいお菓子を作りたいと思っています」とれい子さん。甘すぎず、それでいて濃厚なうまみを感じる、ぜんざい750円。こんがり丸餅の香ばしさが嬉しい。 れい子さんも裕子さんも、何より難しいのが、日々、安定して同じ美味しさを提供するということだといいます。創業当時から通う常連さんや遠方からのファンも多く、「"㐂み家"のあの味を食べたい」という思いに応え続けるには、日々、基本をしっかりと積み重ねていくこと。素材、水、天候など、すべてが年々、刻々と変わっていく中で、いかに時間をかけて丁寧に仕事をするかが大切なのでしょう。 あの豆かんを食べたい!と思い立ったら、どうしても行きたくなってしまう一軒。姉妹が愛情込めて作る甘味は、幼い頃を思い出させてくれるような、そんな懐かしさに満ちています。"あの味"をゆっくりと味わううちに、心身が穏やかにリセットされる、ここはそんな場所なのです。レトロな風情のレジが最近、お客さんの注目を集めているのだとか。現在では貴重な一品。撮影/竹中稔彦取材・文/郡 麻江■銀閣寺 㐂み家京都市左京区浄土寺上南田町37-1075-761-412711:00~17:00水曜日定休
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2020.02.27
『ザ・リッツ・カールトン京都』の「アフタヌーンティー」
推薦人:島直也 だるま商店ディレクター学生時代より本州四国連絡橋公団、阪神高速道路関係のデザイン、コンサル業務に関わり、東京にてスリムビューティーハウス、ヤマハ財団などのWEBやマーケティングを担当。現在、絵描きユニットだるま商店のディレクターとして、製作全般、歴史、考古学などを研究。世界遺産をはじめとする神社仏閣の障壁画、天井画、伝統工芸から、Apple京都、ハリウッド映画、フェラーリディーラー、東京オリンピック文化プログラム、ザ・リッツ・カールトン京都までさまざまな分野にて活躍中。世界に愛されるスイーツを京都で「自分から甘いものを食べに行くほどスイーツ男子ではないですが、カフェで目新しいものがあったら必ず食べますね」と島さん。なかでもホテルで優雅に味わうアフタヌーンティーがお気に入りだそうです。「ザ・リッツ・カールトン京都」をはじめ、京都オークラオークラやホテルグランヴィア京都、ブライトンホテルは、しばしば打ち合わせに選ぶ場所。打ち合わせの後には、そのホテル自慢のスイーツを味わうのが楽しみだと言います。ピエール・エルメ・パリの代表的なケーキ「イスパハン」。お茶とのセットで2700円。(税別)世界にファンのいるピエール・エルメ・パリのお菓子、それもできたてを味わえるザ・リッツ・カールトン京都のラウンジは幸せな時間を過ごせる場所なのだそう。「ピエール・エルメ・パリのお菓子は見た目も味も洗練されています。けれど、最近のお菓子とは違って昔のお菓子のような、ちゃんとした甘みもあり香りも高い。複雑なんだけどわかりやすいお菓子なんです」と島さん。島さんがしばしばこのラウンジを訪れるようになったのは、ホテルから依頼された仕事がきっかけです。「昨年、即位の礼をイメージしたグリーティングカードのデザインをだるま商店さんにお願いしました。ラウンジで打ち合わせをしたその後にアフタヌーンティーを召し上がってくださったようです」と広報の林さん。和の雰囲気もあるカードをと考えたとき、まず候補にあがったのが、絵画ユニット「だるま商店」で、はんなりと美しいカードは世界中の顧客に送られたそうです。2014年2月に京都二条・鴨川畔にオープンした「ザ・リッツ・カールトン京都」は、歴史や伝統に育まれた古都の美意識と世界の賓客が認めるもてなしを集約したラグジュアリーなホテルです。源氏物語の世界観を表現したエントランスも雅で麗しく、すうっとその空気感にひきこまれていきます。アフタヌーンティー4000円(土日祝は4500円)。コーヒーやラテのほか、10種類以上あるお茶から好みの2種類を選べる。※税・サ別(メニューの内容や料金は、時期などによって変わることがあります)ラウンジでいただけるアフタヌーンティーは、見目麗しく盛られた三段のタワー。最上段はプレーンとチョコレートのスコーン2種。2段目はピエール・エルメ・パリ製スイーツの盛り合わせで、タルトやシュークリーム、マカロン、ムースなどその季節のガトー5種。3段目にはサンドイッチやクロックムッシュ、フランなどのセイボリーという豪華さ。島さんは、ワインを合わせて楽しむこともあるそうです。ピエール・エルメ・パリのアフタヌーンティーを味わえるのは、関西ではここだけです。その時季にあわせたスイーツを数種類楽しんでいただけます。ほかにもピエール・エルメ・パリの代表的なお菓子、イスパハン(ローズ、ライチ、ラズベリーの堪らないほど蠱惑的な味のコンビネーション)などを、お茶と共にどうぞ」とすすめてくれるのは、シェフ・パティシエのドゥマネ レジスさん。開業以来、ピエール・エルメ・パリの味と世界観を伝えています。ピエール・エルメ・パリのスイーツは、ホテル内のブティックでも購入することができるので、時間がないときはテイクアウトも。ちょっとした手土産にはパンも人気です。「時間がゆったり流れるラウンジは、空間もサービスも洗練されていて、五感で楽しめる場所。誰もがみな心から寛いでいます。ゆっくり物事を考えられるから、アイデアソースが湧くんです」と島さん。安らぐだけでなく、新たな発想を得られることも、ここにくる理由なのだと言います。撮影:竹中稔彦■ザ・リッツ・カールトン京都京都市中京区鴨川二条大橋畔075-746-5555(代表)https://www.ritzcarlton-kyoto.jp/
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2020.01.18
『珈琲工房 てらまち』の「カフェシュークリーム」
ジャズシンガー 澤田ユカさん兵庫県出身。京都在住。JAZZ R&B POPS、昭和歌謡等、幅広く歌いこなすシンガー。学生時代に組んだバンドをきっかけに歌の世界へ。京都、滋賀を中心に近畿一円のライブハウスのほか、レストランやカフェ、バー、各種イベンドで活動する。「珈琲工房 てらまち」では、毎月1~2回演奏する。 二条城や街中からも近い「三条会商店街」は、昔懐かしい雰囲気を残しながらも、新たな顔を見せる京都屈指の商店街。堀川から千本まで三条通りの南北に続く800mの商店街に180店の店が並びます。昔ながらの青果店もあれば、おしゃれなカフェやセレクトショップなどもあって、地元の買い物客に加え、観光客も訪れる人気の買い物スポットになっています。 今回、ご紹介するのはそんな隠れた名所にある珈琲専門店のシュークリームです。珈琲シュークリーム(1個200円)は、珈琲とともに味わいたい。推薦人の澤田ユカさんは、京都で活躍するシンガー。ジャズをメインにR&Bやポップスまでを歌いこなしひっぱりだこの人。そんな澤田さんが、おすすめするのが、専門店ならではの珈琲を生かしたシュークリームです。「普段はあまり甘いものは食べないんです。そう! お酒を飲む機会のほうが多くて...笑。でも、珈琲工房てらまちさんでライブの後にだしていただいたカフェシュークリームが美味しくて。サクサクで香ばしい生地となめらかな珈琲味のクリームが忘れられなくなりました」と話します。明治時代に建てられた4軒長屋の一軒。風情ある町家を改装した「珈琲工房てらまち」は、自家焙煎の珈琲専門店。京都の老舗珈琲店・小川珈琲で永らく勤めた店主の寺町靖之さんが、「昭和の喫茶店のように人が集まり会話を楽しむ店をつくりたい」と2005年に開いた店です。 寺町さんの思い通り、近所に住む常連さんはもちろん外国人観光客など老若男女が訪ね、薫り高い珈琲を味わいながら思い思いの時間を楽しみます。澤田さんがライブハウスとは趣の違うこの珈琲店でライブを行うようになったのは、どんなきっかけがあったのでしょう。「実は、私も学生時代に吹奏楽をやっていて、そのときの仲間のひとりがライブをお願いしました。そのグループのひとりがボーカル担当の澤田さんでした。年に数回ですが、楽しみにしているお客さまもいて、珈琲店が一挙に大人っぽいアーティスティックな場所になります」と寺町さん。澤田さんが絶品というカフェシュークリームは、寺町さんのお嬢さんでスイーツづくりを担当する美津子さんが手作りしたもの。珈琲粉をちりばめたクッキー生地をのせてザクザク感をだすほか、中のカスタードクリームに濃縮した珈琲やコーヒーリキュールなどを加えるのだそうです。プリン(1個380円)は、なめらかな舌触り。ほどよい甘さと濃すぎない風味で、するりと食べられる。このシュークリームとは別に、澤田さんが「ぜひ食べてほしい」と言うのが、テイクアウト用のプリン。黒豆を食べて育った丹波卵とジャージーミルクでつくったプリンは、卵の風味がそのまま生きる濃厚な味わいです。「シュークリームもそうですがこのプリンも、女性だけでなく男性や辛党の方も美味しいと思えるスイーツ。手作りならではの丁寧な味にほっとします」と澤田さんは言います。豆の特徴に合わせて焙煎される珈琲は購入もでき、こちらも人気。購入者には、寺町さんが丁寧に煎れ方や美味しい飲み方を教えてくれます。ゆっくりと珈琲やスイーツを楽しめる店ですが、澤田さんたちのライブが開かれる日を目指して訪れたいところです。■珈琲工房 てらまち住京都市中京区三条大宮西入ル上瓦町64-26075-821-63239:00~20:00(土日祝は8:00~)休 第3金曜日http://coffee-teramachi.ocnk.net/
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2019.12.26
『粟餅所 澤屋』の「粟餅」
推薦人:茂山逸平さん(大蔵流 狂言師)しげやまいっぺい[狂言師]1979年生 まれ。二世茂山七五三氏の次男。3歳で狂言を始め次世代を担う若手狂師の一人として「狂言小劇場」など精力的に活動。古典の舞台はもちろん、映画やテレビドラマなど現代劇でも活躍。著書に『茂山逸平 風姿和伝』 (春陽堂書店刊)がある。何度食べても食べ飽きない美味しさ「北野天満宮さんで舞台があるときには、必ずといっていいほど、澤屋さんの粟餅を買い、休憩時間などにいただきます」と話す茂山逸平さん。『粟餅処 澤屋』は、茂山家代々が贔屓にしてきた店で、ものごころついた頃から、ここの粟餅が好きだったと言います。 体力も知力も使う狂言の舞台はや稽古の合間には、甘いものをちょっと味わうと心身ともに癒されるのだそうです。創業天和2年(1682)の老舗『粟餅所 澤屋』。祖先は楠正行公の臣下でその首塚守護の命を得て、嵯峨野に移り住みました。その後、子孫が「粟餅」をつくり、北野天満宮の境内で販売したのが、はじまりだといいます。名物の「粟餅」は、充分蒸した粟を店内の臼で搗いた餅に、あんときな粉をまぶした素朴な和菓子。土台の粟餅は、つくり置きせず、一日に何度も搗くのだそうです。粟のぷちぷちした食感が残るしっとりやわらなかな粟餅に、甘さを抑えた上品なこしあんと香ばしいきな粉がよくあいます。※持ち帰り用は5個650円~人気の「紅梅」(500円)は餡2個、きなこ1個が盛られ、見た目はボリュームがありますが、するっと平らげてしまえる美味しさ。甘いものはあまり食べないという人も、「ここの粟餅だけは別」という人が多いのがわかります。注文が入ってから手作りする粟餅は、今年97歳という12代目の与八郎さん、13代目の哲良さんと14代目の淳平さんの3人が作業分担して作ります。手でもった加減だけで粟餅の分量を量り、丸めて餡をつける、きなこをまぶすとその作業はよどむことがない一子相伝の熟達の技。親子3代の連携作業で注文からわずかの時間で仕上げます。「店では食べず持ち帰ってじっくり味わう」という茂山逸平さんのお気に入りは、きなこ。たっぷりとかけられたきなこの香ばしさが際立ちます。「ここの粟餅を食べるとほっとする」と逸平さん。「茂山さんにはご贔屓にしていただいています。確かに、逸平さんはいつもきなこですね」と哲良さん。永らく家業を継ぐ家同士のつきあいは、これからも続いていくのだろう。撮影:ハリー中西■栗餅所 澤屋京都市上京区紙屋川町838−7075-461-45179時〜17時 売切れ次第終了休 木、毎月26日
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2019.11.14
『茶菓円山』の「福蜜豆」
推薦人:かづら清老舗 若女将 霜降真代さん客室乗務員として勤務し、結婚を機に夫の家業である「かづら清老舗」に入り、現在はコスメや簪など和装品の商品開発や接客などを担当。一児の母でもあり、主婦、母、若女将として多忙な日々を過ごしている。そんな毎日の中で、毎日のおやつタイムが何よりの癒しのひと時になっている。 円山公園の奥に佇む一軒の日本家屋。室内に入ると、数奇屋造りの端正な空間には、床の間に軸が掛けられ、季節の花が活けられ、茶の湯の趣向が隅々まで息づいています。「茶菓円山」は、茶室のような空間で、出来立ての季節のお菓子とお茶をゆっくりと楽しめる場所。霜降さんも忙しい日々の中、時折、訪れて、心身をリラックスさせているそうです。「最初は、義母(かづら清老舗女将 ふ紀子さん)に連れてきてもらったんです。母も忙しい毎日の中で、時々、ここにきてお茶とお菓子を楽しんで、リラックスしているようですね。私自身も、この凛とした空間で過ごす優雅なひとときに、ふわりと心ほぐれて、リフレッシュできるんです。たまに友人と一緒に来させていただいていますが、皆さん、この京都らしい雅やかな雰囲気を本当に喜んでくださいます」漆のカウンター、網代天井、聚楽の壁など茶室のような空間には、清々しい空気が流れている。 おもてなしをしてくれるのは江見智彦さん。お菓子を作り、丁寧にお茶を淹れて、お客さん一人ひとりの心地よさを大切にしてくれます。「それぞれのお客様との距離感を大切にしながら、その方が一番心地よいと感じる楽しみ方をしていただければといつも考えています」 一人で静かにお茶を楽しみたい人、会話を楽しみたい人、それぞれの楽しみ方にできるだけ寄りそうもてなしを心がけているそうです。 お菓子は定番と季節のお菓子を合わせて10種類ほどが揃います。お茶はお菓子に合い、互いによく引き立て合うものを厳選。抹茶、煎茶、玄米茶、ほうじ茶の他、コーヒー、紅茶、ワイン等もありますが、日本茶の場合は棚にずらりと並ぶ作家ものの急須からお客が好みの急須を選びます。急須を選ぶことができるのは珍しいので、それをきっかけに器や作家さんの話に会話が弾むことも多いそうです。15〜6種類の急須がずらり。全国各地の作家の作品がセレクトされている。お客が好みの急須を選ぶことができる。 霜降さんのお気に入りの福蜜豆は、見た目も愛らしく、美しい一品です。紫花豆、白花豆、紅絞り豆、青えんどう豆の4種の豆を、それぞれ、異なる炊き方でふっくらと炊き上げ、白玉を加えて、白蜜、黒蜜と共にいただきます。「最初は、何もかけずに、お豆さんの甘みを楽しんでください。その後、白蜜をかけると豆の味わいが引き立ち、黒蜜をかけると味の変化をお楽しみ頂けます」と江見さん。 真代さんは、今日は福蜜豆と玄米茶をセレクト。急須は常滑の大原光一さんのものを選びました。お湯呑みは京都の猪飼祐一さんのもの。手馴染みの良い暖かな風合いがよく似合います。「本当にお豆の味がまろやかで甘みがあって、素材のおいしさを堪能できます。いつも半分以上はそのまま何もかけずに食べてしまいますね」と真代さん。 福蜜豆は小サイズもあるので、お腹の具合に合わせて選べるのも嬉しい限り。茶菓色々という、季節のお菓子と甘味二品のセットも人気があります。見た目も美しい福蜜豆(1200円)はそれぞれに炊いた4種の豆がたっぷりと入っている。上品な炊き方で豆の甘み、旨味をしっかりと味わえる。 定番の福蜜豆以外にも、季節限定のお菓子も楽しみだという真代さん。「夏場は冷やし汁粉がお気に入り。秋から冬にかけては栗やお芋が美味しくなる季節なので、そちらも楽しみです」 秋の始まりにぴったりのお菓子をもう一品ということで頂いたのは、秋から冬にかけていただける「奉書巻」というお菓子です。 餅粉の生地をきつね色に焼いて、中に栗と栗餡をいれて、くるりと奉書のように巻いたもの。モチっとした生地と栗の自然な甘みが一つに重なり、奥深い味わいです。 お菓子をじっくり味わっていると、「お茶をもう一煎いかがですか?」と江見さんが声をかけてくれました。こちらのお店では、頃合いを見計らって、二煎目、三煎目をすすめてくれるのです。「こういうおもてなしは他ではなかなかないので、とても嬉しいですよね。お菓子を食べ終わった後も、二煎、三煎とゆっくり味わうのが、とても幸せです」モチっとした餅粉の生地で栗と栗餡を巻いた奉書巻1000円。彩りに添えられた松葉からは品の良い趣も感じさせてくれる。「空間、しつらい、器、お菓子、そして江見さんの立ち居振る舞いも素敵で、トータルで楽しませていただいています。価値ある時間といったらいいのでしょうか。ここで過ごす時間は、日頃頑張っている自分をちょっと褒めてあげる、ご褒美の時間にもなっています。ちょっと疲れていても、美味しいお菓子とお茶をいただいて元気が出てきて、また頑張ろうという気分を盛り上げてもらえるんです。他にも「だし巻き御膳」や「煮麺」など、ちょっとした食事メニューも揃っているので、今度、お昼ご飯を楽しみに来たいですね」と霜降さん。 八坂神社、円山公園、知恩院など界隈の散策の後に立ち寄って、お昼どきやお茶の時間をちょっと贅沢に過ごしてみてはいかがでしょう。端正な佇まいの数奇屋建築。円山公園内のとっておきの隠れ家にしたくなる。撮影/津久井珠美 取材・文/郡 麻江■茶菓円山京都市東山区円山町620−1−2(円山公園内)075−551-370711:00~19:00(LO18:30)定休日/火曜※価格は全て税別。
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2019.10.21
『阿闍梨餅本舗 満月』の「阿闍梨餅」
推薦人:三嶋 雄太(みしま ゆうた):京都大学 iPS細胞研究所 特定研究員/T-CiRA program Sub-PI医薬学博士。専門はエピジェネティクス、再生医療、血液学、腫瘍免疫学、レギュラトリーサイエンス。薬学部を卒業後、大学院在学中にiPS細胞を世界で初めて事業化したバイオベンチャー企業のアメリカ支店設立プロジェクトに参画。その後ボストンへ渡米、ハーバード大学医学部・ベスイスラエルメディカルセンター研究員を経て現職。iPS細胞技術と遺伝子改変免疫細胞を組み合わせた次世代型がん治療製品の実用化を目指し、現在はiPS細胞から、狙ったがん細胞だけを攻撃する免疫細胞つくる最先端のがん治療製品の研究をしている。実用化を目指した大手製薬企業との共同研究のため、現在は関東と行き来する生活をしている。5年前に海外の留学から帰国して京都大学のiPS細胞研究所で研究をする事になったのが京都との縁。留学先のボストンは京都市と姉妹都市提携が今年で60年目でとても縁を感じているという。「海外や関東から友人が来た際に必ずというほど連れていくのがこちらのお店です。研究のミーティングや、研究所の案内をする機会がとても多いのですが、本店が京都大学の研究所の近くにあるので時間に余裕があれば紹介しています」と話す三嶋さん。 研究室からもほど近い場所にある「阿闍梨餅本舗 京菓子司 満月」は、江戸末期、安政3年に初代、彌右衛門が出町柳に菓子舗を構えたのが始まり。慶応年間の都の騒乱を避けて、一度、やむなく店を閉めましたが、明治17年(1884)に再開。戦後の混乱を経て、現在の地に移転し、その後、160年余理、暖簾を守り続けています。 海外での仕事も多い三嶋さんですが、海外では抹茶はかなり市民権を得てきた感があるそうです。そのため海外からの友人が日本に来た時は、抹茶以外にも日本の代表的な甘み文化である小豆の美味しさを味わってもらいたいと思っているのだとか。「海外の人にとって小豆は好き嫌いが分かれる事が多いなと思います。人生で日本に来る限られた機会かもしれないと考えたときに、本当に美味しい小豆の京菓子と、この老舗らしい店構えを記憶して帰ってもらいたいと思い、満月さんによく案内させていただいています」 白い暖簾が揺れ、たくさんの人に愛される菓子舗の誇りを感じさせる本店の佇まい。ここに来ればいつもと変わらぬ美味しさの阿闍梨餅が待っている。「冷えたものももちろん美味しいですが、ほんのりまだ温かくて、皮がさらにもっちりしている感じで感激しました」。そう話す三嶋さんがよく行くのは百万遍に近い本店。ここは、時に出来立ての阿闍梨餅を食べるチャンスがあるそうです。「本店のすぐ向かいで製造していますので、時々、そう言って喜んでいただくお客様もおられます。毎日、毎日、作り立てをお届けしたいと、日々、努力しています。阿闍梨餅は大正11年、二代目当主が考案したものです。丹波大納言の粒餡を、餅粉、水飴、砂糖、卵を使った秘伝の餅生地で包みます。しっとり、もっちりした独特の食感をお客様に喜んでいただいております」と話すのは同店の常務取締役 中嶋哲夫さんです。 取材中もひっきりなしにお客さんが訪れて、5個、10個と買っていきます。1個売りからというのも嬉しい限り。近所の人が散策がてら寄って、1個、2個と毎日、買っていくことも多いのだそう。地元に根付いて長く愛されている店ということが伝わってきます。「おかげさまで、阿闍梨餅は毎日、各店舗で多くの方にご購入いただいていますので、機械を導入して製造していますが、例えば餡場には、ベテランの餡炊き専門の菓子職人が何人もついて、火加減、炊き上がりのタイミングなどを見計らっています。生地も同じ。季節によって気温や湿度が変わりますから、生地の寝かせ具合、火入れの加減などやはり人の目と技が不可欠ですね」阿闍梨というのは比叡山で修行する僧侶にちなんで命名したもの。僧侶たちがかぶる編み笠をかたどっている。こんがりきつね色の生地と上品な甘み、独特の食感が食欲をそそり、幾つでも食べられてしまう。1個119円(税込) 三嶋さんは、本店と金閣寺店で、土日祝日のみ購入できる「満月」も好んで、あえて土日祝日に訪ねて、希少なお菓子を買うそうです。「店名の冠のついた商品であるにも関わらず、週末にしか販売していないというのはとても貴重だと思います。土日祝日に行くときは、満月と阿闍梨餅を必ず両方買いますよ(笑)」 「満月」は明治33年に、九條家御用達の命を受けてつくられたお菓子。希少な最上級の白小豆の漉餡を小麦粉の生地で包み、焼き上げた洋風の香り漂う焼き菓子です。当時はかなりモダンなお菓子やったと思います。生地の薄さはたった2ミリ、これだけは今も職人の手包みでつくっています。さっくりした生地の中にしっかりとした漉餡がぎゅっと詰まっていて、食べ応えがあります」 人気のお菓子なのになぜ、土日祝日の限定販売なのでしょうか。 それは同店の基本姿勢にあります。「"材料を落とさず、値段を上げない努力"は、初代からずっと当店で大切にしている言葉です。丹波大納言も白小豆も自然の産物ですから、不作の時もあります。それでも品質を落とさない、値上げをしないことに本当に苦心します。 特に高品質の白小豆はそもそもの生産量が少ないのでどうしてもたくさんつくることができません。そのため限定販売にしているのです」 また、同店では"一種類の餡で一種類の菓子しかつくらない"という基本方針があるそうです。一つひとつの菓子は職人のあらゆる技、思いが注ぎ込まれた作品。餡の素材になる小豆は産地を限定して、生地の餅粉や砂糖も、この店のこの菓子のためだけに特別に配合したものを選び、食感や味付け、製造法まで考えに考え抜いて開発したものだからです。今、同店では、阿闍梨餅、満月、棹物の京納言、最中の4種類だけしかつくっていませんが、それも基本姿勢を貫くためなのです。希少な白小豆のみを使ってコクのある漉餡を、厚さ2ミリの極薄の生地で包み、さっくりと焼き上げた満月。本店と金閣寺店で、土日祝日のみ購入できる。1個303円。「努力と苦心を重ねて、お菓子をつくり続けるのは、疲れた時、一休みしたい時、美味しいお茶を入れて甘いものを食べれば、みなさん元気になるでしょう?"ああ、美味しかった"とほっとくつろいで、リフレッシュして、また頑張れる。小さなお菓子ですが、そんな風にお役に立てるのが何より嬉しいんです」 三嶋さんも、研究や実験が行き詰まって集中力が切れてきたときに、お菓子を食べるそうです。研究の仕事は、世の中の人が普通に生活していく中でほとんど気にしないような、非常に細かい事柄の違いについて常に深く考え続ける仕事なのだとか。「ずっと集中していると、ふと集中が途切れた時に、お腹は減らないのですが甘いものを欲しい!という思いが襲ってくる時があるんです。そんな時には研究仲間を誘って、休憩室で、コーヒー片手にスイーツを食べながら話をするのですが、こういった時に良い情報やアイデアが降ってくることがとても多いんです。だから、お茶と甘いものの時間を意図的に設けることはとても大事だと思っています。時間が許すときは、満月さんに行って、阿闍梨餅を買うことも多いです」 贈答用としても人気がある阿闍梨餅。変わらぬ包み紙のデザインにも伝統を感じる。10個入り(箱入り)1296円 伝統ある阿闍梨餅や満月ですが、時代ごとに少しずつ進化しているといいます。素材自体の変化や気候の変化に対応して、「昨日よりさらに美味しく、進化し続けている」、それが「満月」のお菓子なのです。「最新の研究をされている方の脳の疲労にもうちのお菓子が役立っているなんて光栄ですね。満月はお抹茶がよく合いますし、阿闍梨餅はお煎茶がおすすめです。お煎茶もできれば急須、湯呑みを温めて、ゆっくり淹れて欲しいです。 忙しいときほど、お茶の時間を大切にしていただいて、素晴らしい研究を進めてほしいです。うちもモットーを守って、美味しいお菓子をご提供していきたいと思います」 京の人々に愛され、最先端の研究者をも癒す阿闍梨餅と満月。できれば土日祝に店を訪れて、ぜひ両方のお菓子を味わってみてください。 店の前のスペースでは、丹波大納言と白小豆の鉢植えが植えてある。自然環境にめげず懸命に育つ植物に感謝を込めて、店のシンボルとして大切に育てているのだそうだ。収穫した豆もちゃんとお菓子に使うという。 扁額がいくつもかかり、昔ながらの趣きを残す本店店内。ショーケースの中には潔く、4種のお菓子しか並んでいない。ブレることのない老舗の意気を感じる。■阿闍梨餅本舗 満月 本店京都市左京区鞠小路通り今出川上ル075−791-41219:00~18:00水曜不定休
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2019.09.30
『スフレ&カフェコーナー 茶庭』の「バニラスフレ」
推薦人:有限会社コンフォート代表 辻衣緒里さんブライダルの企画や飲食店の経営など、多彩な仕事をこなす有限会社コンフォート代表取締役の辻衣緒里さん。2019年4月より、金戒光明寺境内のおばんざいランチ・甘味処「戀西楼 快庵」を運営。おばんざいランチ・きつねうどん・黒谷パフェ・みたらし団子など京都らしいメニューで評判を呼ぶ。 緑豊かな京都・岡崎。疎水のすぐ近くに手をけ弁当で知られる料亭、六盛があります。入口を入ってすぐ左手、疎水や庭園を望むテーブルとカウンター席の広々としたスペースが、午後のひととき、スフレをいただけるカフェサロン「スフレ&カフェコーナー 茶庭」です。 スフレを作るパティシエールの岸本香澄さんは、六盛の当代の長女で、辻さんとは長年の友人です。日々忙しく過ごす辻さんですが、ほんの少しほっとする時間を過ごすのがこの店だそう。 「友達同士や仕事関係の方とお茶を兼ねてどこかで、という時にお連れすることが多いのですが、いつも迷いなくここを選ぶんです」 いつ来てもゆったりと過ごせて、京の料亭という贅沢な空間でお茶を楽しむひとときは、自分自身もリフレッシュできて、ゲストにかならず喜んでもらえるといいます。 「どちらかというと甘いものよりお酒が好きなんですが、こちらのスフレは甘すぎず、ふんわり軽やかで私好みの味。甘いものが苦手な方もぺろっと召し上がるんですよ。優しい味わいなので、どんな世代の方にも好まれますね。いつも食べるのは、定番のバニラスフレ。おすすめの食べ方は、スフレにスプーンをいれて穴をあけて、ソースをかけるのですが、ソースの香りがすーっと立ってきて、熱々のスフレをいただくと、気持ちもふんわりしてきます」(辻さん) バニラスフレにはアングレーズソース、ショコラにはチョコレートソース、、抹茶には抹茶ソースとそれぞれベストな相性のソースがつきます。お酒にもよく合い、特にスパークリングワインとは格別なマッチングを見せます。スフレセット(バニラスフレのみ)1320円(税込)は、コーヒー、紅茶、スパークリングワインなどからドリンクを選べます。ふわふわ焼きたて熱々のうちにどうぞ。 スフレはバニラスフレなど定番が4種、それに季節のスフレが2種、計6種が常時揃っています。「スフレの店は31年前、祖父が始めたんです。たぶん、ヨーロッパあたりで口にしたのだと思いますが、ふんわりとした優しさや、儚く溶けていく食感が京都にあうのでは?と導入したそうです」と岸本さん。 まだスフレなど知られていない時代に、祖父の吉一さんが新しいお菓子に挑戦し、それがだんだんと認知され、いまでは京都でも数少ないスフレ専門店として多くのファンを獲得しています。 「四年前に同じ岡崎の別の場所からこちらに越して来られたのですが、以前は外で行列を待たなくてはいけなかったのですが、今は、お店の中で待てるので助かります(笑)」と辻さん。お気に入りのバニラスフレとスパークリングワインを楽しむ辻さん。「どんな方をお連れしても心からくつろいでもらえることが嬉しいです。料亭の雰囲気にも浸れますし、おもてなしも居心地も素晴らしいです。お気に入りの場所ですね」 スフレはとにかく焼きたてが命。お客様の顔を見てオーダーをうけてから、キッチンで生地を泡立てて、200℃のオーブンで約25分、じっくりと焼きます。スフレ作りを一手に引き受けているのが岸本さんです。「時には急ぎのお客様もいらっしゃいますが、うちは焼きたてのスフレを召し上がっていただく店ですので、ご理解していただいています。ふわふわ熱々のところを召し上がっていただいてこそですから...」 料亭らしく季節感や京都の和のイメージも大切にしており、旬の素材や和テイストの素材を用いた独自のスフレレシピは50種以上になるのだそう。どれも試行錯誤しながら、何度も試食を重ねて完成させた自信作です。季節限定のスフレ、クリームチーズのスフレとブルーベリーのソース886円。クリームチーズのコクに、ブルーベリーの甘酸っぱさがよく合います。 四半世紀近く、スフレ一筋を焼き続けている岸本さんですが、気温や湿度、素材の状態で微妙に仕上がりが異なるのだとか。 「こんなことをいうとおかしいですが、ちょっと蕎麦打ちに似ているかもしれませんね。スフレは繊細なデコレーションをするわけでもなく、どちらかというとシンプルな作り方のお菓子。緻密に計算して作るというより、その時の勢いとか感覚が大切だったりします。23年焼き続けていても、なかなかこれで完璧!というのがない世界ですね」 もっともっと美味しいスフレをめざして、妥協を許さず、高みを目指す姿勢はまさしくスフレ職人といえるでしょう。愛らしい中にもきりりとした雰囲気の岸本さん。スフレのことを話し出すとスフレへの情熱を感じます。 辻さんのお気に入りの席は窓に面したテーブル席。手に取るように緑の木々が枝を伸ばしています。「ここからの景色は緑の木々が美しくて、心から癒されるんです。そして、何よりも変わらぬ味が安心でうれしい。ここに来て美味しいスフレをいただいて心身をリセットして、またがんばろうって気持ちになれます」 「そういう場所になれることがなによりうれしいですね」 ふんわりと人の心を包むような優しいお菓子。スフレを通じて会話が弾むひとときは、 なにものにもかえがたいしあわせな時間なのかもしれません。窓に映る緑の美しいこと!四季折々に移ろいゆく京都の景色もまたご馳走です。六盛の料理を堪能して、そのあとに店内を移動して、コーヒーとスフレを楽しむお客様も少なくないのだとか。撮影/竹中稔彦 取材・文/郡 麻江■スフレとカフェコーナー六盛茶庭京都市左京区岡崎西天王町71六盛内075-751-617114:00~17:00(LO)休 月曜(祝日の場合は翌日)
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BLOG美人&イケメンスイーツ
2019.08.20
『前田珈琲』の「チョコぼうろ」
推薦人:Enjoy Kyoto代表 徳毛伸矢さん京都を訪れる人に向けて英語で京都の情報を紹介するフリーペーパーの企画、制作、出版を手がけているEnjoy Kyoto代表の徳毛伸矢さん。Enjoy Kyotoは、京都を深く探り、知るためのクオリティの高いコンテンツで、国内外から高い評価を得ている。 蛸薬師通烏丸西入る。風情ある町屋の外観に真っ白な暖簾。京都の老舗喫茶「前田珈琲室町本店」は、朝早くから夜7時の閉店まで常連さんや観光客で賑わっています。 創業は1971年。現会長の前田隆弘さんはイノダコーヒーで長年、修業をしたのち、独立しました。 豊富なメニューが揃うモーニング、お昼時には名物のナポリタンなど、ボリューム満点のランチを、またコーヒーのお供に多彩なオリジナルのスイーツも揃えて、様々な年代のお客さんが愛用しています。 「室町本店」は、元呉服屋だった古い建物を、1981年に前田珈琲の本店としてリノベートして開店しました。100席もある大型の喫茶店ですが、店内はくつろいだ雰囲気に満ちて、お客さんは好みの席でゆったりとコーヒーを楽しんでいます。 店内入り口近くには、ドイツ・プロバット社の大きいな直火式焙煎機がどんと置かれ、毎日、前田会長が全ての店舗や販売用の豆を焙煎しています。焙煎中は焙煎室から芳香が漂い、その香りごとコーヒータイムを楽しめます。香り高くコクがあるアイスコーヒー 463円(税抜き)。夏のコーヒータイムに欠かせない味わいだ。冬場でも暖かな部屋でアイスコーヒーを注文する常連さんも少なくないという。 徳毛さんは、忙しい仕事の合間を縫って、この店でコーヒータイムを楽しむことが多いといいます。 「一人で来ることが多いのですが、いつ来てもお店の方がいつもにこやかに声をかけてくれるのでほっとします。ホールのスタッフも皆、きびきびとして、とても気持ちがいいですね」ホールのサービスの中心的存在は「おかあさん」と親しまれている前田会長夫人の恵美子さんです。創業時から48年、ずっと休むことなく、店に立ち続け、接客を続けてきました。「ミルクはダブルで、シロップはなしでなど、常連さんのお好みは、だいたい頭に入っています(笑)」と恵美子さん。 「僕はアイスコーヒーか、ミックスジュースを頼むことが多いですが、モーニング、ランチ、午後のコーヒータイムとメニューが充実しているので、いつどんなシチュエーションでも使い勝手がよくて、打ち合わせなどでお客様をお連れしても安心感があります」"おかあさん"のこの笑顔に癒されたくて、毎日、多くの常連さんがこの店を訪れる。初めて訪れた人も、恵美子さんの和やかなもてなしですぐにリラックスできる。 店頭のショーケースに並ぶ色とりどりのスイーツも人気。パティスリー部門で毎日手作りしている生ケーキは、ショートケーキやプリンアラモードなど、懐かしい味もあれば、求肥を使った新しい京都の味を提案するなど、スイーツ好きにも定評があります。「僕は、イートインよりも、おもたせ用にお菓子を購入することが多いのですが、特にお気に入りは[チョコぼうろ]ですね。これは本当に他にはない味わいなんです。周りはカリッと香ばしくて、食べるうちにコーヒーのコクと苦味が広がって、また一つ、もう一つと欲しくなるんです。コーヒーにもぴったりで、ギフトにすると本当に喜ばれます。他にもお仏事や仕事のご挨拶など、進物選びのアドバイスも店頭で丁寧にしてくれるので、毎回助かっています。[チョコぼうろ]は、一箱買えばイートインもできるそうなので、今度試してみたいですね」チョコぼうろ(カフェオレ風味) 800円(税抜き)。カリっ、サクっとした食感であとからコーヒーのほろ苦さが広がる。 コーヒーは、厳選した豆を前田会長の熟練の技で香ばしく焙煎。気候によって温度管理や火入れを微妙に変えるそうで、まさにコーヒーの匠の技といえます。ブレンドコーヒーならしっかりとコクのある「スペシャルブレンド龍之助 <RYUNOSUKE>」と、繊細な香りを楽しむ「プレミアムブレンド冨久 <FUKU>」。ストレートのスペシャルティコーヒーなら、「スペシャルティ モカ イルガチェフェ珈琲弁慶 <BENKEI>」と「完熟ブラジル珈琲豆牛若丸 <USHIWAKAMARU>」が定番。お好みを選んで、好きな席でコーヒーを心ゆくまで楽しめるのが、前田珈琲らしい楽しみ方と言えるでしょう。「僕は入り口近くの席が好きなんです。知り合いが来たらすぐにわかりますし、何より落ち着くんです。たまたま知り合いが来たら、席の移動もスムーズにさせてくれますし、ある時、一人で行ったのですが、だんだんと知り合いが増えていつの間にか大きなテーブルを囲んでみんなでコーヒーを飲んでいるなんてこともあって...。つくづく人がたくさん集まる名店なんだなあと思いました」チョコぼうろとオリジナルコーヒーのギフト詰め合わせも人気。買い付け担当者と焙煎士である前田会長が綿密に相談しつつ、その時季に一番良い豆を選んで厳しいカッピング(味や香り、舌触りなどのテスト)のもとで生豆を入荷。前田会長がそれぞれベストな焙煎を行なって、前田珈琲のいつものあの味と香りを提供している。 今は息子の剛さんが経営を引き継いで、昔ながらの古い良き喫茶店の魅力を守りつつ、新たな業態展開や新商品開発にチャレンジしています。現在、京都で9店舗、北京に1店舗を展開し、京都から世界に発信するコーヒー店として成長していますが、その原点は変わりません。「最高に美味しい一杯を、最高に心地よい空間で、最大限のおもてなしの気持ちをこめてお出しすること。これが前田珈琲の思いです」と恵美子さん。 温故知新の心が息づく京の老舗喫茶店で、ゆっくりと一杯のコーヒーに癒されてみてはいかがでしょう。撮影/竹中稔彦 取材・文/郡 麻江■前田珈琲 室町本店京都市中京区蛸薬師通烏丸西入る橋弁慶町236075-255-25887:00~19:00(LO18:30)無休
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