京の会長&社長めし
京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介していきます。
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2022.03.22
株式会社実業広告社の社長が通う店「ほんわか」
■馬場 俊光(ばば としみつ)さん株式会社実業広告社 代表取締役京都市交通広告協同組合 理事長1974年生 京都府出身 慶應義塾大学商学部卒昭和23年3月設立。交通広告を中心にテレビ・ラジオ・新聞・雑誌・WEBなどのメディアを通じて、クライアントのニーズに幅広く応えていますプライベートで行くなら気楽な店が好み。最後の晩餐は、すき焼きと白飯。自慢の焼き鳥をはじめ、大将の愛情たっぷりの料理と酒で憩う、地元民のオアシス阪急桂駅西口ロータリー前に立つビル1階に、居酒屋「ほんわか」がある。賑やかな東口と比べ、西口周辺は店舗数が少なく入れ替わりも激しいそうだが、ここはそんな中にあって、地元で長く愛され続けている一軒。馬場さんにとっても、親子で通った馴染みの店である。「今はコロナで少し足が遠のいていますが、月一ぐらいは行っています。常連だった父に連れられて行き始め、10年以上は経つと思います。焼き鳥が売りなんですが、ほかにもいろいろメニューがあってどれも美味しいし、誰でも連れていけるような店です。大将は若干強面ですけど、話しだすと気さくで感じがいい。大将との会話も楽しみたいので、カウンターに座ることが多いですね」(馬場さん)店主の中川悦男さんは言う。「もう亡くなられましたが、馬場社長の父上には、長年にわたって可愛がってもらい、相当お世話になりました。家族でお食事に来ていただいたりしているうちに、息子さんも一人で来ていただくようになって。馬場社長はご友人と3~4人で来られる時もよくありますね。豪快にお酒を飲んで、食べて帰っていただいています。すごく豪快な方なんで(笑)」15歳から飲食の世界に入った中川さんは、祇園の炉端焼き店やちゃんこ料理店での修業を経て、28年前に桂でカウンターの店をオープン。その5年後に場所をかえてこの店を始めたという。実家が元鶏肉店だったことから、焼き鳥をメインにおばんざいからカレーまで工夫を凝らした多彩な居酒屋料理を揃える。今は残念ながらコロナ禍で入荷がストップしているが、丹後の伊根町から届く天然魚にも定評がある。ここでは定番の焼き鳥以外はメニュー内容もその時々で変わる。根っからの料理好きで研究熱心、常に新しいメニュー作りを考えているという中川さん。そのあくなき探求心で、粉の配合に苦心したという北海道風唐揚げのザンギ、「最近のヒット作」自家製の餃子や焼売など、オリジナルの味を次々登場させている。アイデアマンの中川さんの料理を象徴するのが、名物の焼き鳥。関東のウナギの製法をヒントに7年ほど前に考案した方法で、鶏肉を蒸してから炭火で焼き上げる。そうすることで、肉の余計な脂が落とされるという。「水分が抜けないんでふんわり焼きあがり、うま味も逃げません」と、中川さん。「とりあえずお造りを食べて、そこからシーザーサラダとかアボカド、だし巻きなどを。で、〆に焼き鳥をつまみます」と、馬場さん。いつも酒のアテとして料理を楽しんでいるという。「いいだしが利いています」と、馬場さんお薦めのだし巻きは、たっぷりとだしを含み、シンプルに美味しい。本来のメニューにはないが、事前に予約すれば用意してもらえる。「うちはお馴染さんが多いんで、メニューの提供もフレキシブル。そうめんゆがいてといわはる人もあれば、焼きめし作れといわはる人もあるし、お客さんのオーダーに応じて作っている感じ」と、中川さん。身がふっくら柔らかく、ジューシーな自慢の焼き鳥は、大振りでボリューム満点。各種2本以上から注文できる。盛り合わせは5本入り780円と10本入り1560円。手前左は大人気のモモ。下味をつけた肉を巻いて一度蒸してから串を打って焼いている。黒糖やチョコレートを隠し味にしたコクのある特製タレがよく合う。「ザ・居酒屋」な内装の店内には、昔の広告ポスターなどが貼られ、どこかノスタルジックな風情を感じさせる。「初めてのお客さんでも『なんか昔から来ている気がするわ』て、皆言われます。あまりにも普通過ぎるからかなあ。でも普通でいいんですよ。誰でも好きなように入ってこれる店がいいんじゃないですかね」(中川さん)また馬場さんのように親子二代で通う常連客も少なくない。「子供の頃から来ていて、もう酒飲める歳になったんか、っていう人もたくさんいはります。子供さんにオムライスやらパスタやらメニューにないものを作ったりしていたのが良かったのかな。大人になっても『おっちゃんの作るオムライス、最高やわぁ』いうて食べて帰らはります」(中川さん)親子でよく一緒に飲んだという馬場さん。「ここは焼酎のボトルキープができるんです。親父も結構酒飲みだったので、二人でボトル一本ぐらいはすぐあけていましたね」と振り返る。写真は店で馬場さんのキープボトルに使われているキーホルダー。実はお父さんのボトルで使っていたものがそのまま引き継がれている。日本酒は全国各地から料理に合う地酒を揃えている。「店の造りも昔と全然変わらず、アットホームな感じ。隠れ家的で地元の人しか行かないようなところも、気楽でいいんですよ」と、馬場さん。訪れるのは自営業などの地元の常連客が大半という「ほんわか」。仕事終わりに遅がけの食事をしにきたり、会食のあとの一杯を楽しんだりする人も少なくないという。ハレの日に使う特別な店ではないが、こんな行きつけの店が地元にあるのは、幸せなことなのではないだろうか。弟子も独立し、今は一人で厨房に立つ中川さんだが、まだまだ料理人としての意欲は衰え知らずだ。「やめる気は全然ないですね。体が動くんやったら80でも90でも店はしたいと思ってます」予算は食べて飲んで3000円~3500円。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■ほんわか京都市西京区川島有栖川町桂西口駅前ビル1F075-394-7878営業時間 17時~24時定休日 火曜※営業時間は状況により変更の場合あり。HPで要確認http://www.izakaya-honwaka.com/
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2022.02.19
ジャパンリスクマネジメント株式会社の社長が通う店「子鴨(こがも)」
■竹内 秀興(たけうち ひでおき)さんジャパンリスクマネジメント株式会社 代表取締役社長1981年生まれ 京都市出身2004年 滋賀銀行入行2008年 ジャパンリスクマネジメント株式会社入社2016年 専務取締役2019年 社長就任当社は、リスク管理と保険コンサルティングの専門企業として、1948年に創業。1968年には、生損保共に扱う総合代理店としてお客さまのリスクを総合的にお守りする体制に。「事故時の安心」と「長期間にわたる安心」をお届けし、京都大阪を中心に法人約1,000社、個人約9,300人とお取引をさせて頂いています。最後の晩餐は、かつて西大路御池にあったイタリアン「トラットリア カロ」のニンニクたっぷりのパスタ「ガーリックガーリック」。名物の馬刺しや鴨のたたきをはじめ、職人の技が冴える自慢の味を京滋の美酒と「私は経営者仲間の先輩や後輩に誘われて食事に行くことが多いのですが、連れて行ってもらうと、やっぱり祇園の割烹や寿司、焼肉などが増えてくる。だから、自分で店を選べるときは街中のこういうカジュアルな店に行きたいと思って使わせてもらっています」(竹内さん)三条河原町交差点に近い三条通と龍馬通をつなぐ路地裏に、竹内さんお薦めの「子鴨」がある。ここでは馬肉と鴨肉、京野菜に特化し、京料理の技で仕立てたメニューを提供し、好評を博している。馬肉といえば、高たんぱく、低脂質、低カロリーのヘルシーさで人気が高まっている食材。竹内さんも高品質で美味しい馬肉料理を目当てに通っているという。「2015年の秋頃、経営者の友人の紹介で行ったのが最初だったと思います。私は馬刺しなど生肉が好きなんですが、当時京都では食べられる店があまりなくて、馬刺しが食べたくなったらここに、という感じで行き始めました」(竹内さん)店内は6席の一枚板のカウンターに2人掛けと4人掛けのテーブルの小さな空間だが、窮屈な感じはなく、くつろげる雰囲気だ。名物の馬刺し盛り合わせ、京鴨のたたきなど、馬肉や鴨肉が焼き物や造りで味わえるほか、季節野菜を使ったサラダや天ぷら、焼きびたし、生麩・生湯葉料理などがあり、冬場には鴨鍋も登場する。「馬や鴨などのジビエが食べられて、しかも野菜まで美味しいというのがポイント高いです。コースもありますが、私はいつもアラカルト。まず馬刺しの盛り合わせを頼み、あとは一緒に行く人に選んでもらう感じです。私が選ぶと、生ものばかりになっちゃうんで(笑)。馬刺しの味は熊本で食べるものにも引けを取らないと思います」と、竹内さん。また、マラソンランナーでもあり、普段から体重管理に気を遣う竹内さんにとって、カロリーを気にせずいくらでも食べられることも大きいようだ。店主の青木泰樹さんは、祇園の老舗などで5年間、京料理の修業をした後、大阪の飲食店経営の会社に就職。そこで串焼きや鍋などの店舗の運営、馬肉焼肉店「けとばし屋チャンピオン」の立ち上げ、店舗展開などに携わってきた。そして独立して地元京都に戻り、2013年7月に「子鴨」を開いた。「京都の職人として生きていきたいという思いがあり、身に着けた能力と経験を生かしながら、小さな京都らしい職人のお店をつくろうと考えた」という青木さん。京料理の伝統的な技術でほかにない個性的な素材を扱いたいと考え選んだのが、馬肉と鴨肉だった。「肉の京料理をやりたかったんです。馬肉は美容・健康にいいし、何より肉として美味しい。牛肉よりあっさりしているので、やりたい料理の表現には最適の素材だと思ったんです。また鳥類のお肉も使いたかったので、京都の料理人として鴨を選びました」「本物の素材、本物の技術による高品質な味、料理を目指しています」と、青木さんは話す。馬肉は、「馬業界の最大手であり最高峰」の熊本の「千興ファーム」と専属契約し、最高グレードの肉だけを入れている。そして鴨肉は、味、食感、香りにすぐれ、京料理に最適な京都産ブランド鴨の「京鴨」を。野菜は京野菜や近江野菜を農家や直売所に毎朝赴き、吟味して仕入れているという。馬の生肉は牛以上にデリケートだという。馬肉の扱い方を熟知しているからこそ、その魅力を引き出せる。「牛レバーと変わらないぐらいの感じで食べられて、美味しい」と、竹内さんお気に入りの「極上生レバー」1200円は、馬肉特有の甘味とこりっとした食感が楽しめる。※数量限定。入荷がない場合もあり野菜料理も出色。竹内さんのお薦めは、「朝獲れ新鮮野菜サラダ」1400円。美しくカットし、彩り豊かに盛った20種以上の旬の野菜は、甘く濃厚で力強い。醤油やみりん、ワイン、オリーブオイルなどを使ったドレッシングも、野菜の味を絶妙に引き立てている。「こんな美味しいサラダ、あまり食べたことがない。みずみずしくて、飲み疲れしている中でも食べてホッとできるメニューです」(竹内さん)「馬や鴨と同様、野菜も最高級の扱いをしています」と青木さん。窓際には白菜、ニンジン、小かぶなどさまざまな野菜が。飾りで置いているのではなく、食べ頃になるまで毎日位置や角度を変えながら寝かしているそうだ。力を入れているのはワインと日本酒。料理との相性を踏まえ、ワインはほぼイタリア産をメインに70種程、日本酒は京都と滋賀の酒15~20種程をセレクト。竹内さんが気楽な仲間とよく利用するというテーブル席。「この店の気に入っているところは、気楽に飲めるところ。居心地が良くて、いつも美味しい料理を食べながらしょうもない話をして、べろべろになるまで飲んでいます(笑)。また、私は仕事で人と接することが多い分、店ではあまりしゃべりかけられたくないタイプ。ここは無駄にしゃべりかけず、ひっそりしといてもらえるのもいいんです」(竹内さん)「うちが店としてこうしていきたいというところが、竹内さんにも伝わって使っていただいているのはうれしいですね」と、青木さん。程よいきっちり感と、肩ひじ張らないカジュアルさを併せ持つ同店。お客それぞれに合わせた対応で心地よく過ごせるのも、魅力の一つ。素材に誠実に向き合って作る料理とアットホームな雰囲気で、ファンのお腹と心を満たしていく。予算は飲んで食べて8000円~1万円程度。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■子鴨京都市中京区河原町三条下る大黒町46--1075-746-4973営業時間 18時~22時(LO21時30分)定休日 月曜※営業時間は状況により変更の場合もありhttps://ko-gamo.com/
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2022.01.15
株式会社マツシマホールディングスの社長が通う店「侘家古暦堂 祇園花見小路本店」
■松島 一晃(まつしま かずあき)さん株式会社マツシマホールディングス 代表取締役社長1986年生まれ、京都府出身2009年、東京海上日動火災保険株式会社に就職2014年、父が経営するマツシマホールディングスに転職2016年、専務取締役就任2017年、代表取締役専務就任。株式会社A・STORY創業2019年、マツシマホールディングス代表取締役副社長就任2022年、マツシマホールディングス代表取締役社長就任「全員でつくる家族と社会に誇れる会社」の企業理念のもと、メイン事業であるカーディーラー以外にも、飲食・アート・ヘルスケア・競走馬などの事業を通してお客様との繋がりの深い企業・社員が誇れる会社づくりを目指しております。最後の晩餐は、食パンにハム、チーズ、目玉焼きをのせて。大学時代まで朝食に欠かさず食べていました。さまざまな場面に応じたホスピタリティも魅力。遊び心も満載の多彩な鶏料理をコースで京都五花街の一つで、伝統的な街並みが残る祇園甲部。花見小路通沿いの歌舞練場近くに立つ「侘家古暦堂」は、洋菓子ブランド「京都北山マールブランシュ」を手掛けるロマンライフが、2002年11月にオープンさせた鶏料理の店だ。京都といえば牛肉文化の土地だが、鶏肉(かしわ)も好んで食されている食材。ここ祇園花見小路本店では、祇園らしい風情と共に従来にない鶏料理が味わえると、多くのファンを獲得している。松島さんもその一人で、高校生の時からの常連だという。「ロマンライフの社長の次男が、僕の同級生なんです。中学、高校、大学とずっと一緒で仲が良かったので、その親同士も親しくなりまして。それでオープン当時から家族で通っていました。うちの父が気に入ったお店ばかり行くタイプで、本当にしょっちゅう行っていましたね。でも本当に長居しても飽きないし、楽しく過ごせるので、多い時は月に1、2回ぐらい行っていました」(松島さん)家族で行くことはほぼなくなったものの、松島さんは今も何かあるたびに利用しているという。「友達と気軽に行こかという時もあれば、お客様をお連れする時もあったりして、あらゆるシチュエーションで使っています。高級感漂う店なのに、カジュアル。場所も雰囲気もいいし、料理も間違いなくおいしいので、誰を連れて行っても大丈夫です」「松島社長は会社やお仕事関係の方と来られることが多いですね。松島様のように会社の接待で使ってくださる方や、カップル、家族連れ、観光客など、本当に多種多様にご利用いただいています」と、広報担当の小杉拓海さん。町家を改装した店内は、上質感ある落ち着いた雰囲気。1階にカウンター、2階に3つの個室があり、さまざまなシチュエーションに対応している。キッチンを囲むカウンターはやはり人気だ。炭火焼をメインに、多彩な鶏料理を食べさせる同店では、京都のだし文化にならい、素材本来の味を生かすことを重視。昨年11月にメニューを一新。それまであった夜のアラカルトをなくし、コース一本にしてその内容を充実させた。その際、松島さんたち長年の常連客を招いて試食会を行い、その時の意見も参考にしたという。夜の「京都焼き鳥styleコース」8250円は、和洋中のだしを使った前菜3種、変わり種も登場する焼き鳥、京都産野菜の炭焼き、手羽先、鶏のソーセージ、鴨つくね、土鍋ごはんなど全10品(内容は時季により変わる)。清水焼など作家物の器で供される、趣向を凝らした料理が好評だ。「思ってもいないようなお料理が出てくるので飽きないし、いろんな調理法で食べていただけるので、楽しんでお食事してくださっています」と、スタッフの本西沙織さん。「素材ありきなので、こねくり回さず、素材本来の味に技術というか考え方を含めたものをプラスして表現するようにしています」と、料理長の秋山達行さん。京地どり、ななたに鴨、京赤地鶏、嵯峨野の野菜などの京都産食材を使っているが、鶏肉も部位ごとの特長を十分出せるよう心掛けているという。「独創的でインパクトのある料理をいっぱい作ってくれるのがいい」と、松島さん。お薦めは、開店以来の名物2品。「手羽先」は、鶏のスープやオイスターソースなどで味付けたフカひれを、手羽先にぎっしり詰めた人気メニューだ。「手羽先とフカひれがよく合うんです。揚げてあるんですが、そんなにしつこくなくて、どなたにも食べていただけます。お連れした方は、何これ、すごいっていう反応をされます」(松島さん)「鴨つくね」も遊びある一品。スパイスなどが入った鴨つくねの炭火焼は熱々のバルサミコソースをかけて供される。丹後の赤玉子の卵黄に絡めていただくと、ハンバーグのようなふっくらとした味わいに。「つくねが肉厚でジューシー。五感で楽しめる料理でインパクトがあります」(松島さん)カウンターに用意されたオリジナル薬味。お好みで鶏料理や野菜にふりかけて味わう。オリジナリティあふれるメニューを生み出してきた秋山さん。「鴨つくねのような演出は、お客さんが笑顔になったり、会話が弾んだりするきっかけづくりができるし、食事も楽しいかなと。焼き鳥は屋台から始まった食べ物なので、かしこまらず楽しいなって思えるようなものを表現したいですね」と語る。世界各地のものを揃えるワインは、プラス4500円でペアリングコースも楽しめる。時には日本酒カクテルや実山椒入りハイボールなどオリジナルドリンクも登場。松島さんが特に気に入っているのが、ホスピタリティの面だという。「僕にとって、どんなシーンでも対応できる安定感があります。例えばビールの泡に絵や文字を入れて出してくれたり、記念日にシャンパンをサービスしてくれたり、お客様に合わせた心遣いをしっかりしてくれる。接客も会話するタイミングなどその場の空気を読んでくれるのがいいですね。一見さんお断りの店だと思われがちですが、すごくフレンドリーで、ホスピタリティがあるので喜んでいただいていると思います」ビールの泡に文字や模様などを転写する「神泡」サービス。予約時などにお願いすれば、希望の図柄を入れて出してくれる。サプライズの演出にも。ここでは、サービスに関しては最低限の決まりごとがある以外は、各人が「お客様が喜ぶことをする」ということを方針にしているという。スタッフが皆「楽しんで帰ってもらいたい」という共通の意識を持って迎えてくれる。それが、松島さんの言う「いつ行っても飽きさせない」安心感につながっているのかもしれない。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■侘家古暦堂 祇園花見小路本店京都市東山区花見小路四条下る 祇園町南側 歌舞練場北側075-532-3355営業時間 11時30分~14時、17時分~22時(入店20時)定休日 無休https://www.wabiya.com/gion/
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2021.12.21
株式会社藤井大丸の社長が通う店「ぎをん 森幸」
■藤井 健志(ふじい けんじ)さん株式会社藤井大丸 代表取締役社長1978年京都生まれ。同志社大学経済学部卒業後、ソフトバンク(現ソフトバンクグループ)、あずさ監査法人を経て、2009年藤井大丸入社。2018年より現職。藤井大丸は1870年呉服商として創業。1935年に百貨店化。京都でより新しい価値の提案をファッション中心に行っている。店選びの基準は美味しくて居心地がいいこと。最後の晩餐はココ壱番屋のビーフカツカレー(チーズ、きのこ、オムエッグをトッピング)。風情あるロケーションも魅力。子供からお年寄りまで、幅広い世代に愛される京中華三条通から知恩院前へ、白川沿いに続く白川筋。しだれ柳の並木が風情ある静かなこの道に、古川町橋という石造りの橋がかかっている。比叡山・千日回峰行の行者がここを渡ることから、阿闍梨橋、行者橋とも呼ばれている。藤井さんお薦めの「ぎをん 森幸」は、その橋のたもと近くにある。いわゆる京中華と呼ばれる京都ならではの中華が人気の広東料理店で、親子3代で通うファンも。現在は2代目の森田恭規さんが腕を振るっている。藤井さんは、10年ほど前から年に数回は訪れているそうだ。「ちょうど社業に帰ってきたぐらいの時、友人に連れられて行ったのが最初です。いろんな会食の席や友人との食事の席で行くことが多いですね。比較的リーズナブルだし、京都らしいあっさり中華で何を食べても美味しい。箱も大きすぎず、場所的にも使いやすい環境にあるので、『今日は中華にしようか』という時によく行かせていただいています」森幸の創業は昭和30年。森田さんの父である先代が四条堀川で始めたのだが、そのいきさつがユニークだ。「先代は、前は染屋やったんですが、中華料理を初めて食べて、これやと思ったみたいです」そう話すのは、取材に対応してくださった森田さんの妻の直子さん。京中華を広めたのは中国人の高華吉という料理人で、森幸の先代はその高氏に弟子入りして腕を磨き、独立。4階建ての、宴会料理を専門にする店だったという。今の場所に移ったのは平成11年。前の店ではメニューをホテル仕様の料理にしたこともあったそうだが、創業以来の味に原点回帰しようと、場所を変えて再スタートしたという。明るい雰囲気の店内は3つの座敷とテーブル席の全37席。クラシックやジャズなど、森田さんセレクトの曲が、BGMとして流れている。ここには地元客を中心に幅広い世代が訪れ、常連には企業経営者も少なくない。藤井さんもいろいろな知り合いが通っていることをあとで知ったそうだ。「このへんには父方の親戚が結構住んでいて、父のいとこも昔から行っていたようです」と、藤井さん。「京都は狭い」と言われるように、京都では、偶然に出会った人も、たどっていくと自分の友人や知人につながっていた、ということがよくある。「藤井社長のおじさんが私の母の同級生で、よく食べに来てくれはるんです。京都はそんなんばっかりです。ええーっ、この方と一緒に来てはるの?という感じで。藤井社長もとてもお顔が広くて、京都のいろいろな方と来られます。東京のお客さんも連れてきてくださったりして、すごくありがたいです」と、直子さん。藤井さんにとってここは「肩ひじ張らずに美味しいものが食べたい時に、ちょうどいい店」。「町中華のような感覚」で通い、時には直子さんたちと他愛もない話をしたりしながら、仲間と食事を楽しんでいるという。多くの京中華の店がそうであるように、森幸の料理も、麻婆豆腐など一部を除きニンニクなどの香辛料は不使用。うま味調味料を使わず、鶏の頭だけを使ってだしをとるなど、手間をかけて手作りされるメニューは、やさしい味わいの中にも深みがあり、後口が重くならないのが身上。また、森田さんは、先代の味を守りつつ、東京の名店を食べ歩くなどして新たな美味しさを追求しているという。「味付けがやさしい感じでくどくなく、食べやすい料理が多いので、おばあちゃんからお孫さんぐらいの世代まで受け入れられると思います」(藤井さん)メニューは皮から手作りする一番人気の春巻き、砂ずりの天ぷら、酢豚、かに玉、チャーハンなどの定番に、里芋のふかひれスープ、よだれ鶏といった今月のお薦めが加わる。杏仁豆腐など手作りデザートも好評だ。ほかにおまかせコースもある。その時々で食べたいものをチョイスするという藤井さん。お薦めの「小えびの天ぷら」1100円は、小麦粉と片栗粉入りの衣がもっちりとして美味しい。「海老好きでエビチリやエビマヨもよく頼むのですが、これはあっさりした味付けで、おつまみに最適です」(藤井さん)こちらもよく頼むという「肉だんごの甘酢」1100円。揚げた肉団子とキュウリのシンプルな一品。ふっくらとした肉団子に程よい甘さの甘酢あんが絡み、いくつでも食べられる。種類も豊富な紹興酒。人気の甕仕込み「古越龍山」の5年物が飲みやすいとお薦め。料理と共に森幸の特徴といえるのが、店内の壁の絵。青蓮院門跡の襖絵など多くの作品を手掛ける壁画絵師、キーヤンこと木村英輝氏が、大胆な筆致と色遣いで孔雀と芙蓉の花を描いたもの。ちなみに、木村氏は直子さんの親戚だそうだ。「元気があってパンチのある絵なので、店の雰囲気をいい意味で盛り上げている気がします」(藤井さん)「キーヤンさんの絵とやさしい味わいの料理というギャップが面白く、食べ終わって外に出たらガラッと空気が変わり、ああ、こんな静かな落ち着いたエリアだったんだと、また現実に戻る。そのアンバランスな感じもいいところなのかなと思います」(藤井さん)京都の飲食店もコロナ禍の影響を大きく受けたが、そんな時期も多くの常連客に支えてもらったと、直子さんは話す。それも長年、誠実な味づくりとお客とのつながりを大切にしてきたからにほかならない。藤井さんが飲食店に求めるのは、「美味しさだけでなく、料理への思い入れやお客さんとのつながりを大事にして、いい関係性を結べること」だという。森幸もそんな理想に適った店といえるのだろう。予算は昼1100円~、夜3000~5000円。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■ぎをん 森幸京都市東山区白川筋知恩院橋上る西側556075-531-8000営業時間 11時30分~14時(LO13時30分)、17時~21時30分(LO21時)定休日 水曜
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2021.11.16
荒川株式会社の社長が通う店「京料理 およね」
■荒川 慶一(あらかわ けいいち)さん荒川株式会社 代表取締役社長1972年京都生まれ 東京育ち荒川株式会社は1886年創業。全国の百貨店で、和装小物や和にまつわる様々なものを扱う「さんび」と、パジャマとリラクシングウェア「Amour」「arakawa1886」、ライセンスブランド「PAUL & JOE」「DAKS」LIBERTY PRINT」「mila schon」「Paul Stuart」「MOOMIN」などを展開する。室町綾小路の京都本社の一階に、祖業の半衿専門店「荒川益次郎商店」と和小物の店「さんび堂」を運営している。店選びの基準は、プライベートでも接待でも楽しい時間を過ごせる店。最後の晩餐は、あん肝と度数高めの日本酒。細工も美しい八寸が人気。3代目主人が旬の素材で織りなす京料理を選り抜きの日本酒と「小学校時代の同級生がやっているお店で、本格的な京料理をおまかせコースで出しています。季節の野菜をしっかり取り入れているところが気に入っています。接待や先輩経営者の方との食事などで利用することが多いですね」(荒川さん)地下鉄四条駅から5分ほど。話題の飲食店などが集まる人気のエリア・綾小路通で昭和2年から営んでいるのが、「京料理 およね」だ。荒川さんの友人で3代目主人の中島弘道さんは、女将である母の悦子さんと主に二人で店を切り盛りしている。昔ながらの京料理に現代風の趣向も加えた季節の献立が常連客や観光客に好評で、女性の一人客の利用も多いという。「本当にオーソドックスな京都の料理屋さんという感じ。接待でも相手の方と親密になりたい時に利用しています」(荒川さん)京都らしい風情の落ち着いた店内は、1階に7席のカウンターと掘りごたつの部屋が一つ、2階はテーブルの個室3部屋がある。中島さんの代になり、看板を掲げて一般のお客にも来てもらうようになったが、もともとは接待を専門とする店で、室町の呉服関係など地元企業や団体と契約して料理を提供していたそうだ。「丸紅さんが京都にできた時、自社に来客用の食堂をつくるから、そこに入ってくれへんかと言われて専属で入るようになったんです。昼間はうちが食堂で料理を出して、夜は丸紅さんがここにお客さんを呼んで、接待されていました」と、中島さん。荒川さんが地元の小学校に通っていたのもそんな時代だ。「僕は中学から東京に行ったので、京都には小学校卒業までしかいなかったんです。小学校は1クラスしかなく6年間皆ずっと一緒で、仲が良かったですね」と荒川さん。中島さんとはよく互いの家に遊びに行ったという。「いろいろ遊びに連れて行ってもらったし、お母さんにもお世話になりました。僕は結構偏食だったんですが、おやつに出してもらって苦手なスイカが初めて食べられるようになったのをすごく覚えています」中島さんも、「ガク(荒川さんのあだ名)の家の裏に空地ができたので、皆で放課後、秘密基地を作ったりして遊んでいましたね」と思い出を語る。荒川さんがお客として初めて訪れたのは、京都に戻ってまもなくの25年ほど前。「今の妻と一緒に行ったと思います。美味しかったんですが、まだ大学を卒業したてで、あれっ、こんな高級な店だったの?と驚きました(笑)」と、荒川さん。いつもはカウンターで、中島さんたちと他愛もない話をしながら食事を楽しむという。「このへんをふらっと歩いていて出会って、『ああ、久しぶりやな』となって。それからちょくちょく来てくれるようになりました。カウンターでちょろっと食べて飲んで、『ほな』って言って帰る。そんな感じですね」(中島さん)「京都の食材を丁寧に調理して食べさせてくれるので、皆さんに喜んでもらえます。彼は一見チャラい感じですが(笑)、料理に関してはすごく真面目です」(荒川さん)中島さんは、京都で料理の修業を積んだのち、二十数年前に家業に入った。代々の味に中島さんの色が加わった料理は、繊細な細工野菜をはじめ美しい盛り付けにも定評がある。「父がやっていたのは枯れた料理が多かったから、もう少し華やかにしたいなと。うちの店には庭がないので、料理で庭を表現できたらと思ってやっています」(中島さん)昔から信頼関係のある錦市場の八百屋や魚屋から主に食材を仕入れ、その時々の美味しい旬の素材をコースに盛り込む。ここには一品もあるが、荒川さんたち常連の大半はおまかせを頼むという。中島さんの料理を象徴するのが、荒川さんお薦めの季節の味覚が詰まった八寸だ。箱庭に見立てた華やかな八寸は、最初に必ず出される名物的な一品。写真は秋の一例。温泉卵の味噌漬けの柿仕立て、からすみ、鴨ロース、菊かぼちゃ...などなど、一つひとつ手間をかけて手作りされた料理は味わい深く、満足度が高い。「この八寸を食べたくて来られる方も多いです」と、悦子さん。「野菜の炊き合わせも好きですね。細工された野菜が美しいです」(荒川さん)写真は10月~11月の「小かぶの旬菜鋳込み 菊花あん」。小かぶを箸で割ると、中から野菜や生麩が顔をのぞかせる。鮮やかな錦秋を思わせる一椀だ。「京料理は野菜を使ってなんぼ」という中島さん。野菜の扱いには特に思い入れが強い。定番料理にも一工夫施し、ここならではの味に仕立てている。希少なものにも出合える地酒は獺祭など定番3種に、旬の料理に合わせた5種が揃う。「彼は利き酒師で日本酒に詳しいので、おまかせで出してもらいます」と、荒川さん。ここでは20年ほど前から料理に合わせて日本酒を提供している。長く接待の店として多くの人をもてなしてきた同店。中島さんは、お客の顔を見て年齢や体調などを考慮し、素材の切り方を工夫したり、料理の内容や出し方を変えたりと、臨機応変に料理を提供しているという。ただ、そうしたきめ細かな気配りも、TPOに合わせた雰囲気作りも、当たり前のことをしているだけと話す。「彼もお母さんもこちらの都合もわかってくれているし、それに合わせた対応もしてくれる。それは簡単なようで簡単なことじゃないので、安心できますね」と、荒川さんも確かな信頼を語る。「お客さんには、笑って楽しんで帰ってもらえたら」と、中島さん。さりげなく温かいサービス、明るく気取らない人柄もファンの心をつかんでいるようだ。予算は食べて飲んで1万5千円~2万円程度。これからの季節は、甘鯛のみぞれ鍋やカニ料理がお薦めだ。撮影 竹中稔彦 文 山本真由美■京料理 およね京都市下京区綾小路通り高倉西入る神明町230075-351-2849営業時間 18時~22時定休日 日曜http://oyone.com/
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2021.10.21
株式会社リンクアップの社長が通う店「Sushi and Bar SPOT(スポット)」
■今井 雅敏(いまい まさとし)さん株式会社リンクアップ 代表取締役1966年生まれ1999年に「売れる・流行るスキーム」を考えるコンサルティング会社、リンクアップを設立。商品開発、商業施設開発、ブランドプロデュース等、幅広い分野にて活動を展開する。一年のうち360日は外食。最後の晩餐は、鮭のおにぎり。吟味した素材が自慢の品をリーズナブルに提供。海外VIPにも愛される穴場的寿司店祇園白川から新橋通を東へ進んだ雑居ビル内に、今井さんが接待などにもよく利用するお薦めの店がある。「アメリカで長年腕を振るっていた寿司職人がやっているお店です。とてもセンスのいい握りに付き出し、天ぷらなどがリーズナブルに味わえます。『こんなところにこんな店が?』と驚かれるんですが、東京や大阪などの高級店へ行き慣れている方も気に入ってくださいますね」(今井さん)スナックと見まがうような外観に意表を突かれるが、中は壁に竹をあしらった落ち着いた佇まいの空間だ。ジャズが流れるカウンター8席ほどのこの店を、店主の岡野信治さんが一人で切り盛りしている。店を始めたのは2010年の夏。「初めは外人さん向けにやっていたんですが、原発事故の影響で外国人観光客が全然来なくなって、日本人向けにシフトしたんです」と岡野さん。寿司店らしからぬ店名は、サンディエゴ時代の行きつけのバーからとったものだという。「あかんかったらアメリカへ帰るくらいの気で店を開いたので、看板にもロケーションにも凝ってなくて。店の外観も初め気にしていたんですけど、常連さんは皆知ってはるし、もうええかと思って」お客は企業経営者から芸舞妓、スポーツ関係、芸能関係、外国人などさまざまで、気取らない雰囲気のなか、岡野さんの寿司と軽妙なトークを楽しみに訪れる。「お客様をちゃんとお連れする時、何軒か行く合間にちょっとつまんで一杯飲む時など、いろんなシチュエーションで使い分けています」(今井さん)もとはフレンチの料理人だったという岡野さん。20歳の時、「京都から出たくて」知人を頼ってアメリカへ渡るが、フレンチの需要がなく、和食のレストランに勤めることに。そして、そこから意図せず寿司の世界に入ることになったそうだ。「店のオーナーから寿司職人が休みの日に入ってくれ、と言われてやったのがきっかけです。板前さんは日本から派遣されて来た人ばかり。僕なんか出所が違うから、誰も教えてくれない。仕方なく見よう見まねで覚えていきました。当時、日本はバブルの最中。ニューヨークの街は日本企業から来た日本人が大勢いて、お客さんの9割は日本人でした」と岡野さん。その後、アメリカで寿司ブームが起こり、岡野さんが握る寿司はアメリカ人からも多くの支持を獲得。日本に帰国するまで20数年間、東海岸や西海岸各地の高級店で活躍してきた。実は岡野さんは今井さんの中学・高校の同級生。この店で20数年ぶりに再会したという。「祇園に美味しいお寿司屋さんがあると以前から聞いていて、7年ほど前にお客様に連れて行っていただいたんです。そしたら、岡野くんがいたという(笑)。アメリカに行ったことを聞いてはいたけれど、帰国したことは知らずびっくりしました。僕がアメリカへ出張で行った時、日本人でアメリカ全土のいいお店にスカウトされている人気の寿司職人がいると聞いていたんですが、よもやそれが岡野くんとは思わず、ですね(笑)」(今井さん)メニューは本日のおまかせコース1万円を基本に、寿司やアテを外した3コースが加わる。アメリカで出していたような寿司はあえて入れていないという。「構えの立派な店なら2万円ぐらいはするようなお寿司が出てきて、とにかく安い。時々、本場のキャタピラーロールとかをお願いするんですが、さすがアメリカで一番人気というくらい、とても美味しくてお客様にも大好評でした」(今井さん)「今井社長は天ぷら好きなので、寿司ネタにできる新しいネタを天ぷらにして出したげて、寿司はちょこっと握って。あと巻きもんを食べはります。アボカドとウナギとかのコンビネーションが好きですね」(岡野さん)使用する天然魚は毎日中央市場で、その日のお薦めを吟味して仕入れる。「信頼できる筋から信頼できるものを指定して買っているそうです。お寿司はもちろん煮物、焼き物、揚げ物、何でも美味しい」と今井さん。今井さんお薦めの明石の煮だこは、柔らかく上品な味付け。刺身でも食べられる駿河産のマナガツオは塩焼きに。ふっくらとした旨味を堪能する。パリッと香ばしく仕立てたぐじのから揚げ。どの料理もシンプルな中に魚の美味しさがしっかり。「お寿司は赤身も白身も貝もすごく美味しい。塩加減が繊細だと思います」写真はまぐろのづけ、ヒラメの昆布締め、サバの昆布締め。種類は少なめだが酒は一通り楽しめ、有料でワインの持ち込みも可能。今井さんは、店の魅力は岡野さんの対応力の高さだと話す。「お寿司や料理のクォリティの素晴らしいものを出してくれるのはもちろんですが、それ以上に素晴らしいのが、友達でも、海外のVIPでも、僕の連れてくる人の所作などを見て、その時々に応じた提案をしてくれること。お客様の好みなどを慮る力がプロだなと思いますね。京都の高級料理屋と変わらないぐらいのことをしていただける」そんな今井さんの言葉に、「それを言ってもらえるのは一番うれしいですね。長年カウンターに立ってやっていたら、誰だって楽しくご飯食べてほしいじゃないですか。それが一番です」と岡野さん。誰を連れて行っても、期待に沿った対応力で満足して帰ってもらえるという安心感。今井さんにとって、心地よく、かつ心強い店なのだ。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■Sushi and Bar SPOT京都市東山区東大路新橋西入林下町427 東新橋ビル1F075-531-3780営業時間 18時~24時 ※予約が望ましい定休日 日曜、祝日※営業時間は状況により変更の場合あり。お店にお問い合わせください。
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BLOG京の会長&社長めし
2021.09.23
株式会社緑寿庵清水の社長が通う店「じき宮ざわ」
■清水 泰博(しみず やすひろ)さん 金平糖職人/株式会社緑寿庵清水 代表取締役社長創業1847年、伝統と一子相伝の技を守り続ける京都でただ一軒製造販売する、日本唯一の金平糖専門店老舗・五代目当主。初代より長きに亘り受け継がれた独自の製法や伝統を守りながら、父である四代目・清水誠一が意欲的に取り組んだ「素材を加えた味のある金平糖」を五代目がさらに種類を増やし、伝統と革新を融合させた金平糖は、全国菓子大博覧会でも数々受賞。「本物の味、色、形」を追求しながら、皆様に永く、広く愛されるよう、職人技を極めた金平糖作りに挑戦している。PL学園高校時代は野球部に所属し、選抜高校野球大会で戦後初のV2。その後、明治大学でも野球を続け、高校時代にオールジャパンに選ばれオーストラリアに遠征した時の縁から半年間、現地で野球を教えるという経験を得た。帰国後も社会人野球チームに所属し、引退と同時に30歳で家業を受け継ぎ、五代目を継承する。創業170周年を機に、東京・銀座に「銀座 緑寿庵清水」(2017年)を、京都・祇園に「祇園 緑寿庵清水」(2019年)と二店舗の直営店をオープンし、現在では約90種類の金平糖を手掛ける。時代のニーズに合わせ展望を広げ、金平糖の真髄を伝承すべく精進し続けている。http://www.konpeito.co.jp/外食は主に和食。最後の晩餐は、奥様が作る煮込みハンバーグと春巻き。見て、食べて楽しく、身体も心も元気に。思いを込め、趣向を凝らした心づくしの京料理「仕事関係の人や、家族と一緒によく伺います。子供たちもこちらのお料理が大好きで、家族揃ってファンですね。料理長の泉さんは、海外のシェフとコラボされるなど勉強熱心で、これからの人だとすごく注目しています」(清水さん)四条烏丸から西に進み、堺町通を少し北へ。右手の石畳の路地に佇む「じき宮ざわ」は、2007年に店主の宮澤政人さんが開業して以来、多くのファンをひきつけている京料理の名店。「ごだん宮ざわ」オープンに伴い、2014年から弟子の泉貴友さんが料理長として腕をふるっている。緑を望むカウンター8席のみの落ち着いた空間に国内外から人々が集い、泉さんの料理に舌鼓を打つ。清水さんも献立が変わる時期に合わせて訪れるという。茶懐石をベースにしたコースは、夜は15皿で構成され、アイデア溢れる季節の料理がお目見えする。「ちょうどいい分量で、お料理も『こういうなん、前にどこかで食べたな』っていうのがまずない。そこがすごいところやなあと。僕らもお菓子を作っていますけど、勉強熱心なところに共感します」(清水さん)清水さんと店との出合いは4年程前。山形の高木酒造とのコラボイベントに夫婦で参加したのが最初だったという。「十四代のお酒に合わせた料理をふるまっていただいたのですが、すべてのお料理が美味しくて、また若い料理長さんなのに発想力がすごいんです。『これとこれを掛け合わすの?』というようなお料理で驚きました」普通の和食の概念にとらわれない料理にすっかり魅了された清水さん。以来、訪れるたび、料理や泉さんとの会話を楽しみ、刺激を受けているそうだ。「彼の志のようなものがすごく料理に出ていて、それを見ていると、自分ももの作りに対して彼のような熱意を持ってやらなあかんなと、また原点に戻れる。ですので、行き詰まった時や何かあった時に行くと、何か閃くこともありますし、食しながら勉強しているような感じです」そんな清水さんに、ありがたいですね、と泉さん。「あれほどの方なのに学ぼうとされる姿勢がすごいし、僕のほうこそ勉強になります。また理想のご家族で、素敵ですよね。食べ方も含めて料理に向き合う姿勢を子供さんにしっかり教えられていて、食育に関しても素晴らしいなと思います」「泉さんはすごく優しい方ですが、芯の強さみたいなものも感じられる。自信を持ってすべてのお料理を出されていることが、ひしひしと伝わってきます」(清水さん)泉さんの地元・滋賀県長浜市は、昔から発酵文化が根付いている地。コースに発酵を利用した料理が入ることも少なくない。清水さんお薦めの「鮎とおかひじきとスイカ」は、8~9月の献立の一例で、炭火で焼いた上桂の天然鮎に、藻をイメージしたおかひじき、そして刻んだ発酵スイカをまとわせた一品。鮎の骨せんべいは自家製からすみと味わう。「どこにもない料理。スイカの皮を食べさせるというのにまず驚きます。酸味はあるけど苦味はなく、この時期には最高のものですね」と清水さん。やわらかなおかひじきの食感、発酵液のやさしい酸味で鮎の美味しさが一層引き立つ。こちらもお薦めの「車海老とトマト」。炭火焼きの車海老の上に、空気を含ませながら攪拌したトマトと、その分離液を凍らせたものをかけた清涼感ある一皿。殻ごと食べたように香ばしい車海老とトマトの甘味がこの上なく合う。「かき氷みたいにトマトがかかってるんです。『よくこんなん考えましたね』って、思わず泉さんに言いました」(清水さん)また〆に登場する釜炊きのご飯は、宮ざわの定番。同級生の実家で作られた無農薬米のご飯は、煮えばなからおこげまで三度に分けて供される。「お米の味の変化を楽しめます。手間がかかることをあえてやられているのが素晴らしい」(清水さん)ここでは器使いにも注目。写真は朽ち木を使った作家物の平皿と、約800年前のおろし皿。上質の葛で練った名物「焼胡麻豆腐」をはじめ、清水さんが家族で楽しみにしているという「薬膳鍋」、「手打ち蕎麦」など、テイクアウト商品も好評。また清水さんはサービスについて、「料理人の方が4、5名おられるんですが、誰に聞いても料理についてちゃんと説明できるのがすごいなと思います」と感心する。「僕は何でも皆に聞いていますし、作ったものを食べてもらい感想を聞いたりしています。自分だけでできているものは一つもないので」と泉さん。チームとして自然と料理への思いが共有されているという。泉さんは、自身の料理についてこう語る。「根本的に、ただ珍しいものを作ろうというわけではなくて、食材を一番美味しいと感じてもらえる調理法を求めています。見ても食べても驚きのある楽しい料理が日本料理にあってもいいんじゃないかと思っているので、基本の線は外さず、新しい技法などを取り入れながら違ったかたちの日本料理を表現していけたら」人を喜ばせたいということが、料理を始めた一番のきっかけという泉さんにとって、やはりお客の喜ぶ顔が原動力。食べる人の顔を思い浮かべながら献立を考えていると、アイデアが浮かぶことも多いという。「空間、しつらえ、料理のポーションなども含め、お食事を気持ちよく召し上がっていただけるように。そして、次の日からまた励もうと思っていただけるような料理を皆で目指しています」と、泉さん。その思いは清水さんたちにもしっかり届いているはずだ。「お店を出て四条通に向かうんですけど、その短い間に『あれ美味しかったなあ』とか、皆でしゃべりながら歩くんです。その時が一番幸せやなあ、と感じますね」(清水さん)予算は昼6000円、夜2万円程度。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■じき宮ざわ京京都市中京区堺町四条上ル東側八百屋町 553-1075-213-1326営業時間 昼 12時/13時45分の2部制 夜18時~20時(入店)要予約(2ヵ月前の一日から受付) 定休日 火曜https://jiki-miyazawa.com/#jiki※営業時間は状況により変更の場合あり。お店にお問い合わせください。
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BLOG京の会長&社長めし
2021.08.27
株式会社スコープ・ココの社長が通う店「はつだ」
■加納 圭悟(かのう けいご)さん 株式会社スコープ・ココ 代表取締役社長1979年 京都生まれ大学在学中に、ロンドン留学。その後、東京にてアパレル会社に3年勤務。2008年 株式会社スコープ・ココ入社2010年 X JAPAN YOSHIKI氏と「YOSHIKIMONO」を立ち上げる。2019年より現職。好きな食のジャンルは、肉系と和食。最後の晩餐は「はつだ」の薄切りバラと白ご飯。常連たちの〆のお決まり「薄切りバラ」をはじめ、店主の哲学が詰まった焼肉を「バラタレというメニューがあるんですけど、その味がすごく好きで。小学校の頃から現在までずっと食べています」(加納さん)洛北・修学院の住宅街の一角に立つ「はつだ」は、味にうるさい京都の社長たちが多数通う人気の焼肉店だ。叡山電鉄の修学院駅から5分ほど歩いたところにある。昭和55年に創業し、今年で42年目を迎えるが、加納さんはもう30年以上、家族で通っているという。「最初は小学校の時ですね。当時、僕はリトルリーグで野球をやっていたんですが、仲間のお父さんに最初に連れて行っていただいたと思います。試合終わりに父親や仲間の何家族かと行くことが多かったです。今は娘が生まれて親子3世代で行っています」と加納さん。友人や取引先などとの食事にも利用するという。時には、ここでリトルリーグ時代の友人、親戚などの知り合いとばったり、ということも。店の営業部長、武一誠二さんは、そんな加納さんを小さい頃から知る一人だ。「僕はここで30年になるので、圭悟くんのほうが年数は長いと思います。加納さんは、亡くなられたおじいさんの時から来てくださっていて、うちとはずっと家族ぐるみのおつきあいをさせてもらっています。圭悟くんは若い時からおしゃれやったね。今は家族で月1、2回は食べに来てくれます」「一緒に行く人は皆、絶賛してくれます。東京の方とかをお連れすると、すごく喜ばれて、また京都に来た時に寄っていかれたりします。ここのたれの味はなかなかほかにはないと思うので」(加納さん)3階建の店舗は、カウンターと掘りごたつ席を含む座敷があり、絶えず常連客たちで賑わう。中心部から離れた場所にありながら、わざわざ足を運ぶ人も。「うちは口コミで来てくれるお客さんを大事にしよう、というコンセプトでやっています。会社の社長さんやご家族連れほか、いろんな方が来られるし、僕らも誇りを持って働けています」と武一さん。また昔なじみの加納さんとは年齢が近いこともあり、よく冗談を言い合ったりするという。「圭悟くんは、東京の方も連れてきてくれはるし、お父さんと一緒に仕事の接待でという時もあります。人当たりがいいので、お客さんからも絶対好かれる人やと思います」「その日の一番いい肉を仕入れられていて、とても肉質がいいです」(加納さん)「いい肉をなるべく安く仕入れ、お客さんになるべく安く提供する」ことをモットーとしている「はつだ」。毎日業者に赴き、国産のメスの和牛の中から吟味して買い付けるという。その肉選びには妥協はなく、仕入れを任されるベテランの武一さんでも、時にはオーナーから叱られることもあるそうだ。写真は焼き用のレバーの皮をとる様子。肉は血合いや筋などがない部分を丁寧に成形していくという。ほかの常連と同じく、加納さんも頼むものは昔から大体決まっているという。「まずタンれもん醤油から始まってタン塩。そのあとに赤身へいって、その日のお薦めを出していただいて、あとはステーキやウルテ、最後はバラとご飯で〆るというのが基本構成です。だから、はつださんに通っている人と一緒に行くと、頼むメニューが違うので、新たな発見があって面白いですね」冒頭のコメントにある加納さんの大好物バラタレとは、「薄切りバラ焼」1400円のこと。細かく極薄に特別成形したバラ肉を甘辛い秘伝のタレを絡め、一気に焼き上げる名物。はつだといえば、和牛弁当が全国的に有名だが、実はこの弁当に使われているのが薄切りバラ焼。直火で焼いた肉は柔らかく濃厚で、脂の甘味、香ばしさが口の中に広がる。「オンザライスで食べるんですが、ゴマの葉に包んでご飯にのせて食べるのも好きです。バラタレに関しては、お店の人に焼いてもらうほうが圧倒的に美味しいので、常にお願いしています」と加納さん。焼きを頼むお客は多いそうで、「ほとんどのお客さんは、焼いてくれるのが当たり前のように『はよして、待ってるねんで』という感じで言ってきはります」と武一さん。薄切りバラ焼は、大根おろしかタレにつけて味わう。加納さんはタレ派だという。加納さんもお薦めの人気の「タン塩」1500円~。「山椒がかかっているのが京都らしいし、薄切りで口当たりがよく、食べやすいですね。ここは赤身は大根おろしのポン酢、ステーキはガーリックと和がらしなど、いろんな味の変化が楽しめるのもいいんです」と加納さん。「うちは、飲み物はできるだけ安くしてあげて、肉を堪能してもらうという考えなんです」と武一さん。希少な高級ウイスキーも破格の値段で提供している。写真は丹波ワイン製の「はつだワイン」各2500円。店では常連も一見も関係なく、同じサービスを提供することを大事にしている。「新しいお客さんが、うちの肉の出し方、店の雰囲気とかが自分に合うと思ったら、常連になってくれはりますし」と武一さん。そこからお客と店とのいい関係が作られていくのだろう。「これだけ通っているお店ってないですよね。自分の好みを知ってくれているし、体調や食べたいものも伝えやすいので、安心感があります」ちなみに加納さんは、東京出張時、よく伊勢丹で売っている和牛弁当を買い、新幹線の車内で食べるという。加納さんにとって、はつだの味はソウルフードといえるのかもしれない。予算は12000円~15000円程度。撮影 エディ・オオムラ/文 山本真由美■はつだ京都市左京区山端柳ヶ坪町17-3075-722-8179営業時間 17時~22時(LO21時30分)定休日 月曜
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