京の会長&社長めし
京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介していきます。
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2020.11.23
株式会社鈴木松風堂の社長が通う店「由兵衛(よしべえ)」
■鈴木 裕(すずき ゆたか)さん 1976年生まれ 京都生まれの京都育ち。1999年に鈴木松風堂へ入社し営業部へ所属。2012年常務取締役を経て2018年に5代目代表取締役社長に就任する。幼少期に学んだ少林寺拳法の創始者の教え「すべては人の質にある」を企業理念とし、初代からつづく紙管の製造販売や先代たちから受け継いだ紙容器の企画・製造販売、和紙雑貨事業の継承と改革に取り組む。人手不足の解消に人材協同組合を設立、社内物流の改善とともに新たに運送事業を展開している。 最後の晩餐は、家で家族と食べるしゃぶしゃぶ。世代を継いで愛される鱧・ふぐ料理が自慢の割烹。京都の風情の中で温かなもてなしを四条大橋の西に、西石垣(さいせき)通という短い小路がある。江戸時代、鴨川西岸に築かれた石垣の堤防を西石垣と呼んだのが名前の由来とされ、今は大分様変わりしたものの、京都らしさを感じさせる一角となっている。この中の一軒に、鈴木さんが通う老舗の割烹「由兵衛」がある。「夏の鱧と冬のふぐがメインですが、単品で季節の魚も出してくれるので魚が食べたい時は行くお店です。おいしくて雰囲気もいいので、接待などで使うほか、社員を連れて行ったり、友達や家族と行ったり、月に1度は利用しています。大将をはじめ大女将や若女将とも仲良くさせてもらっています」(鈴木さん)「由兵衛」は昭和10年創業。3代目主人の仲井雅之さんの祖父が一条戻り橋で仕出し屋を始め、昭和20年に今の場所へ。昭和30年代にふぐを扱うようになるまでは、すき焼きやうどんなどの定食を提供していたという。「まだ食材がない時代で、あるものでお客様に喜んでもらうというのが祖父の考えだったようです」(仲井さん)そして、父・芳信さんの代で、ふぐ・鱧料理を中心に筍、若鮎、松茸など季節の京料理を出すかたちになったが、初代の「お客様に喜んでいただくことが一番」との思いは今も引き継がれている。築100年以上の建物は、1階はカウンターに、小さなテーブルと小部屋、2階は大中小の部屋を備える。数寄屋造りの趣ある部屋は、大切な人との会食や接待などにもお薦めだ。鈴木さんとこの店との出合いは、12~13年前のことだという。「なじみの祇園のバーで、隣に座った大将と知り合い、お店に行くようになりました。実は祖父母が初見合いをしたのがここで、僕も小さい頃、連れられて行ったことがあったようです」(鈴木さん) 「鈴木さんは共通の友人も多く親しくさせていただいています。おばあさんたちが来られたのは初代の頃ですが、ご縁を感じます。僕のほうが年上ですが、話をしていても教えてもらうことが多く、同じ経営者としても刺激を受けています」(仲井さん)鈴木さんがよく利用するという2階奥の茶室風の小部屋。「仕事の商談など、少人数で真剣に話をするのにちょうどよい距離感で使いやすい。この部屋も気に入っている理由の一つです」(鈴木さん)新鮮で良質な素材をシンプルに活かした人気のふぐ・鱧料理。鱧は淡路島産、トラフグは下関や安乗などでとれた天然ものを吟味して仕入れる。「ふぐは骨回りがおいしい魚なので、骨がかちっとした2.5キロくらいのものを選んでいます」(仲井さん)ふぐ・鱧、京会席などのコースのほか、季節の一品もさまざま揃う。鈴木さんは酒のアテを多めに、コースにならった流れで料理を出してもらうそうだ。 鈴木さんの一番のお薦めは「鱧しゃぶ」(写真は12000円のコースより)。「いろんなところで鱧しゃぶを食べますが、ここはダントツだと思います。だしも骨から丁寧にとっていて本当においしい。連れて行った人にも好評で、シーズンになると皆行きたがります」(鈴木さん)「だしで食べていただきたいと考えているので、だしには特に気を遣っています」と、仲井さん。鱧のアラを炭火で焼いて煮出し、鰹節、鯖節、玉ねぎを加えてとった鱧しゃぶのだしは、クリアかつ余韻が残る味わいで、飲み干したくなるほど。淡白な鱧や京野菜、生麩などの具をバランスよく引き立てる。お好みで柚子胡椒を加えてもおいしい。鱧しゃぶの後には雑炊かにゅうめんを楽しめる。「希望される方にはハーフサイズで両方お出しすることもできます」と、若女将の尚子さん。12000円の鱧しゃぶコースに付く鈴木さんお薦めの「造り」。淡路の天然鯛、塩釜の中トロ、淡路の鱧の焼霜などの定番に、長崎の車エビなどその時々の鮮魚が盛り込まれる。これからの季節はやはりふぐ。特に白子炭火焼や焼きふぐが人気で、鈴木さんも鍋と共にお気に入りだという。自慢の「焼きふぐ」は、試行錯誤を重ねてできた自家製ポン酢とたまり醤油をブレンドし、山椒や七味を加えたたれで味付けしている。香ばしく、ふっくらと焼いた肉厚の身は、味わい深く、程よい酸味が重さを感じさせない。弾力のある皮の食感もたまらない。12500円からの天然活ふぐコースや単品で楽しめる。日本酒は、桃の滴、玉乃光、城陽などの京都の地酒のほか、十四代、〆張鶴など全国の人気銘柄も揃える。お酒が好きで、何を飲みたいかで店を決めるという鈴木さん。ここではいつも富山の「立山」を楽しむそうだ。京都の人々に長く愛されてきた同店。その家庭的な雰囲気に惹かれて通うファンも多い。「接客を担当する若女将は笑顔が素敵なべっぴんの奥さんで、すごく明るくて話しやすいのがいい」と、鈴木さん。その言葉に、「ありがとうございます。何差し上げよう(笑)」と、尚子さん。もてなしについては、部屋ごとにお客の雰囲気も異なるため、その場に合わせた対応を心がけていると話す。「鈴木さんのお部屋は明るく朗らかな感じ。私も楽しい雰囲気になるようお話をさせていただいています」鈴木さんは、京都の店の魅力は、「一度仲良くなれば、何回でも会いに行きたくなる雰囲気があるところ」だという。この店もまさしくそんな一軒といえる。予算は昼4000円、夜1万円くらいから。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■由兵衛京都市下京区西石垣通四条南入075-351-1053営業時間 12時~14時、17時~22時(LO)定休日 月2回不定休http://yoshibe.com/
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2020.10.09
株式会社g-zoneの社長が通う店「御料理 だんじ」
■荒木 雄一朗(あらき ゆういちろう)さん 株式会社g- zone 代表取締役1976年生まれ日本体育大学卒業後、本田技研工業株式会社に入社現ラグビーTOPリーグ Honda HEATに所属2006に現役引退後、退社。その後、独立しトレーナーとして京都市内を中心に活動する。「いつまでも健康で元気に人生を送るために全ての人々をサポートする施設を作りたい」という思いで2016年株式会社g-zoneを設立キッズからシニアまでがトレーニング、治療、リハビリ、スポーツ内科学、カウンセリングを受けられる施設 g-zone Performance Center を運営最後の晩餐は、赤身のステーキをレアで。天ぷらなど季節の和食と店主セレクトの酒を満喫。美味いもん好きが通う洛北の注目店食べることが好きで、これまで海外や地方を含め、多くの飲食店を訪れてきたという荒木さん。京都のお薦めの店に挙げるのが、大徳寺近くで2018年6月にオープンした「御料理 だんじ」だ。「僕がホンダでラグビーをやっていた時の同期に京産大ラグビー部出身の人がいまして、その同期の大学の後輩が始めたお店です。彼の下積み時代に同期を通じて知り合い、彼が働いている店にもよく行っていました。僕は京都に戻って独立してから、あちこちいいお店に足を運んでいますが、ここはその中でもおいしいと思えるお店。家族や友人、仕事関係など、3、4カ月に一度くらい通っています。京都らしいお料理がリーズナブルに食べられて、いろいろ話ができる大将がいて雰囲気もいいので、地方のトレーナーさんたちとの会食にもよく利用するんですが、皆さん喜んでくださいますね」(荒木さん)大徳寺前バス停からすぐの一軒家。カウンター8席、テーブル2席のシンプルかつ落ち着いた空間で、元ラガーマンらしい堂々とした体躯の店主・入口(いりぐち)誠さんが迎える。「荒木さんとは知り合って20年くらいになります。荒木さんは昔からおいしいものをよくご存じで、器までしっかり見てくださいます。いつも明るくて前向きな方で、周りにいらっしゃる皆さんも素敵な方ばかりです」(入口さん)熊本出身の入口さんは、大学卒業後、祇園のバー勤務などを経て和食の道へ。高台寺の和食店や出町柳の京料理店「西角」で腕を磨き、小料理屋の料理長を務めた後、独立した。7年近く勤めた「西角」のように、肩ひじ張らずに和食を楽しめて、長く地元で可愛がられる店にしたかったという。毎日市場で吟味した魚介、上賀茂や大原の野菜などを用いて仕立てるのは、四季を大切にした、オーソドックスでシンプルな料理だ。「ブランドや産地を問わず、その時のおいしいものをおいしく調理してくれて、おいしい食べ方で食べさせてくれる。いつもおまかせしていますが、僕たちの満腹感に合わせて、内容もうまく調整してくれます」(荒木さん)メニューは8000円(7品)と11000円(9品)のおまかせコースのほか、馬刺しや土瓶蒸しなどの一品を揃え、季節の一品を肴に一杯を楽しむこともできる。好き嫌いやアレルギーをはじめ、さまざまな要望にも可能な限り対応している。「季節の天ぷらを揚げたてで食べられます」と、荒木さん。「西角」仕込みの「天ぷら」は、これ目当ての人も多いというお薦めの品。綿実油と白胡麻油で香ばしく揚げた天ぷらを、天日干しした伯方の塩を炒って細かくしたものや、天だしで味わう。写真はアラカルトの盛り合わせの一例で、車エビ2尾と長崎の甘鯛、銀杏。コースでは車エビと季節の魚など3種が盛られる。荒木さんもお気に入りだという入口さん自慢の蒸し物。「シンプルに素材の味を楽しめます。油を使っておらず、あっさりしているので、たくさん食べられるのがいい」(荒木さん)毎年9月後半~10月頃は、丹波栗と丹波黒豆を使った「丹波蒸し」がお目見え。粟麩にのせた丹波栗の饅頭の、やさしい甘味とほくほく感に癒される秋らしい一品で、世代や性別問わず好評だという。 「僕はお肉が大好きなんですが、彼の出すお肉はすごくおいしい。脂が上品で全然胃もたれしません」そう荒木さんが絶賛するのが、熊本赤牛や京都の平井牛などを使った「ビフテキ」で、11000円のコースにも登場する(写真はアラカルト3800円のもの)。1時間低温調理したあと、焼き目を付けた赤身肉は、旨味と脂が凝縮された豊潤な味わいがたまらない。まずわさびと一緒に、次に熊本の甘露醤油をつけてと、表情の異なる味わいが堪能できる。甘い醤油をつけたビフテキは、土鍋ご飯と一緒に味わうのもお薦め。酒は自分がおいしいと思うものを選んでいるという入口さん。日本酒は、店の料理に一番合うという久留米の「渓」をはじめ、さっぱりとした味の酒を中心に常時5~6種を揃える。「僕は和食の時はほぼ日本酒ですが、その時の食事に合ったものをピンポイントでチョイスしてくれるので、それも楽しみにしています」 そう話す荒木さんに、 「荒木さんのようにしっかりお酒とご飯を楽しまれると、こちらも楽しいですよね。荒木さんが来られる時はついお酒を買ちゃうんです(笑)」と入口さん。ここには、「西角」時代からの常連を中心に、スポーツ関係、医師、大学の先生、自営業者など、舌の肥えた人々が訪れる。「彼はその場を楽しませる会話が上手で、どのお客さんにもいつも丁寧で、気持ちがいい。料理の味はもちろんですが、そういう居心地のよさも魅力だと思います」(荒木さん)もてなしで大切にしている点について、入口さんは 「お客様の表情や仕草から、苦手なものなどに気づけるようにしたいと思っています。その一瞬を見逃さなければ、料理を食べやすくしてあげたり、ご飯の残りを持ち帰りにしてあげたりと、いろいろできると思うので」 と語る。派手ではないが、細やかな心遣いを感じる誠実なもてなしに、お客は心おきなく食事の時間に浸れ、また訪れたいと思うのだろう。予算は夜1万円程。要予約のお値打ちランチも見逃せない。これからも注目の一軒だ。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■御料理 だんじ京都市北区紫野雲林院町22075-431-2052営業時間 17時30分~22時(LO21時30分)※ランチ(水~日)は前日までの完全予約制。12時~15時(LO13時)定休日 月、火昼
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2020.09.25
株式会社桂窯の社長が通う店「日本料理 櫻川(さくらがわ)」
■檜垣 良多(ひがき りょうた)さん 1976年生まれ 桂窯四代目1997年 寄神崇伯、母である檜垣青子に師事し、作陶を始める2000年 京都府立陶工訓練校成形科卒2001年 京都市立工業試験場窯業科卒2001年 株式会社桂窯入社2008年 裏千家学園卒2013年 桂窯 代表取締役になる桂窯入社4年目に一旦退社し3年間、裏千家学園にて茶の湯を学ぶ。現在は茶ノ湯道具を中心に作陶に励み、各地にて個展、グループ展を開催。最後の晩餐は、ハワイにあるベトナム料理店のフォー。木屋町で長く愛されているカウンター割烹で、細やかな仕事による四季折々のコースを木屋町通の起点、木屋町二条あたりは高瀬川沿いに歴史的な景観が残り、京都らしい風情が感じられる場所。その一角に立つのが、檜垣さんお薦めの「日本料理 櫻川」。舌の肥えた京都人が通う昭和53年創業の名店で、ここ出身の有名料理人も少なくない。代々料理人が店を引き継ぐかたちで、現在は、山本智史さんがオーナー兼三代目料理長として腕を振るっている。「僕は中学生の頃から行っているんですが、清潔感のあるいいお店です。とにかく料理がおいしい。年に2、3回、家族や友人となど、プライベートで利用しています」(檜垣さん) 店内は特注の檜製のカウンターに、小さなテーブル席が一つ。タイルの壁や美しく弧を描いたカウンターも印象的だ。料理は、昼はお弁当と7000円のコース、夜は2万円のコースのみ。素材は大原、修学院の農家などから入手する京野菜、明石や瀬戸内海を中心にかつぎの魚屋から仕入れる鮮魚など、季節の味覚を吟味。代々の味を踏襲し、過度に手を加えず、素材の持ち味を引き出したシンプルな料理を身上としている。正統派の日本料理に現代的な要素も加えた献立は、長年の常連客にも好評だ。「檜垣さんはご両親が先代の料理長の時からのお客さんで、ずっと来てくださっています。今はもうお互いが(店や家業を)引き継いでやる立場になっていますね」と、山本さん。家族に連れられ店を訪れていた檜垣さんだが、本格的に通うようになったのは高校を卒業してからだという。「中学・高校の同級生の前田くん(現「前田」店主)が、うちの母の紹介で『櫻川』に入ったこともあって、よく行くようになりました。当時料理長だった広崎さん(現「食工房ひろさき」店主)や兄弟子の山本さんにもすごくお世話になりました」檜垣さん自身、陶芸の修業を始めた頃でもあり、勉強の一環として店に通っていたそうだ。「器にどう盛り付けられるのか、料理を盛ってどんな見え方がするのかに興味があり、そういうことを研究したくて、なけなしのバイト代で料亭などいろいろなお店に行きました」と、当時を振り返る。 店と檜垣さんの関係は、単に料理屋とお客の枠に留まらなかったという。「僕を気遣って、広崎さんがいろんな器を作れと導いてくださったんです。特に思い出に残っているのが鱧しゃぶの器。うちの焼き物は衝撃に弱くて割れやすい素材なんですが、火にはすごく強い。だしを沸騰させてしゃぶしゃぶができるような器がほしいと言われて作りました。今もそれを定番メニューで出されています」(檜垣さん) この檜垣さんの器を使った一人用の「鱧しゃぶ」は、夏から初秋のコースに登場する人気の品。毎年これ目当てにたくさんの常連が訪れるそうだ。だしを張った器を熱し、煮立った状態で提供する。「うちとしては温かいおだしで鱧しゃぶをしてもらうので、器が熱を保つようにしてほしいわけです。それを檜垣さんにいろいろ試行錯誤してもらい、直火にかけて温められるような器を桂窯さんの楽焼の釉薬を使って作ってもらいました。この料理はこの器ができたから完成したといえます」と、山本さん。 檜垣さんもお薦めの「鱧しゃぶ」は、新玉ねぎの風味を利かせた特製だしに、淡路島産の鱧をくぐらせ、すだちを搾って味わう。檜垣さんが手掛けただしの器は、土鍋のように一旦温まれば余熱が持続するという。鱧を食べたら鱧のうま味や脂が溶け込んだだしを最後に堪能する。檜垣さんが更にお薦めの料理として挙げたのが椀物。「料理人の味は、だしに集約されている気がするんです。山本さんはものすごく真面目な人で、それが椀物のおいしさに現れていると思います」写真は9月の夜のコースの一例より、松茸や三度豆、柚子をあしらった「毛ガニのしんじょう」。ベースとなるのは利尻昆布と鹿児島産鰹を使った伝統のだし。鰹節を削ってだしをとり、香り高くバランスのいい味わいに仕立てている。 供される料理の器も楽しみの一つ。代々の料理長によって集められたさまざまな器には、名だたる作家の作品が見られる。日本酒は、料理に相性良しの酒が幅広く揃う。「お酒は山本さんがお薦めを選んで出してくれるんですが、どれも食事を邪魔しないお酒で美味いですね」(檜垣さん)「山本さんは根っからの板前でとても丁寧な仕事をされるので、食べていて安心感があるというか、ただただ美味いという感じです。京都で一番丁寧なカウンター割烹かもしれません」と、檜垣さんは「櫻川」の魅力を語る。その言葉に、「ありがとうございます。私としてはそれしかないので(笑)、そこを守りながらやっています」と、山本さん。そんな実直で丁寧な仕事ぶりは、もてなしにおいても同様だ。「お客さんが求められるものに対して、できる限りお応えしていきたいという思いでいます。カウンターなので、この食材はこうして食べたいと言われたら、コースでも臨機応変に対応しています。常連さんは皆そんな感じなので、常連さんばかりになると大変ですが(笑)、それが言えるお店があるとうれしいかなと思うので」予算は、昼5000円から、夜は25000円程度。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■日本料理 櫻川京都市中京区木屋町通二条下る上樵木町491075-255-447712時~14時(LO13時)、18時~22時(LO20時)休 日http://www.kyoto-sakuragawa.jp/
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2020.09.23
株式会社桂窯の社長が通う店「ピッツェリア イル・ピッコリーノ」
■檜垣 良多(ひがき りょうた)さん 1976年生まれ 桂窯四代目1997年 寄神崇伯、母である檜垣青子に師事し、作陶を始める2000年 京都府立陶工訓練校成形科卒2001年 京都市立工業試験場窯業科卒2001年 株式会社桂窯入社2008年 裏千家学園卒2013年 桂窯 代表取締役になる桂窯入社4年目に一旦退社し3年間、裏千家学園にて茶の湯を学ぶ。現在は茶ノ湯道具を中心に作陶に励み、各地にて個展、グループ展を開催。最後の晩餐は、ハワイにあるベトナム料理店のフォー。薪窯で焼く出来立てのナポリピッツァが評判。のどかな田園地帯の中の人気ピッツェリア「僕の中学時代の友人がやっているナポリピッツァのお店なんですが、味は一流です。もともと沖縄でお店を出していたんですが、それが京都に移ったこともあって、15年くらい行かせてもらっています。人情味あふれるシェフで、奥さんもいい方です。月2回ほど行きますが、いつも混んでいてなかなか入れません(笑)」(檜垣さん)檜垣さんお薦めの「イル・ピッコリーノ」があるのは、洛西・大原野。沓掛インターチェンジ近くの高台の、うっかりすると見落としそうな一軒家がそれだ。ここにはオーナーの金定(かねさだ)慎平さんが作る窯焼きピザを目当てに、地元の常連を中心に多くの人が訪れる。営業は昼のみで、特に週末は予約が取りにくいという人気ぶりだ。「檜垣とは中学が違ったんですが、共通の友人がいて仲良くなりました。沖縄にいた頃から店に食べに来てくれていて、今も家族と来たり、陶芸教室の生徒さんを連れてきてくれたりしています。僕のピッツァを好きでいてくれるのが、ありがたいですね」と、金定さんは話す。昔から飲食店を始める夢を持っていたという金定さんは、2005年にイタリア・ローマへ渡り、ナポリピッツァづくりを学び、2006年、沖縄の恩納村で「イル・ピッコリーノ」を始めた。そして沖縄で6年間営んだ後、京都に帰って2012年に再オープンさせたという。「母が自分のお店をするために購入していた一軒家が空くことになって、こちらに移ってきたんです」と、金定さんは説明する。京都に戻り、沖縄との水の違いに苦労しながらバージョンアップさせたという金定さんのピッツァ。イタリア産を含む2種をブレンドした粉と、イタリアの塩、水、ビール酵母を使用した生地を一晩寝かせたあと、イタリア製の石窯で薪を使って焼き上げる。「粉と塩と水とビール酵母。この4つが入ってナポリピッツァと呼べるんですが、粉が同じだったりすると、どうしても似た味になってしまう。それをどう自分なりのものにするか、常に考えているところです」と、金定さん。イタリアで出合った理想の味に近づけるためにいろいろ研究しながら、少しずつ変化を加えているという。民家として使われていた建物は、キッチンや廊下など一部を改装した以外はほぼそのまま。靴を脱いであがるスタイルで、知り合いのお宅を訪ねたようなゆったりのんびりとした空気感がまた魅力の一つになっている。 「生地がすごくおいしい」と檜垣さんが絶賛するピッツァは、レギュラーメニューと本日のおすすめピッツァを含め、20種ほど。一枚がとても大きくボリュームがある。「最初は皆さん、驚かれますね」と、金定さん。ランチタイムにはサラダやスープ、前菜など、ドリンクとミニデザート付きのセットと一緒に楽しめる。「うちは5人家族なので、ピッツァ3枚とスープセット5人前という感じで注文します。マルゲリータは必ず頼んで、季節のピッツァ、あとガッツリいきたい時はカルツォーネとか。ピッツァのほかにパスタが2種類あるんですが、それも美味いんですよ」と檜垣さん。写真は水牛のモッツァレラチーズを使ったトマトソースベースの「マルゲリータ・ブッファラ」1816円。定番のシンプルな組み合わせで自慢の生地を堪能できる。「トマトソースと生地の相性がよく、すごくおいしい」(檜垣さん)程よい塩気に旨味を感じる生地は、ボリュームがあるのにそれほど重さを感じさせない。ちなみに、店内で食べきれなかったピッツァは持ち帰ることができる。檜垣さんのもう一つのお薦めは、「クアットロフォルマッジ」1365円。モッツァレラ、ゴルゴンゾーラ、スモークチーズ、グラナパダーノの4種のチーズを使用し、濃厚な味わいが楽しめる。チーズ好きにはたまらない一品。こちらは金定さんお薦めの「気まぐれピッツァ2」1650円。モッツァレラ、ミニトマト、ピリ辛サラミ、バジル、グラナパダーノ、唐辛子、黒コショウなどを盛り込んだオリジナルピッツァで、「自分の好きなものを全部入れました」と、金定さん。かなりスパイシーでパンチの利いた味わいは、ビールのおともにもぴったりだ。 店では金定さんはピザ作りに専念し、沖縄出身の妻・明日香さんとスタッフがサービスを担当している。「うちの奥さんと喋るのを楽しみに来るお客さんもおられます。気取った店ではないので、自然な感じでお客さんと接したいというのはありますね。時間は限られているんですけど、ここに来てピッツァを食べてほっとしてもらえたらと思っています」と、金定さん。ここには若者からお年寄りまで、実に幅広い層が訪れるそうで、「たまにお客さんの平均年齢が60~70代という時もあります(笑)」と笑う。本格派の味わいと自然体の親しみやすい雰囲気で、世代を問わず愛されている実力店だ。予算は1500円程度。オープンから13時までは予約を受け付けている。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■ピッツェリア イル・ピッコリーノ京都市西京区大枝西長町6-42075-333-301811時~16時(LO15時30分) ※ランチ~14時30分(LO)休 月、月1回火https://www.facebook.com/PizzeriaIlPiccolino/
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2020.08.12
株式会社美濃与の社長が通う店「瀘川(ろせん)」
■長瀬 文彦(ながせ ふみひこ)さん 1973年生まれ法政大学文学部卒1995年中沢乳業株式会社入社2000年株式会社美濃与入社2008年同社代表取締役社長に就任京菓子原材料専門店、本年で創業118年を迎え、昨年原材料のきな粉を自家製造する専用工場を建設。 最後の晩餐は、奥様が作るミラノ風カツレツ。女性ファンも多数。自慢の麻婆豆腐など、手間をかけて作る本格中華を気軽な雰囲気で「ここは本当に日常使いで、昼夜問わず頻繁に行くお店です。小さくて街の中華料理屋さん的な感じなのに、本格的な中華を出されます。中心街から離れたエリアでこれだけのクォリティがあるのか、と驚くぐらいおいしい。隠れた名店だと思います」そう長瀬さんが絶賛する西京区樫原の「瀘川」は、阪急桂駅から徒歩約20分。樫原山陰街道交差点から西へ少し進むと、白壁に赤いひさしのある店舗にたどり着く。2006年にオープンしたこちらは、24席ほどある1階と、宴会用の2階座敷というこぢんまりとした店内で、店主の深谷信人さんが腕を振るっている。長瀬さんが店を訪れたのは十数年前のことだという。「友人から、ここにおいしい中華の店があるよと紹介してもらいました。担々麺と麻婆豆腐が圧倒的に美味い。地元のほとんどの人が知っているお店だと思います。僕は一人で行くこともありますし、家族と行ったり、友人と行ったり、また会社の宴会をしたりと、オールマイティーに使っています」そんな長瀬さんの言葉に、「ありがとうございます。私一人で作っているため、あまり表に出てお客様にご挨拶することができないのですが、気に入って来てくださり、うれしいです」と深谷さん。 西宮の有名四川料理店などで腕を磨いた後、中国・上海のホテルで単身研修するなど経験を積んだ深谷さんは、店を開くにあたり、大衆中華と高級中華の中間を目指したという。「高級中華に慣れていないお客様にも、うちの店を足掛かりに本格的な中華を知ってもらえたら、中国料理のファンも増えるんじゃないかと思い、いろんな味を揃えるようにしています」(深谷さん)メニューはアラカルトが主体で、地元農家から仕入れる季節の中国野菜など、地場の食材も取り入れながら、よだれ鶏やバンバンジーなどの四川料理を中心に、北京、広東、上海、など本場の味を生かした多彩な品を提供。既存の調味料に手を加えたり、調味料を自作したりするなど、手間を惜しまず自分の求める味に仕立てているという。そんな深谷さんの料理を目当てに、近所のビジネスマン、OLから、家族連れ、企業経営者まで、多くの常連客が訪れる。 この店の麻婆豆腐と担々麺が大のお気に入りの長瀬さんだが、もともと辛い物はあまり好きではないと話す。「僕は辛いのはまったくダメで、ここで好きになったんです。汗は出るし、お水を飲まずにいられなかったのが、だんだんおいしくなって。この2つは行くといつも頼んでいますね」実は、作り手の深谷さんも辛い物は苦手。けれど、そういう自分だから、苦手な人でもおいしく食べられる四川料理が作れるのではないかと考えたそうだ。長瀬さんお薦めの「四川麻婆豆腐」1241円も、そんな思いのもと試行錯誤の末に作り出した自信作で、自家製を含む3種の豆板醤を用いた、独特の奥深い味わいが魅力だ。刺激的な辛さだが、単調ではなく、辛さと旨味が重層的に感じられておいしい。「山椒がたっぷりですごく辛いのですが、コクがあってやみつきになります」(長瀬さん)「長瀬社長のように、辛いのが苦手だけどこれだったら食べられる、と言っていただけるのが一番うれしいですね。うちの麻婆豆腐は辛いですけど、店を出る頃には辛さが引いていると、皆さんおっしゃいます」(深谷さん)麻婆豆腐と並ぶ人気の担々麺は、白胡麻、黒胡麻、カレーなどがあり、中でも長瀬さんお薦めは「特製黒胡麻担々麺」730円。伝統的なやり方に則り、黒胡麻を一から摺ってペーストにしたものを使用し、トッピングの肉みそももちろん手作りという手間をかけた一品。黒胡麻の風味豊かで濃厚な旨辛スープと細麺との絡みもよく、何度でも食べたくなる味わい。既製品の練り胡麻を使わないため、胃もたれすることもないという。「後を引く辛さで、胡麻の風味とコクが最高。スープを白ご飯にかけて食べてもおいしいです」(長瀬さん)中国料理の枠にとらわれず、いいと思ったものは取り入れているという深谷さん。杏仁豆腐やパンナコッタなどの手作りデザートも用意し、女性を中心に好評。杏仁の実から作る「正式杏仁豆腐」426円は、ここの杏仁豆腐だけは食べられるというファンも。バニラビーンズをふんだんに使った写真の「パンナコッタ」389円も、まろやかでコクのあるパンナコッタに、カラメルの爽やかな苦味がぴったりでお薦めだ。この地でおいしい料理を提供し続け、週末はほぼ満席状態という人気ぶり。そんな地元で愛されているこの店だからこそ大事にしていることがある。「場所柄、お客様は通りすがりではなく、『瀘川』に来たいと思って来てくださる方ばかり。私もスタッフも、お客様に笑顔で来て、笑顔で帰っていただけるようなお料理と接客を心がけています。かしこまらず、笑顔で過ごしていただいて、来て良かったと思って帰っていただきたい。だから、お料理は少し時間がかかっても一品一品手を抜かず、しっかり丁寧に作るようにしています」(深谷さん)予算は昼900円~、夜2000円程度。要予約のコースのほか、予約不要のプリフィクスコースも楽しめる。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■瀘川京都市西京区樫原平田町14-30075- 757-4504営業時間 11時30分~14時30分(LO14時)、17時30分~21時30分(LO21時)定休日 水、月1回連休ありhttp://rosen.main.jp/※状況によって営業時間の変更あり。詳しくはお問い合わせください。
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2020.08.11
株式会社美濃与の社長が通う店「くいしんぼー山中(やまなか)」
■長瀬 文彦(ながせ ふみひこ)さん 1973年生まれ法政大学文学部卒1995年中沢乳業株式会社入社2000年株式会社美濃与入社2008年同社代表取締役社長に就任京菓子原材料専門店、本年で創業118年を迎え、昨年原材料のきな粉を自家製造する専用工場を建設。 最後の晩餐は、奥様が作るミラノ風カツレツ。全国の肉好き垂涎、近江牛ステーキの名店で、和牛本来の感動的なおいしさに出合う長瀬さんがお薦めとして挙げたのは、地元・西京区にある2軒。そのうち今回紹介する老舗ステーキ店「くいしんぼー山中」は、肉好きの間ではかなり知られた存在で、長瀬さんも約20年来のファンだという。「私が東京から京都に戻ってきた時に、うちの会社の社長だった父に連れて行ってもらったのが最初です。ランチで食べたハンバーグが衝撃を受けるくらいおいしくて(笑)。高級店なので頻繁には行けませんが、この地域でお肉といえばここという感じで、お昼を中心に父や家族と月に一度は行かせてもらっていますね。うちの遠方のお客さんに予約を頼まれることも多いです」(長瀬さん)千代原口交差点を少し南下した物集街道沿い。中心部から離れた立地ながら、京都はもちろん全国からお客が訪れる。オーナーの山中康司さんは、大学卒業後、ステーキ店などでの修業を経て昭和51年にこの店を開いた。店内は1階にカウンターとテーブル席、2階にもテーブル席があり、昔ながらのステーキ店らしい造り。気取った感じはなく、温かい雰囲気のなか食事が楽しめる。「美濃与さんはお父さんの代からのおつきあいで、40年ほどになります。長瀬社長はお菓子関係の会社の方と一緒に来てくださることもあります」と、山中さん。「お肉がとにかくおいしい。信頼できる肉屋さんからより良い質のお肉を仕入れられているので、お肉そのもののおいしさを堪能できます」(長瀬さん)「自分が食べたいもの、大事な人に食べさせたいものをお客さんに出したい。それにはちゃんとした食材を使わなあかんのです」そう話す山中さんが40年以上使い続けているのが、東近江の「マルキ福永喜三郎商店」が直営牧場で育てる未経産の近江牛だ。山中さんによれば、市場に出ている和牛の大半は、霜降りを作るためにビタミンコントロールを行い肥育されているそうだが、ここでは但馬牛を昔ながらの自然の飼育法で大切に育て、提供しているという。山中さんはその中でも38カ月肥育した肉を吟味して仕入れる。小豆色で自然なサシが入っているのが、本物の肉の絶対条件だという。「今の主流の育て方は牛にすごくダメージを与えるため、肉の脂も良くないし胃もたれするんです。でも、なるべく負担の少ない方法で健康に育てられたここの近江牛は脂の質が全然違います」と、山中さん。言葉の端々に、近江牛に対する熱い思いが伝わってくる。そんな山中さんとの会話も魅力だと語る長瀬さん。店では必ずカウンター席を選ぶそうだ。「マスターのお話が面白くて、お肉のことを語りだすと止まらないぐらい話してくださいます(笑)。お肉以外のことも詳しいし、お話を聞くだけでも楽しい。私たちも和菓子材料という食を扱う業界なので、そういうお話をカウンター越しに聞いて勉強させてもらっています」(長瀬さん)共に"食材がすべて"という考えを持つ者同士、いろいろ話が弾むようだ。丹精込めて作られる数々のメニューの中で、昼はハンバーグステーキ、夜はステーキのコースが人気だ。長瀬さんが昼に必ず頼むというハンバーグ(ランチ2800円)は、ここでしか味わえない逸品。ドーナツ状になっており、オーブンに2分ほど入れた後、中心に卵を落として再びオーブンで焼き上げる。生でも食べられるほど新鮮な近江牛に、淡路島産玉ねぎ、パン粉、塩コショウのみというシンプルさで、肉本来の味を引き立たせている。「お肉そのものもおいしいですが、半熟の目玉焼きとデミグラスソースをからめて食べるのがまたおいしくて。最後にスプーンで全部すくってご飯にかけて食べるスタイルも気に入っています。ランチに付くコーンスープとポテトもお薦めです」と、長瀬さん。その言葉通り、肉とソースととろとろの玉子の味のハーモニーがたまらなく美味。長瀬さんの夜のお薦めは、コースのメインで出てくるステーキ。「目の前でお肉を切ってくださるのを見ながら食べる雰囲気も好きです。いろんなソースで食べるというより、シンプルな味付けでお肉の味をストレートに出されていておいしい。よくお肉をたくさん食べると胃がもたれたりしますが、ここはそんなことが全然ない」(長瀬さん)写真は単品の最上特選近江牛ロースステーキ230グラム。コースでは特選近江牛140グラムが提供される。味付けは、塩コショウに香り付けの醤油を少々。絶妙に火入れしたステーキは、塩加減も上々で、柔らかく噛みしめるほどに優しい旨味と甘味が口の中に広がる。脂も驚くほどさらりとして、後口がとても軽い。「やっぱりお客さんに来てよかったと思って帰っていただくことは絶対です。だからおいしいと言っていただかないとあかんし、そのためにきちっとした食材を使ってきちっと仕事することが一番大事やと思うんです」と、もてなしについて語る山中さん。その信念のもと、時流に乗じることなく喜ばれる料理を追求しているからこそ、ファンは絶対的な安心感をもって遠方からでも通い続ける。「この二十数年、僕ら親子で通わせてもらっていますが、お店の雰囲気も今も一切変わらず、とてもアットホーム。カウンター越しに山中さんがいらっしゃる、その雰囲気もすごく好きなんです」(長瀬さん)予算は、ステーキコースで1万円~3万円ほど。昼はランチが2000円くらいから楽しめる。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■くいしんぼー山中京都市西京区御陵溝浦町26-26075- 392-3745営業時間 11時30分~14時(LO13時30分)、17時~21時(LO20時30分)定休日 火、第3月(祝日の場合は営業)
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BLOG京の会長&社長めし
2020.07.30
株式会社野村佃煮の社長が通う店「heich(エイチ)」
■野村 啓介(のむら けいすけ)さん 1969年9月生まれ。大学卒業後、ケンコーマヨネーズ株式会社に入社、その後株式会社野村佃煮へ入社。同社専務取締役、2014年に同社代表取締役社長に就任。最後の晩餐は、自分で漬けた梅干し入りの海苔巻きおにぎりと、ゆで玉子。どこか懐かしく、新しい。京漬物を巧みに生かした多彩な和洋の味に出会える京都を代表する名産品として、昔から高い人気を誇る京漬物。今回野村さんが推薦するのは、この京漬物を使ったメニューが楽しめると注目のバル「heich」だ。昨年12月9日、四条烏丸近くにオープンした。「京漬物『西利』の平井社長の弟さんが始めたお店。オーナーの平井君とはJC(青年会議所)時代からの知り合いで、オープン間もなくの頃にJCの仲間5人で訪れたのが最初です。メニューには漬物を使った料理があって、どれもおいしい。僕は新年会などの宴会の二次会で使うことが多いのですが、しっかり食事をする場合にもおすすめです」(野村さん)烏丸通沿いのビルの地下1階。カウンター5席、テーブル12席の小ぢんまりとした店内は落ち着きのある雰囲気で、くつろいで料理や酒を味わうことができる。その居心地の良さとオーナーの平井栄二さんがいる気安さもあり、野村さんにとって早くも行きつけの一軒になっているようだ。「野村社長には、よく数人のお仲間の方とご利用いただいています。探求心が旺盛で、知らないことはないくらい物知りのうえ、話し上手なこともあって、いつも皆さんの笑いが絶えないお席になっています。ご挨拶に伺った際も、逆に私のほうが楽しませていただいたり、教えていただいたりすることもあります」(平井さん)「西利」で飲食部門などを担当してきた平井さん。これまでの経験を踏まえ、「そのまま食べるだけではない、漬物のいろいろな楽しみ方を提案したい」と、自身の店を開いた。ここでは「日本人には目新しいがどことなく懐かしく、外国人にはなじみがある外見ながら、いつもと違う新しさがある」料理を目指しているという。メニューはアラカルト主体だが、予算に合わせておまかせコースを用意することも可能。京都の老舗イタリアン「フクムラ」出身のシェフが、京のもち豚と京漬物の炒め物、お漬物きんぴらといった自慢の漬物料理に加え、イタリア風串焼き、生ハム、刺身、パスタなど、和の要素も織り交ぜながら多彩なメニューを仕立てている。漬物料理といっても、漬物が前面に出るものばかりではなく、ポン酢やソースに入れたり、漬け汁をきんぴらに使ったりと、調味料として利用しているものも少なくない。「お漬物を使うことによって、味にコクや深みが出て、口当たりがやわらかくなるなど、料理が一層引き立つんです。洋食も日本人が食べてほっとするような味になっていると思います」と、平井さん。発酵食品である漬物は、旨味が豊富で素材の味を引き出してくれるのだという。人気メニューの「京赤地鶏としその実漬のトマト煮込み」800円(写真の漬物は奈良漬)は、ジューシーな鶏肉に絡むソースが深くまろやかな味わいの一品で、しその花の香りが和を感じさせる。 キタアカリを使った野村さんおすすめの「ベーコンポテトサラダお漬物タルタル」650円。タルタルソースにはキュウリのしば漬「むらさきの」を刻んだものが入っている。ソースは酸味控えめで、ほくほくとしたジャガイモの素朴な甘味や風味が楽しめる。漬物の食感がアクセントに。また、奈良漬けとその酒粕を使ったユニークな「奈良漬けバター」700円もおすすめだ。「レーズンの代わりに奈良漬けが入っているんですが、なかなかいけますよ」(野村さん)レーズンバター好きの平井さんの要望で生まれたこの一品は、奈良漬けのほどよい甘味と発酵バターの濃厚な味わいが好相性。ワインやウイスキーはもちろん、日本酒や焼酎などにもよく合い、持ち帰りを希望するファンの声も多いという。野村さんは、漬物料理以外では、イタリア風おでんの「ボリートミスト」や「地鶏のレバーパテ」などもお気に入りだという。「ワインもいろいろ楽しめます」と、野村さん。イタリアのほか、フランス、ポルトガルのものが中心で、3000円台の手頃なものから高級ワインまで、幅広く揃う。また専門店以外の個人店では珍しい「エノマティック」のワインサーバーを備えており、高級なワインをグラスで楽しめるのも魅力だ。グラスワインは600円~。プレミアムワインのグラスはその時々で内容や価格が変わり、1000円~。販売はしていないが、料理に使用している「西利」の京漬物がショーケースに並ぶ。「ここに来ると、JCの知り合いに会うこともよくあります」(野村さん)一番奥のテーブルは、野村さんが親しい仲間たちと心置きなく過ごすお決まりの席だ。一軒目にも二軒目にも使えて、予算は飲んで食べて4000~5000円というリーズナブルさもうれしい。「今は京都のお客様が中心ですが、常連客、観光客、どちらの方にも楽しんでいただける"大人の居酒屋"でありたいと思っています。今後は観光の方にももっと気軽に入っていただけるようにして、京都のいい思い出作りに少しでもご協力できれば」と、平井さん。オープンしてまだ半年余り。どんな新しい味やサービスに出合えるのか、これからも楽しみにしたい。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■漬物と料理と酒と... heich京都市中京区手洗水町650 四条烏丸スタービルB1F075-231-8181 営業時間 17時~24時(LO23時30分) ※しばらくの間、営業時間を短縮させていただいております。お手数ですがお電話にてお問い合わせください。定休日 日https://heich.owst.jp/
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BLOG京の会長&社長めし
2020.07.13
株式会社野村佃煮の社長が通う店「竹香(たけか)」
■野村 啓介(のむら けいすけ)さん 1969年9月生まれ。大学卒業後、ケンコーマヨネーズ株式会社に入社、その後株式会社野村佃煮へ入社。同社専務取締役、2014年に同社代表取締役社長に就任。最後の晩餐は、自分で漬けた梅干し入りの海苔巻きおにぎりと、ゆで玉子。幅広い世代から愛される、祇園育ちのはんなりやさしい味わいの広東料理仕事関係での外食が多いという野村さんがおすすめに挙げたのは、20年来のなじみの店という「竹香」。祇園・新橋通の橋のたもとにあり、芸舞妓から地元の家族連れ、観光客など、さまざまな人に長く親しまれている。京都には、「京風中華」と呼ばれるような独自の中華のスタイルがあるが、その先駆けともいえる一軒だ。「昔から会合などでよく行かせてもらっています。中華料理ですが、ニンニクとか八角とかは入っておらず、味もあっさりとしていてしつこくないんです。僕は本格的な中華らしい中華も好きですが、ここの中華料理もそれとは違ったおいしさがあります」(野村さん)創業は昭和41年。四条河原町の老舗広東料理店「芙蓉園」で修業した初代が、現在の場所で始めた。「まだ町場の中華料理屋が少なかった時代。私の祖母が祇園甲部のお茶の先生をしていて、芸舞妓さんたちが皆、食べに来てくれていましたし、この花街に根付くのも早かったようです」と、2代目で女将の永田由美子さん。両親が始めた店を引き継ぎ、料理長の夫・真司さんらと共に、その味を守り続けている。創業当時、お客の多くは祇園で夜の仕事をしている人々。「竹香」の料理のスタイルは、彼らのリクエストに応えるかたちで作られていったという。「お仕事前に来られるお客様から、においの強い野菜は使わないでほしい、香辛料を控えてほしいなど、いろんな注文があって。最初、父は『こんなんで中華料理はできひん』と思ったそうですが、ここで営業するのだったらと思い直し、それに合わせた料理を考えて作っていったんです」(由美子さん)1階はテーブルや小上がりの席で、アラカルト中心。2階は56名までの宴会も可能な座敷で、コース料理を楽しめる。贔屓客には企業経営者など地元の旦那衆も多い。「昔からJC(青年会議所)やロータリークラブなどのご利用が多く、会社のご接待や商談などに使われることもあります。野村さんは、JCの会合などでよくお見えになりますね。その時は宴会の対応があるのでゆっくりお話しはできませんが、プライベートでお友達と来られる時は、よくお互いの新商品の感想などを言い合ったりしています」(由美子さん)上品でやさしい味わいの竹香の料理は、1歳から90代まで幅広い年齢層に親しまれている。「離乳食が終わったぐらいの赤ちゃんが、ふかひれスープをご飯にかけて食べたりします。またご高齢の方も『ここだったら、お腹一杯食べても胃がもたれないから安心して来られる』と言ってくださいます」と、由美子さん。「皮のふわっとした柔らかい食感がいいし、素材の味がしっかり感じられて、ものすごくおいしい」と、揚げ物好きの野村さんが絶賛する「春巻き」1人前800円(写真は2人前)は、芸舞妓にも好評の看板メニュー。卵と強力粉を使った自家製の皮は、外側がパリッと、中はふっくらとした食感が絶妙で、ぎっしり詰まった豚肉、筍、椎茸、海老、カニなど野菜多めの具材の味もバランスがいい。サイズも小ぶりで、いくらでも食べてしまえる。「すぶた」1人前900円も、創業以来の代表的な一品。「あんにすごく透明感があって、さらっとしている。酸味も強くなくておいしいです」と、野村さん。小さく刻み、衣をつけて揚げた豚もも肉、カリフラワー、パイナップルのみというシンプルさ。まろやかな甘さのあんに肉の旨味が際立つ。この酢豚と春巻きは特にファンが多く、コースに入っていないとお客からクレームが来ることもあったそうだ。一品ではほかに蒸し鶏やふかひれスープなども人気だという。ガラナエキスを使ったすっきりとした甘さの「ダイヤモンドガラナ(ガラナ)」や「ダイヤレモン(サイダー)」などの珍しいソフトドリンクも、隠れた人気の品。「ガラナはビールのような色をしていて、昔はビールの代用品として飲まれる方もいらっしゃいました。『子供の頃からここでこれを飲むのが楽しみなんや』というお客様もおられます」(由美子さん) 「おもてなしについては、企業の方であれば、とにかく商談がうまくいくように邪魔をせず、緊張されている場合はその場の雰囲気を和らげるように努めています。ご家族で来られた時でも、ご自宅と同じようにくつろいだ気持ちで召し上がっていただけたらと思ってやっています」と、由美子さん。そうした温かみのある雰囲気もあってか、ここでは誕生日や結婚記念日など家族の記念日で使われることも多いという。「そのお家のお嬢様が成長されて、彼氏を連れてこられることもよくあります。『両親に初めて彼を紹介するので背中を押してください』と言われたりします(笑)」変わらない味と雰囲気と共に、ここでの食事が大切な思い出として刻まれているようだ。「ここはおいしくて雰囲気もいいし、サービスも申し分ない。値段もそれほど高くないのですごく使いやすいお店です。僕はあまり家族で外食をしないのですが、ここなら家族を連れてきてもいいなと思いますし、他府県からお客さんが来られた時にも使っていきたいですね」(野村さん)予算はアラカルトで大体3000円から。コースなら食べて飲んで6000円くらいから楽しめる。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■竹香京都市東山区橋本町390075- 561-1209営業時間 17時~21時(LO20時20分)定休日 火https://gion-takeka.com/
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