京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は株式会社g-zone社長の荒木雄一朗さんが通う日本料理店「御料理 だんじ」です。
■荒木 雄一朗(あらき ゆういちろう)さん
株式会社g- zone 代表取締役
1976年生まれ
日本体育大学卒業後、本田技研工業株式会社に入社
現ラグビーTOPリーグ Honda HEATに所属
2006に現役引退後、退社。
その後、独立しトレーナーとして京都市内を中心に活動する。
「いつまでも健康で元気に人生を送るために全ての人々をサポートする施設を作りたい」という思いで2016年株式会社g-zoneを設立
キッズからシニアまでがトレーニング、治療、リハビリ、スポーツ内科学、カウンセリングを受けられる施設 g-zone Performance Center を運営
最後の晩餐は、赤身のステーキをレアで。
天ぷらなど季節の和食と店主セレクトの酒を満喫。美味いもん好きが通う洛北の注目店
食べることが好きで、これまで海外や地方を含め、多くの飲食店を訪れてきたという荒木さん。京都のお薦めの店に挙げるのが、大徳寺近くで2018年6月にオープンした「御料理 だんじ」だ。
「僕がホンダでラグビーをやっていた時の同期に京産大ラグビー部出身の人がいまして、その同期の大学の後輩が始めたお店です。彼の下積み時代に同期を通じて知り合い、彼が働いている店にもよく行っていました。僕は京都に戻って独立してから、あちこちいいお店に足を運んでいますが、ここはその中でもおいしいと思えるお店。家族や友人、仕事関係など、3、4カ月に一度くらい通っています。京都らしいお料理がリーズナブルに食べられて、いろいろ話ができる大将がいて雰囲気もいいので、地方のトレーナーさんたちとの会食にもよく利用するんですが、皆さん喜んでくださいますね」(荒木さん)
大徳寺前バス停からすぐの一軒家。カウンター8席、テーブル2席のシンプルかつ落ち着いた空間で、元ラガーマンらしい堂々とした体躯の店主・入口(いりぐち)誠さんが迎える。
「荒木さんとは知り合って20年くらいになります。荒木さんは昔からおいしいものをよくご存じで、器までしっかり見てくださいます。いつも明るくて前向きな方で、周りにいらっしゃる皆さんも素敵な方ばかりです」(入口さん)
熊本出身の入口さんは、大学卒業後、祇園のバー勤務などを経て和食の道へ。高台寺の和食店や出町柳の京料理店「西角」で腕を磨き、小料理屋の料理長を務めた後、独立した。
7年近く勤めた「西角」のように、肩ひじ張らずに和食を楽しめて、長く地元で可愛がられる店にしたかったという。
毎日市場で吟味した魚介、上賀茂や大原の野菜などを用いて仕立てるのは、四季を大切にした、オーソドックスでシンプルな料理だ。
「ブランドや産地を問わず、その時のおいしいものをおいしく調理してくれて、おいしい食べ方で食べさせてくれる。いつもおまかせしていますが、僕たちの満腹感に合わせて、内容もうまく調整してくれます」(荒木さん)
メニューは8000円(7品)と11000円(9品)のおまかせコースのほか、馬刺しや土瓶蒸しなどの一品を揃え、季節の一品を肴に一杯を楽しむこともできる。好き嫌いやアレルギーをはじめ、さまざまな要望にも可能な限り対応している。
「季節の天ぷらを揚げたてで食べられます」と、荒木さん。「西角」仕込みの「天ぷら」は、これ目当ての人も多いというお薦めの品。
綿実油と白胡麻油で香ばしく揚げた天ぷらを、天日干しした伯方の塩を炒って細かくしたものや、天だしで味わう。
写真はアラカルトの盛り合わせの一例で、車エビ2尾と長崎の甘鯛、銀杏。
コースでは車エビと季節の魚など3種が盛られる。
荒木さんもお気に入りだという入口さん自慢の蒸し物。
「シンプルに素材の味を楽しめます。油を使っておらず、あっさりしているので、たくさん食べられるのがいい」(荒木さん)
毎年9月後半~10月頃は、丹波栗と丹波黒豆を使った「丹波蒸し」がお目見え。粟麩にのせた丹波栗の饅頭の、やさしい甘味とほくほく感に癒される秋らしい一品で、世代や性別問わず好評だという。
「僕はお肉が大好きなんですが、彼の出すお肉はすごくおいしい。脂が上品で全然胃もたれしません」
そう荒木さんが絶賛するのが、熊本赤牛や京都の平井牛などを使った「ビフテキ」で、11000円のコースにも登場する(写真はアラカルト3800円のもの)。
1時間低温調理したあと、焼き目を付けた赤身肉は、旨味と脂が凝縮された豊潤な味わいがたまらない。まずわさびと一緒に、次に熊本の甘露醤油をつけてと、表情の異なる味わいが堪能できる。
甘い醤油をつけたビフテキは、土鍋ご飯と一緒に味わうのもお薦め。
酒は自分がおいしいと思うものを選んでいるという入口さん。日本酒は、店の料理に一番合うという久留米の「渓」をはじめ、さっぱりとした味の酒を中心に常時5~6種を揃える。
「僕は和食の時はほぼ日本酒ですが、その時の食事に合ったものをピンポイントでチョイスしてくれるので、それも楽しみにしています」
そう話す荒木さんに、
「荒木さんのようにしっかりお酒とご飯を楽しまれると、こちらも楽しいですよね。荒木さんが来られる時はついお酒を買ちゃうんです(笑)」と入口さん。
ここには、「西角」時代からの常連を中心に、スポーツ関係、医師、大学の先生、自営業者など、舌の肥えた人々が訪れる。
「彼はその場を楽しませる会話が上手で、どのお客さんにもいつも丁寧で、気持ちがいい。料理の味はもちろんですが、そういう居心地のよさも魅力だと思います」(荒木さん)
もてなしで大切にしている点について、入口さんは
「お客様の表情や仕草から、苦手なものなどに気づけるようにしたいと思っています。その一瞬を見逃さなければ、料理を食べやすくしてあげたり、ご飯の残りを持ち帰りにしてあげたりと、いろいろできると思うので」
と語る。派手ではないが、細やかな心遣いを感じる誠実なもてなしに、お客は心おきなく食事の時間に浸れ、また訪れたいと思うのだろう。
予算は夜1万円程。要予約のお値打ちランチも見逃せない。これからも注目の一軒だ。
撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美
■御料理 だんじ
京都市北区紫野雲林院町22
075-431-2052
営業時間 17時30分~22時(LO21時30分)※ランチ(水~日)は前日までの完全予約制。12時~15時(LO13時)
定休日 月、火昼