京の会長&社長めし
京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介していきます。
-
BLOG京の会長&社長めし
2020.06.19
株式会社俵屋吉富の社長が通う店「太陽カレー」
■石原 義清(いしはら よしきよ)さん 1964年6月29日生まれ。京都府出身。同志社大学文学部卒。宝暦5年(1755)創業の京菓子司「俵屋吉富」の9代目当主で、2004年7月に代表取締役社長就任。(一財)ギルドハウス京菓子 理事、京菓子協同組合 副理事長、茶道裏千家淡交会 京都西支部 副支部長なども務める。最後の晩餐は、奥様の手料理の出汁巻き。「俵屋吉富 烏丸店」北隣にある「京菓子資料館」では、2020年6月18日~9月15日の期間、「世界のお菓子展」を開催。京菓子をはじめ日本の菓子に関するさまざまな資料や道具等を展示するほか、パネルなどで世界各国の郷土菓子についても紹介する。https://kyogashi.co.jp/shiryoukan/毎日通えるリーズナブルさもうれしい。ワイン好きにもお薦めの極ウマ欧風カレー日本の国民食ともいえるカレー。京都のカレー好きから多くの支持を集める一軒に、石原さんお薦めの「太陽カレー」がある。ソムリエの背戸昭宏さんが作る欧風カレーが大評判で、開店前から大勢が列を作る。 フランスの田舎の小さなレストランをイメージした店内は、白が基調のシンプルな内装にフランスの音楽が流れるおしゃれな雰囲気だ。石原さんはオーナーの背戸さんとは35年来の親友同士で、年5、6回訪れるという。「20歳の頃からのつきあいで、ワインブームの前から一緒にワインパーティーをして楽しんだりしていました。彼はワインを使ってカレーを作っているんですが、ワインのふくよかさが上手にカレーに生かされていて、おいしい。ワイン好きも納得の味だと思います。サービスも奥さんの対応が素晴らしいし、気に入らないのは30分並ばないと食べられないことぐらい(笑)。1人でも家族4人でも行きますが、家族からはいつも連れて行けと言われます」(石原さん)「石原君はもともとローターアクトクラブの仲間で、小学校の後輩でもあり、家族ぐるみで仲良くさせてもらっています。本当においしいものを毎日食べている社長さんが、うちのカレーをおいしいと言って食べに来てくれることが、うれしいですね」(背戸さん)「昔ながらの欧風カレーを今風にして、毎日でも食べてもらえて、ワインとも合うカレーを目指しました」そう話す背戸さんは、大手アパレルメーカー勤務を経て家業のブティックを営んでいたが、料理の仕事をしたいと、創作居酒屋「ばくばく」を開業。その後、15年続けた居酒屋をやめ、2013年11月にカレー専門店「太陽カレー」を始めた。「ワインとカレーという自分が好きな2つをくっつけて、お客様に喜ばれるものができないか、と思ったのがそもそものスタート。ワインには甘味や酸味、苦味など、いろいろな味のバランスがあり、ブルゴーニュワインと同じ味のバランスをカレーに応用できれば、2つがマリアージュしたかたちで食べてもらえると考えたんです」フレンチのソースの感覚でルーを作っているという背戸さん。赤ワインを使ったルーは、追い足してきたものを2日間寝かせ、当日の朝から4、5時間煮込むそうだ。「ルーもその日の天気や季節によって酸味や甘味などを調整しています」 米は「八代目儀兵衛」がカレー用に吟味した大粒の島根産きぬむすめ。白ワインとオリーブオイルを加え、パラパラになるよう固めに炊いている。ご飯一粒一粒にルーがまとわりついて、味が均一になるという。メニューはプレーンな「太陽カレー」550円(税込)を基本に、有機野菜、三元豚ロースなどをトッピングしたカレーが揃い、好みのカレーに追加のトッピング、ご飯の量、辛さなどを選ぶシステム。背戸さんは、女性には野菜を多めにしたり、お年寄りには食べやすい具材を増やしたりと、お客一人ひとりの顔を見ながら提供しているという。高級洋食店にも負けないクオリティながら、多くが1000円以下ということに驚くが、「安くておいしいのが毎日食べてもらうのには一番なので」と背戸さん。石原さんの定番は「太陽カレー」をご飯少なめ、ルー多めで。(写真:ご飯小盛はミニサラダ付き)「最初に甘味が来るけど、あとに辛さが残ってどんどん食べられる。やみつきになるカレーです」(石原さん)淡路島産玉ねぎなど野菜がベースのルーは、豊かなコクに甘味や辛味、酸味などがバランスよく感じられ、何とも美味。ルーをまとったご飯も食べ応え十分だ。もう一つのお薦め、彩り美しい「季節の野菜カレー」700円。大原の契約農家の有機野菜を使い、揚げる、蒸す、焼くなど、素材ごとに調理。どの野菜も甘味が濃厚で力強い。「大原の野菜がおいしい。家内が喜んで食べています」(石原さん)この店をオープンする前、背戸さんにとって忘れられない出来事があったという。「2012年に、石原君の誘いで『シモン・ビーズ』というブルゴーニュワインの生産者のところに滞在し、ブドウの収穫をさせてもらったんです。後日、その生産者の方々がイベントで来日され、うちの居酒屋へお見えになられて。その時に生産されたワインと一緒にカレーを試食してもらい、ワインと合うか尋ねたんですね。そしたら、これは絶対いけると。フランスの方においしいと言ってもらえたことは自信になりました。イベントも石原君が関わったもので、彼には感謝しています」店内には、その時に生産者に書いてもらった宝物のサインやブルゴーニュでの記念写真などが大切に飾られている。カレーに使用する南仏産ピノ・ノワールとシャルドネをグラスワインで提供(各500円)。「シモン・ビーズ」がその時々のスペシャルワインで登場することも。「お客様は高校生から高齢の方まで幅広く、年齢に応じた接客をしています」と、妻の優美さん。優美さんやスタッフの笑顔や温かく丁寧なサービスも人気の理由だろう。「常に仕事を楽しみながらおいしいものを提供することを大事にしています。そうすることで、お客様にも楽しい雰囲気を感じてもらえると思うので」と背戸さん。ワインへの愛とお客への細やかな心配りが詰まったカレーで、これからも多くのカレーファンを魅了していく。「ここの魅力は、やっぱりワインをカレーで表現しているところと、背戸君の人柄。それは太陽カレーにしかないものですね」(石原さん)撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■太陽カレー京都市中京区西大路四条東入ル ボイスビル2F075-311-0011営業時間 11時~14時(LO14時)※売り切れ次第終了定休日 日、祝、不定休あり(Facebookでお知らせ)https://www.facebook.com/taiyo.curry/
-
BLOG京の会長&社長めし
2020.06.04
株式会社俵屋吉富の社長が通う店「京の茶膳 シェ・ナカノ」
■石原 義清(いしはら よしきよ)さん 1964年6月29日生まれ。京都府出身。同志社大学文学部卒。宝暦5年(1755)創業の京菓子司「俵屋吉富」の9代目当主で、2004年7月に代表取締役社長就任。(一財)ギルドハウス京菓子 理事、京菓子協同組合 副理事長、茶道裏千家淡交会 京都西支部 副支部長なども務める。最後の晩餐は、奥様の手料理の出汁巻き。「俵屋吉富 烏丸店」北隣にある「京菓子資料館」では、2020年6月18日~9月15日の期間、「世界のお菓子展」を開催。京菓子をはじめ日本の菓子に関するさまざまな資料や道具等を展示するほか、パネルなどで世界各国の郷土菓子についても紹介する。https://kyogashi.co.jp/shiryoukan/中野シェフの熟達の技が冴える王道フレンチのコースに、宇治茶の世界が融合京都の繁華街、四条通沿いに、宇治茶の老舗「福寿園」の京都本店がある。地下1階、地上9階で、随所に京の伝統工芸が取り入れられたこのビルは、単にお茶を販売するだけでなく、京の王朝文化と宇治茶の文化に親しむための甘味処やレストラン、茶室なども備えている。今回、石原さんがおすすめの1軒に挙げたのは、その3階にあるフレンチレストラン「シェ・ナカノ」だ。実は、石原さんと福寿園の福井正興社長は、大学のクラブの先輩後輩の仲で、ここでは福井さんたち数人の仲間と食事を楽しむことが多いのだという。「福井君とは、彼が大学1年生で茶道部に入部してからのおつきあい。福寿園のレストランということで、オープン当初から年に数回レギュラー的に行かせてもらっています。パリの『マキシム』で修業されたシェフが本格的なフレンチを出されていて、その熟練された料理が味わえるのが、ありがたいですね。以前、淡交会青年部の卒業記念に、4階の茶室でワイン茶会というのをやらせてもらったことがあるのですが、その時もシェフにお願いして点心程度のお料理を作ってもらいました」(石原さん)落ち着いた雰囲気の店内は、人間国宝・羽田登喜男氏の友禅作品が飾られるなど、他のフロアと同様に京の匠の技が生かされている。「石原社長は、よく裏千家さんの会合がある時などにご利用いただいております。ソースがたっぷりある料理がお好きで、ご挨拶に行くと、今日のソースはどうだったと、感想を話してくださいます」と、2008年9月のオープン時から総料理長を務める中野鉄也さん。中野さんは、京都ホテルで10年間勤めた後、渡仏し、「ル・グラン・ヴェフェール」「ボーマニエール」「マキシム」などの名店で修業。帰国後は、京都「レストラン・リヨン」の料理長や銀座「マキシム・ド・パリ」総料理長を務めるなど、長年日本のフランス料理界で活躍してきたベテランシェフだ。「マキシム・ド・パリ」を定年退職後、第一線から退いていたが、京都本店の建設を進めていた福寿園の福井正憲会長(当時は社長)に乞われ、本店レストランの総料理長に就任した。「最初は甘味処のデザート作りを指導してほしいというお話があり、僕は料理しかできないからと断ったんです。そしたら会長が、それならレストランをやってくれということで、設計を変更してレストランを作ることになったんです」(中野さん)(写真提供:シェ・ナカノ)「シェ・ナカノ」の料理は、「フレンチと宇治茶のコラボレーション」がコンセプト。ひと月半ごとに替わるコースには、中野さんが極めてきた正統派のフレンチに加え、中に抹茶を入れた舌平目の詰め物など、宇治茶を使った創作メニューも盛り込まれる。ウェルカムティーから食後のお茶まで、コースを通じてフレンチとお茶との出合いを体験できる構成だ。「料理に日本茶を使うのは難しいんです。特に抹茶は火が入ると色が変わるし、香りも飛んでしまうので」と、メニュー開発について語る中野さん。新たな挑戦として仕立てるコース料理は、全体にあっさり軽めの味わいで、年配のファンにも好評だという。 コースは昼4000円~、夜6500円~。誕生日や記念日など、予算や要望などを伝えて特別なメニューを用意してもらうこともできる。「いつも料理はお店にお任せしているんですが、コースの組み立てもいいし、ちょうどお腹がいっぱいになるくらいの量を出していただけるのもありがたいですね」(石原さん)なお、器にはすべてオリジナルの京物を使用。季節に合わせて変わる絵皿の柄もお楽しみ。コースの始まりは、食前酒代わりの水出し玉露から。「盛り付けもきれいで、おいしい」と、石原さんが薦める野菜たっぷりの前菜。写真はその一例で、グレープフルーツの風味が爽やかな「海老とグレープフルーツのサラダ」。トマトを使った酸味のあるソースを添え、石臼でひく前の抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)を振りかけて。鴨川と柳と都わすれを描いた清水焼の皿が初夏らしい。「『お茶と料理』が合わさることで広がる楽しさ、マリアージュを味わっていただけたら」とマネージャーの山本さん。テーブルにはトッピング用に3種のお茶が置かれ、お好みで料理に入れて楽しむことができる。手前から煎茶、碾茶、抹茶。煎茶は肉料理、碾茶はスープ、抹茶はクリーム系ソースなどによく合うという。肉料理も、石原さんがこの店を気に入っている理由の一つ。「お肉の火の入れ方が絶妙で、どんなお肉を食べてもお薦めできます」写真は「国産牛フィレ肉 ペリグーソース」。フォンドヴォーにポルト酒などを入れて煮詰め、フォアグラやトリュフを加えた濃厚なソースで味わう贅沢な一品だ。「最後に抹茶のカプチーノが出てくるんですが、おいしいですよ」と、石原さん。食事の締めくくりには、シェ・ナカノオリジナルのブレンド宇治茶や抹茶のカプチーノなど、季節に合わせたお茶を小菓子と一緒に。6月は新茶が楽しめる。自分が食べて納得できる料理しか出さないという中野さん。60年のキャリアを経ても変わらず、真摯に誠実に料理と向き合い、挑戦を続ける。その原動力は、やはり多くのファンからの「おいしかった」の声だろう。「僕はいつもお客さんが食べ終わられたお皿を見るのですが、もう洗わなくてもいいくらいきれいなお皿が下がってくるんです。そこまでうちの料理を楽しんでもらったら、すごくうれしいですね」撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■京の茶膳 シェ・ナカノ京都市下京区四条通富小路角 福寿園 京都本店3F075-221-6173営業時間 11時30分~15時(LO14時)、17時30分~21時30分(LO19時30分)定休日 火、水 ※要予約(休業日、営業時間は状況により変更の場合あり)http://www.fukujuen-kyotohonten.com/3f/
-
BLOG京の会長&社長めし
2020.05.23
株式会社福寿園の社長が通う店「鮨嵩(すしたか)」
■福井 正興(ふくい まさおき)さん 1971年11月、京都府生まれ。同志社大学商学部94年3月卒業、同年4月株式会社福寿園入社。入社後2年間、農林水産省 野菜・茶業試験場にてお茶づくりの基礎を学ぶ。同社専務取締役営業本部長、同社代表取締役副社長等を経て2013年5月、同社代表取締役社長に9代目として就任、現在に至る。株式会社福寿園は、寛政2年(1790年)に福井伊右衛門が京都・山城に創業した宇治茶の老舗。以来、この地で「無声呼人」(むせいこじん/徳のある人のところには呼ばれなくても人が集まる)の家訓のもと、茶一筋に歩み続けている。伝統を守り育てる一方で、ペットボトル「伊右衛門」やネスレ「スペシャルT」の開発や海外展開など革新的な取組みによって日本の茶業界を牽引している。また、2011年には公益社団法人日本青年会議所の第60代会頭を務め、同年に発災した東日本大震災復興に尽力した。 お茶の販売店だけでなく、お茶づくり体験ができる施設やお茶を使った飲食店なども運営している。最後の晩餐は、分厚い赤身のステーキを。締めくくりは一碗の抹茶で。体験施設 宇治工房、CHA遊学パーク他http://www.ujikoubou.com/guide/index.html http://www.fukujuen.com/company/cha.html飲食店 京都本店3階「シェ・ナカノ」(お茶を使ったフレンチ)、茶寮 FUKUCHA(新感覚の宇治茶カフェ)他http://www.fukujuen-kyotohonten.com/3f/index.htmlhttps://fukucha-fukujuen.com/名物「なみだ巻き」など、天然魚を使った美味い寿司や一品をほろ酔い気分で楽しみたい「ここも本当に親しい人しか連れて行かないお店。元々錦市場の近くで営業されていて、最初に行ったのは、多分移転される前だったと思います。今は夫婦でやっておられるんですが、結婚された時に披露宴でスピーチしたことを覚えています。お寿司はいい素材を使っていておいしいし、気取っていないところがいい。少なくとも月一回は行っていると思います」(福井さん)普段から食事はほぼ外食だが、同じ店に行くことはあまりないという福井さん。そんな中からここで紹介していただいた2軒は、共にプライベートでも通っている数少ない店。とりわけ祇園にあるこの「鮨嵩」は、「唯一、一人でふらっと行ける」隠れ家的な存在だという。賑やかな四条通から大和大路通を南へ進み、一つ目の小路を入ったところの小さなビルの1階。主人の衣川芳知さんが、奥さんやスタッフと切り盛りする店は、8席のカウンターと、8席の小上がりのみの空間で、いつも地元の常連客や観光客で盛況だ。「福井さんとはもう15年くらいのお付き合い。最初は青年会議所の関係で来られたと思いますが、それから仲良くしていただいています。大きな会社の社長さんなのに、友達に会いに来るような感じで気楽に来てくださるのがうれしいですね。お顔が広いので、いろんな方を連れてきてくださいます」(衣川さん)京都市出身の衣川さんは、大阪の寿司店で約10年修業した後、1997年に寺町蛸薬師に「すし屋のやまたか」をオープンし、人気を博す。その後、祇園北側に移り、10年前からは店名を改めて現在の場所へ。ミシュランガイド2017ではビブグルマンに選ばれている。常連の大半は企業経営者や自営業者で、競走馬の馬主や騎手なども訪れるという。高級寿司店ばかりが集まるこの界隈で、1万円前後で楽しめるというリーズナブルさだが、使用するネタに妥協はない。毎日5軒ほどの業者から吟味して仕入れる天然ものが基本で、「高級店と遜色ないものを使っています」と、衣川さん。メニューはアラカルトのみで、日替わりの品書きから好きなものを頼むスタイル。割烹のように季節の一品も豊富で、常連の多くはホワイトボードにあるその日のお薦めから注文するという。これからのお楽しみはやはり鱧。鱧の落としのほか、予約で鱧の鍋や棒寿司も登場する予定だ。「お造りをはじめお薦めの一品をいろいろいただいてから、お寿司を頼みます。ここは握りも得意なんですが、僕は細巻きが好きでそればかり頼んでしまうので、握りまでいけない。その繰り返しで、もう何年も握りを食べていないんです(笑)」と、福井さん。創業以来の名物として有名なのが、「なみだ巻き」1/2本1900円。ネギトロを裏巻きにして、表面にわさびをたっぷり塗ったボリュームある一品で、福井さんも必ず頼むという。醤油をつけて一口で味わうのがお薦め。「抹茶ロールケーキのように、外側がほぼわさびになっていて、初めて行った人はびっくりします。不思議なことにそんなに辛くなくて、すごくおいしいんです」と福井さん。その言葉通り、口の中でトロの脂にわさびの辛みが中和され、とろけるような味わいに。ネギの風味も食欲をそそり、いくらでもいけそうだ。寿司ネタなどに使用する鮮魚は、産地を決めずにその時々のいいものを選び、米も毎年業者と相談しながら新潟、丹波、滋賀など、産地を変えているという。寿司屋では珍しい定番メニューの「かき揚げ」1260円も、福井さんお気に入りの一品だ。「揚げ物が好きなので、かき揚げは絶対頼みます。その季節のものを上手に食べられる感じです」(福井さん)写真は海老、ホタテ、玉ねぎ、三つ葉のかき揚げ。かき揚げの内容はその時期によって変わる。新鮮な旬の素材の旨味が詰まったかき揚げは、香ばしく、食べ応えも十分。 福井さんは、いつもカウンターで一品を肴に好きな酒を楽しむという。「ビールやハイボール、あと調子のいい時はなぜかあるテキーラを頼みます。大将もお酒が好きなので、店でよく一緒に飲みます。たまに飲みすぎて迷惑もかけることもあります(笑)」(福井さん)写真は店主お薦めの奈良の酒「春鹿」と、常連に人気のテキーラ「オルメカ」。寿司屋でテキーラを置いているというのもユニークだ。「テキーラはたまたま好きな友達が多いので置いているんですが、それを福井さんが見つけて飲まれるようになって(笑)」と、衣川さんは説明する。マナーが悪かったり周囲に迷惑をかけたりするお客には厳しいという衣川さんだが、信頼関係ができてしまえば、「こんな食べ方をしたい」といったわがままにもできる限り応えてくれる。そうしてお客と共に作り上げてきた温かく楽しい雰囲気も、ここでは欠かせない魅力となっているようだ。「大将は一見とっつきにくそうですが、非常に心優しくて人当たりが良いところが僕は好きなんです。僕が心を許せて、困った時に頼れるお店です」(福井さん)平均単価は8000円~1万円。たくさん飲む場合は1万5000円~2万円程度見ておく方がよいだろう。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■鮨嵩京都市東山区大和大路四条下る大和町21-1075-531-6010営業時間 16時~23時(LO22時) ※予約がベター定休日 不定休
-
BLOG京の会長&社長めし
2020.05.22
株式会社福寿園の社長が通う店「祇園245」
■福井 正興(ふくい まさおき)さん 1971年11月、京都府生まれ。同志社大学商学部94年3月卒業、同年4月株式会社福寿園入社。入社後2年間、農林水産省 野菜・茶業試験場にてお茶づくりの基礎を学ぶ。同社専務取締役営業本部長、同社代表取締役副社長等を経て2013年5月、同社代表取締役社長に9代目として就任、現在に至る。株式会社福寿園は、寛政2年(1790年)に福井伊右衛門が京都・山城に創業した宇治茶の老舗。以来、この地で「無声呼人」(むせいこじん/徳のある人のところには呼ばれなくても人が集まる)の家訓のもと、茶一筋に歩み続けている。伝統を守り育てる一方で、ペットボトル「伊右衛門」やネスレ「スペシャルT」の開発や海外展開など革新的な取組みによって日本の茶業界を牽引している。また、2011年には公益社団法人日本青年会議所の第60代会頭を務め、同年に発災した東日本大震災復興に尽力した。 お茶の販売店だけでなく、お茶づくり体験ができる施設やお茶を使った飲食店なども運営している。最後の晩餐は、分厚い赤身のステーキを。締めくくりは一碗の抹茶で。体験施設 宇治工房、CHA遊学パーク他http://www.ujikoubou.com/guide/index.html http://www.fukujuen.com/company/cha.html飲食店 京都本店3階「シェ・ナカノ」(お茶を使ったフレンチ)、茶寮 FUKUCHA(新感覚の宇治茶カフェ)他http://www.fukujuen-kyotohonten.com/3f/index.htmlhttps://fukucha-fukujuen.com/訪れるたび独創的な品々との出合いに心躍る。シェフが繰り出す食のエンターテインメント古美術店などが集まる新門前通に佇む町家の建物。玄関から更にガラス戸の中へ進むと、表の印象から一転、和モダンな空間に。オーナーの吉岡正和シェフが腕を振るうこの店は、2011年のオープンよりオリジナリティ溢れる料理で注目を集め、多くのファンを獲得してきた。福井さんもその一人で、気心の知れた人たちとよく訪れるという。「僕は食事に行っても自分のことを名乗らないんですが、ここは福寿園の社長であることも知ってもらった上で行ける数少ないお店。すごく熱心な料理人がいると、知人の紹介で行ったのが最初です。青年会議所の仲間が京都へ来た時や、誕生日祝いなどに行っています」(福井さん)「福井さんは1~2年目くらいから来てくださっていると思います。今は年4回ぐらいかな。大らかで面白くて、僕も大好きな方です」(吉岡さん)「鰻の寝床」を生かした店内は、8席のカウンターと個室が一つ。広々としたカウンターでは、キッチンのライブ感と共に食事ができる。吉岡さんは、一つのエンターテインメントとして食を楽しんでもらいたいと話す。「大々的に料理を作っているところを見て、会話しながら楽しんでもらう。レストランは非日常的な場所だと思っているので、うちでしか食べられないような料理を作っています」「人の記憶をはがして、うちの店の記憶を張り付けるくらい印象に残るような料理を提供したい」そう話す吉岡さんは、イタリアンの名店「カノビアーノ」の3店舗で8年半、腕を磨いたのち、1年のヨーロッパ修業を経て独立した。島根県から届く無農薬野菜をはじめ、全国の安全な旬の素材で仕立てる夜のおまかせコース12000円(税サ別)は、希少な牛トンビなどが登場するメインをはじめ、10品前後で構成。締めにカレーが出るなど、イタリアンの枠にとどまらない趣向を凝らした品々が並ぶ。「気に入っているのは料理のセンスと味。また、自分の好みも聞いてくれるし、料理の説明を聞きながらシェフとやり取りするのも楽しい」と、福井さん。吉岡さんも、 「福井さんは食べることがすごく好きな方で、疑問に思うことは聞いてくださるし、本当に楽しんで料理を食べておられると感じます」と話す。吉岡さんは、年に数回ヨーロッパ各国を巡り、現地の文化や料理、食材からインスピレーションを得ているという。「素材も技法も、他ではあまり体験したことがないものを取り入れて楽しませてくれる。たまに行きたい時に1週間休みだったりすることもありますが(笑)、その分、期待してしまいます」(福井さん)「海外へ行くと必ず新しい発見があり、それが料理にはまる瞬間が楽しい。常連の方も『次行ったら、また新しいもん食べさせて』と言ってくださいます」(吉岡さん)最近はスペインへ行くことが多いという吉岡さん。2018年にはバリャドリードであったタパスの世界大会に出場し、賞を獲得。また現地のレストランとのコラボなどさまざまな活動を行っている。コース内容は基本月替わりだが、中には定番のものも。福井さんも大好きだという「鰻と鶉卵の燻製」は、オープン以来のスペシャリテ。三河一色産の大ぶりの鰻と半熟の鶉卵を燻製し、燻製煙が立ち上るガラスの器で提供。燻製の香ばしさと玄米塩麹で味付けした鰻と半熟卵の旨味、組み合わせの妙を五感で堪能する。父親がかつて鰻の仲買人で、鰻のことも熟知している吉岡さんならではの一品だ。「他では食べられない料理。熱々の鰻と冷たい鶉卵を一口で食べるんですが、なんとも美味い」(福井さん) もう一つのおすすめ「245サラダ」も、野菜使いに長けた吉岡さんらしい定番の品。赤地に黒の皿に、生や焼き物、マリネ、フリット、ニョッキ、チップなど、多様な調理法で仕立てた約30種の野菜を、美しく盛り付ける。中には四つ葉のクローバーや女性限定のハートの花びらを忍ばせ、野菜の下には熟成発酵させた黒ニンニクのソースを。柚子の酸味とゴマを加えたソースは、香ばしく味噌のように深みがある。「盛り付けが立体的で、非常に華やかなサラダ。当社もレストランを運営していますが、遊び心や鮮やかな色使いなど、緑や茶色が中心のお茶の世界ではできないことを体現されていて、こんなふうにしたいなと、いつも刺激を受けています」と、福井さん。その言葉に、「うれしい」と吉岡さんも返す。「福井さんは否定から入らず、一旦自分の中に受け入れてくれるような方。作り手としてもやりがいがあります」床は一部ガラスになっており、地下のワインセラーが見えるように。こうした仕掛けも非日常の演出の一つ。ワインはイタリア、フランスを中心に約600本をストック。スペインで買い付けたものやシャンパンも充実。 「場所柄、緊張される方もおられるので、節度を持ちつつフランクに接して、居心地よく過ごしてもらうことを心がけています。今は料理がおいしいのは当たり前で、いかに楽しかったと思って帰ってもらえるかが大事。『楽しかった』に『おいしかった』も含まれると思うので、そこに全力を傾けたいですね」と、吉岡さん。そんな店の姿勢に多くの常連も信頼を寄せているのかもしれない。「料理を突き詰めていくシェフのように、よりお客様に喜んでいただけることを考え出さなければと、ここに来ると思わされます。料理やサービスはもちろん、そういうところも好きなのかなと思います」(福井さん)撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■祇園245京都市東山区新門前通花見小路東入中之町245-1075-533-8245営業時間 12時(入店)、18時~20時30分(LO)定休日 火、不定休http://www.gion-245.com/
-
BLOG京の会長&社長めし
2020.04.21
株式会社西利の社長が通う店「山家(やまが)」
■平井誠一(ひらい せいいち)さん 1967年京都生まれ。大学卒業後、山本海苔店に勤務した後、京つけもの西利へ入社。 取締役営業部長、代表取締役専務を経て2013年代表取締役社長に就任する。「旬 おいしく、やさしく。」をモットーに和食文化を大切に食卓に健康と笑顔をお届けすることを目標にしている。和食の基本である「ごはん」を美味しく食べてもらい、和食を楽しんで頂けるように「京つけもの西利」「酵房西利」のブランドを活用し、漬物だけでなく西京漬や総菜など様々な提案を行う。 また新たに「京都発酵食研究所」を設置し、これまで培ってきた西利の発酵食の知見と技術を活かして「発酵生活」や「乳酸発酵甘麹AMACO」などのブランドを活用して調味料、ドレッシング、スープなど、現代の食生活に即した提案も行う。 最後の晩餐は、宮川町「ポパイ」のレモンチャーハン。地元で愛される老舗居酒屋で、丹波地鶏を使った自慢の鶏料理ほかバラエティ豊かな味を普段、会合や会食でコース料理を食べることが多い分、プライベートではアラカルトで楽しめる店を選ぶという平井さん。その中でも今回お薦めの「山家」は、家族でよく利用する一軒だと話す。「僕は家で食事をすることが少なくて、たまに家で食べられるときは、逆に家族が外食をしたがるんですよ(笑)。それで鶏料理が好きなこともあって、近所にあるこの店に行き始めたんです。鶏料理がメインの居酒屋ですが、僕は居酒屋というより鶏料理の店だと思って行っています。料理はおいしいし、お店の皆さんも気さくで、いつも賑わっていますね。家族で外食しようとなると、一番に候補に挙がるお店です」(平井さん)「鶏料理以外にもメニューがいっぱいあって、お造りやアテ系のものなど、居酒屋的な頼み方をして楽しんでいます」(平井さん)「府立大学前」バス停前にある居酒屋「山家」は、1973年の創業。鶏肉専門店の飲食部門として営業していたが、その後、鶏肉販売をやめて飲食のみの経営となり、2010年に現在の店舗にリニューアルした。メニューは串焼きやたたきなど朝挽きの丹波地鶏の料理をメインに、魚介の料理や豆腐料理、サラダなど、旬の食材を使用した豊富な一品がリーズナブルに楽しめ、幅広い層から人気を集める。常連には平井さんのように2代3代で通う地元客のほか、府立大学、京都大学、大谷大学といった近隣大学の関係者、また学生時代を懐かしんで訪れる遠方の客も多く見られるという。「平井社長にはよくご家族で来ていただいています。まだ小さかったお子さんがもう大学を卒業されるくらいなので、最初に来られてから6~7年くらいになるでしょうか。今は娘さんと息子さんだけで来ていただいたりもして、本当にうれしい限りです」と、3代目店主の三原一恭さん。父が開いたこの店を、大学時代から手伝い、20代後半で叔父から引き継いだ。現在は奥さんやスタッフと店を切り盛りしている。「奥さんをはじめ、皆さん明るくていい人ばかり。雰囲気は家庭的なんですが、おしゃれでかっこいい」そんな平井さんの言葉に、三原さんは少し照れながら、「ありがたいですね。接客は家内が担当していて、仲良くさせていただいています。本当にいいご家族で、いつも和やかに食事をされている印象があります」と語る。カウンターとテーブル席、中庭を挟んだ奥に掘りごたつの個室を配したナチュラルモダンな店内は、京都工芸繊維大学の長坂教授の設計によるもの。ゆったり過ごせる雰囲気で、時にはサッカーやラグビーの試合の観戦イベントを行うことも。「お一人様からカップル、ご家族連れ、女子会など、いろいろご利用いただいています」と、三原さん。一人客用に料理をハーフサイズにしてもらうこともできる。カウンターの上には懐かしいレコードジャケットが。三原さんが好きだという80年代の洋楽も流れ、ノスタルジックな気分にさせる。食材は、鶏肉や鴨肉はもちろん、魚介も野菜も信頼を置く業者や生産者から新鮮で質のいいものを揃える。特に野菜は上賀茂・森田農園の賀茂茄子など、できる限り地のものを使用しているという。数あるメニューの中で創業以来の名物になっているのが、「肉の焼き加減やポン酢の味がいい」と、平井さんも必ずオーダーする「おらが焼き」820円。鶏もも肉一枚を天火で焼いたあと、炭火で軽くあぶり、おろしポン酢でさっぱりと仕上げる。皮はパリッと、身はジューシーで柔らかく、まろやかで少し甘めの自家製ポン酢と相性抜群。トッピングのネギと紅ショウガの風味や食感もアクセントになっている。平井さんがいつも締めに食べるという「鴨と水菜のはりはり鍋」2200円は、年中楽しめる人気の品。「2人前で出てくるので、皆で分けて食べます。おだしが最高においしい」(平井さん)九条ネギの甘さを引き立てるかつおのだしに、大阪・河内産の鴨肉をさっとくぐらせ、しゃきしゃきの水菜やキノコ、油揚げなどと味わう。柔らかく程よい脂と旨味の鴨肉に山椒の風味、だしがしみた油揚げがこれまた美味。「僕はあまり食べないんですが、鍋のあと雑炊にしてもらうこともできます」と、平井さん。ご飯ものでは、大葉とちりめん山椒を混ぜた「しそじゃこご飯」や、いろいろな具が入ったおにぎり「ばくだん」もお薦めだという。酒類も充実しており、日本酒や焼酎は、定番アイテムに加え、「今月の美酒」として月替わりのお薦めが登場する。写真はその一例で、石川の「五凛」、奥さんの出身地、愛媛の「京ひな 内子座」、京都の「蒼空」など。京都ではレアだという「京ひな」は、優しい香りとすっきりとした飲み口の純米吟醸。自家製鶏味噌を使った「焼き味噌」などの酒肴と共にぜひ味わってみたい。お客から帰り際に「おいしかった」と言われるのが一番うれしいという三原さん。その笑顔を見るために、創業以来の味と明るく温かな雰囲気づくりを大切にしている。「楽しくお食事をしていただいて、元気になって帰ってもらうのがうちのモットー。それには、お客さんの雰囲気を邪魔しないなど、ちょっとしたことに気づいてあげることが大事だと、スタッフにも厳しく言っています。気さくな感じの中でも、きっちりとしたサービスをしていきたい。ただ料理がおいしいだけじゃなく、明日への活力になるような店でありたいですね」撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■山家京都市左京区下鴨西本町7-3075-722-0776営業時間 17時30分~23時(LO22時30分)定休日 木 http://www.kyoto-yamaga.com/
-
BLOG京の会長&社長めし
2020.04.14
株式会社西利の社長が通う店「ぎおん 佐藤」
■平井誠一(ひらい せいいち)さん 1967年京都生まれ。大学卒業後、山本海苔店に勤務した後、京つけもの西利へ入社。 取締役営業部長、代表取締役専務を経て2013年代表取締役社長に就任する。「旬 おいしく、やさしく。」をモットーに和食文化を大切に食卓に健康と笑顔をお届けすることを目標にしている。和食の基本である「ごはん」を美味しく食べてもらい、和食を楽しんで頂けるように「京つけもの西利」「酵房西利」のブランドを活用し、漬物だけでなく西京漬や総菜など様々な提案を行う。 また新たに「京都発酵食研究所」を設置し、これまで培ってきた西利の発酵食の知見と技術を活かして「発酵生活」や「乳酸発酵甘麹AMACO」などのブランドを活用して調味料、ドレッシング、スープなど、現代の食生活に即した提案も行う。 最後の晩餐は、宮川町「ポパイ」のレモンチャーハン。吟味した素材で作る逸品の数々。わがままなオーダーにも応える懐の深さも魅力の鮨割烹 花街・祇園の南側。花見小路通を西に入った一角は、表通りの喧騒が嘘のように、落ち着いた雰囲気を漂わせる。平井さんが通う人気の鮨割烹「ぎおん 佐藤」は、そんな静かな小路沿いに立つ。「お寿司屋さんですが、お寿司以外のアラカルトメニューも充実しているのが気に入っています。焼き物、煮物、天ぷらなど、普通の和食割烹として成立するほど豊富にあって、しかもお寿司はとびきりおいしい。だから、お寿司のおいしい高級居酒屋のような感覚で使うことも多いです」(平井さん)店は築100年以上の町家を改装。1階は庭を望む白木のカウンター、2階は個室を備え、美味いものをよく知る人々が訪れる。「カウンターが好きなので、お客様か友人と、2、3人で行くことが多いですね。宴会のときは2階でおまかせを頼みますが、普段はカウンターで一品を楽しみます」(平井さん) 創業より寿司と割烹料理を中心としたスタイルで、アラカルトやコースのメニューを提供。お薦めの甘鯛の昆布締めや穴子などの寿司をはじめ、甘鯛と野菜のあんかけ、自家製からすみなど、選りすぐりの食材を使った品で楽しませる。春なら筍、ハマグリ、白魚など、季節物が定番に加わる。「京都の人は、お酒と一緒に一品料理を食べてから、最後にお寿司を頼まれることが多いですね。平井社長もお酒を飲まれるので、おつまみになるものをお出ししています」と、主人の佐藤龍幸さん。佐藤さんが店を開いたのは2007年。京都ホテルオークラの京料理店「入舟」で13年間腕を磨いた後、独立。2015年に店を切通しから今の場所に移した。平井さんは、ホテル時代から佐藤さんの寿司のファンだったという。「京都ホテルの改装で『入舟』に寿司カウンターができて、ホテルへ行く際はよく利用していたんです。数人いる板前さんの中でも佐藤さんの握るお寿司がおいしくて、彼が入る日を狙って食べに行っていました。それから独立されて、こちらに通うようになって。だから25年ぐらいのお付き合いになります」と、平井さん。佐藤さんも、「平井社長とは、ご結婚される前の頃にお会いしたのが最初です。お店を出す際、ご連絡を差し上げていなかったんですが、店が雑誌に載ったのを見て来てくださいました。以来、本当に可愛がっていただいています」と、振り返る。佐藤さんは、お客から品書きにない料理を注文されることも多いという。「急に親子丼作って、とかいわれる方もおられます(笑)。今はお店主導のところも多いですが、うちはお客さんのわがままやご要望は、できる限り聞いてあげたいと思うんです。」そうした"お客様第一"の姿勢は、ホテル時代から変わらない。即興でお客を満足させる料理に仕立てられるのも、佐藤さんの技術とセンスあってのことだろう。「何を頼んでもはずれがない」と、平井さん。店で必ず頼むのが、炙った煮穴子で仕立てる「つまみ穴子」3500円。「穴子をキュウリやたくあんと一緒に巻いて食べさせてくれます。食感や風味の違うものがうまくミックスされて、トータルでおいしい。それも技ですよね」(平井さん)穴子はかつぎの魚屋から仕入れる明石の300グラム以上のものを使用。肉厚で脂がのったとろけるような煮穴子、キュウリ、たくあん、大葉、海苔のバランスが絶妙で、至福の味わいを楽しめる。一切でも満足度が高い逸品だ。お店の定番の一つ「トロたく」1300円も、平井さんお決まりのメニュー。この日のトロは和歌山産。とけるようなトロの甘味とたくあんの程よい塩気のコンビネーションが抜群で、お酒が進む。平井さんは、その日の気分で日本酒か焼酎を楽しむという。日本酒は宮城の「日高見」や静岡の「初亀」、群馬の「龍神」など、純米酒や純米吟醸を中心に常時15~16種揃える。メニューにはお客の要望から生まれたものがいくつかある。その代表的なものが、平井さんが「たまらなくおいしい。締めに必ず食べます」と薦める「牛肉しぐれ丼」1800円だ。黒毛和牛を使った一品のしぐれ煮に、ネギやミョウガ、胡麻、卵黄をトッピングした丼で、柔らかなしぐれ煮の甘辛さに卵黄のまろやかさが加わり、豊かな味わいに。ファンが多いのも頷ける。「佐藤さんとは冗談ばかり言い合っています。長い付き合いなので、気兼ねが要らず、居心地がいい。あれだけおいしい料理を出されるのに、気取っていないのも気に入っているところです」(平井さん) 店のもてなしについて、「常連の方もそれぞれ食べるリズムやスタイルが違いますから、それを把握して、スムーズにお出しできるように準備しています」と、佐藤さん。堅苦しさを感じさせない雰囲気のなかで、好きなものを思い思いに楽しむ。そんな食事の心地良さも、細やかな心配りから生まれているのだろう。「一緒に行った人は皆、喜んでくれて、お客さんになっていかれます。中には僕より頻繁に通う人もおられます」との平井さんの言葉に、「ありがたいですね。これからも、気持ちよく食事をしていただき、帰るときにまた来たいと思っていただける店でありたいと思っています」と、佐藤さん。その巧みな料理の技やお客に寄り添うもてなしの心で、更にファンを増やしていくに違いない。予算は15000円~20000円程度。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■ぎおん 佐藤京都市東山区祇園町南側570-118075-531-8811営業時間 17時~21時(入店) ※要予約定休日 月 http://www.gion-sato.com/
-
BLOG京の会長&社長めし
2020.03.19
株式会社ウンナナクールの社長が通う店「ビリキナータ」
■塚本 昇(つかもと のぼる)さん 株式会社ウンナナクール代表取締役社長1977年生まれ。大学卒業後2000年に福岡の百貨店、株式会社岩田屋に入社。その後2003年に株式会社ワコール入社。生産部門や商品営業部、米国駐在を経て2015年より販売部長として株式会社ウンナナクールに出向。2017年より現職。株式会社ウンナナクールでは『女の子の人生を応援する』というブランドミッションを達成するべく既存の下着屋さんとは一線を画したブランディングを展開している。最後の晩餐は、かつて下鴨にあった中華料理店の焼きめしと酢豚。焼きめしに酢豚をのせて味わうのが最高。自慢の魚料理からパスタまで、生産者の思いを繋ぐ愛情いっぱいの料理に心躍る「すごく雰囲気のいい素敵なレストラン。まだ行き始めてから期間は短いのですが、大好きなお店です。何を食べてもおいしいですし、お店の方がとても優しくて、家族で気に入って利用しています」(塚本さん)塚本さんが今回推薦するイタリア料理店「ビリキナータ」は、大宮交通公園近くの閑静な住宅街にある。つい見過ごしてしまいそうなマンションの1階に、オーナーシェフの齊城(さいき)庸平さんが2016年11月にオープン。イタリア語で「いたずら」を表す店名の通り、シェフの遊び心溢れる料理がリピーターを増やしている。ミシュランのビブグルマンに掲載されるなど、その実力は折り紙付きだ。京都の料理店でシェフを務めていた齊城さんは、独立にあたり、地元であるこの地を選んだという。「街中ではなく辺鄙なところでやりたかったんです。『あそこに行きたいな』と思って来てもらえるような店にしたいという思いがあったので」コンセプトは"普段使いできるけれど、ちゃんとしたおいしいものが食べられる店"。大きな黒板メニューが目を引く店内は、齊城さんやスタッフが醸す温かな雰囲気の中、幅広い層が食事を楽しんでいる。塚本さんが最初に訪れたのは2年程前。家族に小さい子供がいる場合、行く店は限られてしまうが、塚本さんも例外ではなく、子供連れで行ける店を探していたという。「下の子が生まれたばかりの時で、行けるお店が近所になかなかない。おいしいイタリアンのお店を探していたところに、友人がここなら子供も行けるよと、フェイスブックに上げていたんです。その内容がとても魅力的で、電話をして行きました。偶然シェフが僕の幼馴染と知り合いで、歳も近くて。また、シェフにもお子さんがおられて、子供が泣いたり汚したりすることにもすごく寛容で、感じよく接してくださったんです。何を食べても衝撃的においしいし、家内といい店を見つけたなと話していました」と、塚本さん。以来、誕生日などの家族の行事にもよく利用しているそうだ。「塚本さんは、お客さんのSNSを見て気になってくださって。そこからですね。今では塚本さんのお母さんもよく来られます。塚本さんは、お子さんとお絵描きをされたりして、本当に仲が良くて。僕も子供が4人いて子供好きなので、お子さんとお話ししたり、奥さんと情報交換したりしています」と、齊城さん。自身の経験から子供連れでも通える店にしたかったという。カラフルな椅子の色も子供たちが選んだそうだ。メニューはアラカルトが中心。その日入る天然物の魚介や大原の有機野菜ほか、全国から集めた新鮮な食材を使った季節メニューが定番と共に用意される。「生産者さんがちゃんと作られたものを、食べる方にしっかり届けることを意識して調理しています」と、齊城さん。ラクレットチーズと旬野菜のオーブン焼き、寒ブリのレアカツなど、独自の感性で仕立てた品々が黒板に並ぶ。「何を食べてもおいしいので、つい頼みすぎるんです(笑)。メニューにないものも、こんな食べ方もできますという感じで作ってくれます。子供用に料理をアレンジするなど、フレキシブルに対応してもらえるのもうれしいですね」(塚本さん)塚本さんお薦めの「トマトのピーチマリネ」650円。白ワインをベースに桃の風味を加えたマリネ液にミニトマトを数日漬け込んだ一品で、甘く爽やかな味わいが人気。「フルーツのような味ですごくおいしい。子供も大好きでよく食べます」(塚本さん)マリネに使うフルーツは季節によって変わるそうだ。「肉料理もおいしい」と塚本さん。鴨やラムなどのほか、知人の猟師から届く鹿や猪の肉を使った料理もお目見えする。写真は美山の鹿肉を使った「鹿肉の低温ロースト」2980円。新鮮な鹿肉を熟成させて旨味を出し、43度程度でゆっくり加熱してから表面を焼いたものを、バター風味のフランボワーズのソースと。しっとり柔らかく仕上がった鹿肉はまったくくせがなく、上品な甘味と旨味、ねっとりとした食感が楽しめる。「生ハムやパスタも必ず注文します。特にパスタは固めのゆで方が僕の好みにドンピシャなんです」(塚本さん)実は齊城さんはパスタが好きでイタリア料理を始めたそうで、パスタにもファンが多い。「麺を早くお湯から上げてソースで煮込みながら作っていきます。お好きな方は2~3皿食べられますね」と、齊城さん。赤エビのソースのパスタや自家製からすみのパスタが人気だ。豊富な自然派ワインも魅力で、料理に合わせて提案してくれる。「グラスワインを頼むと3~4種類持ってきて、説明しながら的確に薦めてくれるのでありがたいです」(塚本さん)ここではしっかり食事をするほか、食事帰りに立ち寄ってワインとパスタで締める、などの使い方をする人も多い。「表の雰囲気から入りにくいという方もおられますが、僕もお話しするのは好きですし、リラックスしていろいろ食べていただけたら」と、齊城さん。お客は地元を中心とした常連が大半で、塚本さんのような企業経営者も少なくない。料理のおいしさはもちろん、気張らず食事が楽しめる雰囲気やホスピタリティも、そうした人々から愛される理由だろう。予算は食べて飲んで7000円~1万円程。春はサヨリや鰆、山菜などの素材が登場予定だ。撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■ビリキナータ京都市北区紫竹上緑町5 グリーンハイツマークⅠ 1F075-492-7775営業時間 17時~23時定休日 日https://birichinata.gorp.jp/
-
BLOG京の会長&社長めし
2020.03.10
株式会社ウンナナクールの社長が通う店「クレープメゾン モック」
■塚本 昇(つかもと のぼる)さん 株式会社ウンナナクール代表取締役社長1977年生まれ。大学卒業後2000年に福岡の百貨店、株式会社岩田屋に入社。その後2003年に株式会社ワコール入社。生産部門や商品営業部、米国駐在を経て2015年より販売部長として株式会社ウンナナクールに出向。2017年より現職。株式会社ウンナナクールでは『女の子の人生を応援する』というブランドミッションを達成するべく既存の下着屋さんとは一線を画したブランディングを展開している。最後の晩餐は、かつて下鴨にあった中華料理店の焼きめしと酢豚。焼きめしに酢豚をのせて味わうのが最高。アットホームな雰囲気の中でゆっくり食事やデザートを。親子4代が通うクレープの老舗一口食べるだけで幼い頃の記憶がよみがえる。誰にでもそんな思い出の味はあるものだ。塚本さんにとって、この店のメニューがそんな存在かもしれない。地下鉄国際会館駅から10分ほど。宝ヶ池公園近くの街道沿いに、「クレープメゾン モック」はある。マスターの鳥居逸夫さんが妻の幸子さんと切り盛りするクレープの名店だ。「正確には覚えていませんが、幼稚園か小学校低学年の頃には行っていたと思います。母がマスターと知り合いで、以前は北山にあって家から近かったので、よく家族で行っていました。今は自分の家族と行くことが多いですね。家内も子供も大好きなお店です」(塚本さん) 幼少期から塚本さんを知る幸子さんは、塚本さんのことを"お兄ちゃん"と呼ぶ。「お兄ちゃんのお母様はマスターが独立する前からのお客様で、お母様のご両親からお兄ちゃんのお子さんまで、親子4代で来ていただいて長いお付き合いです」「ゆっくり時間をかけて食事をしてもらえたら」と、幸子さん。店内はカウンターとテーブルのあるゆったりした空間で、周囲の緑を眺めながらくつろぐことができる。お客の大半は常連で、塚本さん同様、親や祖父母の代から通う人も多いという。メニューは、自慢のバタークレープなどの多彩なクレープやガレットを中心に、スパゲッティ、自家製リンゴジュースやバナナジュースなど、豊富に揃う。「何を食べてもおいしい。僕はマロンとショコラのクレープとハンバーグスパゲッティが好きで、行くと必ず食べます。ナポリ風のスパゲッティもおいしくて、よく家内が真似をして家で作っています」(塚本さん) 創業は1976年。逸夫さんはクレープ専門店を開くために、京都にあったクレープの店で2年ほど修業。その後、幸子さんや息子さんと共に1カ月半かけてパリやブルターニュ地方などフランス各地を巡り、本場のクレープ作りを学んだ。「いろんなところのクレープやガレットを食べて、作り方を教えてもらいながら勉強しました。それを日本風にアレンジして店を始めたんです」と、幸子さん。しかし、京都にまだ専門店はなく、クレープのこともあまり知られていない時代。当初は説明するだけでも大変だったという。「クレープを含めメニューのほとんどが家庭料理。家庭のお母さんが作るようなやり方で作っています」と、幸子さん。料理がシンプルな分、地鶏の卵やスイスのグリュエールチーズ、特注のそば粉など、食材に気を遣い、無添加で作っている。写真は塚本さんお薦めの「自家製ハンバーグスパゲッティ」1500円。昔ながらの炒めたスパゲッティにハンバーグとチーズがのってボリューム満点。アンチョビとスモークオイスターの旨味が利いたスパゲッティ、ふっくらジューシーなハンバーグはどこか懐かしい味わいで、何度も食べたくなるおいしさだ。クレープは、油をひかず、鉄板の熱だけで焼いている。そうすることでやわらかく仕上がるという。塚本さんの大好物の「マロンクレープとショコラクレープ」1200円は、ラム酒が香るふんわりとした生地をマロンとチョコの甘く濃厚なクリームと楽しむファンの多い一品だ。「昔はテイクアウトもあって、子供の頃、病気で寝ていると親が買ってきてくれて、うれしかった思い出があります。僕はマロンとチョコを混ぜて食べるんですが、あまりにおいしすぎて、罪悪感を覚えます」(塚本さん)実はこのクレープ、塚本さんのリクエストで生まれたものだという。「最初はメニューになくて、マロンとチョコを組み合わせたものをオーダーされていたんです。食べてみるとマロングラッセのような味になっておいしくて。それで定番メニューにすることにしました」と、幸子さんは振り返る。塚本さんもよく頼む「テンベジサラダ」900円は、上賀茂産などの旬の野菜が10種類以上入り、食べ応え満点。さっぱりとした味わいのドレッシングもよく合う。入口近くの大テーブルを、塚本さんはよく利用するという。 世代を継いで愛されているこの店だが、店を閉めていた時期があった。逸夫さんが65歳になったのを機に、沖縄へ移住。しかし、知人もいない地での生活になじめず、6カ月で京都に戻ったという。「京都で3年ほどゆっくりしていたんですが、周囲の友人たちは現役でいるのに、自分たちは何をしてるんだろうと思って。それでできる範囲でやってみようと、2015年5月に宝ヶ池で再開しました」と、幸子さん。塚本さんは、その知らせをフェイスブックで知ったという。「お店がなくなって寂しい思いをしていたところに、僕の先輩が再開されたことを書いていたんです。それで、『やったーっ!』と思って食べに行きましたね」「お客様や周りの方に恵まれて、今やらせていただいています。『ありがとう、おいしかった』と言ってもらえると、やってよかったなと思います」と幸子さん。二人にとって、塚本さんたちお客との出会いがやりがいになっているという。「お母様の時代からのお客様が結婚してお父さんになって来られる。その人の成長をずっと見させてもらっていますので、それに感動してまたやろうという気持ちになります。お兄ちゃんも子供時代からのいろんな思い出が、うちのクレープの味に乗っているのだと思います。それをおいしいと思ってもらえる空間でお店をできるのは、本当に幸せです」撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美■クレープメゾン モック京都市左京区岩倉幡枝町1260075-712-3908営業時間 11時~19時定休日 火(祝日は営業、翌日休)※飲み物だけの利用は不可
- ALL
- - 料亭割烹探偵団
- - 食知新
- - 京都美酒知新
- - 京のとろみ
- - うつわ知新
- - 「木乃婦」髙橋拓児の「精進料理知新」
- - 「割烹知新」~次代を切り拓く奇想の一皿~
- - 村田吉弘の和食知新
- - 料亭コンシェルジュ
- - 堀江貴文が惚れた店
- - 小山薫堂が惚れた店
- - 外国人料理人奮闘記
- - フォーリンデブはっしーの京都グルメ知新!
- - 京都知新弁当&コースが食べられる店
- - 京の会長&社長めし
- - 美人スイーツ イケメンでざーと
- - 料理人がオフに通う店
- - 京のほっこり菜時記
- - 京都グルメタクシー ドライバー日記
- - きょうもへべれけ でぶっちょライターの酒のふと道
- - 本Pのクリエイティブ食事術