BLOG京の会長&社長めし2020.05.22

株式会社福寿園の社長が通う店「祇園245」

京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は株式会社福寿園社長の福井正興さんが通うイタリア料理店「祇園245」です。

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■福井 正興(ふくい まさおき)さん 

1971年11月、京都府生まれ。同志社大学商学部94年3月卒業、同年4月株式会社福寿園入社。入社後2年間、農林水産省 野菜・茶業試験場にてお茶づくりの基礎を学ぶ。同社専務取締役営業本部長、同社代表取締役副社長等を経て2013年5月、同社代表取締役社長に9代目として就任、現在に至る。
株式会社福寿園は、寛政2年(1790年)に福井伊右衛門が京都・山城に創業した宇治茶の老舗。以来、この地で「無声呼人」(むせいこじん/徳のある人のところには呼ばれなくても人が集まる)の家訓のもと、茶一筋に歩み続けている。伝統を守り育てる一方で、ペットボトル「伊右衛門」やネスレ「スペシャルT」の開発や海外展開など革新的な取組みによって日本の茶業界を牽引している。また、2011年には公益社団法人日本青年会議所の第60代会頭を務め、同年に発災した東日本大震災復興に尽力した。 お茶の販売店だけでなく、お茶づくり体験ができる施設やお茶を使った飲食店なども運営している。
最後の晩餐は、分厚い赤身のステーキを。締めくくりは一碗の抹茶で。
体験施設 宇治工房、CHA遊学パーク他
http://www.ujikoubou.com/guide/index.html
http://www.fukujuen.com/company/cha.html
飲食店 京都本店3階「シェ・ナカノ」(お茶を使ったフレンチ)、茶寮 FUKUCHA(新感覚の宇治茶カフェ)他
http://www.fukujuen-kyotohonten.com/3f/index.html
https://fukucha-fukujuen.com/

訪れるたび独創的な品々との出合いに心躍る。シェフが繰り出す食のエンターテインメント

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古美術店などが集まる新門前通に佇む町家の建物。玄関から更にガラス戸の中へ進むと、表の印象から一転、和モダンな空間に。オーナーの吉岡正和シェフが腕を振るうこの店は、2011年のオープンよりオリジナリティ溢れる料理で注目を集め、多くのファンを獲得してきた。

福井さんもその一人で、気心の知れた人たちとよく訪れるという。

「僕は食事に行っても自分のことを名乗らないんですが、ここは福寿園の社長であることも知ってもらった上で行ける数少ないお店。すごく熱心な料理人がいると、知人の紹介で行ったのが最初です。青年会議所の仲間が京都へ来た時や、誕生日祝いなどに行っています」(福井さん)

「福井さんは12年目くらいから来てくださっていると思います。今は年4回ぐらいかな。大らかで面白くて、僕も大好きな方です」(吉岡さん)

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「鰻の寝床」を生かした店内は、8席のカウンターと個室が一つ。広々としたカウンターでは、キッチンのライブ感と共に食事ができる。吉岡さんは、一つのエンターテインメントとして食を楽しんでもらいたいと話す。

「大々的に料理を作っているところを見て、会話しながら楽しんでもらう。レストランは非日常的な場所だと思っているので、うちでしか食べられないような料理を作っています」

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「人の記憶をはがして、うちの店の記憶を張り付けるくらい印象に残るような料理を提供したい」

そう話す吉岡さんは、イタリアンの名店「カノビアーノ」の3店舗で8年半、腕を磨いたのち、1年のヨーロッパ修業を経て独立した。

島根県から届く無農薬野菜をはじめ、全国の安全な旬の素材で仕立てる夜のおまかせコース12000円(税サ別)は、希少な牛トンビなどが登場するメインをはじめ、10品前後で構成。締めにカレーが出るなど、イタリアンの枠にとどまらない趣向を凝らした品々が並ぶ。

「気に入っているのは料理のセンスと味。また、自分の好みも聞いてくれるし、料理の説明を聞きながらシェフとやり取りするのも楽しい」と、福井さん。

吉岡さんも、
「福井さんは食べることがすごく好きな方で、疑問に思うことは聞いてくださるし、本当に楽しんで料理を食べておられると感じます」と話す。

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吉岡さんは、年に数回ヨーロッパ各国を巡り、現地の文化や料理、食材からインスピレーションを得ているという。

「素材も技法も、他ではあまり体験したことがないものを取り入れて楽しませてくれる。たまに行きたい時に1週間休みだったりすることもありますが()、その分、期待してしまいます」(福井さん)

「海外へ行くと必ず新しい発見があり、それが料理にはまる瞬間が楽しい。常連の方も『次行ったら、また新しいもん食べさせて』と言ってくださいます」(吉岡さん)

最近はスペインへ行くことが多いという吉岡さん。2018年にはバリャドリードであったタパスの世界大会に出場し、賞を獲得。また現地のレストランとのコラボなどさまざまな活動を行っている。

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コース内容は基本月替わりだが、中には定番のものも。福井さんも大好きだという「鰻と鶉卵の燻製」は、オープン以来のスペシャリテ。三河一色産の大ぶりの鰻と半熟の鶉卵を燻製し、燻製煙が立ち上るガラスの器で提供。燻製の香ばしさと玄米塩麹で味付けした鰻と半熟卵の旨味、組み合わせの妙を五感で堪能する。

父親がかつて鰻の仲買人で、鰻のことも熟知している吉岡さんならではの一品だ。

「他では食べられない料理。熱々の鰻と冷たい鶉卵を一口で食べるんですが、なんとも美味い」(福井さん)

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もう一つのおすすめ「245サラダ」も、野菜使いに長けた吉岡さんらしい定番の品。赤地に黒の皿に、生や焼き物、マリネ、フリット、ニョッキ、チップなど、多様な調理法で仕立てた約30種の野菜を、美しく盛り付ける。中には四つ葉のクローバーや女性限定のハートの花びらを忍ばせ、野菜の下には熟成発酵させた黒ニンニクのソースを。柚子の酸味とゴマを加えたソースは、香ばしく味噌のように深みがある。

「盛り付けが立体的で、非常に華やかなサラダ。当社もレストランを運営していますが、遊び心や鮮やかな色使いなど、緑や茶色が中心のお茶の世界ではできないことを体現されていて、こんなふうにしたいなと、いつも刺激を受けています」と、福井さん。

その言葉に、「うれしい」と吉岡さんも返す。

「福井さんは否定から入らず、一旦自分の中に受け入れてくれるような方。作り手としてもやりがいがあります」

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床は一部ガラスになっており、地下のワインセラーが見えるように。こうした仕掛けも非日常の演出の一つ。ワインはイタリア、フランスを中心に約600本をストック。スペインで買い付けたものやシャンパンも充実。

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「場所柄、緊張される方もおられるので、節度を持ちつつフランクに接して、居心地よく過ごしてもらうことを心がけています。今は料理がおいしいのは当たり前で、いかに楽しかったと思って帰ってもらえるかが大事。『楽しかった』に『おいしかった』も含まれると思うので、そこに全力を傾けたいですね」と、吉岡さん。そんな店の姿勢に多くの常連も信頼を寄せているのかもしれない。

「料理を突き詰めていくシェフのように、よりお客様に喜んでいただけることを考え出さなければと、ここに来ると思わされます。料理やサービスはもちろん、そういうところも好きなのかなと思います」(福井さん)

撮影 エディ・オオムラ  文 山本真由美

■祇園245

京都市東山区新門前通花見小路東入中之町245-1
075-533-8245
営業時間 12時(入店)、18時~20時30分(LO)
定休日 火、不定休
http://www.gion-245.com/