BLOG京の会長&社長めし2020.06.04

株式会社俵屋吉富の社長が通う店「京の茶膳 シェ・ナカノ」

京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は株式会社俵屋吉富社長の石原義清さんが通うフランス料理店「シェ・ナカノ」です。

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■石原 義清(いしはら よしきよ)さん 

1964年629日生まれ。京都府出身。同志社大学文学部卒。宝暦5年(1755)創業の京菓子司「俵屋吉富」の9代目当主で、20047月に代表取締役社長就任。(一財)ギルドハウス京菓子 理事、京菓子協同組合 副理事長、茶道裏千家淡交会 京都西支部 副支部長なども務める。
最後の晩餐は、奥様の手料理の出汁巻き。
「俵屋吉富 烏丸店」北隣にある「京菓子資料館」では、2020618日~915日の期間、「世界のお菓子展」を開催。京菓子をはじめ日本の菓子に関するさまざまな資料や道具等を展示するほか、パネルなどで世界各国の郷土菓子についても紹介する。
https://kyogashi.co.jp/shiryoukan/

中野シェフの熟達の技が冴える王道フレンチのコースに、宇治茶の世界が融合

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京都の繁華街、四条通沿いに、宇治茶の老舗「福寿園」の京都本店がある。地下1階、地上9階で、随所に京の伝統工芸が取り入れられたこのビルは、単にお茶を販売するだけでなく、京の王朝文化と宇治茶の文化に親しむための甘味処やレストラン、茶室なども備えている。

今回、石原さんがおすすめの1軒に挙げたのは、その3階にあるフレンチレストラン「シェ・ナカノ」だ。

実は、石原さんと福寿園の福井正興社長は、大学のクラブの先輩後輩の仲で、ここでは福井さんたち数人の仲間と食事を楽しむことが多いのだという。

「福井君とは、彼が大学1年生で茶道部に入部してからのおつきあい。福寿園のレストランということで、オープン当初から年に数回レギュラー的に行かせてもらっています。パリの『マキシム』で修業されたシェフが本格的なフレンチを出されていて、その熟練された料理が味わえるのが、ありがたいですね。以前、淡交会青年部の卒業記念に、4階の茶室でワイン茶会というのをやらせてもらったことがあるのですが、その時もシェフにお願いして点心程度のお料理を作ってもらいました」(石原さん)

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落ち着いた雰囲気の店内は、人間国宝・羽田登喜男氏の友禅作品が飾られるなど、他のフロアと同様に京の匠の技が生かされている。

「石原社長は、よく裏千家さんの会合がある時などにご利用いただいております。ソースがたっぷりある料理がお好きで、ご挨拶に行くと、今日のソースはどうだったと、感想を話してくださいます」と、20089月のオープン時から総料理長を務める中野鉄也さん。

中野さんは、京都ホテルで10年間勤めた後、渡仏し、「ル・グラン・ヴェフェール」「ボーマニエール」「マキシム」などの名店で修業。帰国後は、京都「レストラン・リヨン」の料理長や銀座「マキシム・ド・パリ」総料理長を務めるなど、長年日本のフランス料理界で活躍してきたベテランシェフだ。「マキシム・ド・パリ」を定年退職後、第一線から退いていたが、京都本店の建設を進めていた福寿園の福井正憲会長(当時は社長)に乞われ、本店レストランの総料理長に就任した。

「最初は甘味処のデザート作りを指導してほしいというお話があり、僕は料理しかできないからと断ったんです。そしたら会長が、それならレストランをやってくれということで、設計を変更してレストランを作ることになったんです」(中野さん)

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(写真提供:シェ・ナカノ)

「シェ・ナカノ」の料理は、「フレンチと宇治茶のコラボレーション」がコンセプト。ひと月半ごとに替わるコースには、中野さんが極めてきた正統派のフレンチに加え、中に抹茶を入れた舌平目の詰め物など、宇治茶を使った創作メニューも盛り込まれる。ウェルカムティーから食後のお茶まで、コースを通じてフレンチとお茶との出合いを体験できる構成だ。

「料理に日本茶を使うのは難しいんです。特に抹茶は火が入ると色が変わるし、香りも飛んでしまうので」と、メニュー開発について語る中野さん。新たな挑戦として仕立てるコース料理は、全体にあっさり軽めの味わいで、年配のファンにも好評だという。

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コースは昼4000円~、夜6500円~。誕生日や記念日など、予算や要望などを伝えて特別なメニューを用意してもらうこともできる。

「いつも料理はお店にお任せしているんですが、コースの組み立てもいいし、ちょうどお腹がいっぱいになるくらいの量を出していただけるのもありがたいですね」(石原さん)

なお、器にはすべてオリジナルの京物を使用。季節に合わせて変わる絵皿の柄もお楽しみ。

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コースの始まりは、食前酒代わりの水出し玉露から。

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「盛り付けもきれいで、おいしい」と、石原さんが薦める野菜たっぷりの前菜。写真はその一例で、グレープフルーツの風味が爽やかな「海老とグレープフルーツのサラダ」。トマトを使った酸味のあるソースを添え、石臼でひく前の抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)を振りかけて。鴨川と柳と都わすれを描いた清水焼の皿が初夏らしい。

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「『お茶と料理』が合わさることで広がる楽しさ、マリアージュを味わっていただけたら」とマネージャーの山本さん。テーブルにはトッピング用に3種のお茶が置かれ、お好みで料理に入れて楽しむことができる。手前から煎茶、碾茶、抹茶。煎茶は肉料理、碾茶はスープ、抹茶はクリーム系ソースなどによく合うという。

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肉料理も、石原さんがこの店を気に入っている理由の一つ。「お肉の火の入れ方が絶妙で、どんなお肉を食べてもお薦めできます」

写真は「国産牛フィレ肉 ペリグーソース」。フォンドヴォーにポルト酒などを入れて煮詰め、フォアグラやトリュフを加えた濃厚なソースで味わう贅沢な一品だ。

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「最後に抹茶のカプチーノが出てくるんですが、おいしいですよ」と、石原さん。

食事の締めくくりには、シェ・ナカノオリジナルのブレンド宇治茶や抹茶のカプチーノなど、季節に合わせたお茶を小菓子と一緒に。6月は新茶が楽しめる。

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自分が食べて納得できる料理しか出さないという中野さん。60年のキャリアを経ても変わらず、真摯に誠実に料理と向き合い、挑戦を続ける。その原動力は、やはり多くのファンからの「おいしかった」の声だろう。

「僕はいつもお客さんが食べ終わられたお皿を見るのですが、もう洗わなくてもいいくらいきれいなお皿が下がってくるんです。そこまでうちの料理を楽しんでもらったら、すごくうれしいですね」

撮影 エディ・オオムラ  文 山本真由美

■京の茶膳 シェ・ナカノ

京都市下京区四条通富小路角 福寿園 京都本店3F
075-221-6173
営業時間 11時30分~15時(LO14時)、17時30分~21時30分(LO19時30分)
定休日 火、水 ※要予約
(休業日、営業時間は状況により変更の場合あり)
http://www.fukujuen-kyotohonten.com/3f/