BLOG料理人がオフに通う店2020.06.08

「Osteria CONACINETTA」-「炭焼みはな」長手未華さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は「炭焼みはな」店主 長手未華さんが通う「Osteria CONACINETTA」をご紹介します。

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「炭焼みはな」店主 長手未華さん

昔から食べることが大好き。大学時代、飲食の仕事に興味を持ち、この世界に進む。イタリアンの「La Camartina」や、鶏料理の「侘家古暦堂」などで修業を積み、昨年、自身の店をオープン。本人も大好きという、焼き鳥とナチュラルワインを提供。関西では数店舗しか扱いのない、丹波・高坂鶏も使用。夫は、イタリアンの「Lapintaika」のオーナーシェフ、正彦さん。

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光が差し込み、ナチュラルな心地よさに包まれる店内。

 聖護院にほど近い静かな住宅地の一角にある一軒のオステリア。

入り口では緑のハーブの鉢植えが出迎えてくれ、店内に入ると白い壁にナチュラルな木のテーブルと椅子が置かれ、自然な安らぎを与えてくれる。

 オーナーシェフの坪内拓さんは、京都のイタリア料理「ボッカ・デルヴィーノ」で修業したのち、イタリアのプーリア州に渡り、マルティーナ・フランカという町の一軒のオステリアで腕を磨いた。

 「コナチネッタ」という店名は「粉」とパスタを作る際の作業の「ちねる(抓る/つねる)」を組み合わせた、シェフオリジナルの造語だが、洒落たネーミングにもセンスを伺わせる。

「以前勤めていた店に、シェフの坪内さんがお見えになって、いろいろと話しているうちに仲良くなって、お店に伺うようになりました。内装もシェフのセンスが溢れて気持ちがいいし、器もプーリアの窯元にオーダーして作ってもらったそうで、いちいち心憎いんです(笑)。最初に行った時から居心地もすごく良いし、お料理も美味しいし、すっかりファンになってしまいました」(長手さん)

「プーリア州は南北に長く、北部は大穀倉地帯で、海沿いでは漁業が、中部では酪農や農業が盛んに行われ、まさにイタリアの食材庫という地域なんです。海の幸、山の幸に恵まれた土地で、修業をするなら絶対にプーリアで、と考えていました。料理はとてもシンプル。豊かな食材恵まれているので、素材の特徴をよく生かす料理法がベースになっています。そこに日本と同じく、旬を大切にする文化があり、素朴だけれど、奥行きがある食文化に魅了されました」(坪内さん)

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今日の前菜は、カポコッロ(豚肩肉の生ハム)、ミント入りのコロッケとズッキーニのフリット、パプリカのインヴォルティーニ、トマトとストラッチャテッラのフリセッリーネ。色とりどりの前菜は、これだけでもワインが空いてしまいそうなほど。よく冷えたスプマンテを合わせたくなる。パスタかメインを選ぶランチ2500円には前菜4皿がついてとてもお値打ち。ディナータイムには4皿1600円、7皿2500円(各一人前)。写真はすべて2人前。※価格はすべて税別。

「私は主に、女友達と行くことが多いですね。女子って美味しいものをちょっとずつ食べたいというのがありますよね。友達も美味しいものに目がなくて、欲張りさんなので、特にコナチネッタさんの小皿でいろいろ楽しめる前菜スタイルはピッタリなんです。連れていった友達は皆喜んでくれますよ。前菜と一緒にいただくプーリア州のアルタムーラというパンもお気に入りです」(長手さん)

 ランチでもディナーでも楽しめるのが、「店主のお楽しみ前菜」だ。小皿にその時々のおすすめの前菜料理を盛って、パンの町「アルタムーラ」から届く天然酵母を使い、自身で焼くアルタムーラパンと一緒に提供する。このパンはどっしりとして、噛み締めると穀物の甘みが豊かに広がっていく。

「僕がプーリアで働いていたのは小さな家族経営の店で、店主の個性が打ち出されていて、お客さんもその店主との会話を楽しみに来るような店でした。店主の兄弟家族も皆、形態の異なるレストランを経営しており、それぞれの店でさまざまな料理やドルチェを勉強できるという恵まれた環境でした」(坪内さん)

 料理のスタイルも味わいも、プーリアの郷土色を大切に、パスタやパン、タラッリなどの粉物をはじめ、カポコッロ(豚肩肉の生ハム)やサラミもできる限り、手作りを守っている。オリーブオイルはもちろんプーリア産を使用。そこに農家さんから直接買い入れる野菜などを使い、自分自身の味として打ち出している。

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坪内さんはパスタのサンプルを見せながら、食感や味わいの説明をしてくれる。丁寧に作った手打ちパスタは穀物本来の滋味に満ちている。

「穀倉地帯であるプーリアは、パスタによく使う硬質小麦の一大生産地でたくさんの種類の手打ちパスタがあります。コシがあって味わいの濃厚なパスタが多く、うちの店でも乾麺のスパゲットーニ以外は、伝統的なオレキエッテやトゥリエ、トロッコリなど、すべて手打ちで作っています」

 メニューには「オレキエッテクラシコ〜リナばあちゃんのクラシックなスタイルで」や「ひよこ豆のトゥリエ〜レッチェの食堂のメニューより」など、現地で親しくなった料理人たちから直伝の料理も並ぶ。

「長手さんもそうですが、最初は前菜をあれこれ楽しんでいただいて、その後、パスタ、メインとオーダーされる方が多いですね。小腹が空いたという方は、前菜の小皿料理だけでワインを1本楽しまれたりもしますよ」(坪内さん)

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オレキエッテ・クルダイオーラ(本マグロ、チェリートマト、ルッコラのほんのり温かいサラダ仕立て)1800円には、カチョリコッタチーズをたっぷりとかけて。イタリアでは冷製パスタはほぼ見られないが、この料理は、プーリアの暑い季節にサラダ風に仕立てて、現地の人がよく好んで食べるという。プーリア州ご自慢のロザート(ロゼワイン)によく合いそう。

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おすすめのメイン料理の一つ、「ボンベッテ(モッツァレラチーズを包んだ豚肩ロース)のグリルと、仔羊と仔牛の合挽きミンチを羊腸に詰めたザンピーナの盛り合わせ」3200円。※写真は2人前

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左から、コメ ディンカント(カンティーナ・カンペンティエーレ/白)7,500円、サーレ5,000円(メンヒル/白)、サトゥルニーノ ロザート サレント(テヌーテ ルビーノ/ロゼ)4,800円。グラスワイン800円〜はスパークリング、白、赤、ロザート(ロゼ)、が揃う。ボトルワインは4,000円〜。

「ワインはすべてプーリア州のものを揃えています。ワインも盛んに造られていて、優秀なワイナリーが多いんです。特にロザート(ロゼ)のクオリティは非常に高く、おすすめです。コース料理をすべて、いろいろなロザータで楽しんでいただくのもいいですね」(坪内さん)。

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店内では、プーリアを代表するパン、アルタムーラパンやワインに合うタラッリ、ビスコッティなどを販売。

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 窓を広く取った店内で明るい日差しを浴びながらの爽やかなランチ、明かりが灯る頃から始まる楽しいディナー。軽い料理とワインを、あるいは、しっかりとコース仕立てで。家族と、友人と、あるいはおひとり様で。

 さまざまTPOにしっかり応えてくれる坪内さん。プーリアの風を運んでくれそうな料理の数々と、ワインと、温かなもてなしを存分に堪能したい。

撮影/津久井珠美  取材・文/ 郡 麻江

■Osteria CONACINETTA

京都市左京区聖護院東町14
075-744-6530
12:00~15:00(LO13:00)、18:00~23:00(LO21:30)
不定休