京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は株式会社西利社長の平井誠一さんが通う「山家」です。
■平井誠一(ひらい せいいち)さん
1967年京都生まれ。大学卒業後、山本海苔店に勤務した後、京つけもの西利へ入社。 取締役営業部長、代表取締役専務を経て2013年代表取締役社長に就任する。「旬 おいしく、やさしく。」をモットーに和食文化を大切に食卓に健康と笑顔をお届けすることを目標にしている。和食の基本である「ごはん」を美味しく食べてもらい、和食を楽しんで頂けるように「京つけもの西利」「酵房西利」のブランドを活用し、漬物だけでなく西京漬や総菜など様々な提案を行う。 また新たに「京都発酵食研究所」を設置し、これまで培ってきた西利の発酵食の知見と技術を活かして「発酵生活」や「乳酸発酵甘麹AMACO」などのブランドを活用して調味料、ドレッシング、スープなど、現代の食生活に即した提案も行う。
最後の晩餐は、宮川町「ポパイ」のレモンチャーハン。
地元で愛される老舗居酒屋で、丹波地鶏を使った自慢の鶏料理ほかバラエティ豊かな味を
普段、会合や会食でコース料理を食べることが多い分、プライベートではアラカルトで楽しめる店を選ぶという平井さん。その中でも今回お薦めの「山家」は、家族でよく利用する一軒だと話す。
「僕は家で食事をすることが少なくて、たまに家で食べられるときは、逆に家族が外食をしたがるんですよ(笑)。それで鶏料理が好きなこともあって、近所にあるこの店に行き始めたんです。鶏料理がメインの居酒屋ですが、僕は居酒屋というより鶏料理の店だと思って行っています。料理はおいしいし、お店の皆さんも気さくで、いつも賑わっていますね。家族で外食しようとなると、一番に候補に挙がるお店です」(平井さん)
「鶏料理以外にもメニューがいっぱいあって、お造りやアテ系のものなど、居酒屋的な頼み方をして楽しんでいます」(平井さん)
「府立大学前」バス停前にある居酒屋「山家」は、1973年の創業。鶏肉専門店の飲食部門として営業していたが、その後、鶏肉販売をやめて飲食のみの経営となり、2010年に現在の店舗にリニューアルした。メニューは串焼きやたたきなど朝挽きの丹波地鶏の料理をメインに、魚介の料理や豆腐料理、サラダなど、旬の食材を使用した豊富な一品がリーズナブルに楽しめ、幅広い層から人気を集める。
常連には平井さんのように2代3代で通う地元客のほか、府立大学、京都大学、大谷大学といった近隣大学の関係者、また学生時代を懐かしんで訪れる遠方の客も多く見られるという。
「平井社長にはよくご家族で来ていただいています。まだ小さかったお子さんがもう大学を卒業されるくらいなので、最初に来られてから6~7年くらいになるでしょうか。今は娘さんと息子さんだけで来ていただいたりもして、本当にうれしい限りです」と、3代目店主の三原一恭さん。父が開いたこの店を、大学時代から手伝い、20代後半で叔父から引き継いだ。現在は奥さんやスタッフと店を切り盛りしている。
「奥さんをはじめ、皆さん明るくていい人ばかり。雰囲気は家庭的なんですが、おしゃれでかっこいい」
そんな平井さんの言葉に、三原さんは少し照れながら、
「ありがたいですね。接客は家内が担当していて、仲良くさせていただいています。本当にいいご家族で、いつも和やかに食事をされている印象があります」と語る。
カウンターとテーブル席、中庭を挟んだ奥に掘りごたつの個室を配したナチュラルモダンな店内は、京都工芸繊維大学の長坂教授の設計によるもの。ゆったり過ごせる雰囲気で、時にはサッカーやラグビーの試合の観戦イベントを行うことも。
「お一人様からカップル、ご家族連れ、女子会など、いろいろご利用いただいています」と、三原さん。一人客用に料理をハーフサイズにしてもらうこともできる。
カウンターの上には懐かしいレコードジャケットが。三原さんが好きだという80年代の洋楽も流れ、ノスタルジックな気分にさせる。
食材は、鶏肉や鴨肉はもちろん、魚介も野菜も信頼を置く業者や生産者から新鮮で質のいいものを揃える。特に野菜は上賀茂・森田農園の賀茂茄子など、できる限り地のものを使用しているという。
数あるメニューの中で創業以来の名物になっているのが、「肉の焼き加減やポン酢の味がいい」と、平井さんも必ずオーダーする「おらが焼き」820円。
鶏もも肉一枚を天火で焼いたあと、炭火で軽くあぶり、おろしポン酢でさっぱりと仕上げる。皮はパリッと、身はジューシーで柔らかく、まろやかで少し甘めの自家製ポン酢と相性抜群。トッピングのネギと紅ショウガの風味や食感もアクセントになっている。
平井さんがいつも締めに食べるという「鴨と水菜のはりはり鍋」2200円は、年中楽しめる人気の品。
「2人前で出てくるので、皆で分けて食べます。おだしが最高においしい」(平井さん)
九条ネギの甘さを引き立てるかつおのだしに、大阪・河内産の鴨肉をさっとくぐらせ、しゃきしゃきの水菜やキノコ、油揚げなどと味わう。柔らかく程よい脂と旨味の鴨肉に山椒の風味、だしがしみた油揚げがこれまた美味。
「僕はあまり食べないんですが、鍋のあと雑炊にしてもらうこともできます」と、平井さん。ご飯ものでは、大葉とちりめん山椒を混ぜた「しそじゃこご飯」や、いろいろな具が入ったおにぎり「ばくだん」もお薦めだという。
酒類も充実しており、日本酒や焼酎は、定番アイテムに加え、「今月の美酒」として月替わりのお薦めが登場する。写真はその一例で、石川の「五凛」、奥さんの出身地、愛媛の「京ひな 内子座」、京都の「蒼空」など。京都ではレアだという「京ひな」は、優しい香りとすっきりとした飲み口の純米吟醸。自家製鶏味噌を使った「焼き味噌」などの酒肴と共にぜひ味わってみたい。
お客から帰り際に「おいしかった」と言われるのが一番うれしいという三原さん。その笑顔を見るために、創業以来の味と明るく温かな雰囲気づくりを大切にしている。
「楽しくお食事をしていただいて、元気になって帰ってもらうのがうちのモットー。それには、お客さんの雰囲気を邪魔しないなど、ちょっとしたことに気づいてあげることが大事だと、スタッフにも厳しく言っています。気さくな感じの中でも、きっちりとしたサービスをしていきたい。ただ料理がおいしいだけじゃなく、明日への活力になるような店でありたいですね」
撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美
■山家
京都市左京区下鴨西本町7-3
075-722-0776
営業時間 17時30分~23時(LO22時30分)
定休日 木
http://www.kyoto-yamaga.com/