BLOG京の会長&社長めし2020.03.10

株式会社ウンナナクールの社長が通う店「クレープメゾン モック」

京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は㈱ウンナナクール 社長の塚本昇さんが通う「クレープメゾン モック」です。

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■塚本 昇(つかもと のぼる)さん 

株式会社ウンナナクール代表取締役社長
1977年生まれ。大学卒業後2000年に福岡の百貨店、株式会社岩田屋に入社。その後2003年に株式会社ワコール入社。
生産部門や商品営業部、米国駐在を経て2015年より販売部長として株式会社ウンナナクールに出向。2017年より現職。
株式会社ウンナナクールでは『女の子の人生を応援する』というブランドミッションを達成するべく既存の下着屋さんとは一線を画したブランディングを展開している。
最後の晩餐は、かつて下鴨にあった中華料理店の焼きめしと酢豚。焼きめしに酢豚をのせて味わうのが最高。

アットホームな雰囲気の中でゆっくり食事やデザートを。親子4代が通うクレープの老舗

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一口食べるだけで幼い頃の記憶がよみがえる。誰にでもそんな思い出の味はあるものだ。塚本さんにとって、この店のメニューがそんな存在かもしれない。地下鉄国際会館駅から10分ほど。宝ヶ池公園近くの街道沿いに、「クレープメゾン モック」はある。マスターの鳥居逸夫さんが妻の幸子さんと切り盛りするクレープの名店だ。

「正確には覚えていませんが、幼稚園か小学校低学年の頃には行っていたと思います。母がマスターと知り合いで、以前は北山にあって家から近かったので、よく家族で行っていました。今は自分の家族と行くことが多いですね。家内も子供も大好きなお店です」(塚本さん)

幼少期から塚本さんを知る幸子さんは、塚本さんのことを"お兄ちゃん"と呼ぶ。

「お兄ちゃんのお母様はマスターが独立する前からのお客様で、お母様のご両親からお兄ちゃんのお子さんまで、親子4代で来ていただいて長いお付き合いです」

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「ゆっくり時間をかけて食事をしてもらえたら」と、幸子さん。店内はカウンターとテーブルのあるゆったりした空間で、周囲の緑を眺めながらくつろぐことができる。お客の大半は常連で、塚本さん同様、親や祖父母の代から通う人も多いという。

メニューは、自慢のバタークレープなどの多彩なクレープやガレットを中心に、スパゲッティ、自家製リンゴジュースやバナナジュースなど、豊富に揃う。

「何を食べてもおいしい。僕はマロンとショコラのクレープとハンバーグスパゲッティが好きで、行くと必ず食べます。ナポリ風のスパゲッティもおいしくて、よく家内が真似をして家で作っています」(塚本さん)

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創業は1976年。逸夫さんはクレープ専門店を開くために、京都にあったクレープの店で2年ほど修業。その後、幸子さんや息子さんと共に1カ月半かけてパリやブルターニュ地方などフランス各地を巡り、本場のクレープ作りを学んだ。

「いろんなところのクレープやガレットを食べて、作り方を教えてもらいながら勉強しました。それを日本風にアレンジして店を始めたんです」と、幸子さん。

しかし、京都にまだ専門店はなく、クレープのこともあまり知られていない時代。当初は説明するだけでも大変だったという。

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「クレープを含めメニューのほとんどが家庭料理。家庭のお母さんが作るようなやり方で作っています」と、幸子さん。料理がシンプルな分、地鶏の卵やスイスのグリュエールチーズ、特注のそば粉など、食材に気を遣い、無添加で作っている。

写真は塚本さんお薦めの「自家製ハンバーグスパゲッティ」1500円。昔ながらの炒めたスパゲッティにハンバーグとチーズがのってボリューム満点。アンチョビとスモークオイスターの旨味が利いたスパゲッティ、ふっくらジューシーなハンバーグはどこか懐かしい味わいで、何度も食べたくなるおいしさだ。

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クレープは、油をひかず、鉄板の熱だけで焼いている。そうすることでやわらかく仕上がるという。塚本さんの大好物の「マロンクレープとショコラクレープ」1200円は、ラム酒が香るふんわりとした生地をマロンとチョコの甘く濃厚なクリームと楽しむファンの多い一品だ。

「昔はテイクアウトもあって、子供の頃、病気で寝ていると親が買ってきてくれて、うれしかった思い出があります。僕はマロンとチョコを混ぜて食べるんですが、あまりにおいしすぎて、罪悪感を覚えます」(塚本さん)

実はこのクレープ、塚本さんのリクエストで生まれたものだという。

「最初はメニューになくて、マロンとチョコを組み合わせたものをオーダーされていたんです。食べてみるとマロングラッセのような味になっておいしくて。それで定番メニューにすることにしました」と、幸子さんは振り返る。

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塚本さんもよく頼む「テンベジサラダ」900円は、上賀茂産などの旬の野菜が10種類以上入り、食べ応え満点。さっぱりとした味わいのドレッシングもよく合う。

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入口近くの大テーブルを、塚本さんはよく利用するという。

世代を継いで愛されているこの店だが、店を閉めていた時期があった。逸夫さんが65歳になったのを機に、沖縄へ移住。しかし、知人もいない地での生活になじめず、6カ月で京都に戻ったという。

「京都で3年ほどゆっくりしていたんですが、周囲の友人たちは現役でいるのに、自分たちは何をしてるんだろうと思って。それでできる範囲でやってみようと、20155月に宝ヶ池で再開しました」と、幸子さん。

塚本さんは、その知らせをフェイスブックで知ったという。

「お店がなくなって寂しい思いをしていたところに、僕の先輩が再開されたことを書いていたんです。それで、『やったーっ!』と思って食べに行きましたね」

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「お客様や周りの方に恵まれて、今やらせていただいています。『ありがとう、おいしかった』と言ってもらえると、やってよかったなと思います」と幸子さん。

二人にとって、塚本さんたちお客との出会いがやりがいになっているという。

「お母様の時代からのお客様が結婚してお父さんになって来られる。その人の成長をずっと見させてもらっていますので、それに感動してまたやろうという気持ちになります。お兄ちゃんも子供時代からのいろんな思い出が、うちのクレープの味に乗っているのだと思います。それをおいしいと思ってもらえる空間でお店をできるのは、本当に幸せです」

撮影 エディ・オオムラ  文 山本真由美

■クレープメゾン モック

京都市左京区岩倉幡枝町1260
075-712-3908
営業時間 11時~19時
定休日 火(祝日は営業、翌日休)
※飲み物だけの利用は不可