京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は株式会社野村佃煮社長の野村啓介さんが通う「heich」です。

■野村 啓介(のむら けいすけ)さん
1969年9月生まれ。大学卒業後、ケンコーマヨネーズ株式会社に入社、その後株式会社野村佃煮へ入社。同社専務取締役、2014年に同社代表取締役社長に就任。
最後の晩餐は、自分で漬けた梅干し入りの海苔巻きおにぎりと、ゆで玉子。
どこか懐かしく、新しい。京漬物を巧みに生かした多彩な和洋の味に出会える
京都を代表する名産品として、昔から高い人気を誇る京漬物。今回野村さんが推薦するのは、この京漬物を使ったメニューが楽しめると注目のバル「heich」だ。昨年12月9日、四条烏丸近くにオープンした。
「京漬物『西利』の平井社長の弟さんが始めたお店。オーナーの平井君とはJC(青年会議所)時代からの知り合いで、オープン間もなくの頃にJCの仲間5人で訪れたのが最初です。メニューには漬物を使った料理があって、どれもおいしい。僕は新年会などの宴会の二次会で使うことが多いのですが、しっかり食事をする場合にもおすすめです」(野村さん)
烏丸通沿いのビルの地下1階。カウンター5席、テーブル12席の小ぢんまりとした店内は落ち着きのある雰囲気で、くつろいで料理や酒を味わうことができる。
その居心地の良さとオーナーの平井栄二さんがいる気安さもあり、野村さんにとって早くも行きつけの一軒になっているようだ。
「野村社長には、よく数人のお仲間の方とご利用いただいています。探求心が旺盛で、知らないことはないくらい物知りのうえ、話し上手なこともあって、いつも皆さんの笑いが絶えないお席になっています。ご挨拶に伺った際も、逆に私のほうが楽しませていただいたり、教えていただいたりすることもあります」(平井さん)
「西利」で飲食部門などを担当してきた平井さん。これまでの経験を踏まえ、「そのまま食べるだけではない、漬物のいろいろな楽しみ方を提案したい」と、自身の店を開いた。ここでは「日本人には目新しいがどことなく懐かしく、外国人にはなじみがある外見ながら、いつもと違う新しさがある」料理を目指しているという。
メニューはアラカルト主体だが、予算に合わせておまかせコースを用意することも可能。京都の老舗イタリアン「フクムラ」出身のシェフが、京のもち豚と京漬物の炒め物、お漬物きんぴらといった自慢の漬物料理に加え、イタリア風串焼き、生ハム、刺身、パスタなど、和の要素も織り交ぜながら多彩なメニューを仕立てている。
漬物料理といっても、漬物が前面に出るものばかりではなく、ポン酢やソースに入れたり、漬け汁をきんぴらに使ったりと、調味料として利用しているものも少なくない。
「お漬物を使うことによって、味にコクや深みが出て、口当たりがやわらかくなるなど、料理が一層引き立つんです。洋食も日本人が食べてほっとするような味になっていると思います」と、平井さん。発酵食品である漬物は、旨味が豊富で素材の味を引き出してくれるのだという。
人気メニューの「京赤地鶏としその実漬のトマト煮込み」800円(写真の漬物は奈良漬)は、ジューシーな鶏肉に絡むソースが深くまろやかな味わいの一品で、しその花の香りが和を感じさせる。
キタアカリを使った野村さんおすすめの「ベーコンポテトサラダお漬物タルタル」650円。タルタルソースにはキュウリのしば漬「むらさきの」を刻んだものが入っている。ソースは酸味控えめで、ほくほくとしたジャガイモの素朴な甘味や風味が楽しめる。漬物の食感がアクセントに。
また、奈良漬けとその酒粕を使ったユニークな「奈良漬けバター」700円もおすすめだ。
「レーズンの代わりに奈良漬けが入っているんですが、なかなかいけますよ」(野村さん)
レーズンバター好きの平井さんの要望で生まれたこの一品は、奈良漬けのほどよい甘味と発酵バターの濃厚な味わいが好相性。ワインやウイスキーはもちろん、日本酒や焼酎などにもよく合い、持ち帰りを希望するファンの声も多いという。
野村さんは、漬物料理以外では、イタリア風おでんの「ボリートミスト」や「地鶏のレバーパテ」などもお気に入りだという。
「ワインもいろいろ楽しめます」と、野村さん。
イタリアのほか、フランス、ポルトガルのものが中心で、3000円台の手頃なものから高級ワインまで、幅広く揃う。また専門店以外の個人店では珍しい「エノマティック」のワインサーバーを備えており、高級なワインをグラスで楽しめるのも魅力だ。グラスワインは600円~。プレミアムワインのグラスはその時々で内容や価格が変わり、1000円~。
販売はしていないが、料理に使用している「西利」の京漬物がショーケースに並ぶ。
「ここに来ると、JCの知り合いに会うこともよくあります」(野村さん)
一番奥のテーブルは、野村さんが親しい仲間たちと心置きなく過ごすお決まりの席だ。
一軒目にも二軒目にも使えて、予算は飲んで食べて4000~5000円というリーズナブルさもうれしい。
「今は京都のお客様が中心ですが、常連客、観光客、どちらの方にも楽しんでいただける"大人の居酒屋"でありたいと思っています。今後は観光の方にももっと気軽に入っていただけるようにして、京都のいい思い出作りに少しでもご協力できれば」と、平井さん。
オープンしてまだ半年余り。どんな新しい味やサービスに出合えるのか、これからも楽しみにしたい。
撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美
■漬物と料理と酒と... heich
京都市中京区手洗水町650 四条烏丸スタービルB1F
075-231-8181
営業時間 17時~24時(LO23時30分)
※しばらくの間、営業時間を短縮させていただいております。お手数ですがお電話にてお問い合わせください。
定休日 日
https://heich.owst.jp/