BLOG京の会長&社長めし2020.09.25

株式会社桂窯の社長が通う店「日本料理 櫻川(さくらがわ)」

京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は株式会社桂窯社長の檜垣良多さんが通う日本料理店「櫻川」です。

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■檜垣 良多(ひがき りょうた)さん 

1976年生まれ 桂窯四代目
1997年 寄神崇伯、母である檜垣青子に師事し、作陶を始める
2000年 京都府立陶工訓練校成形科卒
2001年 京都市立工業試験場窯業科卒
2001年 株式会社桂窯入社
2008年 裏千家学園卒
2013年 桂窯 代表取締役になる
桂窯入社4年目に一旦退社し3年間、裏千家学園にて茶の湯を学ぶ。
現在は茶ノ湯道具を中心に作陶に励み、各地にて個展、グループ展を開催。

最後の晩餐は、ハワイにあるベトナム料理店のフォー。

木屋町で長く愛されているカウンター割烹で、細やかな仕事による四季折々のコースを

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木屋町通の起点、木屋町二条あたりは高瀬川沿いに歴史的な景観が残り、京都らしい風情が感じられる場所。その一角に立つのが、檜垣さんお薦めの「日本料理 櫻川」。舌の肥えた京都人が通う昭和53年創業の名店で、ここ出身の有名料理人も少なくない。

代々料理人が店を引き継ぐかたちで、現在は、山本智史さんがオーナー兼三代目料理長として腕を振るっている。

「僕は中学生の頃から行っているんですが、清潔感のあるいいお店です。とにかく料理がおいしい。年に23回、家族や友人となど、プライベートで利用しています」(檜垣さん)

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店内は特注の檜製のカウンターに、小さなテーブル席が一つ。タイルの壁や美しく弧を描いたカウンターも印象的だ。

料理は、昼はお弁当と7000円のコース、夜は2万円のコースのみ。素材は大原、修学院の農家などから入手する京野菜、明石や瀬戸内海を中心にかつぎの魚屋から仕入れる鮮魚など、季節の味覚を吟味。代々の味を踏襲し、過度に手を加えず、素材の持ち味を引き出したシンプルな料理を身上としている。正統派の日本料理に現代的な要素も加えた献立は、長年の常連客にも好評だ。

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「檜垣さんはご両親が先代の料理長の時からのお客さんで、ずっと来てくださっています。今はもうお互いが(店や家業を)引き継いでやる立場になっていますね」と、山本さん。

家族に連れられ店を訪れていた檜垣さんだが、本格的に通うようになったのは高校を卒業してからだという。

「中学・高校の同級生の前田くん(現「前田」店主)が、うちの母の紹介で『櫻川』に入ったこともあって、よく行くようになりました。当時料理長だった広崎さん(現「食工房ひろさき」店主)や兄弟子の山本さんにもすごくお世話になりました」

檜垣さん自身、陶芸の修業を始めた頃でもあり、勉強の一環として店に通っていたそうだ。

「器にどう盛り付けられるのか、料理を盛ってどんな見え方がするのかに興味があり、そういうことを研究したくて、なけなしのバイト代で料亭などいろいろなお店に行きました」と、当時を振り返る。

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店と檜垣さんの関係は、単に料理屋とお客の枠に留まらなかったという。

「僕を気遣って、広崎さんがいろんな器を作れと導いてくださったんです。特に思い出に残っているのが鱧しゃぶの器。うちの焼き物は衝撃に弱くて割れやすい素材なんですが、火にはすごく強い。だしを沸騰させてしゃぶしゃぶができるような器がほしいと言われて作りました。今もそれを定番メニューで出されています」(檜垣さん)

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この檜垣さんの器を使った一人用の「鱧しゃぶ」は、夏から初秋のコースに登場する人気の品。毎年これ目当てにたくさんの常連が訪れるそうだ。

だしを張った器を熱し、煮立った状態で提供する。

「うちとしては温かいおだしで鱧しゃぶをしてもらうので、器が熱を保つようにしてほしいわけです。それを檜垣さんにいろいろ試行錯誤してもらい、直火にかけて温められるような器を桂窯さんの楽焼の釉薬を使って作ってもらいました。この料理はこの器ができたから完成したといえます」と、山本さん。

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檜垣さんもお薦めの「鱧しゃぶ」は、新玉ねぎの風味を利かせた特製だしに、淡路島産の鱧をくぐらせ、すだちを搾って味わう。檜垣さんが手掛けただしの器は、土鍋のように一旦温まれば余熱が持続するという。鱧を食べたら鱧のうま味や脂が溶け込んだだしを最後に堪能する。

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檜垣さんが更にお薦めの料理として挙げたのが椀物。

「料理人の味は、だしに集約されている気がするんです。山本さんはものすごく真面目な人で、それが椀物のおいしさに現れていると思います」

写真は9月の夜のコースの一例より、松茸や三度豆、柚子をあしらった「毛ガニのしんじょう」。ベースとなるのは利尻昆布と鹿児島産鰹を使った伝統のだし。鰹節を削ってだしをとり、香り高くバランスのいい味わいに仕立てている。

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供される料理の器も楽しみの一つ。代々の料理長によって集められたさまざまな器には、名だたる作家の作品が見られる。

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日本酒は、料理に相性良しの酒が幅広く揃う。
「お酒は山本さんがお薦めを選んで出してくれるんですが、どれも食事を邪魔しないお酒で美味いですね」(檜垣さん)

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「山本さんは根っからの板前でとても丁寧な仕事をされるので、食べていて安心感があるというか、ただただ美味いという感じです。京都で一番丁寧なカウンター割烹かもしれません」と、檜垣さんは「櫻川」の魅力を語る。

その言葉に、「ありがとうございます。私としてはそれしかないので(笑)、そこを守りながらやっています」と、山本さん。

そんな実直で丁寧な仕事ぶりは、もてなしにおいても同様だ。

「お客さんが求められるものに対して、できる限りお応えしていきたいという思いでいます。カウンターなので、この食材はこうして食べたいと言われたら、コースでも臨機応変に対応しています。常連さんは皆そんな感じなので、常連さんばかりになると大変ですが(笑)、それが言えるお店があるとうれしいかなと思うので」

予算は、昼5000円から、夜は25000円程度。

撮影 エディ・オオムラ  文 山本真由美

■日本料理 櫻川

京都市中京区木屋町通二条下る上樵木町491
075-255-4477
12時~14時(LO13時)、18時~22時(LO20時)
休 日
http://www.kyoto-sakuragawa.jp/