京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は株式会社桂窯社長の檜垣良多さんが通う「イル・ピッコリーノ」です。

■檜垣 良多(ひがき りょうた)さん
1976年生まれ 桂窯四代目
1997年 寄神崇伯、母である檜垣青子に師事し、作陶を始める
2000年 京都府立陶工訓練校成形科卒
2001年 京都市立工業試験場窯業科卒
2001年 株式会社桂窯入社
2008年 裏千家学園卒
2013年 桂窯 代表取締役になる
桂窯入社4年目に一旦退社し3年間、裏千家学園にて茶の湯を学ぶ。
現在は茶ノ湯道具を中心に作陶に励み、各地にて個展、グループ展を開催。
最後の晩餐は、ハワイにあるベトナム料理店のフォー。
薪窯で焼く出来立てのナポリピッツァが評判。のどかな田園地帯の中の人気ピッツェリア
「僕の中学時代の友人がやっているナポリピッツァのお店なんですが、味は一流です。もともと沖縄でお店を出していたんですが、それが京都に移ったこともあって、15年くらい行かせてもらっています。人情味あふれるシェフで、奥さんもいい方です。月2回ほど行きますが、いつも混んでいてなかなか入れません(笑)」(檜垣さん)
檜垣さんお薦めの「イル・ピッコリーノ」があるのは、洛西・大原野。沓掛インターチェンジ近くの高台の、うっかりすると見落としそうな一軒家がそれだ。
ここにはオーナーの金定(かねさだ)慎平さんが作る窯焼きピザを目当てに、地元の常連を中心に多くの人が訪れる。営業は昼のみで、特に週末は予約が取りにくいという人気ぶりだ。
「檜垣とは中学が違ったんですが、共通の友人がいて仲良くなりました。沖縄にいた頃から店に食べに来てくれていて、今も家族と来たり、陶芸教室の生徒さんを連れてきてくれたりしています。僕のピッツァを好きでいてくれるのが、ありがたいですね」と、金定さんは話す。
昔から飲食店を始める夢を持っていたという金定さんは、2005年にイタリア・ローマへ渡り、ナポリピッツァづくりを学び、2006年、沖縄の恩納村で「イル・ピッコリーノ」を始めた。そして沖縄で6年間営んだ後、京都に帰って2012年に再オープンさせたという。
「母が自分のお店をするために購入していた一軒家が空くことになって、こちらに移ってきたんです」と、金定さんは説明する。
京都に戻り、沖縄との水の違いに苦労しながらバージョンアップさせたという金定さんのピッツァ。イタリア産を含む2種をブレンドした粉と、イタリアの塩、水、ビール酵母を使用した生地を一晩寝かせたあと、イタリア製の石窯で薪を使って焼き上げる。
「粉と塩と水とビール酵母。この4つが入ってナポリピッツァと呼べるんですが、粉が同じだったりすると、どうしても似た味になってしまう。それをどう自分なりのものにするか、常に考えているところです」と、金定さん。イタリアで出合った理想の味に近づけるためにいろいろ研究しながら、少しずつ変化を加えているという。
民家として使われていた建物は、キッチンや廊下など一部を改装した以外はほぼそのまま。靴を脱いであがるスタイルで、知り合いのお宅を訪ねたようなゆったりのんびりとした空気感がまた魅力の一つになっている。
「生地がすごくおいしい」と檜垣さんが絶賛するピッツァは、レギュラーメニューと本日のおすすめピッツァを含め、20種ほど。一枚がとても大きくボリュームがある。
「最初は皆さん、驚かれますね」と、金定さん。
ランチタイムにはサラダやスープ、前菜など、ドリンクとミニデザート付きのセットと一緒に楽しめる。
「うちは5人家族なので、ピッツァ3枚とスープセット5人前という感じで注文します。マルゲリータは必ず頼んで、季節のピッツァ、あとガッツリいきたい時はカルツォーネとか。ピッツァのほかにパスタが2種類あるんですが、それも美味いんですよ」と檜垣さん。
写真は水牛のモッツァレラチーズを使ったトマトソースベースの「マルゲリータ・ブッファラ」1816円。定番のシンプルな組み合わせで自慢の生地を堪能できる。
「トマトソースと生地の相性がよく、すごくおいしい」(檜垣さん)
程よい塩気に旨味を感じる生地は、ボリュームがあるのにそれほど重さを感じさせない。
ちなみに、店内で食べきれなかったピッツァは持ち帰ることができる。
檜垣さんのもう一つのお薦めは、「クアットロフォルマッジ」1365円。モッツァレラ、ゴルゴンゾーラ、スモークチーズ、グラナパダーノの4種のチーズを使用し、濃厚な味わいが楽しめる。チーズ好きにはたまらない一品。
こちらは金定さんお薦めの「気まぐれピッツァ2」1650円。モッツァレラ、ミニトマト、ピリ辛サラミ、バジル、グラナパダーノ、唐辛子、黒コショウなどを盛り込んだオリジナルピッツァで、「自分の好きなものを全部入れました」と、金定さん。かなりスパイシーでパンチの利いた味わいは、ビールのおともにもぴったりだ。
店では金定さんはピザ作りに専念し、沖縄出身の妻・明日香さんとスタッフがサービスを担当している。
「うちの奥さんと喋るのを楽しみに来るお客さんもおられます。気取った店ではないので、自然な感じでお客さんと接したいというのはありますね。時間は限られているんですけど、ここに来てピッツァを食べてほっとしてもらえたらと思っています」と、金定さん。
ここには若者からお年寄りまで、実に幅広い層が訪れるそうで、「たまにお客さんの平均年齢が60~70代という時もあります(笑)」と笑う。
本格派の味わいと自然体の親しみやすい雰囲気で、世代を問わず愛されている実力店だ。
予算は1500円程度。オープンから13時までは予約を受け付けている。
撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美
■ピッツェリア イル・ピッコリーノ
京都市西京区大枝西長町6-42
075-333-3018
11時~16時(LO15時30分) ※ランチ~14時30分(LO)
休 月、月1回火
https://www.facebook.com/PizzeriaIlPiccolino/