BLOG京の会長&社長めし2020.11.23

株式会社鈴木松風堂の社長が通う店「由兵衛(よしべえ)」

京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は株式会社鈴木松風堂 社長の鈴木裕さんが通う「由兵衛」です。

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■鈴木 裕(すずき ゆたか)さん 

1976年生まれ 京都生まれの京都育ち。1999年に鈴木松風堂へ入社し営業部へ所属。
2012年常務取締役を経て2018年に5代目代表取締役社長に就任する。
幼少期に学んだ少林寺拳法の創始者の教え「すべては人の質にある」を企業理念とし、初代からつづく紙管の製造販売や先代たちから受け継いだ紙容器の企画・製造販売、和紙雑貨事業の継承と改革に取り組む。人手不足の解消に人材協同組合を設立、社内物流の改善とともに新たに運送事業を展開している。
最後の晩餐は、家で家族と食べるしゃぶしゃぶ。

世代を継いで愛される鱧・ふぐ料理が自慢の割烹。京都の風情の中で温かなもてなしを

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四条大橋の西に、西石垣(さいせき)通という短い小路がある。江戸時代、鴨川西岸に築かれた石垣の堤防を西石垣と呼んだのが名前の由来とされ、今は大分様変わりしたものの、京都らしさを感じさせる一角となっている。

この中の一軒に、鈴木さんが通う老舗の割烹「由兵衛」がある。

「夏の鱧と冬のふぐがメインですが、単品で季節の魚も出してくれるので魚が食べたい時は行くお店です。おいしくて雰囲気もいいので、接待などで使うほか、社員を連れて行ったり、友達や家族と行ったり、月に1度は利用しています。大将をはじめ大女将や若女将とも仲良くさせてもらっています」(鈴木さん)

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「由兵衛」は昭和10年創業。3代目主人の仲井雅之さんの祖父が一条戻り橋で仕出し屋を始め、昭和20年に今の場所へ。昭和30年代にふぐを扱うようになるまでは、すき焼きやうどんなどの定食を提供していたという。

「まだ食材がない時代で、あるものでお客様に喜んでもらうというのが祖父の考えだったようです」(仲井さん)

そして、父・芳信さんの代で、ふぐ・鱧料理を中心に筍、若鮎、松茸など季節の京料理を出すかたちになったが、初代の「お客様に喜んでいただくことが一番」との思いは今も引き継がれている。

100年以上の建物は、1階はカウンターに、小さなテーブルと小部屋、2階は大中小の部屋を備える。数寄屋造りの趣ある部屋は、大切な人との会食や接待などにもお薦めだ。

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鈴木さんとこの店との出合いは、1213年前のことだという。

「なじみの祇園のバーで、隣に座った大将と知り合い、お店に行くようになりました。実は祖父母が初見合いをしたのがここで、僕も小さい頃、連れられて行ったことがあったようです」(鈴木さん)

「鈴木さんは共通の友人も多く親しくさせていただいています。おばあさんたちが来られたのは初代の頃ですが、ご縁を感じます。僕のほうが年上ですが、話をしていても教えてもらうことが多く、同じ経営者としても刺激を受けています」(仲井さん)

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鈴木さんがよく利用するという2階奥の茶室風の小部屋。

「仕事の商談など、少人数で真剣に話をするのにちょうどよい距離感で使いやすい。この部屋も気に入っている理由の一つです」(鈴木さん)

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新鮮で良質な素材をシンプルに活かした人気のふぐ・鱧料理。鱧は淡路島産、トラフグは下関や安乗などでとれた天然ものを吟味して仕入れる。

「ふぐは骨回りがおいしい魚なので、骨がかちっとした2.5キロくらいのものを選んでいます」(仲井さん)

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ふぐ・鱧、京会席などのコースのほか、季節の一品もさまざま揃う。鈴木さんは酒のアテを多めに、コースにならった流れで料理を出してもらうそうだ。

鈴木さんの一番のお薦めは「鱧しゃぶ」(写真は12000円のコースより)。

「いろんなところで鱧しゃぶを食べますが、ここはダントツだと思います。だしも骨から丁寧にとっていて本当においしい。連れて行った人にも好評で、シーズンになると皆行きたがります」(鈴木さん)

「だしで食べていただきたいと考えているので、だしには特に気を遣っています」と、仲井さん。鱧のアラを炭火で焼いて煮出し、鰹節、鯖節、玉ねぎを加えてとった鱧しゃぶのだしは、クリアかつ余韻が残る味わいで、飲み干したくなるほど。淡白な鱧や京野菜、生麩などの具をバランスよく引き立てる。お好みで柚子胡椒を加えてもおいしい。

鱧しゃぶの後には雑炊かにゅうめんを楽しめる。

「希望される方にはハーフサイズで両方お出しすることもできます」と、若女将の尚子さん。

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12000円の鱧しゃぶコースに付く鈴木さんお薦めの「造り」。淡路の天然鯛、塩釜の中トロ、淡路の鱧の焼霜などの定番に、長崎の車エビなどその時々の鮮魚が盛り込まれる。

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これからの季節はやはりふぐ。特に白子炭火焼や焼きふぐが人気で、鈴木さんも鍋と共にお気に入りだという。自慢の「焼きふぐ」は、試行錯誤を重ねてできた自家製ポン酢とたまり醤油をブレンドし、山椒や七味を加えたたれで味付けしている。

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香ばしく、ふっくらと焼いた肉厚の身は、味わい深く、程よい酸味が重さを感じさせない。弾力のある皮の食感もたまらない。12500円からの天然活ふぐコースや単品で楽しめる。

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日本酒は、桃の滴、玉乃光、城陽などの京都の地酒のほか、十四代、〆張鶴など全国の人気銘柄も揃える。お酒が好きで、何を飲みたいかで店を決めるという鈴木さん。ここではいつも富山の「立山」を楽しむそうだ。

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京都の人々に長く愛されてきた同店。その家庭的な雰囲気に惹かれて通うファンも多い。

「接客を担当する若女将は笑顔が素敵なべっぴんの奥さんで、すごく明るくて話しやすいのがいい」と、鈴木さん。

その言葉に、「ありがとうございます。何差し上げよう()」と、尚子さん。

もてなしについては、部屋ごとにお客の雰囲気も異なるため、その場に合わせた対応を心がけていると話す。

「鈴木さんのお部屋は明るく朗らかな感じ。私も楽しい雰囲気になるようお話をさせていただいています」

鈴木さんは、京都の店の魅力は、「一度仲良くなれば、何回でも会いに行きたくなる雰囲気があるところ」だという。この店もまさしくそんな一軒といえる。

予算は昼4000円、夜1万円くらいから。

撮影 エディ・オオムラ  文 山本真由美

■由兵衛

京都市下京区西石垣通四条南入
075-351-1053
営業時間 12時~14時、17時~22時(LO)
定休日 月2回不定休
http://yoshibe.com/