BLOGうつわ知新2021.05.06

呉須と呉須赤絵3

備前や織部、古染付といった焼物ごとにうつわをご紹介。京都・新門前にて古美術商を営む、梶古美術7代目当主の梶高明さんに解説いただきます。 さらに、京都の著名料理人にそれぞれの器に添う料理を誂えていただき、料理はもちろん器との相性やデザインなどについてお話しいただきます。

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梶高明

梶古美術7代目当主。京都・新門前にて古美術商を営む。1998年から朝日カルチャーセンターでの骨董講座の講師を担当し、人気を博す。現在、社団法人茶道裏千家淡交会講師、特定非営利活動法人日本料理アカデミー正会員,京都料理芽生会賛助会員。平成24年から25年の二年間、あまから手帖巻頭で「ニッポンのうつわ手引き」執筆など。 全国の有名料理店と特別なうつわを使った茶会や食事会を数多く開催。

今月のテーマは「呉須と呉須赤絵」です。

400年以上も前に中国で生み出された歴史あるうつわについて、梶さんに解説いただきました。1回目は呉須と呉須赤絵の歴史やなりたち。そして2回目はそれぞれの器の見方や解説。
そして、3回目は、イル・ギオットーネの笹島保弘シェフとのコラボレーションです。
笹島シェフが歴史あるこの中国のうつわに現代的なイタリアンを盛り付けてくださいます。

「呉須と呉須赤絵の世界」をお楽しみください。

呉須&呉須赤絵とイタリアン

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 これが「呉須または呉須手」と呼ばれる漳州窯の染付です、写真が美しく撮られていて上手く相違点が伝わらないのですが、景徳鎮の古染付に比べて厚手にできています。色素に含まれる鉄分が多いのか染付の色は沈んだ青が特徴です。またこの「呉須または呉須手」は沈んだ濃い青色こそがその特徴です。沈んだ青のおかげでうつわに重厚感が生まれているようです。
 「呉須または呉須手」は白磁の白部分もややくすんだ白色なのです。ここでうつわの裏面の写真があるのでご覧ください。

呉須と呉須赤絵2より

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ウニとそら豆 そら豆型パスタを添えて

「美しい染付のうつわにインスピレーションを得て、初夏の自然を表現しました。

 耳たぶのような形をしたオレキエッテというパスタを、よりそら豆に寄せ、そら豆とともにウニのソースで和えています。

 日本ではパスタというとスパゲティのようなロングパスタが好まれますが、イタリアではこのオレキエッテのようなショートパスタも日常的に食べられています。凹凸があって、ソースがよく絡むのです。

 今回は緑が映えるオレンジのソース、初夏の芽吹きを感じていただける料理にしました。

 自然体で心のおもむくままに盛り付けてみました。」

笹島シェフ

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 呉須赤絵の鉢です。染付の「呉須」の鉢に盛られた料理に比べて、「呉須赤絵」に盛られた料理はずっと華やかに見えると思いませんか。
 やはり暖色系の色合いのうつわの方がお祝い気分を盛り上げるというのでしょうか、料理を引き立てているようです。この鉢は骨董品や美術品としてとしては全く評価が低いのですが、強い筆使いも、やや黄色みがかった白磁の部分も逆に料理を引き立てているように思えるほどです。やはりうつわの良し悪しは、鑑賞品としての評価とは別物なのだと気付かされます。

呉須と呉須赤絵2より

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オマールと紫蘇のカプレーゼ

「この鉢を見たときに、同じような赤い色の料理を盛ろうと思いました。
 赤絵の鉢にすっと添うような料理です。

 オマール海老は、脱皮前の5月6月が、身がしまって美味しいと言われます。火を入れ過ぎず、旬の旨味を味わっていただきます。

 オマール海老の下には、こちらも初夏から美味しくなる茄子を潜ませています。赤紫蘇のジュースをジュレにしてソースにしました。

オマール海老には赤紫蘇と青紫蘇のマイクロリーフ、ブラッターチーズにはキャビアを添えて食感や風味も楽しんでいただく一皿です。」

笹島シェフ

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笹島保弘

ローマへ渡伊後、京都「ラヴィータ」、「イル・パッパラルド」両店でシェフを務め、2002年に独立し、「イル・ギオットーネ」をオープン。東京丸の内店や大阪グランフロント店のほか、ワインやイタリア食材のショップ「オフィチーナ イル・ギオットーネ」も展開。テレビ、雑誌などメディアでも活躍している。

イル・ギオットーネ

関西イタリアンの名店として人気を誇るレストラン。笹島保弘シェフは、京都の素材を活かした京イタリアンの先駆者としても知られる存在。上賀茂の農家でとれた伝統の京野菜や鱧など、厳選した食材を巧みに融合させたイタリア料理は、これまでにない素材の組み合わせの妙を存分に楽しめる。

■イル・ギオットーネ京都本店

京都市東山区下河原町塔ノ前下ル八坂上町388-1
電話:075-532-2550
営業時間:12時~14時、17時~19時半(いずれもL.O.)
定休日:火曜、水曜