BLOG京都グルメタクシー2019.07.29

おいしい京都案内 | ここでしか食べられない名物メニューがあるお店

By岩間孝志

フランス料理の修業経験を持つ「京都グルメタクシー」ドライバーによる、隠れ家京都グルメ案内【京都グルメタクシードライバー日記】。今回は、そのお店でしか食べられないオリジナルメニューが味わえるお店「京彩和食こばやし」と「チャイナ・テーブル エソラ」をご紹介します。

7月といえば祇園祭りですね。祇園祭りの山鉾巡行は17日と24日にありまして、7月に入るとあちこちで盛んに囃子手の音が聞こえてきます。「グルメタクシーさん、祇園祭りはタクシーの貸し切りでお忙しいのですよね!」とおっしゃる方は多いのですが、実は私自身が祭りに参加して「曳き手」を担っており、お仕事はお休みしています。

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私が参加する後祭り(7月24日)の巡行は朝7時から昼3時ごろまで。写真の南観音山の綱をもって練り歩き、新町通り→御池通り→河原町通り→四条通り→新町通りという順で、出発点に戻ります。すでに17年連続で参加させていただいており、このご縁で妻と出会うなど、いろいろな思い出があります。「疫病の被害を止めたい」「怨霊を鎮めたい」という願いのもと、始まった神聖な祭りごとです。これからも世界が平和で、皆さんが健康であられますことを願って参加したいと思っております。

「京都知新」サイトをご覧の皆様だけに、「山鉾巡行のベストスポット」をご紹介いたします。

観光客が多い河原町御池と四条河原町の交差点では「辻回し」という山鉾が90度転回する場所があります。ここは有数のカメラスポットですが、早朝からアマチュアカメラマンさんなどが場所取りされ、彼らに占領されてしまいます。

早朝の御池新町、室町、烏丸通り交差点付近は比較的見学者も少ないベストスポット。歩道も広いのでゆったり辻回しを見ることができます。また最初の転回地点で威勢のいい曳き手の様子をご覧いただけます。前後の隊列を組みなおすために鉾と山が順番交代するので、その作業もこの界隈でゆっくりみることができます。

あとは室町通り、新町通りの間を抜ける帰りの道程ですね。狭い問屋街を四条通から入ってくる山鉾を町内で歓迎する時は、ナポレオンの凱旋帰国パレードのような拍手に迎えられます。最後に三本締めで終了。この光景はぜひ動画でも撮っていただきたいですね。

 こんにちは!京都グルメタクシーの岩間です。車に乗るだけで、あなたにとっての「おいしい京都」をご案内いたします。今日は夏の暑さも吹き飛びそうな「この店にしかないグルメ」2軒ご紹介いたします!

 一軒目は「祇園祭り」つながりのお店です。「油天神山」「太子山」から歩いて10分程度、堀川通りをこえた猪熊通りに面している「京彩和食こばやし」をご紹介いたします。山鉾見学の前後にちょうど立ち寄れる立地がうれしいですね。

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 辻調理師専門学校は私の母校ですが、現役の教授から「京都に料理学校の元先生がやっておられるおいしいお店がある」とお聞きしました。同じ学校でも知らない先生がやっておられるのかなって思っていたら、とんでもなく身近な先生でした。

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 昼ご飯は 1050円からで、3000円のコースは要予約。今回いただいたのは1670円のコース。値段はかなりリーズナブルです。夜はちなみに3900円から10000円まであります。本日は1670円のコースをご紹介します。

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小鉢 あつあげとうるい ごまだれ
小鉢 きんぴら ごぼう 九条葱 

穴子押寿司

大皿 卵焼き(海老) スモーク新じゃがいも+山葵クリームチーズ
はじかみ 生麩 蛍烏賊 アスパラの生ハム巻き 桜餅

造り 鯛の昆布締め 野菜 かいわれ 茗荷
煮物 筍 鰆 蕗

 京都の旬の盛り合わせ。いいとこ取りでしょうか。非常にバランス良く構成されています。料理学校だけでなく京都の有名料亭にもおられたので、その経験がしっかり生かされたお料理、目でも楽しめます。

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 「うるい」というこの時季(5月)の食材も使われるなど、低価格にも関わらず季節感も盛り込まれています。

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 桜餅を添えるなど、美しく飾り付ける技が冴えています。
 さて、「このお店にしかないグルメ」はここまでの写真の中にありますが、わかりますか?

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 「特製穴子の押寿司」

 これなのです。穴子と鮨飯の間に挟まれているのが、「クリームチーズ+奈良漬け」という奇抜すぎる具材。これを隠し味にするお店はほかにあったかどうか。

穴子寿司は一般的なものですが、クリームチーズを加えることで、ぐんと味わいが変わります。店主は、「試行錯誤の末、この味に到達した」とおっしゃいますが、なかなか普通ではたどり着かない組み合わせでしょう。

 味わいは、通常の穴子寿司より濃厚。チーズがはいっていることは最初は感じられませんでした。けれど、噛みしめるうち、追うようにチーズの風味がやってきて奈良漬けの酸味もほのかに感じ取れます。奈良漬けは、後味をすっきりさせるためのアイテムかもしれませんね。クリーズチーズは穴子のさっぱりした味に旨味を持たせる効果があったのではないか?と後で感じました。

店主は「チーズ抜いてくださいと言われてもお断りします」と頑なで、気合いがはいっているなあと思いました。

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 ととろ昆布 うめぼし すだちの小うどん

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 抹茶アイス 

 今年で8年、9年目に入ったそうです。29年ぶりに店主の児林料理長とはお会いしましたが、当時の印象そのままで、ご夫婦でがんばっておられます。料理人の経歴は料理にあらわれると私は思います。料理学校で培われた研究心があの穴子押寿司を誕生させたのだと思いました。次は夜に伺います!

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 落ち着いた空間で、ほんと、ほっこりできました♪

 さてもう一軒のお店は伏見にあります。祇園祭の中心地、京阪祇園四条駅から藤森駅へ。今年5月にOPENした新店をご紹介いたします!「チャイナ・テーブル エソラ」は親しくしていただいているイタリアンの料理長から紹介されたお店です。店主の山内さんは、祇園の有名中華料理店で腕を磨き、各所で修行を重ねた料理人です。人気フランス料理店のepice(エピス)」を修業の場として選んだことで、料理を「オリジナルグルメ」に昇華させました。

●山内料理長経歴
19才、赤坂維新號の京都店點心茶室で修行開始
27才、際コーポレーション祇園新橋月居(現白碗竹快樓)
29才、高島屋内、香港私菜リパルスベイ料理長
35才、レストランエピス
最終 點心茶室に復帰
5月esora開業。

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 京阪藤森駅の近くの閑静な住宅街の一角で、すこし入り組んでいるわかりにくいところです。周辺に有料駐車場はたくさんあります。玄関の赤い掲示板が目印ですね。

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 ランチはこの4種類ですが、C以外は定番です。中でも特徴ある料理がAの金華豚の焼き酢豚」です。「え? 「焼き」が入るのですか?」 と聞いてみたくなりますね。それとパンとポタージュ? 「これはフランス料理じゃないですか」とちょっとワクワクしてきますよね。

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 とりあえず、気になる「焼き酢豚」のランチメニューをお願いしてみましょう!

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小さな前菜三種
ミニトマトの白ワイン漬け 
スモークサーモン椒麻(ジャオマー)ソース
自家製チャーシュー

 白ワイン漬けのトマトは、アルコールは抜かれているものの、ワインの風味はしっかり残っています。和え物、チャーシューも塩気があり、ちょっとしたおつまみになります。

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 広東焼売 海老焼売

 海老焼売は「ぷりっぷり」という表現がぴったり。広東焼売のほうは、具材の旨味がしっかりでています。どちらも丁寧につくられています。

P1100120.JPG 新ジャガイモのポタージュ

 クリーム感よりも、理想的な澄みきった味です。中華の領域ですが、フランス料理のビシソワーズに通じる上品さを感じます。舌触りはなめらかそのもの。提供する温度を考え抜いた塩気の調節も見事です。

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 パンがでてきます。ここがフランス料理っぽいところで、コースの随所にその特徴を垣間見ることができます。

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 金貨豚の焼き酢豚 その「焼き」とは?

 酢豚?これがすぶた?という感じですね。店主曰く「焼き野菜と焼き肉です!」「新酢豚とおもってください」と少々苦笑い。中華を学んだあと焼くことへの興味が増し、フレンチにすすまれたそうです。洋食の技術も会得したかったのでしょう。その成果が、しっかりこのメイン料理にでています。ソースは黒酢ベースになっていて、すくってつけてはじめて「酢豚」だと感じました。この豚だけでも、十分ほどよい塩気があり、美味しくいただけます。こういうハイブリッドなテクニックが、伝統ある風味との相乗効果を生み、新たな味をつくりあげます。

古き良き味と新しきテクニック、そして中華とフレンチの融合は見た目も味も変化させるのです♪

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 肉汁がしっかり中にとじこめられ、食べるとジューシーさが広がります。すこしロゼを帯びた色めを生むこの火入れから、フレンチの技がわかります。料理人の経歴が、そのまま表現されたすばらしい料理ですね。

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 料理の盛り付けも放射状でフランス料理的、付け合わせは季節野菜です。

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 お茶も上質で自然の甘味があります。 
この後は、ランチコースメニューのなかから料理を抜粋してご紹介いたします。

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 「麻婆豆腐(平日限定)」 950

もっとも安いコースです、平日限定。この麻婆豆腐がマイルドな辛みなのです。

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 彩りサラダ 

新鮮野菜の持ち味がいかせるように軽い味付けで仕上げています。

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 どちらかというとラー油などのソースは少なめ、その分具材に味わいがしみこんでいて豆腐を包み込むような濃度です。辛めですが味わいはマイルド。人によってはご飯をお代わしてしまうからさ。けれど、辛党の私にとっては、これでも中辛程度。山椒の辛さも爽快です。まさに「ごはんがすすむ」味。どこかの佃煮のようですが、この言葉がばっちり合う塩梅に仕上がっています。

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 「手作り点心の飲茶」1500

こちらも興味深いランチメニューです。
写真は点心だけご紹介いたします。

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 海鮮春巻きと揚げ大根餅

 さくさく感ともっちり感の代表格。その特徴をしっかり保っている想像通りのおいしさです。とくに大根餅は触感が優れています。もっちりした歯ごたえはあるものの、口の中で溶け出し、するっとのどを通ります。淡い塩味の妙技です。

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 焼き餃子生駒エソラ風

肉汁をしっかり含んでいて、生地には潤いがあります。焦げた表面の香ばしさが特徴。

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 この日は文山包種茶(ぶんさんほうしゅちゃ)というお茶をいただきまいた。飲茶スタイルのこのコースは、さらに「蒸し点心」「雑穀粥」「彩りサラダ」もついています。

 そして最後に「もう一つのお楽しみ」、デザートです。追加300円で珈琲などの飲み物とデザートがつきますので、ぜひそちらも追加で頼んでみてください。

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 杏仁豆腐 (+300円追加で飲み物も含まれます)

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 マンゴープリン (こちらも杏仁豆腐と同様の料金)

 昨今、麻婆豆腐は寒天交じりの味のうすいタイプも増えましたが、ここのものは濃厚マンゴープリンも試行錯誤して改良され、先日伺った時は店主自慢の作品になっていました。「マンゴーの酸味」をコントロールできる食材選びや技法が確立したという、完成度の高い味をぜひ試してみてくださいね。

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 店主の山内さんは子育てもがんばっておられるイクメン。私が乳児含め子供3人を連れて家族5人で訪問したときは、ベビーカーもいれてくれました。一流の味を家族で気持ちよくいただけるお店です。

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 本日の「この店にしかないグルメ」特集はいかがだったでしょうか!毎日いろいろなお店で食べ歩いていると不思議な料理に出会い、ここだけしかない!お菓子を発見するなど、様々なサプライズがあります。奇抜だけではない、それぞれの由来をひきだすなど、良質なグルメをこれからもご紹介したいと思っております。どうぞ次回も楽しみにまっていてくださいね!それでは、皆様!!

よろしかな~!よ~いとせぇ!え~んやらや~!お~!

※南観音山の曳き手への掛け声と相づち
「よろしいですか!それでは、いきますよ~!はい!」の意味

※価格は取材当時のもの

■京彩和食こばやし

京都府京都市下京区猪熊通り四条下る松本町283
075-201-7722
11:30~14:00、17:00~21:30
定休日水曜日(月に1回不定休あり)
2011年6月5日開店

■チャイナ・テーブル エソラ

京都市伏見区深草西浦町5丁目38 マリンハイツ1F
075-606-1771
11:30~15:00(LO14:00)、17:30~22:00(LO21:00) 
定休日不定休(いまのところ設定されてません)
駐車場なし 近くに多数有料Pあり
2019年5月開店
持ち帰り 唐揚げ5個 500円(税込み)、油淋鶏丼 600円(税込み)

岩間孝志いわまたかし

1968年・東京生まれ 70年・京都市伏見区に移住 91年・辻調理フランス校へ留学 現地レストラン研修後帰国、京都ホテルグループで勤務。その後タクシー会社勤務、途中バックデザイナーを経てタクシー業界に復帰、2010年・法人タクシーで「京都グルメタクシー」を旗揚げ、2015年・個人タクシーとして独立。著書に「おいしい京都」「もっとたべたい京都」PHP研究所)があり、現在は京都府文化観光大使としてテレビ、ラジオ、雑誌等で活躍している。

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