京都在住の美人&イケメンにお気に入りのスイーツ、デザートを教えていただく企画。今回は、スモールラグジュアリーホテル「東山 四季花木」のオーナーの北山ますみさんに『大極殿本舗 六角店 栖園』の「琥珀流し」についてお話しいただきました。
推薦人:北山ますみさん
2019年にオープンするスモールラグジュアリーホテル「東山 四季花木」のオーナー。インテリアデザイナーとしての経験を生かし、女性が心地よく滞在できるホテルづくりを実現する。
きらり透き通るような夏の甘味が涼を呼ぶ
大極殿本舗 六角店 栖園
六角通に建つ風情ある京菓子の店、「大極殿本舗 六角店」。真っ白な暖簾が清々しく出迎えてくれるこの店は1885年創業。カステラ「春庭羅」をはじめ、四季折々の創意溢れるお菓子を作り続けています。
この建物は築約140年の町家。奥には甘味処「栖園」を設けてあり、季節の和スイーツを楽しむことができます。
どっしりと風格ある「大極殿本舗 六角店」の外観。軒下に掛けられた小さな白い暖簾は夏だけのもの。これが掛かると夏の訪れはすぐそこまで来ていることがわかります。
中でもこちらの人気の名物スイーツが「琥珀流し」。糸寒天を使って、柔らかくつるんとした喉越しに仕立てた琥珀寒天に、自家製の蜜をかけていただくもので、自家製の蜜が月ごとに変わります。
4月の桜をはじめ、6月の梅酒、7月のペパーミント、8月のひやしあめ、9月のぶどうなど、毎月、これを楽しみに訪れるリピーターも多いのだそう。
「六角店ができた時に、何かオリジナルの味をということで"琥珀流し"を考案しました。寒天のお菓子はあんみつなど、少し硬めの仕上がりが多いのですが、柔こうて、でもつるんと喉越しの良い寒天菓子を作りたくて...。なんども試作してこの味が出来上がったんです。お店に出したのが4月でしたので、桜の塩漬けの花びらを散らしたら、見た目も綺麗で、桜の香りとほんの少し感じる塩味が蜜とよくあって大好評で...。桜が終わってからどうしようといろいろ考えるうちに、月替わりの蜜でお出しすることになったんです」と、四代目主人の奥様の芝田泰代さん。
ガラスの器に盛られた琥珀流しは、ぷるぷる揺れるように柔らかで、時折木らっと輝いてとても綺麗。取材時は梅の蜜がかかっていましたが、梅の芳香と甘ずっぱさが爽やかな余韻を感じさせて、梅雨のじめっとした空気が、さらりと変わって、軽やかに感じることができます。
透き通るような美しい寒天と季節の自家製の蜜だけというシンプルなスイーツ。
寒天の柔らかさは気温によって左右されるので、細心の心くばりでぷるん、つるんとした食感に仕上げるようにしているのだとか。シンプルだけに素材の良さと技が引き立つ一品です。690円(税込)※価格は取材当時のもの
「このお店には一人で来ることが多いですね。午後から混んでくるのでお昼頃に伺って、お庭が見える席でゆっくりお菓子をお茶をいただくんです。"琥珀流し"はまず寒天の食感が素晴らしくて...。ぷるんと柔らかくて、すっと喉を通っていって、涼やかな気分になれるんです。毎月、蜜が変わるんですが、6月の梅と9月のぶどうはとくにお気に入りです」と北山さん。
風情ある甘味処の室内。坪庭を眺めつつ、時を経た町家の空間で、静かな時を過ごせます。
大極殿本舗は日本製としては第一号の電気釜をお菓子作りに取り入れるなど、進取の精神に富んで、独創的でありながら京都らしい雅味あるお菓子を作り続けています。店内に残る大理石の大きな看板や螺鈿をあしらった菓子箱など、伝統ある京菓子の店として、日々、どんなことを大切にしているのでしょうか。
「奇をてらうことなく、無理をせず、流行りすたりではなく、いつものうちのあの味をご提供したいと主人ともども考えています。そこに季節感を添えて、いつも"一番美味しい味"を作り続けていきたいですね。お菓子はなくても生きていけるものかもしれないですが、心に潤いを与えてくれるもの。そういう味をお届けしていきたいです」
店内のあちこちにディスプレイされた夏の干菓子や、あゆのお菓子など、季節を映す美しいおもてなしに夏の到来を感じます。
ホテルのオープンを控えて多忙の日々を過ごしている北山さんにとって、ここでのひと時はとても大切なものだといいます。とくに心和むのは、変わらぬお菓子の美味しさといつも店にいる奥様の存在だそう。
「ずっと変わらず店に出ておられて、微笑みを絶やすことなくおられる様子を見ているだけで、心がほっと和むんです。お勘定の時に季節のご挨拶を交わす程度なのですが、それだけで、また仕事を頑張ろう!って、思えるから不思議ですね。老舗のお菓子屋さんなのに、高ぶることなく、さりげなくおもてなしをしてくださること、奥様がいつも変わらぬ丁寧な接客をされていることなどがとても素敵だと思います。情趣ある空間もとても心地いいですね」
北山さんの言葉通り、店内にいるお客さんも、それぞれ好みの甘味をいただきながら、ゆっくりと町屋の風情を楽しんでいる様子。
心をこめて作られたものは、こちらの心にもしっかりその思いが伝わってきます。午後のひと時、丁寧に仕立てられたスイーツをいただくのはとても幸せな時間。暑い夏の京都で、ひんやり涼感溢れるスイーツをぜひ楽しんでみてください。
取材・文/ 郡 麻江
写真/竹中稔彦
■大極殿本舗 六角店 栖園
京都市中京区六角通高倉東入ル南側
075-221-3311
10:00〜17:00、 物販は9:30〜18:30
休 水曜