BLOG京のほっこり菜時記2020.01.13

「白味噌」

By中井シノブ

飲食店取材1万軒を超える京都在住のライターが、時々の「うまいもの」を歳時記的につづる【京のほっこり菜時記】。 今回は京料理や京のお雑煮に欠かせない「白味噌」をご紹介します。

京都に暮らしていると、お雑煮はもちろん、冬のお椀に白味噌が使われることが多いから、こっくりとして甘味がある白味噌汁になじみがある。
ところが、関東の方は、白味噌椀を普段それほど口にすることがなく、最初はあの濃厚でまったりとした味わいに目を丸くされる。
「美味しい!」と言う人もいらっしゃるが、濃厚過ぎて「苦手」という人もときにおられる。

かくいう私も、京都の老舗料亭で味わった「白味噌雑煮」の美味しさに心奪われ、白味噌汁の見方が変わったひとり。だしではなく水に白味噌をといただけというそのお椀は、とろりとした口当たり。けれども、甘すぎることなく喉をすうっと通っていく。焼いた丸餅に辛子を少し。それらが一体となって、ほかにはない味わいになっている。このお椀に出合って以来、白味噌椀は私の好物のひとつになった。

ところで、みなさんのお家のお雑煮はどんなものだろう? 関西は白味噌が多いが、関東では、おすましだろうか。

ご存知のように、京都は基本「白味噌雑煮」。それぞれの家によって具材や作り方は違うけれど、一般的なのは、丸餅に頭芋、祝い大根と白い具材ばかりに、昆布出汁に白味噌をといた汁をはる。仕上げに花鰹や糸鰹をぱらりとかけ、鰹の風味も楽しみながら味わう。

白味噌は、平安時代に京都で生まれたといわれている。貴重な米麹をたっぷり使ってつくり、宮中の有職料理に用いられていた。その後、室町時代になると精進料理にも使われるようになり、それが懐石料理や京料理へと広がっていく。

貴族の嗜好に合わせてつくられたこともあって、塩分が少なく甘め。熟成期間が短いため賞味期間も短い。だから大量には造らず、毎日販売する分だけをつくり仕込む作業を繰り返すという。手間暇のかかる調味料なのだ。

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京都の料理、特に冬の汁物などに白味噌は欠かせない。お雑煮、蓬麩の白味噌椀、ふろふき大根、粕汁、白味噌鍋、白和え、魚の白味噌漬けなど。料理屋だけでなく、家庭でもさまざまな料理に使われる。白味噌グラタンやクラムチャウダーなど熱々をふうふうして食べると、その甘味や濃厚さに癒される。

我が家では、冬の野菜鍋は白味噌仕立てだった。これに豆乳を加えると、まるでシチューのようで。白味噌鍋の日は、なんだか嬉しかった。

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最近、「こんなところにも白味噌が!」と驚いたのが、たまごサンド。
四条烏丸からすぐのサンドイッチ店「ロッカ&フレンズ パピエ キョウト」を訪ねたときのことだ。
店長の入江さんは、「京都でたまごサンドというとオムレツサンドのイメージがあったので、あえてたまごサラダに。それも白味噌や柴漬けなどを合わせて京都らしさをだした」と言う。

8cmほどもあるたまごサンドは、食べごたえ十分。素直な味わいのたまごサラダにシャキシャキ野菜。白味噌や柴漬けがアクセントになって、面白い。案外ビールにも合うかもと思いながら、大口を開けて頬張った。

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2018年6月に町家を改装して開店したこの店。たまごサンドのほか、季節のフルーツサンドやスムージーもあって女子に人気。だが、おひとり男子の客も以外と多い。食の嗜好に男女差なんていうものは、そもそもないのかもしれない。

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持ち帰りもできるので、たまごサンドとフルーツサンドを詰め合わせてもらえば、上等の手土産になる。こんなお土産をもらったら、かなり嬉しいだろうなあ。

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■ROCCA & FRIENDS PAPIER KYOTO

京都市下京区新釜座町735‐2
075-744-6688
10:00~18:00
休 月曜(祝祭日の場合は翌日休み)

中井シノブ

京都の情報誌編集長を経てライターに。飲食店取材1万軒。外飯、外酒がライフワーク。著書に『京都女子酒場』(青幻舎)、『京の一生もん』(紫紅社)などがある。