BLOG料理人がオフに通う店2021.09.22

「焼肉 文屋」-「ぎおん 佐藤」佐藤龍幸さんが通う店

「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は「ぎおん 佐藤」の佐藤龍幸さんが通う「焼肉 文屋」をご紹介します。

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「ぎおん佐藤」の主人、佐藤龍幸さん

 祇園で長年親しまれている【ぎおん 佐藤】。築150年の町家を改装した情緒ある空間で、ゆったりとくつろいで食事が楽しめる。「寿司割烹」でよく知られており、旬の食材をふんだんに使った割烹料理のあとは、丁寧な仕事を施した寿司を堪能する。主人の佐藤龍幸さんは熊本県出身。九州の和食店で料理人としてスタートし、その後、京都や大阪のホテル、和食店などで修業を積む。京都ホテルオークラで寿司カウンターを13年経験したのち、独立して「ぎおん 佐藤」をオープン。割烹と寿司のどちらも専門的に学んだという独自の経験を活かした「寿司割烹」を打ち出し、季節感溢れる割烹料理とともに多くのファンの舌と心を掴んでいる。

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木目が温かく、広々とした店内。BGMのジャズが耳に心地よく響く。

  梅小路公園のすぐ近く、車の往来が賑やかな七条通に面した「焼肉 文屋」。テーブルの上にはロースターがずらりと並び、いかにも町の焼肉屋さんらしい雰囲気に、BGMのジャズが不思議とよくマッチしている。

 主人の岩村文植(ぶんしょく)さんは、京都の出身。実家の料理店を手伝っていたことから料理の道を目指した。有名ホテルの名門中国料理店で修業し、四川・北京・香港料理など、中国料理を幅広く習得した。独立を考えたとき、まず自分が大好きな焼肉店を出したかったと笑う。「みんなでワイワイと食べる焼肉が好きで、気取りがなくて、家族や友人同士、寛いで楽しんでいただき、その喜ぶお顔に直接触れることができる、そんな店にしたいと思いました」と2009年11月にこの店をオープンした。

「まず素材の肉がいいので誰を連れて行っても喜んでもらえる自信がありますよ。私のお勧めは、上タン塩と、あっさりして旨味があるハラミの安い方(笑)と、あとはホルモンです。焼肉といえば、ここ!と決めています」と推薦者の佐藤さん。休日などに家族で焼肉を楽しみにいくという。

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佐藤さんおすすめの赤身のハラミ1,280円は、切り口さえも瑞々しく美しい(価格はすべて税込)。あっさりしながらも肉の旨味が満ちている。

焼肉の生命線である肉は、それこそ岩村さんが各地の和牛を試して、吟味に吟味を重ねたもので、今は九州の鹿児島や宮崎を中心とした黒毛和牛を「おいしい肉をたっぷりと、安心な価格で楽しんで欲しい」と一頭買いして、提供している。
岩村さんがおいしいと思う肉は、「ロースやカルビは、脂にあっさりとした甘みがあって、肉の旨味とコクがぎゅっと詰まっているもの。ハラミなどの赤身は肉々しい旨味に満ちているもの」だという。

 品書きにはタンやロースなど「厚切りメニュー」も多彩に揃う。良い肉だからこその自信がそこにあるのだろう。

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上タン1,380円。サシが細やかに入って、見るからに食欲をそそる。

ザブトン、ランプ、カルビ、ロースの各部位2カットの四種盛りや、クラシタ、特選カルビ、焼きしゃぶサーロイン、厚切りカルビなど特選四種盛り、厚切りタン盛りなど、自慢の肉は「肉盛り」として、好きな部位をカット×人数分で注文もできる。迷った時は、ここから注文すると良い。長年の付き合いのある大阪の肉屋さんから黒毛和牛を「どーんと仕入れしているので(笑)」、希少部位もたっぷりと用意できるそうだ。

果物や野菜をたっぷりと使った醤油ベースの2種のタレを用意している。さらりとした洗いダレと濃厚なタレ。肉の種類やお好みで使い分けていただく。タレに自家製調味料のヤンニンやネギ油などを混ぜ合わせるのも楽しい。

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人気のホルモン。写真は上ミノ980円、テッチャン980円、ホソ780円を盛り合わせている。新鮮で艶々としている。

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肉を待つ間にビールとともに楽しみたいアテも豊富。もやし、ゼンマイ、小松菜のナムルは母、津康子(つやこ)さんのお手製で家庭的な旨さには定評がある。ユッケも人気だ。

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自家製タレ2種。あっさりとした「洗いダレ」と濃厚ダレはお好みでどうぞ。

旨い肉とアットホームなもてなしで、リピーターもどんどん増え、2軒目となる「西大路八条店」をオープン。こちらもいつも賑わっている。

岩村さんはなんと11月頃に梅小路のレトロビルに、ちょっと洒落たチャイニーズレストランを開業する予定だという。

「もともとが中国料理出身ですし、その経験を生かして、新しい食空間を創ってみたいと考えています。街場の中華店とは少し違って、女性同士でも来やすくて、いろいろな種類の料理をリラックスして楽しめるような店を企画中です」

 京都の食シーンにまた楽しい変化が生まれる予感。岩村さんの新たな構想も目が離せない。

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従業員の小島亘さんと母、津康子(つやこ)さんと。息のあった仕事でもてなしてくれる。

■「焼肉文屋」

京都市下京区朱雀内畑町2-3
075-311-2915
営業時間17:00~23:00
定休日・木曜日
予約・ベター

撮影/竹中稔彦 取材・文/ 郡 麻江