「旨い店は料理人に聞け!」京都を代表する料理人がオフの日に通う店、心から薦めたいと思う店を紹介する【料理人がオフに通う店】。今回は「すし甚」主人、西川政明さんが通う「聖護院嵐まる」をご紹介します。
「すし甚」西川政明さん
16歳からこの道に入って50年以上。昭和56年に「すし甚」をオープンした西川さん。お店があるのは、銀閣寺道バス停から徒歩すぐの場所。ジャズの流れる店内で、価格以上においしい寿司づくりを続けている。
奈良県下の日本料理店を皮切りに、石垣島のホテルシェフ、祇園の割烹などで修業を重ねた佐藤泰樹さんが自分の店を開いたのが平成8年のこと。
「敷居を高くせず、老若男女を問わず、美味しい和食を楽しんでいただける店にしたいという思いを込めて、自分の店を開きました」(佐藤さん)
カウンターとテーブル、奥の座敷などこぢんまりとして居心地のいい店内。
「海鮮がとにかく美味しいので、美味しい魚が食べたい!という時によく行かせていただいています」(西川さん)
「西川さんとは祇園で働いている時からのご縁で、もう30年以上、お付き合いいただいています。互いの店もよく行き来させていただいて、料理のことや魚のことなど楽しく話をさせていただいています」(佐藤さん)
開店当初は、魚介も扱っていたが、おばんざいや創作料理などを中心にメニューを揃えていたという佐藤さん。しかし、年月を重ねるほどに「ほんまもん、それも究極をお出ししたい」という思いが強まっていったという。
「じゃあ。ほんまもんって何や?ということなんですが...(笑)。自分が扱う食材の中で、究極までほんまもんを追求できるのは、魚かな?と思ったんです。自分が海に行って釣ってくる魚ほど、新鮮で安心できるものはないですよね。僕が◯◯で釣った魚です!と胸を張ってお客さんに言えますから」(佐藤さん)
15年ほど前から釣りを始め、今ではもうベテランの域。今日はここにいい魚が揚っているという情報を聞けば、日本海や瀬戸内海など、すぐ現地に出向いて釣ってくるのだという。現在は平均、週に2回ほど釣りに出かけ、新鮮な魚を提供している。
ショウケースに本日の魚がぎっしり。この中にご主人の釣った獲物も...。
釣ってくるだけではない。魚は下処理、特に「血抜き」が非常に大切だと佐藤さんはいう。
「血抜きをどのタイミングでするか、そのあと少し寝かせて脱水させるのですがその時間も大切です。きちんと下処理をしてこそ、本当に旨い魚をお客さんにお出しできるんです」
もちろん市場で買ってくる魚も使うが、買ってきた魚も改めて自身の手で血抜きをするというほどのこだわりよう。自身が血抜きをすることで、さらに魚の味がよくなるのだそうだ。
客層は地元・京都の人がほとんど。やはり人気なのは、西川さんも必ず注文するというお造り盛り合わせだ。二人前で8種類ほどの魚介が盛り合わせてあり、質・量ともに半端ない。魚介好きならこれだけでワクワクと嬉しくなってしまうだろう。
本日の造り盛り合わせ二人前3000円〜(価格は全て税別)。写真はイシカゲ貝、オナガダイ、ハモ、ビワマス、本マグロ、シマアジ、明石蛸、剣先イカ、シラサエビがたっぷりと盛り合わせてある。このうち、明石蛸と剣先イカは佐藤さん自らが釣ったもの。
こちらは名物の「蛸と海老のエスカルゴ風」1480円。蛸を海老を使ってオリーブオイル、ニンニク、パセリ等と一緒に調理するが、店独自の味付けがあるそうだ。それは「企業秘密です、笑」だとか。
アコウの煮付け。写真は3〜4人前で3000円。脂がよくのっているので、煮汁はあっさりと仕上げている。酒のアテにご飯のおかずにもよく合う味わい。
あまり流通していない小さな蔵元の日本酒が、定番ものと季節限定種など常時15種類ほど揃う。
壁には漁船や釣り道具メーカーのステッカーがぎっしり。
品書きには、造り、一品、焼きもの、揚げ物、ごはんもの、寿司がずらり。海鮮料理と和食が中心だが、ホテルシェフ時代に洋食を学んだ経験を生かして、前出のエスカルゴ風やパスタ、カツ、ステーキなど洋風の料理も揃う。
奥さんの香織さん、息子の嵐志さんと共に、家族で息の合った温かなもてなしも、嬉しい。
「旨い魚が食べたい!」というときはもちろん、「いろいろな料理とお酒を」「がっつりごはんを食べたい」などなど、どんな要望にも、真摯に、美味しく応えてくれる一軒だ。
お客さんから贈られた魚柄のマスク。
息子の嵐志さんと。「将来は店を息子に任せて、僕は仕入れ専門で釣り三昧もいいなあと思ってます(笑)」
撮影/津久井珠美 取材・文/ 郡 麻江
■聖護院嵐まる
京都市左京区聖護院山王町28
075-761-2421
17:30~24:00(LO)23:30
月曜定休