京の会長&社長めし
京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介していきます。
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BLOG京の会長&社長めし
2019.06.18
原了郭の代表取締役が通う店 「鉄板食堂ことら」
■原 悟(はら さとる)さん 原了郭 代表取締役1703年創業の、各種香煎・薬味を取り扱う「原了郭」。創業者・原儀左衛門道喜は、赤穂義士四十七士のひとりである原惣右衛門を父に持つ。陳皮など数種の漢方薬を原料に、焼き塩で味付けした「御香煎」は、公家、宮家、茶人、文人墨客に愛されてきた。「黒七味」とともに、その味は一子相伝。原悟さんは21歳の時に13代当主を継承。以来その技法を受け継ぎ、日々調合に励んでいる。関西人をうならせる、自家製ソースが効いた粉モンに、サワーが進む「私は関西人ですから、粉モンには一家言あります(笑)。美味しいところにしか行きません。京都で通っている粉モンの店は2軒だけ。その1軒が『鉄板食堂ことら』さんです」原さんは宮本組の組長の顔も持つ。宮本組とは、「お宮のもとで、神様にご奉仕する氏子組織」で、原さんの宮本組は八坂神社に属する。祇園祭がつつがなく催行されるよう、陰に日向に奔走することが、特に大きな役割だ。 「2~3年前に、宮本組の会合の後、メンバーに連れてこられたのが最初です。それまでも、お店の話は聞いていたので、やっと来られた!という気持ちでしたね」 祇園南、八坂神社の対面にあることらは、2009年にオープン。扉を開けるとすぐ目の前の鉄板台で、店主の鈴木尋之さんがコテを振るう。鈴木さんはホテルのフレンチレストランや、京都のイタリアン・フレンチレストランと、西洋料理ひと筋に勤めてきた。だから、女将さんの明日香さんは「出会った頃は、まさかお好み焼き屋になるなんて」夢にも思っていなかったとか。「お好み焼きや、焼きそばが大好きで、しょっちゅう食べ歩きをしていました。なのでお好み焼きと焼きそばを主体にしたお店を開くことは、自分のなかではとても自然な流れだったんです」(鈴木さん) そんな鈴木さんのお好み焼きは、厚みがあり、20分かけてじっくり焼きあげられてゆく。 「山芋入りの生地はふっくら、そしてトロリとしています。九条ネギがたっぷりかかり、そのシャクシャクとした食感もいいですね。豚玉、イカ玉などベーシックなものはだいたいありますが、その日の気分だったり、友人が選んだものを食べています」(原さん) 写真はMIX玉(税込1000円)。イカ、豚、エビに、甘辛く炊いた牛豚ミンチが入る。このミンチでお好み焼きにやさしい甘みがポイントされる。「あ、でも思い出しました......」 焼きそばを炒めながら、鈴木さんがおもむろに切り出した。 「子供のころ、両親は共働きだったんです。母は土曜日も出勤していたので、お昼は父とすごすことに。父は毎週必ず、焼きそばをつくってくれました。そしてほんの時々、お好み焼きも。特別なことはしていない、本当に普通の味です。それを、吉本新喜劇を観ながら食べるのが、土曜のお昼のお約束でした。父は土曜の焼きそばとお好み焼き以外は、いっさい料理はしませんでした。その原風景が、自分の中に残っていたのかもしれません」(鈴木さん) 「だからといって、父の味が反映されてるわけではないんですよ」と言う鈴木さんの焼きそばには、生めんを使用。 「ゆがいてから焼くという手間がかかっているめんは、もっちりふっくら、コシがあって香りが豊か。それにしっかりと自家製ソースがからみます。テーブルには一味の入った辛口ソースがあって、好みでかけることができます。これがビリッと本当に辛く、でも爽やかさもあり。私はいつも男梅サワーを飲んでいますが、これがソースモノによく合うんです」(原さん) 写真は豚やきそば(税込850円)。卓上の辛口ソース以上に辛味が効いた、大辛口焼きそば(税込900円)もある。 酒に合うこと間違いなし!の一品料理の種類も豊富で、目移りしてしまう。 「祇園という場所柄、お酒を飲む方が多いので、だんだんと種類が増えていきました」(明日香さん)原さんが「つまみとして絶品」というのが、めんたま(税込900円)。出汁巻きたまごの中に、博多の辛子明太子が豪快に丸ごと1本入っている。 「博多の屋台料理に明太子をはさんだ卵焼きがあるとお客様に教えていただき、出汁巻きでアレンジしました。ホテル勤務時代に新規ホテル立ち上げのために、しばらく博多に滞在していたことがありました。元となった屋台料理は食べたことがないんですが、"博多"という言葉に懐かしくなって(笑)」(鈴木さん) 明日香さんは週末だけ店を切り盛りするが、とにかく明るく、気さくな人柄だ。 「女将さんのほがらかさで、店内がとてもアットホームな雰囲気になります。ご主人も話し上手ですが、料理には決して手を抜かない。そのメリハリが気持ちいいですね。たいてい親しい友人5~10人とうかがいます。ホテルの宴会であまり食べるものがなかった時に、"ことらへ、食べ直しに行こうか"となったり(笑)。飲んだ帰りにふらりと立ち寄って、やきそばだけ食べて帰ることもあります」 週末は2時ごろまで開いていることもあり、原さんのような地元住民や、近隣の飲食店関係者、芸舞妓、早い時間は外国人観光客など客層は幅広い。 「原さんが最初いらっしゃったときは、物静かであまりお話しされませんでした。でも人見知りされていらっしゃったのかもしれません。何度か通ってくださるうちに、面白くて楽しい方だとわかりました。今ではゴルフをご一緒させていただくこともあります」(鈴木さん)ことらの話をしているとき、原さんの表情は和らいでいた。関西人をうならせる味、そして人間力と、店内の空気感、すべてがバランスよく成り立っている、それがことらの魅力なのだ。※価格は取材当時のもの撮影 津久井珠美 文 竹中式子 ■鉄板食堂ことら京都市東山区祇園町南側529-1祇園ケントビル1F075-525-405018:00〜翌1:00休 日曜、月曜、祝日、不定休あり
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2019.06.10
原了郭の代表取締役が通う店 「ぎをん 福志」
■原 悟(はら さとる)さん 原了郭 代表取締役1703年創業の、各種香煎・薬味を取り扱う「原了郭」。創業者・原儀左衛門道喜は、赤穂義士四十七士のひとりである原惣右衛門を父に持つ。陳皮など数種の漢方薬を原料に、焼き塩で味付けした「御香煎」は、公家、宮家、茶人、文人墨客に愛されてきた。「黒七味」とともに、その味は一子相伝。原悟さんは21歳の時に13代当主を継承。以来その技法を受け継ぎ、日々調合に励んでいる。客に寄りそう、コースでありながらアラカルトのような気遣い「たん熊北店 本店」で17年、そのうち7年間料理長を務めた人物が、2017年12月に満を持して祇園に割烹を構えた。その名は「ぎをん 福志」。 「たん熊北店 本店さんから紹介されて以来、今では月に2、3回行くこともあるほど大好きなお店になりました。会合やロータリー関連の友人たちをどんどん連れていっています。そうすると誰もが気に入って、今度は彼らが個人的に訪れていく――そんな連鎖ができていて、いずれ予約が取れない店になるだろうと思います。今回紹介することは、自分にとっては痛しかゆしですね(笑)」(原さん) まだ新しい店先ののれんをくぐると、店主・福士卓義さんと女将の祐子さんの福福しい笑顔が出迎えてくれる。福士さんの口調は優しくやわらかで、凛とした店内にあたたかな空気を送り込む。「カウンター越しに目の前で料理が出来上がっていき、供される。そして福士さんはとても美味しそうに説明してくださるんですよね。その一連の流れが見事です」(原さん) 福士さんは「お客様から"美味しい"というお言葉をいただいてから、料理の説明をするようにしています。召し上がっていただく前に、産地や料理内容をお伝えするのは無粋ですから」と言う。原さんが訪れるたび感動するのが造りだそう。 「19時に予約を入れたとします。すると逆算をして、魚をどれだけ寝かすか? 何時に〆るか? そこまで緻密に考えられているんだろうということが、魚を口にすると伝わってきます。見事な歯ごたえを導き出していらっしゃるんです」(原さん) たとえば、鯛の造り。 「鯛は明石の水口商店から、選び抜かれた身が活かっているものを毎日持ってきていただいています。水口さんはよい鯛が手に入らないときは"今日は持っていけません"と言ってくださるので、とても信頼しています。そしてお客様にお出しする12~13時間前に神経締めにして、氷の冷蔵庫で保管します。そうすることで身に旨味が出るのです」(福士さん) どんな魚でも大切なのが扱い方だと福志さんはきっぱりと言う。使いまわしでない発砲スチロールで運び、ほかのものを切っていないまな板を使う。そして柵には手を添えて、やさしく置く。聞くと簡単なことだが、こうした些細な点にまで気を配り、手を抜かないでいることは、なかなか難しい。 「そうしたことを、原さんは魚の味から感じとってくださるのでしょうね」(福士さん)写真はマグロ、イカ、鯛の造り。マグロにのったたっぷりのわさびにギョッとするが、醤油に漬けて口に入れるとマグロとともにホロリととろけて、その絶妙なバランスにたちまち恍惚となった。 「わさびって、適量が分かりにくいですよね。それに造りにのせるべきか、醤油に溶かすのかなど、いろいろ悩みもあります(笑)。そういう煩わしさを、お客様が感じずにすむようにしてゆきたいんです」福士さんの「お客様のために」という想いは、その供され方にも現れている。メニューはコースのみで1万8000円から(税サ別)。しかしその料理には、まるでアラカルトを注文したかのように、客それぞれの好みや量にも反映されている。 「原さんは手を加えすぎず、素材が活きた料理を好まれます。なのであしらいをつけず、ストレートにお出しします。一方、京都らしさを求めていらっしゃるお客様には、割烹らしからぬ意外性を添えるようにしているんです。たとえば八寸も、季節ごとの歳時記を意識しながら、華やかに演出して提供させていただいております」(福士さん) 八寸は6月は梅雨やあじさい、7月は祇園祭、8月はお盆......と、時節が取り入れられている。取材時は5月だったので、端午の節句が描かれ、鯛と穴子のちまき寿司が。「歯の悪い方には薄造りにしたり、おなかがいっぱいになった方には、コースの途中からネタの質を上げて品数や盛り付けを減らしたり。風邪気味の方には、コース内にはない丸鍋をお出しすることも。準備したから全部を出すのではなく、お客様それぞれに合ったお料理をおつくりします」(福士さん)その臨機応変な対応に、原さんが驚き、さらに心酔したというエピソードがある。 「私には高校2年生になる息子がいます。そろそろよいお店を経験させておこうという年頃ですので、こちらに連れていったんです。息子は魚が好きなのですが、福士さんの手による造りは、今まで食べてきたものとは格段にレベルが上だということが分かったようです。"お父さんは、いつもこんなにいいものを食べてるの!?"と恨まれました(笑)。そしてあまりにも感動した息子は、なんと鯛の造りのおかわりをお願いしたんです。すると福士さんは快く出してくださったんです。コース料理のお店ですから、ふつうに考えると、鯛の数は決まっているでしょう。その対応力の高さは見事です」(原さん)福士さんと祐子さんとのコンビネーションのよさも、「かしこまりすぎず、楽しくすごせる」理由のひとつだと原さんは言う。 「原様は、オープンして2カ月ほどしてから訪ねてくださって、以来とてもよくしていただいています。スーツ姿が決まっていて、いつも素敵なネクタイをしていらっしゃいます。そして何より気遣いの方です。原様が手前どもの店のそばを通られましたとき、臨時休業で店を閉めていると心配してお声をかけてくださったり。お連れの方に楽しんでいただこうと細やかに接していらっしゃるお姿は、私も勉強になります」(祐子さん)原さんは、予約の時には誰と行くか、その方の苦手なものを伝えるだけで、自分からの注文はしない。それでも阿吽の呼吸で通じあい、訪れた日には原さんにとっていちばんふさわしい味が目の前に現れる。それは原さんだから特別なのではなく、誰にとっても同じように「特別な味」が、確かな技術のもと提供されているのだ。だから、原さんが「福志はいずれ予約困難な店」になる心配をするのも、なんとも合点がゆくのだった。 撮影 鈴木誠一 文 竹中式子■ぎをん 福志京都市東山区祇園町南側570-120075-354-531412:00~、17:30~(19:30最終入店)定休日 日曜、第2・第4月曜、月1回不定休あり※変動あり。HPで確認をhttp://gion-fukushi.jp/
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2019.05.16
祇園辻利の代表取締役社長が通う店「天竺 広東倶楽部」
■三好正晃(みよしまさあき)さん 祇園辻利 代表取締役社長1860年、宇治で創業した辻利の流れをくむ「祇園辻利」。1978年には和風喫茶「茶寮都路里」を構え、宇治茶や、宇治茶を使った菓子を販売する。抹茶のパフェやアイスクリームは、女性からの人気も高い。1997年入社、2005年より現職。毎年、お茶の味を存分に感じることのできる新作スイーツを送りだしている。本格中華を良心的に提供する、その真心が嬉しい元ご近所さん扉を開けた途端、ビビッドな紅色が目に飛び込んでくる。ここは京都? もしや、知らぬ間に異国へ来ていた? 胸がざわつきながら店内を見渡すと、紅色を基本としながら、黒い柱や天井が落ち着きを与え、実はとてもバランスのとれたセンスのいい空間であることに気づく。ここ「天竺 広東倶楽部」と三好さんは、15年ほどの付き合いになる。「4年前に花見小路北側のこの場所へ移転されましたが、それまでは祇園南の細い路地を入ったところの、4階建てのビル全階すべて使った大きな店を構えていらっしゃいました。その2軒隣に、わが社があったんです。何やら中国料理屋さんができたようだけれど、どんなところだろう? と、ひとりあたりの予算をうかがったんです。すると『いくらでも結構ですよ』と言われて、『えー!? 本当に?』とますます興味が深まりました(笑)。いざいただいてみると本格的な広東料理で、お料理も80種類近くあり、そして安い! 大いに飲んで食べても、ひとり5000円を超えることはめったにありません。『いくらでも結構ですよ』とおっしゃる通り、予算をお伝えすればいかようにも対応してくださり、社員30~40人の集まる歓送迎会などで、とても重宝しました」移転後は席数も減らし規模を縮小したが、その味は相変わらず冴えわたっているという。「どの料理も外れなし!」という三好さんに、なかでも飛びきりの4品を挙げていただいた。まずは「海老のマヨソース」1300円(税別)。「私はマヨネーズが大好きなのですが、こちらのエビマヨは酢が強めでたまりません。のどにツンッと酸味が染みるのがいいんですよね。大ぶりの海老にサクッと歯ごたえのいい衣がたっぷりかかっていて、そこに酸味の効いたソースが絡む、そのバランスが絶妙です」「焼売(4個入り)」600円(税別)は、「とても大ぶり。自家製の豚肉の餡は箸を入れるとジュワッと肉汁があふれ出し、口の中でふわりとほぐれます。このままでも甘みがありますが、私はからし醤油でいただきます」。しめに欠かせないのが「海鮮あんかけやきそば」1200円(税別)だとか。軽く蒸した麺をカリカリになるまで炒めているので、食感が心地よい。とろりとしたあんは醤油ベースで、エビやイカなどの魚介と野菜の旨み、そして麺の甘みをひきたてる。常連にサービスされる杏仁豆腐の盛り付けは、女性オーナーの手による。春はイチゴ、夏は梨など季節によって変わるフルーツも、オーナー自ら買い出しに行っているそうだ。「オーナーはとにかく気さくな方です。彼女の作り出す雰囲気が心地よく、気分よく食事ができるんです。フロアのサービスやドリンクを作るのはオーナーと、右腕の番頭さんのおふたりだけなのに、その目はとてもきめ細やかにフロアの隅々まで行き届いています」とても気さくで陽気、そして繊細でシャイな一面も持つオーナー(なので、お名前を出すのも、お顔写真の撮影もNG)。木屋町で最初に店を持ったのは、なんと21歳の時だった。「短大をドロップアウトしたあと、さて何をしようかと考えて、ひらめきでお店を持とうと決めました。1983年ごろの京都では、大衆的な中華屋さんはありましたが、バーもあるおしゃれな中国料理屋はありませんでした。そこで"おしゃれ"であることをテーマに店づくりをしていったんです。求人雑誌で料理人やスタッフを募集すると、応募してくるのは私より年上の中国人シェフか、同じ年でも学生です。私の飲食経験は、バイトですらありません。小娘が知識のないまま飲食経営の世界に飛び込んだので、カルチャーショックの日々でした(笑)」(オーナー)オーナーが選んだ紅色の店内。そのバーカウンター内の棚に、バカラのグラスがキラキラときらめく。そして安めのお酒でも、そのバカラのグラスに注がれる。これも30年以上貫かれてきた美学なのだ。厨房は、上海の3つ星ホテルで腕を振るっていた走培(ゾウ・ペイ)さんが、ひとりで切り盛りしている。4階建てのビル時代から料理人の入れ替わりはあったが、走さんだけは変わらず、三好さんを笑顔にする天竺の味を生みだしているのだ。「走さんが中国から持って帰ってきた、まだ封を開けていない貴重な中国酒もありますよ」(オーナー)「私は京都の仲間10~15人で、"五花街の灯を絶やさぬように"と、毎月飲み会を開いています。その会でも天竺を利用しています。口の肥えた方ばかりですが、みなさんとたくさんお料理を注文して、飲んで、語らい、とても気持ちのいい時間をここですごしています。経営者仲間や企業の重役の方にも、必ずお薦めしています。というのは、そういう方々は大勢の若い部下を食事に連れていくことがあります。そういう時に、安くて味がよく雰囲気のいい天竺はピッタリなんです」(三好さん)撮影 津久井珠美 文 竹中式子■天竺 広東倶楽部京都市東山区祇園町北側266 井澤ビル4F075-541-673317:00〜24:00 (L.O.23:20)定休日 不定休http://www.tenjiku-kyoto.jp/
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2019.05.09
祇園辻利の代表取締役社長が通う店「有吉」
■三好正晃(みよしまさあき)さん 祇園辻利代表取締役社長1860年、宇治で創業した辻利の流れをくむ「祇園辻利」。1978年には和風喫茶「茶寮都路里」を構え、宇治茶や、宇治茶を使った菓子を販売する。抹茶のパフェやアイスクリームは、女性からの人気も高い。1997年入社、2005年より現職。毎年、お茶の味を存分に感じることのできる新作スイーツを送りだしている。愛すべき"お子ちゃまセット"を握ってくれるご主人と、ビッググラスで乾杯!「有吉さんで必ずいただくのが、人呼んで"お子ちゃまセット"(笑)。エビ、イカ、タコという、子供が好きそうなこのネタの組み合わせが大好きでして。こちらの海老は大ぶりで食べ応えがあります。シャリが少なめという、そのバランスもいいんですよね」 祇園北の細い路地に凛と構える「鮨・割烹 有吉」へ、三好さんは東京や大阪、九州など各地からのお客様をお連れするという。 「接待の日程が決まったら、すぐに連絡します。有吉さんはこちらのリクエストに寄り添い、お料理の焼き加減や、出してくださるタイミングも絶妙なんです」 「カウンターに座って、木札に書かれたメニューを見ながら、その日のいいものを相談します。最初に6~7品、焼き魚やお刺身をいただいてから、"お子ちゃまセット"です。お料理は分量がほどよいので、いろいろな種類をいただけます。奇をてらいすぎず、そのなかに意外性のあるアレンジがほどこされているお料理に、お連れした方みなさん喜んでくださいます」 きらきらと輝く「いくらの漬け」は、三好さんにとって不動のつまみだそう。 「いくらの生臭さはいっさいなく、旨みと甘みが抜群です。こちらでしか味わえない、洗練された、素晴らしいいくらです」 三好さんはご主人・有吉秀和さんの魚の目利きに全幅の信頼を置いている。 「飲食関連の会社の方でも、北海道出身の方でも、有吉さんのお料理とお鮨をとても気に入ってくさるので、私もとてもうれしいです」 有吉さんは鮨割烹の老舗「なか一」で修業を積んだのち、先斗町「こう一」を経て、2011年、祇園に「有吉」を開いた。三好さんと有吉さんは出会って10年ほどになるが、なか一の時代から有吉さんが作り続けていたものが、おふたりの縁をつないだ。それはなにかというと――。 「ある日、友人の誕生日を祇園でお祝いしたんです。何次会かでスナックに落ち着いたころには、バースデーケーキにも少々飽きていました。するとそこに現れたのは、ケーキのように華やかなお鮨だったんです。"バースデー鮨"とでもいいましょうか、その美しい姿に見惚れてしまいました。そのうえ、味もとてもいい。『この見事な鮨を作った人は、いったいどんな方だろう?』と興味を持ったのがきっかけです」(三好さん) 「祇園のおかあさん方のお誕生日に、ケーキ以外に何か洒落たものはできないか、と考えついたのが"鮨ケーキ"でした。手まり寿司を型どりして重ねたり、マグロで花を作ったり、そこへ主役の方のお好きなネタをのせるなど、見た目も味も楽しんでいただける鮨で、今でもお作りしています」(有吉さん) 「鮨ケーキでもわかるように、有吉さんのお料理はとても繊細です。でも、人柄は豪快なところもあって、お酒の飲み方がユニークなんですよ」と、その光景を思い出しながら、三好さんは楽しそうに話してくださった。 「私は夜8時半を過ぎると、お酒を解禁するんです。毎晩、2リットル入るこの大きなグラス(写真右)で、ハイボールを3杯はいただきます(笑)。もともとは、ガラス造形作家の狩野智宏さんに作っていただいた1リットルのグラス(写真中央)でいただいていたところ、しだいに大きなグラスで飲むスタイルが噂になって、今ではお客様は狩野さんのグラスで、私は2リットルのグラスで乾杯しています(笑)」(有吉さん) グラスも大きければ、ウィスキーもソーダも氷もビッグサイズだ。そんな有吉さんは、何よりも人とのつながりを大切に想っている。 「狩野さんに1リットルのグラスを作っていただけたのも、人間国宝の陶芸家・近藤悠三先生の次男・濶(ひろし)先生の陶芸教室に通っていたことからご縁ができて、濶先生のご子息である高弘さんがお願いしてくださったからです。私は近藤先生の器が好きで、この"お子ちゃまセット"のお皿は、濶さんの作品です。 お客様ともご縁、ご縁でつながっています。これはなか一の親方から学んだ姿勢です。"誠心誠意"が何よりも大切だと。 三好社長も、まさに誠心誠意の方で、寛大な心で私を受けとめてくださいます。それこそ私が飲んで少々羽目を外しても、いつも笑顔でいらっしゃって、本当にありがたいです」(有吉さん) "お子ちゃまセット"をいただいたあとの三好さんの〆は、わさび強めのかっぱ巻きだ。「わさびは解毒作用もあるので、強めが好きなんです」という三好さんは、温かくて、繊細で、わさびのようなパンチもある有吉さんだからこそ、魅了され続けているのだろう。 撮影 鈴木誠一 文 竹中式子■鮨・割烹 有吉京都市東山区祇園町北側282-5075-541-563911:30~14:00、17:00~23:00定休日 日曜
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2019.04.18
京都青果の社長が通う店 「河久(かわひさ)」
■内田隆(うちだ たかし)さん 京果グループ京都青果合同株式会社代表取締役社長 兼 グループCEO『食の総合流通サービス企業』を目指し、「世界に誇れる豊かな『日本の食文化』を支え守る」ことを使命とした京果グループ。「京の台所」と呼ばれる京都中央卸売市場内に本社を構え、国内外の青果を豊富に取り扱っている。内田氏は京都大学農学部卒、カリフォルニア大デイビス校農業経済学部大学院修士課程修了。1985年、京都青果合同入社。取締役、副社長を経て2002年から現職接待続きで疲れた身体にも優しい、和洋折衷の割烹 「純然たる京料理とともに、メニューにはコロッケやとんかつ、ローストビーフにハンバーグなどの洋食も並んでいます。これが心をくすぐるんですよね。花街でも河久さんの仕出しをよく利用されていて、私もお茶屋さんで洋食を盛り合わせたオードブルをお願いすることがあります。一口サイズなので、メインのお料理をいただく前にちょうどいいんです。とはいえ、お店にうかがう機会のほうが、圧倒的に多いですね」 接待相手からリクエストされることもよくあるという「河久」は、「いつ頃から通いだしたのか覚えていない」ほど、内田さんとは長い付き合いだという。 大将の浅見亘男さんは、京都の割烹のさきがけといわれる「河繁」の次男として誕生した。「河繁」は長男が継ぎ、浅見さんは京都ホテルで洋食の修業を積むことに。そして50年ほど前に実家の「河」の字をもらい「河久」を開いた。この三条木屋町へ移転してからは約20年。今は2代目の昌男さんとともにカウンターに立ち、和洋折衷、さまざまな料理をつくっている。 「2人でうかがうときはカウンター、3人以上は奥の小上がりを利用します」 「テーブル席に座敷、そして夏には川床もあり使い勝手がとてもいいんです」 「河久手羽先」4本880円(税込み)は、「見るからにパリッと揚がった皮はもちろん歯ごたえがよく、身はジューシー。見事な唐揚げです」と内田さんも絶賛する。これは創業当初から続く名物のひとつで、時間をかけじっくりと素揚げする。 1964年の東京オリンピックの時、浅見さんは勤めていたホテルから選手村へ派遣され、厨房で働く機会があった。そのときにインド人シェフとの交流があり、本場の唐揚げを知る。さすがインド、その唐揚げはスパイスが効いているので、そのままでは日本人の口には合わない。そこでアレンジを重ね、今の味にたどり着いたという。天ぷらだと時間がたつと衣が水分を吸ってしまうが、この唐揚げだと冷めても食感を保っている。「忙しくて食事の時間が定まらない花街や役者の方々が、いつ食べてもよいように」という浅見さんの想いがこもっているのだ。 一見するとそうとは思えない姿の「春巻き」720円。衣の中には牛ミンチがつまっている。 「からしと酢醤油でいただきますが、餡にしっかり味がついているので何もつけずこのままでも。これも冷めても美味しい一品です」 「京都以外からお越しのお客様に、"京都らしい"と喜んでいただけます。京都の水を使っている料理なので、地元の水との味の違いを感じていただいているのかもしれません」と、内田さんが接待の切り札にしているのが、「汲み上げ湯葉」880円。自家製ポン酢とワサビでいただく。 アラカルトのほかおまかせコースもあり、昼は5400円~、夜は7500円と10800円。 「大将は饒舌(じょうぜつ)で、とても陽気な方です。息子さんである2代目は、顔に表れている通り真面目な性格で、とてもよくしていただいています」 取材時には大将はあいにく席を外されていたが、2代目の昌男さん(写真)が語ってくれた。 「味の好みは人によるので、私たちだけではどうしようもない部分もあります。ですが、ご家族連れでも、お友達同士でも、食べやすい料理をと心がけています。内田さんのようにお仕事でも利用される方は、ほぼ毎日の接待続きで食べ疲れていらっしゃると思います。河久には京料理だけでなく洋食や揚げ物もある、ということにホッとしていただければと。緊張させない料理と雰囲気をつくり、お仕事がうまくいく場所でもありたいです」(昌男さん) 内田さんは京都での夜は連日連夜、接待だという。 「京都中央卸売市場が公休日の水曜は会社も休みなのですが、日中は外部との会合が入り、夜はやはり接待です。ですので日曜だけが休みなんです。でも休日はいただきものを家で食べて過ごすことも多くて......。 私は割烹、肉料理、イタリアンなどジャンルに分けた接待店リストをつくっています。これは自分のためではなく、お相手の好みに合わせてお店を選ぶためのものです。だから自分の意志でお店を決めることは、私にとってとても貴重なんです(笑)。そういうときには、やはり普段使いできる肩ひじ張らないお店がいいですね。 気に入ったお店には連続して3回は通って顔を覚えてもらいます。河久さんには芋焼酎をボトルキープしています(笑)。接待でも個人的にも使える、この万能感をとても重宝しているんです」※価格は取材当時のもの 撮影 エディオオムラ 文 竹中式子■河久京都市中京区木屋町御池下ル上大阪町518075-211-088811:30~L.O.11:30、16:00~L.O.21:00定休日 不定休https://kawahisa.com/
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2019.04.09
京都青果の社長が通う店 「京都ネーゼ」
■内田隆(うちだ たかし)さん 京果グループ京都青果合同株式会社代表取締役社長 兼 グループCEO『食の総合流通サービス企業』を目指し、「世界に誇れる豊かな『日本の食文化』を支え守る」ことを使命とした京果グループ。「京の台所」と呼ばれる京都中央卸売市場内に本社を構え、国内外の青果を豊富に取り扱っている。内田氏は京都大学農学部卒、カリフォルニア大デイビス校農業経済学部大学院修士課程修了。1985年、京都青果合同入社。取締役、副社長を経て2002年から現職味も分量も会話も、自分らしくすごせる場所 「イタリアンが食べたいと思ったら、まずはオーナーシェフの森博史さんにLINEします。人気店なうえ、16席だけの店内なので、早め早めの予約が必須です」 三条木屋町を北へ3軒のビルの3階に、内田さんの胃袋を摑んでいる「京都ネーゼ」は店を構える。 エレベーターの扉が開くと、朗らかで温かな空気が包み込むようだ。 「6人くらいの気のおけない仲間との食事や、女性とのカジュアルなデートにもぴったり。アットホームで気軽に行けるのがいいんですよね。人数が多ければ窓際のテーブル席を。少なければカウンターで、できれば森さんの近くを希望します。L字型のカウンターは、キッチンに面した方にはもちろん森さんが、もう一方ではチャップリンやローマの休日などの映像がテレビ画面に流れています」 「フロアの真ん中には生ハムのスライス機が置いてあるのですが、これで客自身がスライスできるんですよ。それが面白くて、ついついたくさんカットしてしまいます(笑)。絶対に外せない私の定番です」 立派なパナマ産のプロシュートがスライス機に設置されている。 「このスライス機は店舗の場所を探している段階で、すでに購入したものです。もしこの場所と出合えなかったら、私の自宅用になっていました(笑)」(森さん) 「生ハム」750円(税込み)。オブラートのように薄くなるよう、スライス機は設定されている。薄いため空気を含み、口の中でふわりと溶けてゆく。幸せを運ぶ口あたりだ。 「ねこまんまの鰹節のように、ペペロンチーノにたっぷり載せてみるのもお薦めですよ。ボリュームが欲しい方は、何枚も重ねて召し上がってみてください」(森さん) 「私はお酒を飲むので、アラカルトが好きなんです。京都ネーゼではリーズナブルで美味しいワインを選んでもらいます。シャンパン→白→赤の順に。コクのあるワインが好きですね。2人でしたら、それに合わせてメニューを見ながら生ハム、前菜3皿、パスタ2皿を選んでいきます。ワインをたくさんいただくので、メインはあまり注文しません(笑)」「バゲット・レーズンクルミパンとマスカルポーネ・蜂蜜添え」540円。京都・与謝郡「稲垣養蜂」の純粋はちみつは優しい甘みでマスカルポーネの軽やかさを引き立てる。内田さんがこの料理を推薦したことを知った森さんは「とても乙女っぽい料理なんですが......意外ですね(笑)」と驚いていた。 「京都ネーゼといえば、生クリームを使わないカルボナーラが有名で、もちろんそちらもいただきますが、私はトマトベースのパスタも好きなんです」 そんな内田さんが選んだのが「プッタネスカ(アンチョビ、ケイパー、オリーブ)」2000円だ。甘みの立つトマトと、酸味の立つトマトの両方と、淡路産の玉ねぎを混ぜ込んだベースのソースはとてもまろやかだ。イタリア産の2種類のオリーブは元々浸かっていた塩水を捨て、ボリビア産の岩塩で漬け直している。そのため塩っぽさが抑えられ、パスタを頬張るとオリーブのえぐみもなくシャクッとした食感が際立つ。 一般的にはソースに混ぜ込まれる唐辛子だが、あえて皿のふちに生唐辛子の塩漬けを添えている。この唐辛子はかなりの辛さだが、なんともクセになる。 「私は愛知県出身なのですが、お客様ご自身のお好みで唐辛子を加えることにより、名古屋名物ひつまぶしのように一皿のなかでどんどん味を変えていっていただければ、との発想です」(森さん) このように調整ができる、という点も京都ネーゼの魅力の一つだ。 「パスタの量だってお腹に合わせて自由自在です。それこそ"ペンネ2本"でも受け入れてもらえるんですから、本当にありがたいですよね」 京都ネーゼとの出合いをうかがうと「京都とフィレンツェは姉妹都市で、2015年には提携50周年を迎えたんですよ」と、内田さんはおもむろに切り出した。 「提携40周年(2005年)の時に、イタリア・フィレンツェに本社を持つ世界最古の薬局で、今は天然素材を用いたオーデコロンやスキンケア用品、食品などをプロダクトする『サンタ・マリア・ノヴェッラ』のエウジェニオ・アルファンデリー社長と京都で出会いました。京都とフィレンツェの友好を深めようと、一気に意気投合。京都への出店も計画されていて、2007年に大丸百貨店のすぐそばにショップとリストランテをオープンされました。そのリストランテの初代シェフが森さんだったんです。それ以来のお付き合いになります。料理の腕前はもちろんですが、とても人当たりがよくて、お話ししていても楽しいんですよね」 2008年に独立した森さんは「京都ネーゼ(京都風)でありながら、イタリア産にもこだわりたい」をテーマに掲げ、腕を振るい続けてきた。 「内田社長は食事を通じて、ご自身の京都ライフを楽しんでいらっしゃるようです。お店では仕事の話はされません。イスラエル産のフルーツなど珍しい品種を会社で扱われたときも、それはひとつの情報として教えてくださるだけで、売り込むこともされません。時には差し入れとして、そうしたものを社長自ら箱を抱えて持ってきてくださることも。そのようにいつも低姿勢で思いやりに満ち、対等に接してくださるんです」(森さん) 料理もお店で過ごす時間も、自分に合わせることができ、自分らしくいられる――それこそが内田さんを魅了してやまない京都ネーゼなのだ。 ※価格は取材当時のもの撮影 鈴木誠一 文 竹中式子■京都ネーゼ京都市中京区三条通木屋町上る三軒目 三条木屋町ビルⅡ3階075-212-212918:00~L.O.23:00定休日 日曜、不定休
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BLOG京の会長&社長めし
2019.03.27
ANAクラウンプラザホテル京都の社長が通う店 京イタリアン「イル ギオットーネ」
■中山永次郎(なかやま えいじろう)さん ANAクラウンプラザホテル京都代表取締役社長日本国内にある多数のホテルや、オフィスビル、リゾートゴルフ場などの幅広い施設を開業・再建に携わり「ホテル・旅館の再生請負人」として知られている。ANAクラウンプラザホテル京都はフランス料理「ローズルーム」、日本料理「雲海」、中華料理「花梨」、鉄板焼き「二条」ほか数多くの店があり、その味は観光客や京都人からも愛されている。今回の「京の会長&社長めし」では中山さん自ら筆をとり、愛するお店との思い出について書き上げてくださった。イル ギオットーネのこと ▲「イイダコと紅菜苔(こうさいたい)のスパゲティ ふきのとうの香りで」。紅菜苔は中国野菜。山菜のような味わいがふきのとうとともに春の味を描くホテルの宴会料理は、レストランと違い、100名とか200名、ときに600名を超える大勢のお客様に一斉に提供できる料理であることが大前提になります。 イル ギオットーネで美味しいパスタを喰べるたびに、なんとか、その美味しさの片鱗だけでもホテルの大宴会で提供できないものかと、あるとき笹島シェフに相談をしたことがあります。もちろん、イル ギオットーネと到底比べられるものはできませんが、それでも、なんとか満足できるレベルのものはできないものかと、試行錯誤していたところでした。 ▲「イタリア料理のイベント開催の折には、会場の手配など中山社長にご協力いただきました」と語る笹島保弘シェフ 笹島シェフの、あのチャーミングな笑顔がちょっと思案顔になり、いくつかの場面に応じて、それならこういう工夫もあるのでありませんか、という具合に実に適切なアドバイスをいくつもいただいたことがあります。けっして結論を決めつけるわけでない、一緒に考えてみましょうという姿勢に、さすが超一流のシェフとはこういうものかと、その神対応に感心した憶えがあります。 ▲魚介と京野菜による3種の前菜のなかの一皿、「サヨリとホワイトアスパラ ミモザ仕立て」 季節の野菜を変幻自在に企てする笹島シェフの料理の一皿一皿に、いつも眼から鱗が落ちるような驚きがあります。きっと、笹島シェフはこれが楽しみでシェフをやっているのだろうなとおもうのです。 ▲肉の旨みが染みわたる「和牛の炭火焼き」。写真は春バージョン。数種のキャベツ、キノコにトスカーナの白いんげんのピュレを添えて。ピュレの隠し味は白味噌だ 私のイル ギオットーネでの一番の楽しみは、やはりメインの肉料理です。和牛のローストにしろ、絶妙の火の入れ具合と、根セロリや赤カブ、パセリなど野菜の巧妙なピュレとのマリアージュは、本来のあるべき美食の喜びを実感させてくれます。口に入れるたびに、いつもの笹島シェフのあのチャーミングな笑顔が思い浮かびます。 ■店舗紹介 八坂の塔のたもとの一軒家に2002年にオープンしたイル ギオットーネは、今や説明不要の京都を代表するイタリアン料理店。京都の素材を活かした「京イタリアン」の先駆者として笹島さんは名をはせている。かつてプロダクトデザイナーを志していたこともある笹島さん自ら関わった内装や家具は、20年近くたっても古びることなくモダンだ。店内には温もりある空気が流れ、客を迎える。今回撮影したパスタや肉を盛りつけた食器はイル ギオットーネのオリジナル。「和食器はイタリアンでもしゃれていて、かつ使いやすいものを陶芸家とともに一から作ることができるのが魅力です」(笹島さん)。店で使用していた皿を気に入った中山さんが、ホテルのために取り寄せたこともあるそうだ。「京都の会長や社長は、料理人を育てようという心意気をお持ちです。中山社長はビジネスの会食でも、ご自身が心から楽しんでオーガナイズされていらっしゃいます。またキッチンスタジアムのある宴会場をホテルに作られたりと、食に対して全方位からの愛情が深い方です。私もご意見をいただくことがあり、とても助けていただいています」(笹島さん) 撮影 エディオオムラ 取材 竹中式子■イル ギオットーネ京都市東山区下河原通塔ノ前下ル八坂上町388-1 075-532-255012:00~14:00(最終入店)、18:00~20:00(最終入店)休み:火曜www.ilghiottone.com/
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BLOG京の会長&社長めし
2019.03.20
ANAクラウンプラザホテル京都の社長が通う店 鮨割烹「なか一」
■中山永次郎(なかやま えいじろう)さん ANAクラウンプラザホテル京都代表取締役社長日本国内にある多数のホテルや、オフィスビル、リゾートゴルフ場などの幅広い施設を開業・再建に携わり「ホテル・旅館の再生請負人」として知られている。ANAクラウンプラザホテル京都はフランス料理「ローズルーム」、日本料理「雲海」、中華料理「花梨」、鉄板焼き「二条」ほか数多くの店があり、その味は観光客や京都人からも愛されている。今回の「京の会長&社長めし」では中山さん自ら筆をとり、愛するお店との思い出について書き上げてくださった。鮨割烹「なか一」のこと 「なか一」との出会いをあらためて思い返してみると、まだ、私どものホテルが開業する前でしたから、もう三十年を超えることに気づき、しみじみと思い出がよみがえります。その歳月は、そのまま自分の人生の振り返りでもあります。 店のお向かいの「てる子」(※1)のてる子姉さんから、先代のご主人・須原陽一さんをご紹介いただきました。 てる子さんとご飯食べでご一緒することもあれば、「てる子」で夜食に出前をしてもらうことも度々でした。出前の場合は、必ずご主人が持参され、そのまま一緒にお酒を飲むという格好でした。▲出前ではトロ、鯛、イカ、ウニ、しまあじ、赤身、穴子の7種類の握りが縁高に収められ届けられる ご主人は、グラスを傾けながらお喋りしながら、ひととおり、客一人ひとりが、相好を崩して鮨を頬張る様子を見定めしてから、頃合いに「ご馳走さんでした」と店に戻ります。そんな具合でしたから、おまかせの「出前」で、弛みのない凛とした表情のある鮨がいただけるのは、なんとも至福の夜食でした。 ▲「アブラメの木の芽焼き」。つけ合わせはふきのとうの白和えで、春を感じさせるひと品 「なか一」での一番の楽しみは、カウンターで、季節の食材の割烹料理を小皿で二品三品いただくことです。そして、お好みの鮨のあとの〆の鯖寿司につきます。 ▲銘柄にこだわらず、その日に一番いい鯖を使う「鯖寿司」。お土産は4200円(税込)▲春の椀物である、「エンドウ豆のすり流し」。桜鯛と海老、ワラビに桜の花の塩漬けが添えられている はじめて「なか一」の鯖寿司を口にしたときの感動は、今でも鮮明に憶えています。たっぷりと脂の乗った鯖と新米の酢飯との塩梅がじつに素晴らしい。お昼なら、秀逸の吸い物一椀に鯖寿司があれば、とても幸せな気分になれます。以来、我が家へのお土産に鯖寿司は欠かせないものになっています。 ▲長年、父である先代とともにカウンターに立ってきた須原健太さん。2016年に2代目となる 当代のご主人・須原健太さんは、とても謙虚な職人肌の方で、そのお人柄は、「なか一」の繁盛ぶりからも充分に窺えます。 ※1お茶屋兼スナックの「てる子」。祇園で店を構えて50年近く。てる子さんは安藤忠雄氏や小澤征爾氏、歌舞伎役者など著名人からも愛されている名物女将だ。45周年の集いはANAクラウンプラザホテルで開催された。 ■店舗紹介2020年に創業50年を迎える鮨割烹の老舗である「なか一」。今でこそ握りの前に一品料理が供される寿司屋はあたりまえのようにあるが、なか一開店当初は全国的にも「鮨割烹」はなかったという。先代の須原陽一さんが、祇園の旦那衆を飽きさせないために作りだしたスタイルだ。 季節の食材を用いた小さな突き出しが3~4品、造り、吸い物、焼き物、酢の物か炊き合わせと続き、最後に寿司5~6貫というのがコースの流れ。昼8000円~2万5000円(税別)、夜1万~2万5000円。予算を伝えてのおまかせになる。中山さんは白ワインで楽しむことも多いそうだ。 先代は器を愛しており、棚には名品が揃う。前述写真の鯖寿司を盛った皿は魯山人作。カウンターに並ぶ猪口は、すべて奈良の陶芸家・辻村史朗氏のもの。先代の友人でもあった。※価格は取材当時のもの撮影 エディオオムラ 取材 竹中式子■なか一京都市東山区祇園町南側570-196075-531-277812:00~14:00、16:30~22:00無休
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