BLOG京の会長&社長めし2019.06.18

原了郭の代表取締役が通う店 「鉄板食堂ことら」

京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は原了郭 代表取締役の原 悟さんが通う店、お好み焼き・焼きそばを中心に鉄板料理を提供する「鉄板食堂ことら」です。

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■原 悟(はら さとる)さん 

原了郭 代表取締役
1703年創業の、各種香煎・薬味を取り扱う「原了郭」。創業者・原儀左衛門道喜は、赤穂義士四十七士のひとりである原惣右衛門を父に持つ。陳皮など数種の漢方薬を原料に、焼き塩で味付けした「御香煎」は、公家、宮家、茶人、文人墨客に愛されてきた。「黒七味」とともに、その味は一子相伝。原悟さんは21歳の時に13代当主を継承。以来その技法を受け継ぎ、日々調合に励んでいる。

関西人をうならせる、自家製ソースが効いた粉モンに、サワーが進む

「私は関西人ですから、粉モンには一家言あります(笑)。美味しいところにしか行きません。京都で通っている粉モンの店は2軒だけ。その1軒が『鉄板食堂ことら』さんです」

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原さんは宮本組の組長の顔も持つ。宮本組とは、「お宮のもとで、神様にご奉仕する氏子組織」で、原さんの宮本組は八坂神社に属する。祇園祭がつつがなく催行されるよう、陰に日向に奔走することが、特に大きな役割だ。

「2~3年前に、宮本組の会合の後、メンバーに連れてこられたのが最初です。それまでも、お店の話は聞いていたので、やっと来られた!という気持ちでしたね」

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祇園南、八坂神社の対面にあることらは、2009年にオープン。扉を開けるとすぐ目の前の鉄板台で、店主の鈴木尋之さんがコテを振るう。

鈴木さんはホテルのフレンチレストランや、京都のイタリアン・フレンチレストランと、西洋料理ひと筋に勤めてきた。だから、女将さんの明日香さんは「出会った頃は、まさかお好み焼き屋になるなんて」夢にも思っていなかったとか。

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「お好み焼きや、焼きそばが大好きで、しょっちゅう食べ歩きをしていました。なのでお好み焼きと焼きそばを主体にしたお店を開くことは、自分のなかではとても自然な流れだったんです」(鈴木さん)

そんな鈴木さんのお好み焼きは、厚みがあり、20分かけてじっくり焼きあげられてゆく。

「山芋入りの生地はふっくら、そしてトロリとしています。九条ネギがたっぷりかかり、そのシャクシャクとした食感もいいですね。豚玉、イカ玉などベーシックなものはだいたいありますが、その日の気分だったり、友人が選んだものを食べています」(原さん)

写真はMIX玉(税込1000円)。イカ、豚、エビに、甘辛く炊いた牛豚ミンチが入る。このミンチでお好み焼きにやさしい甘みがポイントされる。

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「あ、でも思い出しました......」

焼きそばを炒めながら、鈴木さんがおもむろに切り出した。

「子供のころ、両親は共働きだったんです。母は土曜日も出勤していたので、お昼は父とすごすことに。父は毎週必ず、焼きそばをつくってくれました。そしてほんの時々、お好み焼きも。特別なことはしていない、本当に普通の味です。それを、吉本新喜劇を観ながら食べるのが、土曜のお昼のお約束でした。父は土曜の焼きそばとお好み焼き以外は、いっさい料理はしませんでした。その原風景が、自分の中に残っていたのかもしれません」(鈴木さん)

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「だからといって、父の味が反映されてるわけではないんですよ」と言う鈴木さんの焼きそばには、生めんを使用。

「ゆがいてから焼くという手間がかかっているめんは、もっちりふっくら、コシがあって香りが豊か。それにしっかりと自家製ソースがからみます。テーブルには一味の入った辛口ソースがあって、好みでかけることができます。これがビリッと本当に辛く、でも爽やかさもあり。私はいつも男梅サワーを飲んでいますが、これがソースモノによく合うんです」(原さん)

写真は豚やきそば(税込850円)。卓上の辛口ソース以上に辛味が効いた、大辛口焼きそば(税込900円)もある。

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酒に合うこと間違いなし!の一品料理の種類も豊富で、目移りしてしまう。
「祇園という場所柄、お酒を飲む方が多いので、だんだんと種類が増えていきました」(明日香さん)

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原さんが「つまみとして絶品」というのが、めんたま(税込900円)。出汁巻きたまごの中に、博多の辛子明太子が豪快に丸ごと1本入っている。

「博多の屋台料理に明太子をはさんだ卵焼きがあるとお客様に教えていただき、出汁巻きでアレンジしました。ホテル勤務時代に新規ホテル立ち上げのために、しばらく博多に滞在していたことがありました。元となった屋台料理は食べたことがないんですが、"博多"という言葉に懐かしくなって(笑)」(鈴木さん)

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明日香さんは週末だけ店を切り盛りするが、とにかく明るく、気さくな人柄だ。

「女将さんのほがらかさで、店内がとてもアットホームな雰囲気になります。ご主人も話し上手ですが、料理には決して手を抜かない。そのメリハリが気持ちいいですね。

たいてい親しい友人5~10人とうかがいます。ホテルの宴会であまり食べるものがなかった時に、"ことらへ、食べ直しに行こうか"となったり(笑)。飲んだ帰りにふらりと立ち寄って、やきそばだけ食べて帰ることもあります」

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週末は2時ごろまで開いていることもあり、原さんのような地元住民や、近隣の飲食店関係者、芸舞妓、早い時間は外国人観光客など客層は幅広い。

「原さんが最初いらっしゃったときは、物静かであまりお話しされませんでした。でも人見知りされていらっしゃったのかもしれません。何度か通ってくださるうちに、面白くて楽しい方だとわかりました。今ではゴルフをご一緒させていただくこともあります」(鈴木さん)

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ことらの話をしているとき、原さんの表情は和らいでいた。関西人をうならせる味、そして人間力と、店内の空気感、すべてがバランスよく成り立っている、それがことらの魅力なのだ。

※価格は取材当時のもの

撮影 津久井珠美  文 竹中式子

■鉄板食堂ことら

京都市東山区祇園町南側529-1祇園ケントビル1F
075-525-4050
18:00〜翌1:00
休 日曜、月曜、祝日、不定休あり