BLOG京の会長&社長めし2019.05.16

祇園辻利の代表取締役社長が通う店「天竺 広東倶楽部」

京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は祇園辻利 代表取締役社長の三好正晃さんが通う店、中国料理「天竺 広東倶楽部」です。

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■三好正晃(みよしまさあき)さん 

祇園辻利 代表取締役社長
1860年、宇治で創業した辻利の流れをくむ「祇園辻利」。1978年には和風喫茶「茶寮都路里」を構え、宇治茶や、宇治茶を使った菓子を販売する。抹茶のパフェやアイスクリームは、女性からの人気も高い。1997年入社、2005年より現職。毎年、お茶の味を存分に感じることのできる新作スイーツを送りだしている。

本格中華を良心的に提供する、その真心が嬉しい元ご近所さん

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扉を開けた途端、ビビッドな紅色が目に飛び込んでくる。ここは京都? もしや、知らぬ間に異国へ来ていた? 胸がざわつきながら店内を見渡すと、紅色を基本としながら、黒い柱や天井が落ち着きを与え、実はとてもバランスのとれたセンスのいい空間であることに気づく。
ここ「天竺 広東倶楽部」と三好さんは、15年ほどの付き合いになる。

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「4年前に花見小路北側のこの場所へ移転されましたが、それまでは祇園南の細い路地を入ったところの、4階建てのビル全階すべて使った大きな店を構えていらっしゃいました。その2軒隣に、わが社があったんです。何やら中国料理屋さんができたようだけれど、どんなところだろう? と、ひとりあたりの予算をうかがったんです。すると『いくらでも結構ですよ』と言われて、『えー!? 本当に?』とますます興味が深まりました(笑)。

いざいただいてみると本格的な広東料理で、お料理も80種類近くあり、そして安い! 大いに飲んで食べても、ひとり5000円を超えることはめったにありません。『いくらでも結構ですよ』とおっしゃる通り、予算をお伝えすればいかようにも対応してくださり、社員30~40人の集まる歓送迎会などで、とても重宝しました」

移転後は席数も減らし規模を縮小したが、その味は相変わらず冴えわたっているという。

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「どの料理も外れなし!」という三好さんに、なかでも飛びきりの4品を挙げていただいた。まずは「海老のマヨソース」1300円(税別)。
「私はマヨネーズが大好きなのですが、こちらのエビマヨは酢が強めでたまりません。のどにツンッと酸味が染みるのがいいんですよね。大ぶりの海老にサクッと歯ごたえのいい衣がたっぷりかかっていて、そこに酸味の効いたソースが絡む、そのバランスが絶妙です」

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「焼売(4個入り)」600円(税別)は、「とても大ぶり。自家製の豚肉の餡は箸を入れるとジュワッと肉汁があふれ出し、口の中でふわりとほぐれます。このままでも甘みがありますが、私はからし醤油でいただきます」。

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しめに欠かせないのが「海鮮あんかけやきそば」1200円(税別)だとか。軽く蒸した麺をカリカリになるまで炒めているので、食感が心地よい。とろりとしたあんは醤油ベースで、エビやイカなどの魚介と野菜の旨み、そして麺の甘みをひきたてる。

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常連にサービスされる杏仁豆腐の盛り付けは、女性オーナーの手による。春はイチゴ、夏は梨など季節によって変わるフルーツも、オーナー自ら買い出しに行っているそうだ。

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「オーナーはとにかく気さくな方です。彼女の作り出す雰囲気が心地よく、気分よく食事ができるんです。フロアのサービスやドリンクを作るのはオーナーと、右腕の番頭さんのおふたりだけなのに、その目はとてもきめ細やかにフロアの隅々まで行き届いています」

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とても気さくで陽気、そして繊細でシャイな一面も持つオーナー(なので、お名前を出すのも、お顔写真の撮影もNG)。木屋町で最初に店を持ったのは、なんと21歳の時だった。

「短大をドロップアウトしたあと、さて何をしようかと考えて、ひらめきでお店を持とうと決めました。1983年ごろの京都では、大衆的な中華屋さんはありましたが、バーもあるおしゃれな中国料理屋はありませんでした。そこで"おしゃれ"であることをテーマに店づくりをしていったんです。求人雑誌で料理人やスタッフを募集すると、応募してくるのは私より年上の中国人シェフか、同じ年でも学生です。私の飲食経験は、バイトですらありません。小娘が知識のないまま飲食経営の世界に飛び込んだので、カルチャーショックの日々でした(笑)」(オーナー)

オーナーが選んだ紅色の店内。そのバーカウンター内の棚に、バカラのグラスがキラキラときらめく。そして安めのお酒でも、そのバカラのグラスに注がれる。これも30年以上貫かれてきた美学なのだ。

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厨房は、上海の3つ星ホテルで腕を振るっていた走培(ゾウ・ペイ)さんが、ひとりで切り盛りしている。4階建てのビル時代から料理人の入れ替わりはあったが、走さんだけは変わらず、三好さんを笑顔にする天竺の味を生みだしているのだ。

「走さんが中国から持って帰ってきた、まだ封を開けていない貴重な中国酒もありますよ」(オーナー)

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「私は京都の仲間10~15人で、"五花街の灯を絶やさぬように"と、毎月飲み会を開いています。その会でも天竺を利用しています。口の肥えた方ばかりですが、みなさんとたくさんお料理を注文して、飲んで、語らい、とても気持ちのいい時間をここですごしています。

経営者仲間や企業の重役の方にも、必ずお薦めしています。というのは、そういう方々は大勢の若い部下を食事に連れていくことがあります。そういう時に、安くて味がよく雰囲気のいい天竺はピッタリなんです」(三好さん)

撮影 津久井珠美  文 竹中式子

■天竺 広東倶楽部

京都市東山区祇園町北側266 井澤ビル4F
075-541-6733
17:00〜24:00 (L.O.23:20)
定休日 不定休
http://www.tenjiku-kyoto.jp/