京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回はANAクラウンプラザホテル京都 代表取締役社長の中山永次郎さんが通うイタリアン料理店「イル ギオットーネ」です。
■中山永次郎(なかやま えいじろう)さん
ANAクラウンプラザホテル京都代表取締役社長
日本国内にある多数のホテルや、オフィスビル、リゾートゴルフ場などの幅広い施設を開業・再建に携わり「ホテル・旅館の再生請負人」として知られている。ANAクラウンプラザホテル京都はフランス料理「ローズルーム」、日本料理「雲海」、中華料理「花梨」、鉄板焼き「二条」ほか数多くの店があり、その味は観光客や京都人からも愛されている。今回の「京の会長&社長めし」では中山さん自ら筆をとり、愛するお店との思い出について書き上げてくださった。
イル ギオットーネのこと
▲「イイダコと紅菜苔(こうさいたい)のスパゲティ ふきのとうの香りで」。紅菜苔は中国野菜。山菜のような味わいがふきのとうとともに春の味を描く
ホテルの宴会料理は、レストランと違い、100名とか200名、ときに600名を超える大勢のお客様に一斉に提供できる料理であることが大前提になります。
イル ギオットーネで美味しいパスタを喰べるたびに、なんとか、その美味しさの片鱗だけでもホテルの大宴会で提供できないものかと、あるとき笹島シェフに相談をしたことがあります。もちろん、イル ギオットーネと到底比べられるものはできませんが、それでも、なんとか満足できるレベルのものはできないものかと、試行錯誤していたところでした。
▲「イタリア料理のイベント開催の折には、会場の手配など中山社長にご協力いただきました」と語る笹島保弘シェフ
笹島シェフの、あのチャーミングな笑顔がちょっと思案顔になり、いくつかの場面に応じて、それならこういう工夫もあるのでありませんか、という具合に実に適切なアドバイスをいくつもいただいたことがあります。けっして結論を決めつけるわけでない、一緒に考えてみましょうという姿勢に、さすが超一流のシェフとはこういうものかと、その神対応に感心した憶えがあります。
▲魚介と京野菜による3種の前菜のなかの一皿、「サヨリとホワイトアスパラ ミモザ仕立て」
季節の野菜を変幻自在に企てする笹島シェフの料理の一皿一皿に、いつも眼から鱗が落ちるような驚きがあります。きっと、笹島シェフはこれが楽しみでシェフをやっているのだろうなとおもうのです。
▲肉の旨みが染みわたる「和牛の炭火焼き」。写真は春バージョン。数種のキャベツ、キノコにトスカーナの白いんげんのピュレを添えて。ピュレの隠し味は白味噌だ
私のイル ギオットーネでの一番の楽しみは、やはりメインの肉料理です。和牛のローストにしろ、絶妙の火の入れ具合と、根セロリや赤カブ、パセリなど野菜の巧妙なピュレとのマリアージュは、本来のあるべき美食の喜びを実感させてくれます。口に入れるたびに、いつもの笹島シェフのあのチャーミングな笑顔が思い浮かびます。
■店舗紹介
八坂の塔のたもとの一軒家に2002年にオープンしたイル ギオットーネは、今や説明不要の京都を代表するイタリアン料理店。京都の素材を活かした「京イタリアン」の先駆者として笹島さんは名をはせている。
かつてプロダクトデザイナーを志していたこともある笹島さん自ら関わった内装や家具は、20年近くたっても古びることなくモダンだ。店内には温もりある空気が流れ、客を迎える。
今回撮影したパスタや肉を盛りつけた食器はイル ギオットーネのオリジナル。「和食器はイタリアンでもしゃれていて、かつ使いやすいものを陶芸家とともに一から作ることができるのが魅力です」(笹島さん)。店で使用していた皿を気に入った中山さんが、ホテルのために取り寄せたこともあるそうだ。
「京都の会長や社長は、料理人を育てようという心意気をお持ちです。中山社長はビジネスの会食でも、ご自身が心から楽しんでオーガナイズされていらっしゃいます。またキッチンスタジアムのある宴会場をホテルに作られたりと、食に対して全方位からの愛情が深い方です。私もご意見をいただくことがあり、とても助けていただいています」(笹島さん)
撮影 エディオオムラ 取材 竹中式子
■イル ギオットーネ
京都市東山区下河原通塔ノ前下ル八坂上町388-1
075-532-2550
12:00~14:00(最終入店)、18:00~20:00(最終入店)
休み:火曜
www.ilghiottone.com/