京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は株式会社クリーントピアぴいぷる北 社長の松居洋一さんが通う「膳處漢ぽっちり」です。

■松居 洋一(まつい よういち)さん
株式会社クリーントピアぴいぷる北 代表取締役社長
1978年 京都府京都市生まれ
幼少期から音楽に慣れ親しみ、学生時代から社会人にかけ、エレクトリックベースやウクレレ等の演奏業や講師業に勤しむ。
26歳にて株式会社クリーントピアぴいぷる北に入社。
生産管理やマネージャー職種を経験しつつ、国家資格クリーニング師免許を取得。
2012年 代表取締役に就任。
一般衣料品から着物、寝具類からスニーカーまで、幅広いニーズに対応した独自の洗浄技術を駆使し、「アライノチカラ エガオノチカラ」の理念のもと、地域社会の方々に爽やかな衣類を提供できるよう日々邁進中。
最後の晩餐は、鮭茶漬け。
昭和初期の建物のレトロな雰囲気に包まれて、本場さながらの中国料理の数々を
昔から呉服や繊維関係の企業が集まる室町通。四条烏丸に近い室町錦小路界隈で、存在感を放つレトロな外観の建物が、松居さんお薦めの中国料理店「膳處漢ぽっちり」だ。
全国にレストランやホテルを展開する際グループが手掛けるこの店は、2003年オープン。京都と北京の街の佇まいが良く似ていることから、ここを北京の台所に見立て、北京料理を中心としたメニューを提供している。元呉服商の建物をリノベーションした店の雰囲気や本場さながらの料理が評判を呼び、長年にわたり京都の人々に親しまれている。
ちなみに「膳處漢」という名は、かつて都の御厨所があった滋賀県大津市の地名「膳所」に由来しているという。
松居さんがこの店を訪れたのは、9年程前だという。
「もともと仕事などで利用していた家内に薦められ、一緒に行ったのが最初です。京町家を改装された特殊な店内の造りで、接待にも使える個室やバーがあるし、メニューはリーズナブルなものから高級なものまで揃っていておいしい。今はコロナ禍で回数は減りましたが、大体年に5~6回は行っていました。他府県の同業の方々が当社に見学や打ち合わせに来られた時など、接待使いも良くしますし、以前は家族のイベントなどでも使っていました。一緒に行く人にも毎回評判がいいですね」(松居さん)
松居さんが「京都の街中であれだけの広さのところはなかなかない」という建物は、昭和初期もの。元店舗部分が洋館、住居だった奥の部分が町家になっており、ほぼそのままの佇まいが残されている。
ここでは、北京ダックやふかひれなどの北京料理を中心に、高級料理から点心まで多彩なメニューが、コースやアラカルトで楽しめる。とりわけ、ヨシキリザメ、モウカザメ、アオザメの3種を用意したふかひれの姿煮はお薦めだという。
松居さんはいつもアラカルトを注文し、お酒と一緒に楽しむそうだ。
「北京ダックやふかひれもよく頼むし、何でもおいしいですが、辛いものが好きなので特にこの2つは行くと絶対頼みます」と、松居さんがお薦めに挙げるのが、初めて来店した時からのお気に入りだという「ぶつ切り鶏の四川風唐辛子炒め(辣子鶏)」1800円と「四川麻婆豆腐」1600円。
写真の「ぶつ切り鶏の四川風唐辛子炒め」は、鶏の唐揚げを2種の唐辛子と炒め、唐辛子ごと豪快に盛り付けた四川の人気料理。ニンニク、ショウガ、豆板醤、醤油で下味をつけた唐揚げを、山椒と唐辛子などの香りを移した油と絡め、ふっくら柔らかく仕上げている。しっかり旨味が感じられる重層的な味わいの中にじわじわと辛さが利いてくる。
「辛いけど、美味い。お酒が進みます」(松居さん)
もう一つのお薦め「四川麻婆豆腐」は、牛挽肉を使用したランチでも好評のメニュー。
「こちらも辛くて、お酒のアテにもご飯にもよく合う。汗をだらだらかきながら食べています」(松居さん)
2種の豆板醤、豆鼓、ニンニク、ショウガなどの香味野菜や漬物などの辛味と風味、肉の旨味からくるまろやかさが絶妙に合わさり、おいしい。濃厚でありながら、意外としつこく感じない。
ここの料理は味にメリハリがあるのが特徴だが、それでいてくどくならないよう、いかにうまく油を使うかということに気を付けていると、料理長の花田伸介さんは話す。
「調味料を足していくことは簡単ですが、それではだんだん食べていてしんどくなる。うちは油を多めに使いますが、調味料は最小限に抑え、香辛料や肉などの香り、旨味を油に移して味に深みを出すようにしています」
「大体いつも5~6人が入れる個室を予約します。入口のところにソファスペースがあって、会食なら後から来る人をそこで待っていてもいいし、先に個室に行ってもかまわない。そういうシステムも気に入っています」(松居さん)
200人程を収容できる店内は、庭を望むテーブル席から座敷を含む異なる趣の個室まで、さまざまなシチュエーションに対応。重厚な雰囲気の待合スペースを備えるなど、大切な人との食事に適した造りになっている。地元サラリーマンから家族連れ、観光客まで、客層は幅広く、松居さんのように接待での利用も多いという。
松居さんも時々食後に利用するという蔵を改装したバースペース「ぽっちり」。
現在は休業中だが、食事からの流れで一杯飲める使い勝手の良さも好評。
松居さんは、店を選ぶ際、味、雰囲気、マナーの3つを基準にしているという。
「やっぱり味だけじゃなくて、いかに気分よく店を出られるかが大事。その点で『膳處漢』さんは、味はもちろん、建物の雰囲気もいいし、マナーや気配りが行き届いていて、必要な時に来てくれる距離感もいい。だからずっと通っているんだと思います」(松居さん)
松居さんの言葉に、「お褒めの言葉をいただけるのは、とてもありがたいです」と店長の尾﨑剛さん。
「ここに来られるお客様は千差万別なので、それに臨機応変に対応できるようにしています。また、マナーとともに、常に必要な時にパッと手が届くということも、私たちが目指しているところ。皆、一つでも喜んで帰っていただけるようにという思いで接客しています。これからも、『膳處漢』に来れば間違いない、絶対おいしい、絶対楽しめると思っていただける店でありたいですね」
予算は昼3000円、夜1万円程度。
撮影 エディ・オオムラ 文 山本真由美
■膳處漢ぽっちり
京都市中京区錦小路通り室町西入ル天神山町283-2
075-257-5766
営業時間 11時30分~15時(LO14時)、17時~22時30分(LO21時30分)
定休日 無休
https://kiwa-group.co.jp/zezekan/
※営業時間は状況により変更の場合あり。お店にお問い合わせください。