BLOG京都グルメタクシー2019.06.28

おいしい京都案内 |時代とリンクする、コスパ◎フレンチ2店

By岩間孝志

フランス料理の修業経験を持つ「京都グルメタクシー」ドライバーによる、隠れ家京都グルメ案内【京都グルメタクシードライバー日記】。今回は、そんな「フレンチの料理人」が厳選したフランス料理店「ちょっとフランス」と「L'éclat (レクラ)」をご紹介します。

この季節になると修学旅行生が観光地を歩いているのをよく見かけます。ゴールデンウィークから7月ぐらいまでが中学校の修学旅行のピークなんです。新人ドライバーがある程度経験を積んで観光案内ができるようになると、修学旅行のご案内を会社から申し付けられます。

でも本音を申し上げると、生徒さんのご案内は高度な判断力と体力を求められることが多く、ベテランドライバーでも骨がおれるご案内です。そんなこともあって、「グルメな運転手さん」という要望があるグループには、私が推薦されてきました。

 こんにちは! 修学旅行生からも重宝がられる?!京都グルメタクシーの岩間です! 車に乗っていただくだけで、あなたにとっての「おいしい京都」をご案内いたします。

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以前、修学旅行の生徒さんから「食いしん坊な運転手希望」というリクエストがあって、私が担当したのですが、「お昼ご飯は美味しいけれどワインコイン(500円)で済ませたい」と言われたことがありました。一瞬考えましたが、「森嘉」(豆腐、揚げものを購入して公園で食べる)→「米都」(できたてのおにぎりをにぎってくれる。しじみごはん、塩、炊込ご飯などを購入)→「銀閣寺キャンディー」(アイスキャンディー60円~ストロベリー、ソーダなどを購入。現在閉店)で京都名物からデザートまでを500円でおさめたのを思い出します。ワンコインでも絶品のグルメには出合えるんです。

 このときに「美味しいものは値段ではない」と生徒さんにお伝えしたこと、いまでもおぼえております。それがいまの京都グルメタクシーのコンセプトになったのかもしれません。

さて本日は私自身もかつて経験した「フレンチの料理人」というくくりで、「時代とリンクするフランス料理人のグルメ」を2つご紹介いたします! お待たせいたしました! 京都駅からまずは銀閣寺方面に向かってスタート! 出発で~す♪

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 岡崎の平安神宮を北東の方向に進み、銀閣寺の手前にあるのがこの「ちょっとフランス」です。女性シェフがおひとりでなさっている私の好きなお店ですが、シェフは人気フランス料理店で修業をされ、肉総菜がおいしいと評判のお店でさらに腕を磨かれました。その店で培われた経験をベースに、ご自身のセンスを盛り込んだことで、地元の人気店になったのでしょう。本場フランスの味をしっかり感じることができるのに、屋号は「ちょっとフランス」。「ちょっとどころでない、見事なフランス味」だと私は思っています♪

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 今日は「フォアグラムース」「リエット」「テリーヌ」「パテ・アンクルート」というラインナップで購入しました。これで合計2430円(税込)。かなりお手頃な価格です。パテやテリーヌは妻が大好きで、京都市内のいろいろな店のものを試しましたが、こちらも気に入っています。肉自体も上質ですが、生地の交ぜ具合や加熱のテクニックなど仕込みが理想的です。特にここの料理の「潤い」が気に入っています。水分をしっかり調整しているしっとりとした肉総菜が好きなんです。「フォアグラムース」は気泡と水分、そしてフォアグラそのものの持ち味がしっかり生かされています。

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 この「パテ・アンクルート」は、あえてはしっこの部分を購入しました。パイ生地がしっかり肉を覆っているから、肉のうまみが生地にしみこんでいます。肉とパイとのバランスがよく、塩気も程よくあります。

 フランスで修業していたとき、研修先から電車で行けるリヨンやバランスに行って、肉総菜を買ったものでした。専門店でも買いましたが、スーパーでも安く手に入ります。「ちょっとフランス」の肉総菜は当時のフランスの味そのものです。食べている間にいろいろなこと思い出します。楽しかったこと、つらかったこと。。。。「記憶をよみがえらせる料理」っていいものですね。たまにフランス人に怒られた夢をみて目が覚めることがありますが(笑)

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 銀閣寺界隈から今度は京都府庁方面に車を走らせます。お客様から一人で運転しているときは「どんなことを考えていますか?」と質問をうけることがあります。安全運転を考えるのは当たり前なのですが、新店舗がどこかにないだろうか? 隠れていないだろうか? と思いながら走ることも多々あります。新聞の報道記者のように、しっかり集中力をもって目で見る! そんなふうに車内から町を見ています。

フランス車のプジョーやシトロエン、ルノーを見ると、フランス時代を懐かしく感じたりします。フランス滞在時期に現地の人や料理人にお世話になったおかげで、今も「フランス帰り」という肩書きを名乗れる「京都グルメタクシー」なのです。

それでは、京都のEsprit(エスプリ:知性、才気、)ある味をこれからご紹介いたします!

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 フランス語でL'eclat(レクラ)は「はなばなしさ,輝かしさ,光輝」という意味だそうです。ミシュラン掲載店の「MOTOI」から派生したお店です。スタッフも「MOTOI」出身の方が多く、懐かしいサービス担当さんもいます。ただし、「MOTOI」と共通しているのは「おいしい」ということだけかもしれません。そのぐらいメニューは方向性が異なります。開店されて4か月でしょうか、巷では「クラシカルフレンチ+洋食」「古き良き時代のフレンチ」とも言われ、噂になっているお店です。5月にフレンチのベテランサービスの方と2人でうかがったときの料理をリアルにご紹介いたしますね。

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 ちょっと気になる町屋といいましょうか。京都の街に溶け込む姿に期待が膨らみます。

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 フロアはこういった感じですが、机をつなげるとまとまった人数でも入ることができます。

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 2階にはバースペースもあります。ゆっくりくつろげるソファーもいいですね。定休日の前日以外ディナータイムの後もバータイムがあって便利です。

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 7名ほど座れるカウンターからは、こんな感じでシェフやスタッフの動きがしっかり見渡せます。カウンターと調理場の間に通路があるので、熱がこもることもなく、常に空気は清浄に保たれています。カウンターとテーブル席にも距離があり、ほかのお客さまの会話が気にならないのもいいですね。スペースの取り方もしっかり計算されています。

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 手書きのおすすめメニューも魅力的。「ハヤシライス」もあるじゃないですか~! フランス料理を基本としていますが、洋食ジャンルのアラカルトも充実しているのがこのお店の特徴でもあります。定番メニューも豊富で「ポテトサラダ」などもあって、愛嬌あります♪

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左 フォアグラのフランのキッシュ 右 グジェール 

アミューズ インパクトある2つの料理でお出迎えです。それぞれに対照的な風味で楽しませてくれます。

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 ワインの選択は中村支配人にお願いしましょう。長年MOTOIで支配人をなさっていましたが、こちらの店の準備でしばらくお忙しかったそうです。いつもの笑顔で対応していただきました。この日は2人で伺ったのですが、同席者もベテランサービスの方だったので、ワインリストが気になったのか、いろいろ注文されました。

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 ディナーの後のバータイムも、種類豊富なワインをグラスで楽しめます。ワインの話に花が咲き、このあとワインセラーを案内していただきました。

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 この場所、かつては豆腐屋さんでした。その時から地下はあったそうで、かつては井戸水もでていたとか。値段も書いてあるのでここから選ぶこともできます。

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 これが1階から地下に降りるワインセラーの入り口です。フランスの石造りの床のような~。
さてカウンターにもどって、いよいよディナーをいただきます。

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 ホロホロ鳥 フォアグラ トリュフのパテ・アンクルート 1900

 硬派と言えるしっかりとした歯ごたえ。決して硬いということではなく、ずっしりした感じが正統派です。塩気もやさしく、うまみが凝縮しています。二人でなら、ひとつがちょうどいい量でしょうか。重たさがないのがホロホロ鳥ベースのいいところでしょう。先ほどの「ちょっとフランス」と同じ料理を注文して、あえて食べ比べるのも美食的な選択ですね。

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 長崎県産 神経〆 イサキ フライ タルタルソース 2100

パン粉の衣がカラッと上っていて、油切れがいい。中まで火が通って蒸されたあたたかい白身がやわらかくおいしい。

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 特製 平井牛ハンバーグ デミグラスソース 2800

 平井牛73米沢豚 の比率で配合されているらしく、非常に食べやすい。そしてこのデミグラスは「デミグラスはこうあるべき」という正統派の味です。このソースをいろいろな料理に使われていますが、煮込みすぎて炭化していることもないし、逆に煮込みが浅くもない。ちょうどいい塩梅です。付け合わせにムースリーヌ(ジャガイモのピューレ)が添えられ、懐かしくなりました。

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 黒毛和牛カツレツ 4600

 火入れのタイミングもよく、衣が肉のうまみをしっかり閉じ込めてくれています。ハンバーグがどの料理もあまりに美味しく、もう一品追加したのがこの料理です。

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 美山 美卵のオムライス 1900

 料理人とリンクしていているこの撮り方が気に入っています♪ 平飼いの卵、美山の「みらん」です。若い鶏にしか生ませない卵ときいていましたが、私も初対面です。ふんわり、そして卵の味をしっかり感じることができます。ライスはおそらくケチャップ系、そして玉ねぎはもちろん大量のシャンピニオン(マッシュルーム)が使われています。一人ならこれとサラダとスープでも楽しめそうです。単品料理でワインを少し飲むという利用も大丈夫だそうです。

P1090942.JPG この日は満席で、私たちのあとからも数組こられました。男二人でしたが最後は〆のデザートを注文することに。3つの候補がありましたが決まらず、結局3つとも頼むことになりました。

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 ガトーショコラとバニラアイスクリーム 850

 すっきりした甘さ控えめのグラスアラバニーユ。チョコレートの風味が力強い

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 ミルフィーユ 苺とフランボワーズのシャーベット 1000

 ごく薄のパイ生地を焦がして提供。これがやさしいカスタードクリームと合わさっていい味だしています。フランボワーズのさわやかな風味はミルフィーユを盛り上げてくれます。

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 美山 美卵のクレームブリュレ 

 ガッチガチです。本来このぐらいは表面の焦げがほしい。「濃い色の焦げ(ブリュレ)がないとクレールブリュレと言えません」とお菓子が語りかけてくるようです。

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 いつもはエスプレッソを頼む私ですが、さすがに今日は珈琲にしました。
「甘味は別腹」と言いますが、ほんと、そのとおりです。

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 ここにきて種明かし。。。

シェフはフランスの料理学校時代の同級生です。

 小栗秀樹シェフと出会ったのは、フランス校(辻調理のフランス校)でした。もう28年も前の話で、1991年の春コースの戦友なのです。長年ラ・ロッシェルで修業。大阪のレストランや、このお店の系列店にも一時勤めていたそうです。フランス校当時のシェフの印象は、とにかく冷静。黙々と仕事をこなすタイプでした。お互いに年をとりましたが元気そうで良かったとお励ましあいました。そして思ったのは、彼が当時より料理を楽しんでおられるということ。再会といっても彼はほとんど料理をつくっていたので、お話ししたのはすこしだけでした。今月、同窓会があるので、そのときにはいろいろ話せればと思っています。個人的なことをご紹介しましたが、それは別としても、おすすめしたいお店なのです♪

 友人としての評価ではありますが、今後このタイプの店はますます需要が増えるはすです。手軽にワインが飲める、インテリアにも力をいれている、とはいえコスパが良く、アラカルトで昔ながらの味も楽しめる。また、モトイの姉妹店という安定感と経験がいたるところに生かされています。肩肘張らない雰囲気もここを訪ねやすい理由です。フランス料理と日本洋食のちょうど中間的なポジションといってもいいでしょう。創作などは加えず、ストレートな剛速球勝負という感じです♪

 サービスの要的存在でもある中村支配人の力も大きい。ワインセンスはもちろん、お店の為に尽力されていることが、節々ににじみ出ています。この店からまた新たな伝説がはじまりそうです。若きスタッフの優秀さやオーナーの考えが、このお店を益々良くしていくことでしょう。

皆さんもぜひ行ってみてくださいね。

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 これは1991年の私の写真です。だれですか? と言われそうですが、このときに小栗シェフと出会いました。28年後に再会を果たせました。人生において料理は様々な出会いをもたらしてくれます。グルメタクシーにとってフランスは要となるもので、これからもフランスで学んだ経験を生かし「京都知新」の一員として、京都のすばらしさを、食を通じてお伝えしようと思います!

 「運転手さん!そろそろ京都駅へ戻ってくださいよ!」
 「あ? そうでした! ちょっとフランスのこと考えてしまって。。。(笑)」

 今日の京都グルメタクシーツアーはいかがでしたでしょうか。本日はちょっと長くなりましたが、またお会いできる日を楽しみにしております! さあ、またおいしいお店、探してきま~す!!

※記事で記載している価格は取材当時のものです。

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■ちょっとフランス

京都府京都市左京区浄土寺上馬場町112
075-741-6244
11:00~20:00
定休水・木曜日
http://c-furansu.com/

■L'éclat (レクラ)

京都府京都市中京区竹屋町通衣棚東入ル相生町281
075-222-1256
Dinner Time 17:00~21:00(L.O.)/Bar Time 21:00~25:00(L.O.)
定休日月曜日(祝日の場合は翌日休み)
※定休日前日は21:00
24席 カウンター テーブルあり
駐車場なし ただし近隣に1300円 24時間一律がある
2019年2月27日開店

岩間孝志いわまたかし

1968年・東京生まれ 70年・京都市伏見区に移住 91年・辻調理フランス校へ留学 現地レストラン研修後帰国、京都ホテルグループで勤務。その後タクシー会社勤務、途中バックデザイナーを経てタクシー業界に復帰、2010年・法人タクシーで「京都グルメタクシー」を旗揚げ、2015年・個人タクシーとして独立。著書に「おいしい京都」「もっとたべたい京都」PHP研究所)があり、現在は京都府文化観光大使としてテレビ、ラジオ、雑誌等で活躍している。

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