BLOG京都グルメタクシー2019.04.22

おいしい京都案内|鳴海餅本店の赤飯と粟餅所 澤屋

By岩間孝志

フランス料理の修業経験を持つ「京都グルメタクシー」ドライバーによる、隠れ家京都グルメ案内【京都グルメタクシードライバー日記】。今回は、京都で家族で伝統の味を守っている鳴海餅本店と老舗和菓子店「粟餅所・澤屋」をご紹介します。  

京都!春まっさかりです! こんにちは! 京都グルメタクシーの岩間です。

車に乗るだけで得られるあなたにとっての「おいしい京都」をご案内いたします。今回は「家族で営む時間を大切にする老舗」「できたてのおいしさ」のふたつのテーマで和菓子店をご紹介したいと思います。京都には和菓子店はほんとうに多く、数えられないほど。市内の隅々までおいしい和菓子店が点在しています。日々情報の開拓はしているもののまだ見つけられてないお店もあります。家族で伝統の味を守るお店も多いのですが、今回ご紹介したいお店はいずれも北野天満宮近く。車を北へ向けて走らせます!

 途中、世界遺産・二条城を通過しますが、この二条城、外堀の周囲だけでも2キロあると言われ、敷地内にはいろいろな花や建造物かあります。庭園を一周すると1時間以上経ってしまうこともあるほどの広さ。江戸時代の権力や徳川家の立ち位置が最もわかる史跡ではないでしょうか。

 歩けばお腹がすきます♪ より多くのお店を楽しみたい方におすすめしたい、とっておきの軽食を紹介しましょう。その軽食は和菓子店の中で食べられるのです。

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 創業明治7年の「鳴海餅本店」。地元では「ナルミの赤飯」と呼ばれ親しまれていて、ここにくるお客さんの多くはこの赤飯を買い求めます。添えられたごま塩をかけて食べると、ほんとうに美味しい。

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 もし炊き立ての温かい赤飯を食べたいなら...、それを実現してくれるのが販売ブース横にあるサロンです。赤飯をはじめ和菓子もいただけるスペースになっています。

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 おすすめしたいのは「赤飯セット」540円(税込み)という低価格が魅力的ですね。

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 ほかほかの名物赤飯と赤だし、そして奈良漬けも添えられています。和菓子を付けることもできるようです。栗の季節には栗赤飯もいただけますよ。

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 佐賀県産「ヒヨクモチ」なるもち米と、大粒丹波産大納言小豆を使い、大型の特製セイロで丁寧に蒸し上げたもの。ふっくらとした小豆の風味がやさしく伝わってきます。ホカホカの赤飯、こちらが、ひとつめの「できたてのおいしさ」です。

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車も停められるので、助かります♪

さて、ほどよくお腹を満たした後は最終目的地、北野天満宮に車を走らせます。堀川通りを北へ向かいます。柳の新芽を横目に進むと、そこは西陣エリア。陰陽師安倍晴明が祀られる晴明神社や蹴鞠の時代から現代までスポーツの神様として親しまれる白峰神社などもこのエリアにある名所です。神社信仰の盛んな地域でもあるのですね。西陣らしく、機織りの音も聞こえてきそうな魅力ある街です。

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 この北野天満宮界隈に有名和菓子店が多いのは、豊臣秀吉の北野大茶会が行われたことや、その後花街となった上七軒からの需要が多かったからでしょう。「粟餅所・澤屋」 (あわもちどころ・さわや)は、地元から支持されるうえ、観光客、参拝客も立ち寄る人気和菓子店です。付近には「とようけ茶屋」という行列のできる人気の豆腐屋さんもある場所で、賑わいを見せています。

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 実はこのお店、京都の事が詳しくわかる「福本晋吾の京都ビビビッ」MBSラジオ 6月24日放送予定https://www.mbs1179.com/kyoto/)で私がゲスト出演させていただいたときご紹介したお店です! 放送後もう少し詳しく教えてと複数メールを頂きましたので、今回こちらでもご案内させていただきました。

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創業は江戸時代天和2年ですから1682年、日本では井原西鶴の『好色一代男』が発刊された年でもありますね。しかもその創業の日より50年前にはすでにお菓子が存在していたとも言われていたとか。「江戸時代の甘味」が現代にも通用するというのは、ロマンがありますよね。

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「あわ」という音を聞くと、最近はエスプーマもブームなっているので「泡」と勘違いされる方も多いのです。「粟」はたしかに現代社会ではなじみが薄く希少性のある穀物です。粟餅を主にした和菓子、この古来の甘味を現代の人はどう感じるのでしょうか。中に入ってみましょう!

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 磨かれた机、応接間にあるついたてを彷彿とさせる美しさなのですが、「かえで材」の木のテーブルとカウンターは上品で清潔感がありますね。つやつやに磨かれ年季が入っていて、ここのお店の歴史とリンクしています。

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 席数は多いのですが、満席になることもあり、特に天神祭と梅の季節は行列になりますね。ちなみに梅の開花は、1月~3月と長く、例年2月下旬~3月がもっともベストな季節です。その頃はお店も忙しいようで、テレビでも北野天満宮に献上される粟餅の特集を放映していました。毎月25日の縁日には特大の粟の鏡餅を天満宮にそなえるそうで、神事とのつながりも深いお店ですね。ちなみに忙しくて粟餅がなくなると、次のお餅ができるまで少し待つこともあります。それも「できたて」を守るゆえなのでしょう。

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白梅 5個入り 600円 餡3つ きなこ2
紅梅 3個入り 450円 餡2つ きなこ1
 お茶はついてきますが、300円追加で抹茶に変更することもできます。こちらもぜひ試してみてくださいね。

 さてさて、まずはお菓子を頼むことが肝心。

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 注文すると、作業台にさっと職人さんが集まり作業開始! 餡子、粟、きな粉を操るように粟餅がつくられ、この場所に緊張感が漂います。

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三つの鉢を囲んで♪ こし餡、きなこ、粟餅を巧みに丸めて、手際よくお皿に盛ります。現在の当主は12代目森藤輿八郎(よはちろう)さん。お仕事される時間は短めですが、96歳で、いまだがんばっておられます。12代目とともにお店を仕切られているのが13代目の哲良(てつろう)さんと14代目のお孫さんです。皆さん達人クラスの早さで粟餅をつくられます。家族そろってつくる一連の手作業は、お菓子ファンにはたまらない風景でしょう。この写真にはおられないのですが、12代目の輿八郎さんは午前中に作業されているそうです。ご家族が多いからこそ、一斉に粟餅づくりに取りかかることができる。できたてにこだわる店の姿勢がこの写真にも現れています。

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 注文後、しばし温かいお茶を飲みながら、ご家族で作られる粟餅を待つ。

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 きめ細かな国産大豆のきなこと砂糖との絶妙な配分。黄金比のおいしさですね。13代目はこうお話されます。「持ち帰っていただいてもおいしいのですが、店で作りたてを食べられるのがさらにおいしい。是非お店で召し上がってください」。米の餅菓子より軽く、多めにみえますが白梅5個セットはおやつとして女性でも食べきれます。

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 ん? 餡子ときな粉の餅の形が違う?!

 餡子ときなこでは形が違うのですが、聞くところによると、きなこは表面積を増やしてよりたくさんきな粉がつくように長細くしたのだそう。なるほど。きな粉だけを頂いても完成された味で、ついつい餡子に絡ませて食べ切ってしまいます(笑)

 粟餅は丸めたてがもっとも柔らかく徐々にゆっくり弾力がでてきます。それでも食べ終わりまで堅くならない。そしてきな粉の方は、水分を徐々に含んでしっとりしますが、それがいいと言う人もいますね。そういえば半分食べてから、少し間を置いて残り半分を食べる人もみかけたことがあります。

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 ご家族の笑顔に見送られ、お店をあとにします。家族で営む時間を大切にする老舗和菓子店でできたてのおいしさを堪能する。代々継がれる技術はこれからも後世に伝えられます。永遠に続いてほしいおいしさですね。

さて本日の京都グルメタクシーいかがだったでしょうか。旅のテーマを考えられた後に相談されるお客様も多いので、私がコンシェルジュになってご案内させていただきます! お客様をお送りしたあと、夕焼け空を見ているとまたお腹が空いてきました。新たなグルメを追いかけて、情報収集! 京都グルメタクシーで行ってきます~♪

※価格は取材当時のものです。

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■鳴海餅 本店

京都府京都市上京区下立売通堀川西入西橋詰町283
075-841-3080
18:30~17:30
定休日 正月・盆休みあり
http://www.narumi-mochi.jp/

■粟餅所・澤屋 (あわもちどころ・さわや)

京都府京都市上京区北野天満宮前西入紙屋川町838-7
075-461-4517
9:00~17:00
定休日木曜・毎月26日

岩間孝志いわまたかし

1968年・東京生まれ 70年・京都市伏見区に移住 91年・辻調理フランス校へ留学 現地レストラン研修後帰国、京都ホテルグループで勤務。その後タクシー会社勤務、途中バックデザイナーを経てタクシー業界に復帰、2010年・法人タクシーで「京都グルメタクシー」を旗揚げ、2015年・個人タクシーとして独立。著書に「おいしい京都」「もっとたべたい京都」PHP研究所)があり、現在は京都府文化観光大使としてテレビ、ラジオ、雑誌等で活躍している。

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