こんにちは。京都グルメタクシードライバーの岩間孝志です。車に乗るだけで、あなたにとっての「おいしい京都」をご案内いたします。私の車は正統派クラウンセダンというハイヤー車です。4人までご乗車できます。乗り降りしやすい上に、セダンの中では窓が大きいので、京都の風景がしっかりご覧いただけますよ。皆さんおそろいですか!本日も京都駅から出発いたします!
京都駅をでて烏丸通りを北上すると左手に東本願寺があります。その東側、東本願寺の飛地境内地にあるのが渉成園で、一般の方も参観できます。庭園内には、「渉成園十三景」と称される樹石と建物の風雅を堪能でき、京都観光の穴場的存在でもあります。少々歩きますので、「次に移動する前に、美味しい珈琲を!」とお客さまがリクエストされることもあります。そのときには渉成園の北側にある『Walden Woods Kyoto』をご紹介しております。
1800年代に活躍したアメリカの思想家ヘンリー・D・ソローが大自然との共存の中に安らぎを求め暮らしたのがウォールデン湖畔。そのときの時給自足の生活を記録した『ウォールデン 森の生活』が代表著作で、店名の由来です。森の様な澄んだ空気感や思い思いに過ごせる空間をカフェとして実現したいという思いをこめてつけられたそうです。とにかく白くおおらかな場所。そしてテーブルをあえて置かない、お客さんが座っていくと自然に輪になるレイアウトが新鮮です。
クリエーティブディレクターの嶋村さん、飲食店プロデューサーの西村さん、そして元サンガFC・ユース代表(U-18)のマネージャーの梅田さんの3人がメインとなり、香り高い珈琲とチャイ、そして焼き菓子も提供されています。
中央に置かれた焙煎機(1966年製)は蒸気機関車のようで、芸術的です。番組「京都知新」のコンセプトにもぴったりあいますでしょうか。古き良き時代のアイテムが新しいデザインの中でも、違和感なく活躍しています。新しい挑戦を続けている人たちや、訪れるゲストをじっとここで見守っているかのように見えますね。
トレードマーク入り ビスケット
バターの風味がしっかりしている、滋賀県のクッキー専門店『ノチェロ』さんのビスケット。こちらにはいろいろお菓子がありますが、複数の菓子職人さんから取り寄せているそうです。
チャイも定評あります。スパイスの抽出がうまくいっている証拠が、作り出す工程で生まれる香りに表れています。スタッフの皆さんが世界をまわって探してきた、選りすぐりのスパイス。たとえばカルダモン、クローブ、シナモン、ジンジャー、ブラックペッパー、アッサムなどを注文が入ってから、わせて煮込むのですこし時間がかかりますが、待つだけのことはあります。
この界隈には先日開拓した公園奥のチキンカレーが美味しい『そのうち cafe SNC』や、京都のみならず全国の銘酒を販売している『銘酒館タキモト』、おはぎとゆで小豆の裏メニュー的瓶詰め「あんてぃーく」の『今西軒』など、タレント揃い。道すがらご紹介しているのですが、お客様から「どこも寄りたくなるので言わないで!(笑)」と......そのぐらいこの界隈はグルメスポットが多いのでご紹介する私も時間の配分が難しくて...うれしい悲鳴をあげております♪
車は今回の最終お送り地に進むため、烏丸通りから五条通を越えて高辻通りを右折、四条の手前の佛光寺に到着しました。京都府下京区にある真宗佛光寺派の総本山です。参拝者も多く繁華街の中にあるのにゆったり時間が過ごせる休憩スポットでもあります。見事な御朱印がいだだける場所としても有名です。
その境内の中に『D&DEPARTMENT KYOTO』という「ロングライフデザイン」をテーマにした京都の工芸品や人気の生活道具を紹介している場所や、ランチも楽しめる『d京都食堂』があります。佛光寺は、お寺の新しいスタイルを予感させるスポットではないでしょうか。
さて今回の終着点はその佛光寺のちょうど真南の『観山』です。店主の八木一真さんは祇園の骨董店がご実家で、『京都吉兆』をはじめ、グランヴィアホテルの『吉兆』、『柊家旅館』でも修業された経験豊富な料理長で、すべてを委ねたい気持ちになる素敵な存在感をお持ちの方です。本日は秋に伺ったときの15000円のメニューをご紹介しましょう。
先付 胡麻豆腐 焼松茸 車海老 しかく豆 雲丹
おいしいもの、この季節の味を織り交ぜてというつかみ。個々に主張する風味が見事です。
秋鮭のいくら くるみしょうゆ
八木さんは「当店は飲み物としてお出ししています」と微笑みながら...たしかにゴクッと飲めます。
この器や箸、匙の配置なのですが、しっくりくるといいますか、空白も理想的だと私は思います。
造り
明石の天然鯛 松皮造り
和歌山もんご烏賊 あぶり
高知県もどり鰹 たたき 藁燻し
さよりの酢のもの
醤油と玉ねぎポン酢 かつお(お好みで)
西日本各地の産物。海を感じる抜群の鮮度。玉葱ぽん酢と一緒にいただきます。
さよりの酢の物
天然鯛
鰹
ポーションごとの切り方、大きさが見事です。女性が一口でいただける大きさです。これまで出た器は江戸時代のものもあり、古染付、唐津、信楽、立杭焼、織部など、バリエーション豊かです。
土瓶蒸し 松茸 はも 銀杏 車エビ 水菜
この土瓶は修業先から独立のお祝いに譲ってもらったものだそうです。私もフランスで修業したお店から器などを記念にもらいましたが、今もとっておきの食事会のときは飾ったり料理を盛ったりしていますが、器をゆずるというのは、人と人のつながりを感じられるいい話だと思います。だしは濃くもなく薄くもなくいい塩梅で、しかも食べ終わるまで同じ温度に感じたのは、土瓶の性能もさることながら、美味しいから早く食べてしまったからでしょうね。笑
八寸~実りの秋をイメージした稲穂飾り~
菊の葉のこづけ
秋刀魚のうま煮 すだちおろし 紫蘇の実
ホタテの山椒煮 【琵琶型】
柿なます
焼鯖寿司
海老のふたみ蒸し
伏見の新小芋田楽
かますの一夜干し すだち(お好み) 【東屋】
ちなみに大きな籠は花水木の枝で、八木さん自作の品。秋のイメージそのもので、風情をしっかり味わうことができますね。実は2018年の5月にも伺っていますのでそのときの八寸をご紹介いたします。
(5月に伺った時の八寸 8000円のランチ)
八寸 ~新緑の彩~
淡路天然鯛 鰹たたき
舟形の器 → いい蛸の梅煮
ふきの葉の炊いたもの
伏見のあかほうれんそう
東屋の器→マスの香煎揚げ
鯖のちまき寿司
季節感が緑色にでていますね。まさに新緑の彩。このときはランチの8000円のコースなので、今回のコースとは単価が異なりますが、それでもこのレベルはすごい。四季をしっかり表現されているので、季節を変えて食べ比べるのも面白いですね。
鱧のやきしも 鮑 伏見の万願寺 赤と青
それぞれの火入れの状態が良く、彩りも食欲そそります。鱧は梅肉でいただくのですが...
梅肉+わさび
鱧を梅肉だれで食べるのは定番ですが、梅肉にわさびを加えるというオリジナル。酸っぱさと辛さがマッチしていてよく考えられていると思いました。
秋田 しらかみ桜牛(和牛) カツ
伏見の赤水菜
大原べにくるり(赤大根)
長野県 ヒラタケ
黄身ソース
終盤にカツがでてきます。カリカリの衣に肉のうまみを十分含んだ和牛。京都の野菜を盛り合わせた一皿。たくさん食べる方にもこの展開はうれしいのではないでしょうか。
黄身ソースも非常においしかったです。食べ終わってみると、料理をつけて食べる、「玉葱ぽん酢」、「梅肉わさび」、「黄身ソース」がとても印象的でした。このあたりに、八木さんの独創性を強く感じます。
久御山 秋茄子
若狭ぐじ
丹後の七夕豆
松茸 菊花あん
明治時代のお椀だそうです。非常に料理が映えますね。滑らかな口当たりですっと溶けて行きます。それぞれの具材も丁寧に火入れしてあります。揚げ物のあとのこの滑らかな料理は緩急がついてアクセントになります。
鱧松茸御飯
通称「はもまつ」ですね。蓋をあけたときに、湯気と香りが一斉に迫ってきます。〆の料理としてありがたい組み合わせです。ご飯、一粒一粒が感じられる食感。そして染みこんだ鱧と松の味と香り。食べた後も余韻が残ります。
汁物 八丁味噌
果物 アーモンドブランマンジェ
やさしく美味しく、どの野菜も喜んでいる
初訪問のブログには副題でそうかかせてもらいました。八木さんの料理で一皿目から感じたのは、京料理のど真ん中をまっすぐに走るような感覚。「どの野菜も喜んでいる」と感じるメニューづくり。とにかく、味がわかりやすく余分な枝葉がありません。雑味なしうま味あり。派手な演出に頼ることもなく黙々と作業をなさっています。
でも、お客の話はちゃんと聞いている。
調理法がわからないと同席者と話していると、カウンターの向こうからすっと教えてくださいます。聞き耳というより善意による応対。八木さんの温かいお人柄も御馳走です。
これは5月の筍ご飯の時の八木さん。カウンターでお客さんとの楽しいひととき。
女将さんの存在、そして2つの方針。
女将さんのサポートも秀逸でお話しが面白く、要所要所で会話に参加してくださいます。料理、サービス、しつらえ。日本料理店ならではの総合力を感じることができます。
お店の3つの方針にもなるほどと思いました。
- 「一斉スタートはしない」
コース料理を出すのなら、一斉スタートの方が何かと利点がありそうですが、お客さまが来られる時間がばらばらだと、すべてにおいて高度の段取りが必要になります。あえて難しいことに挑戦したいという気持ちがおありのようでした。
- 「カウンター席のみにして、満席にしない」
テーブル席がありません。カウンター席だけですがゆったりしています。一斉スタートをしないので、カバー仕切れないほどお客様を入れない。1人一人のお客さんとじっくり向き合う。
お客さんの体調や考えていることまで知る。そこを大切になさっているのがはっきりわかりました。かといって気楽なんですよね。初対面でも大切に接客してもらえるという有難さ。
しばらくすると、八木さんに会いたい...そんな気持ちがこみ上げてきます。
本日の京都グルメタクシーはいかがだったでしょうか!寺院、カフェ、雑貨店、そして日本料理店といろいろご案内いたしました。実のところ今回のコースは京都駅から歩いて行けるコースでもありまして、私の車は必要ないかも...笑。「グルメタクシー疑似体験」でウオーキングがてら立ち寄ってみてください。京都駅から四条河原町までの界隈、実はまだまだ「美味しい京都」がたくさんございます。皆さんも見つけてみてくださいね!それではまた次回!