BLOG料理人がオフに通う店2018.12.07

「菜処 やすかわ」―「京都吉兆」徳岡邦夫さんが通う店

「京都吉兆」徳岡邦夫さん

プロフィール
「吉兆」創業者・湯木貞一氏の孫にあたる。15歳から貞一翁のもとで料理の核心を学びはじめる。その後、高麗橋吉兆、東京吉兆での修業を経て、京都・嵐山本店へ。1995年以来、総料理長として現場を指揮。伝統を守りながらも時代に即した食へのアプローチに挑戦し続ける。2009年のミシュランガイド関西版の発行以来、嵐山本店は10年連続で三つ星を獲得。

おすすめコメント

名古屋などの近郊への出張帰り、夜9時ごろに京都駅に降りたつと、その足で向かうのが祇園にある「やすかわ」さん。参加したパーティでそれほど食事ができず、お腹が物足りない時にもうかがっています。おでんの種類も豊富で、おばんざいも有名ですが、私はいつでも決まったおでん種と一品料理をいただきます。

行く時はたいてい一人です。5~6年前に初めてうかがった時からそうでした。ゆっくりと一人でご飯を食べたい、ほっと一息つきたい、そんな気持ちを満たしてくれる空気がこちらにはあるからです。会議やパーティでたくさんの方と接して高揚した気持ちを落ち着かせ一日の最後にリセットしてくれる、私にとって大切なお店です。

菜処 やすかわ

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「大根、糸こんにゃく、さつまあげ、豆腐の4種類が私の定番です。4つ一緒に頼むこともありますが、出汁が冷めないようにたいていは2種類ずつ。一番最初の大根は外せません。鰹節と昆布を濃い目に利かせた出汁がじゅんと染みわたっています」

昭和60年にオープンして以来33年間、毎日つぎ足されてきた出汁で煮込んだおでん(1個税別200円、すじ肉おでんのみ400円)。その出汁は「やすかわ」の一品料理のベースにもなっている。

2個の卵に出汁たっぷりの、ゆるめでフワフワの出汁巻きもお気に入りです」

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店主の安川裕貴子さんが店内で見る、徳岡さんの姿とは......?

「徳岡さんがいらっしゃる夜9時すぎは、ちょうど最初のお客様がお帰りになってお店が落ち着いたころです。予約の電話もなく、いつもお一人でふらりといらっしゃいます。そして冷の日本酒でいつものおでん4種をつまんでいる間に、焼き魚を注文されます。最近は鯖の塩焼きが多いですね。私とお話しされることはなく、携帯をご覧になったり、考え事をされたりと、お一人の時間を楽しんでいらっしゃるようです」(安川さん)

そうして小一時間ほどするとさっとスマートに切り上げて帰られるとか。

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「一人ですと、やはりカウンターが落ち着きますね。空いていれば端の席を選びます」

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開店当初はカウンターと小上がりのみだったが、18年前に改装して今では奥に座敷が設けられ、宴会利用もできる。

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大正時代から続く置屋だった安川さんの実家の一角を改装。深夜1時まで営業しているので、店じまい後の料理人も多く訪れる。
撮影 津久井珠美  文 竹中式子

■ 菜処 やすかわ

京都市東山区末吉町93
075-551-3390
18:00~翌1:00
定休日 日曜、祝日※12月31日は営業、ゴールデンウィークも一部営業