BLOG京の会長&社長めし2019.11.19

宮崎木材工業株式会社の社長が通う店「呑喜屋 むね」

京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は宮崎木材工業㈱ 社長の宮﨑真里子さんが通う店、「呑喜屋 むね」です。

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■宮﨑真里子(みやざき まりこ)さん 

株式会社宮崎(夷川通の家具の小売)、宮崎木材工業株式会社(木材の内装会社)代表取締役。京都生まれの京都育ち。紆余曲折があって創業163年の家業を継ぐことになった。伝統的な京指物の技術を守りながら時を経て美しさを増す木材の空間を伏見の自社工場から日本各地だけでなく海外へもお届けしている。お茶室、能舞台の移設や家具の修理にも力を入れている。
趣味は美術館めぐり、そして仕事柄、美しい空間を見ること。新しい最先端の空間だけでなく年月を経てさらに美しさを増す上質な建物をなるべく多く見て仕事にいかしていきたい。
元気なのが取り柄で秘訣は一杯食べて飲むこと。色々な人に会うのが好きで、楽しく飲むのが鉄則。自宅ではお酒を飲まない。最後の晩餐は、麺が柔らかくて、おだしの利いた京都のきつねうどん。

家庭的な雰囲気とバラエティ豊かなメニューに、毎日通いたくなる路地奥の一軒

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おいしくて、手頃で、ほっとする。そんな店が身近にあるのは、なんとも心強いものだ。今回紹介する一品料理店「呑喜屋 むね」があるのは、宮﨑さんの会社からすぐ近く。うっかりすると、見逃してしまいそうな堺町通沿いの路地奥にある。

「路地の奥に小さな看板が出ている程度なので、知らない人にはわかりにくいかもしれません」(宮﨑さん)

元は民家だったという平屋の建物を改装。長いカウンターとテーブルのある落ち着いた佇まいの店内は、生簀の水槽を備え、いつも多くの客で賑わう。この店を母や従兄弟とともに切り盛りする店主の長池宗紀さんは、二条の「恒屋伝助」で修業後、29歳で独立。「いいもんを安く」をコンセプトにここを始めた。旬の良質な素材、とりわけ魚介の料理には自信を持つという。

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10年程前に会社と自宅の近くに開店されて、近所の人に勧められて行ったのが最初です。当時はお値打ちのランチをされていたこともあり、お昼もよく行っていました。お料理のおいしさ、コストパフォーマンスの良さ、路地奥の落ち着いた店内、大将とそのご家族の人柄にひかれています」と、宮﨑さん。月に一回くらいのペースで訪れているという。

宮﨑さんの言葉に、「ありがたいですね。宮﨑さんは、オープン1年目から来てくださってもう9年くらいになりますが、いろんな方を連れてきてくださいます。僕は毎年、下御霊神社の神輿を担がせてもらっているのですが、宮﨑さんが神輿の接待をされていて、そういう関係でもお世話になっています」と、長池さん。

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毎日市場で仕入れる鮮魚など、新鮮な旬の味覚で仕立てる日替わりの献立は、造りや煮付け、名物の天ぷらといったメインの和食に、ステーキ、クリームコロッケ、中華風炒めなど、洋、中、創作料理も含め幅広く揃うのが魅力だ。

「仕事関係の方と行ったり、友人と行ったり、家族と行ったりと、ファミリーレストランのような感覚で利用しています。特に京都以外の方をお連れすると、京都らしいと喜ばれますし、おだしの利いた薄味にも感激されますね。メニューは旬のお魚やお野菜が多く揃い、行くたびに内容が違う。何でもあるので、80代の母や零歳児の孫と行っても好きなものが見つかります。富山出身で魚にうるさい娘婿もここのお造りはおいしいと言ってくれますし、お野菜もすごくおいしいです」(宮﨑さん)

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夏の鱧の落とし、秋の秋刀魚の塩焼き、冬のコッペガニ、ぼたん鍋など、四季折々の味覚が楽しみだという宮﨑さん。たくさんあるお気に入りの中で、「おかわりしたいぐらいおいしい」とおすすめに挙げるのが、先付の「土瓶蒸し」。血合いを抜いた鮪の削り節と利尻昆布でとった上品なだしに、名残の鱧と松茸の旨味、風味、香りがとけあい、実に美味。夏の終わりから11月頃まで味わえる。

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写真は、香ばしく揚げ直した厚揚げを、ミョウガや大根おろし、生姜を添えてポン酢で味わう「厚揚げのたたき」。大豆の甘味や旨味豊かな厚揚げのおいしさがシンプルに楽しめる。

メニューには湯豆腐や冷奴など、親戚である南出豆腐店の豆腐を使った料理も登場し、おすすめだという。「大将の従兄弟さんの実家が下鴨のお豆腐屋さんで、そこのお豆腐やお揚げがまたおいしいんです」(宮﨑さん)

写真は、香ばしく揚げ直した厚揚げを、ミョウガや大根おろし、生姜を添えてポン酢で味わう「厚揚げのたたき」。大豆の甘味や旨味豊かな厚揚げのおいしさがシンプルに楽しめる。

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予算は、造りと焼き物、天ぷら、一品などを食べて、酒代別で5千円程。6千円からのコースもある。

「うちは常連さんが多く、好みや食べるスピードなども大体わかってくるので、あらかじめその人が好きそうな料理をメニューに入れたりしますね。逆にお客さんから、これ作っといてとリクエストされることもあります」と、長池さん。宮﨑さんもメニューにないものを頼んだり、料理をテイクアウトしたりすることもあるそうだ。常連が大半というこの店らしい気遣いも人気の秘訣だろう。

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店の奥にはカエデのある小さな庭が。カウンターからの眺めもほっとできるポイント。

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「お酒も焼酎から日本酒、ワインまで結構置いてあるので、私もワインなどと料理を楽しんでいます」(宮﨑さん)

日本酒は辛口をメインにお客に人気の高いものを揃えている。ちなみに、長池さんおすすめの日本酒は発泡タイプの「澤屋まつもと」。お造りや焼き魚に合うそうだ。

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「ご家族の方、皆さん感じがよくて、本当にアットホームで。変に気を遣わずにいられるのもいいですね。お母さんはオープン時から手伝っておられて、接客は初めてだと思うんですけど、一生懸命されてる感じがまたいいんです」と、宮﨑さん。長池さんと母の能里子さんたちが醸し出す和やかな雰囲気も、この店には欠かせない魅力となっている。

店での仕事について「楽しいですよ」と、能里子さん。

「うちは皆、仕事中も仕事が終わってからもあまり変わらず、結構ゆるい感じです(笑)。それを気に入って来てくださってるのかもしれません」と長池さんは笑う。

多彩なおいしい料理に、ほっこり落ち着ける温かい雰囲気。忙しい宮﨑さんのオアシス的な一軒となっているのも頷ける。

撮影 エディ・オオムラ  文 山本真由美

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■呑喜屋 むね

京都市中京区堺町通夷川上ル絹屋町127-5
075-241-3210
営業時間 17時30分~22時
定休日 日、祝日の月曜