BLOG京の会長&社長めし2019.08.23

明清建設工業株式会社の副社長が通う店「ぎおん 阪川」

京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は明清建設工業株式会社副社長の本間 満さんが通う店、祇園町にある割烹「ぎおん 阪川」です。

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■本間 満(ほんま みつる)さん 

明清建設工業株式会社 副社長。
群馬県生まれ。日大卒業後に祖父が創業した「明清建設工業株式会社」に入社。 以来、営業を中心に勤め、現在は副社長と営業本部長を兼務。趣味は美味しいものを食べることと読書。休日には、嵐山で英語の観光案内ボランティアとして活動している。最後の晩餐は、「草喰なかひがし」の松茸ご飯。白いご飯に焼き松茸が乗ったシンプルなご飯だが、ご飯の塩加減や松茸の香ばしさが抜群に美味しくて、忘れられない。秋になったら食べにいく一品。美味しいものを長く食べるためにも、歩くなど運動もして健康でいたい。

確かな技術と素材へのこだわりで直球勝負する京料理

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「ロータリーの友人などと週に1、2回は会食します」という本間さん。おいしいものを食べることが趣味の一つであり、食事をする際はいろいろな人から情報収集を行い、評判のお店に行くのだとか。そんな本間さんの食通ぶりを昔からよく知るのが、今回お薦めの店として紹介された「ぎおん 阪川」の主人、坂川浩和さんだ。

「いろんな店に行かれていて、ここ行ったほうがいいよ、って教えてもろたりしましたね。ミシュランガイドにならって、ご自分で選んだ京都のおすすめの店のリストをつくられたほど、おいしいものをよくご存じです。味に厳しい方ですから、僕も少なからず影響を受けたと思います」

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京都の代表的な花街である祇園町の南側。その花見小路通と東大路通の中ほどの、うっかり見落としそうな裏路地に、「ぎおん 阪川」はある。創業は平成9年。滋賀県出身の坂川さんは、花見小路新橋の「割烹 なか川」で17年間修業したのち、この場所で独立した。すっぽん、鱧、鯛、ぐじ、鮎などの魚介に、筍、松茸など、厳選した旬の食材を活かした京料理で愉しませてくれる名割烹だ。

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「今と違って、独立した当時、このあたりは古くからのお店やお茶屋さんしかなくて、僕らみたいな若輩者が入ってきてもええんかな、という感じやったんですよ」と、坂川さんは振り返る。本間さんが最初にこの店を訪れたのは、そんな創業から間もない頃だったとか。

「もう20年以上のおつきあいになるでしょうか。繁盛店なので、今は年に数回伺うくらいになっていますが、当時はちょくちょく伺っていました。なまこやからすみを注文して麦酒を一杯味わうなど、軽く飲みに行ったりもしていましたね」(本間さん)

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美しい木のカウンターと小上がりのある落ち着いた雰囲気の店内は、美味いものを求めて全国から訪れる人々で賑わう。そんな人気店も、創業当初はお客が来ず苦労したという。「最初の5年ぐらいは、お客さんが2人とか4人とかがしょっちゅうでした。まだネット社会やないですから、口コミの世界でしたし。そこから本間さんにお客さんを紹介していただいたりして、少しずつ数が増えていくようになって。そういう意味では、今のうちがあるのは本間さんのおかげでもあるんですよ」(坂川さん)

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最近はコースのみの割烹も増えたが、ここでは季節料理を13000円からのコースとアラカルトで提供する昔ながらのスタイルを貫いている。「うちはどちらもやっていますから、単品メニューに食べたいものがあればコースに入れたり、いらんものはコースから抜いたり、何でもできます。それがうちの良さですから」と坂川さん。本間さんはいつもコースでお願いするそうで、「すっぽん焼きと焼おにぎりは、コースに必ず入れてもらいます」(本間さん)。

実はこの2品は通常のメニューにはなく、お客からの要望でできた裏メニュー。こうした料理が存在するのも、割烹ならではの魅力だろう。「東京の友人や社員たちと行くことがほとんどですが、誰と行っても、必ず喜んでもらえるのもうれしいことです」(本間さん)

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魚介をはじめ、季節の素材のポテンシャルを引き出すことに定評がある坂川さんの料理。コースの中に一品として本間さんが夏によく注文するのが、鱧の焼霜や鯛のあら煮だ。

「鱧は目の前で焼いてくれ、ほどよい焼き加減になったら皿にのせてくれる。その様子を見て楽しみ、香りに食欲をそそられる。カウンターならではの楽しみです」(本間さん)

鱧の焼霜は、骨切りした鱧を炭火で軽く焼き、氷にあてる。その時に生じる香りを感じながら、出来上がりを待つのだ。「焼霜は焼いてバランスよく香りをつけること、そして何よりいい鱧を使うことが一番大事です」と、坂川さん。

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坂川さんが料理で最も重視するのはやはり素材の良さだ。使用する鱧は、脂乗りがよく、薄皮で骨の細かい韓国産の天然物。550600グラムのものが理想だという。熟練の技術でリズムよく鱧の骨切りを行う。これを焼霜にすると、繊細な切り口が花のような姿に。

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美しく盛りつけられた絶品の鱧の焼霜。お好みで下に敷いたすだちと一緒に、合わせ醤油でいただく。半生の鱧のふくよかな旨味と程よい香ばしさ、そしてほのかなすだちの香りが口の中に広がる。脂ののった鱧は上質の牛肉に近い味わいだ。「天然なので脂のよさもありますね。また後口がいいでしょ。香りが残るのが」(坂川さん)

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鯛は明石の二見あたりでとれた3キロほどのものを使う。「うちのは数軒しか扱っていない鯛でほんまにうまいと思いますから、ぜひ食べてほしいですね」と、坂川さん。艶やかに仕上がった鯛のあら煮は、「お湯で臭みをとってから醤油と酒、砂糖で炊くだけです」。

シンプルだが、バランスのよい味付けが上質で弾力のある鯛の豊かな味わいを引き立てる。「本間さんは、これを食べてご飯かおにぎりを頼まれます。毎日の定食みたいな感じですかね。煮汁を残して鯛にゅうめんにして食べるお客さんもおられます」(坂川さん)

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本間さんは店の魅力について、こう話す。

「何よりの魅力は、坂川さんが常連でも一見でも区別なくもてなしてくれることです。帰る際には、主人と女将のふたりで見えなくなるまで見送ってくれる。
開店からずっと変わらずやっておられ、客への思いが感じられます」

そのことを伝えると、

「常連さんも一見さんもそれは一緒です。お金持ちの人が3倍払ってくれはるんやったら大事にしますけど(笑)。逆に常連さんのほうに無理を言いやすいところがあるかもしれません」とユーモアたっぷりに答える坂川さん。

そして、もてなしへの思いについて、「最低限のことしかしてないんですよ。僕は話がうまくないから、会話も続いていかないですし。嫁さんは、お客さんとプライベートの楽しい話もできますから助かっています。とりあえず自分のできるスタイルで、雰囲気のいい空間をつくりあげることができたらと思っています」と語った。

坂川さんの素材に真摯に向き合う姿勢と、飾らない人柄。そこから生まれる心地よい料理や雰囲気が、本間さんをはじめ、多くの人々を惹きつけるのだろう。

撮影 エディオオムラ  文 山本真由美

■ぎおん 阪川

京都市東山区祇園町南側570-199
075-532-2801
17時~21時(入店)
定休日 日曜、祝祭日不定休 要予約