BLOG京の会長&社長めし2019.02.07

山中商事の代表取締役が通う店「すし処 満(まん)」

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■山中隆輝(やまなか たかてる)さん 

山中商事代表取締役
1964年、父と叔父により山中商事を設立。総合不動産会社として京都を中心に分譲地の開発・販売、収益不動産等の運営管理、不動産売買、不動産投資マネジメントなど多岐に渡る事業を展開。1979年に入社、1998年に現職に就く。仕事仲間に美食家が多く、その影響で食事に対して興味を持つように。近ごろは毎朝シャワーの前にストレッチを20分、晩御飯は21時までに済ませ、23時には就寝という規則正しい生活を心がけ、美食を健康的に楽しんでいる

「お寿司を食べたい!」と思いたったら、駆け込む先は「すし処 満」

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「ご主人の梅原章さんが、私の同業者のお友達だった関係で訪れたのがきっかけです。通いだして7~8年になるでしょうか。当初は御所南夷川にお店がありました。昭和の風情がある、カウンターのみの居心地のいい店内で、お寿司もよい味で。でも何より心をつかまれたのは、梅原さんが私と同じ阪神タイガースファンだということです(笑)」

梅原さんは寿司ひと筋約40年。京都の老舗寿司店で修業を積んで2003年に独立したのち、2016年に現在の店舗を構える麩屋町へ移転した。

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「私はたいてい、昼食を終えたあとの午後3時ごろに"今日の夕ご飯は、どこで何を食べようかな"と考え、自分で予約の電話をかけます。日々仕事の状況に変化が起こるビジネスマンにとって、その日その時のひらめきに対応してくれるお店はとても重要なんです。移転されてからの満さんは席数が増え、当日でも予約が取りやすいという点も非常に重宝しています」

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カウンター7席に4~6名のテーブル席、そして8~14名対応の個室と、バリエーションが豊かだ。

「本来、寿司屋は当日に予約されていらっしゃる方が多いものでした。うちはそうした、昔ながらのスタイルの店なんですよ(笑)」と梅原さんはカラカラと笑う。

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「我が家は毎年、姉一家と私の家族の10人ほどで新年会を開きます。2019年は13日にこちらの個室に集まりました。寿司屋で大人数で集まれるというのはうれしいですね」

山中さんは満には2カ月に1回の頻度で、寿司が食べたくなると家族や気心の知れた友人と訪れる。コースもあるが、店のお薦めはアラカルト。長く通っているので、山中さん流の食べ進め方も決まっている。

「最初はお造りの盛り合わせ、次に焼き物、揚げ物ときて、最後に寿司を5~6貫。料理はなるべく少なめにして、寿司に備えています(笑)。梅原さんは見た感じ無骨な方なのに、握られる寿司はとても繊細なんです――なんていったら怒られるかな!?

山中さんの愛する、その美しい握りを見てみると......。

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イカは3枚におろして糸づくりに。ゴマと塩をふりかけて。

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中トロはケープタウンの南マグロを使用。ケープタウン!?と驚くが「お寿司にしたらナンバーワンなんですよ。大間産を買うこともありますが、私のモットーは"その日その時に一番いい素材を選ぶ。ブランド力より美味しいものを"です」と梅原さんはきっぱりと言う。業者任せずにせず、毎日市場へ足を運び、魚と向き合っている梅原さんの目利きには説得力がある。

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赤貝は大分産か山口産のものが、コリコリとしながら歯切れのいい食感と甘みが豊かだそう。今日は大分産。

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「うなぎはぜひお薦めしたいひと品です。見た目の意外性に驚きますが、こうしていただくうなぎは厚くて旨みが深いんです」

山中さん絶賛のうなぎは、熱された器に入り湯気を上げて現れた。コンロで十分に熱した器の底に焼いたうなぎを皮目を下にして置く。そのうえに酢飯をのせて甘だれをかけ、長芋、ワサビと重ねてゆく。

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「あったかい寿司もいいかと思って(笑)。独立してからつくった定番です。ひつまぶしのようにまぜて食べてください」(梅原さん)

これら創意工夫に富んだ寿司の前に「控えめにする」と山中さんが言う一品料理も、素材の持つ本質的な味を見事に引き出したものばかりだ。

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「冬になったら白子鍋は絶対です!くずでとろみのついた、ふぐの煮凝りを溶かしたスープ。そのなかに焼いたふぐの白子とネギが入っています。プリッとした白子は、口に入れるとなんともまろやか。あっさりしているので、軽く食べられます。小鍋で2~3人前ですが、ひとり占めしてしまうことも。結局、控えめにはできませんね(笑)」

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「冬になると、コレクター並みに白子を用意しています(笑)」と言う梅原さんの手には、艶やかに輝き、手の平からあふれんばかりの大きな白子が。これら以外にも冷蔵庫にはたっぷりの白子が出番を待っている。「白子鍋」は小鍋80001万円(時価)。

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釣キンキの塩焼きも、山中さんの好物。

「北海道網走で第21万泰丸、第36照福丸、第56万泰丸、第58勝喜丸の4隻の船から水揚げされたものだけを"釣キンキ"と呼びます。本州でもメンメやアカジなどと呼ばれる高級魚ですが、なかでも釣キンキは別格といえるほど貴重なもの。皮目はパリッ、身はぷりぷりに焼き上げてお出ししています」(梅原さん)

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梅原さんの技は、おせち料理にも冴えわたる。おせち料理2段に瓶入りの黒豆、なます、このわた付きは平均5~6万円。写真の2019年版は、瓶物も入れて36種類もの料理が詰められている。

「我が家のおせちはここ3~4年は満さんです。大みそかのお昼に引き取りにうかがうのが恒例になっています。毎年内容も少しずつ変化しているので飽きないんですよ。お料理同士が隙間なくぎっちり詰まっているので、傾けても崩れません(笑)」

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「ひとつのお店のなじみになって何度も足を運ぶことが好きなのですが、通い続けるうえで、ご主人との関係を大切にしています。不器用で愚直な料理人の方は、人間味があってとても私好みです。梅原さんもそういうタイプなんですよね。そして奥様の眞智子さんとのチームワークも素敵です。元看護士だったそうで、気配りにあふれたサービスをしてくださいます」

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カウンター席向かって右側の梅原さんの前が山中さんの定位置だ。

「山中さんとは阪神タイガースについてぼやくだけでなく、社会についての難しい話もしてるんですよ(笑)」(梅原さん)

重圧を背負い日々忙しくすごす山中さんを癒やす「すし処 満」。その関係は、満月のように円満な形をしているのだった。

撮影 鈴木誠一  文 竹中式子

■ すし処 満

京都市中京区白壁町436麩屋町通三条下ル
075-223-3351
夜17:30~23:00
※昼12:00~14:00は予約のみ受付。土日のみ朝定食8:00~9:30あり
定休日 月曜日、第3火曜日