BLOGクリエイティブ食事術2018.11.01

「本Pのクリエイティブ食事術」 第1回 

By本郷義浩

僕は、『あまからアベニュー』から『魔法のレストラン』『真実の料理人』まで、料理情報番組を30年近く制作してきましたので、必然的に、料理、料理店、料理人の皆さんと接する機会が多々あり、食べる側、グルメな人々とのネットワークも構築できてきました。

食に関して、日々、あれこれと考えているわけですが、ひとつのシンプルな結論は、「食事の時間をより楽しく、面白くする工夫をする方が、人生はより楽しくなる」ということです。その方法を「クリエイティブ食事術」と名づけていて、この連載で具体的に紹介していきたいと思います。

Pクリエイティブ食事術その1

【特定の料理にスポットを当てたグループを結成し、それぞれのグループで食事会を企画する】

グループや食事会のネーミングを考えること自体が面白く、食べものの嗜好が似ている人、食に関する金銭感覚が近い人とは、経験上、他の価値観も共有しやすく意気投合しやすいのです。単なる名刺交換会では得られない利害関係のない「友達」を作ることができます。「おいしいなあ、楽しいなあ」という時間を共有できる仲間を作ることが、目的の1つでもあります。

たとえば、【小金持ち★鰻道】は、Facebook経由で集まった鰻好きが、昨今値段が上がった鰻にお金を使えることをお互いたたえ合いながら、鰻のフルコースを食べるグループです。鰻ざくや鰻巻き、八幡巻きをアテにビールや冷酒を飲んで、鰻丼でしめます。鰻屋にたのまれて、

「丑の日だから、うのつくものを食べると縁起が良い」

という語呂合わせを考え、「土用の丑」の日に鰻を食べる習慣を作った日本最初のコピーライターとも言える平賀源内リスペクトの会でもあります。

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【粉食決算倶楽部】は、お好み焼き、焼きそば、たこ焼きなど、いわゆる粉もんを愛するグループです。ふんしょくけっさんくらぶと読みますが、漢字は、粉食。"粉飾"ではありません。笑。年度末の3月に開催しています。友人の個人事業主や会社社長も参加。「みなさん、年度末ですけど、粉飾決算してませんか?大丈夫ですか?きょうは思う存分粉まみれになって、営業収支を忘れましょう」と挨拶すると盛り上がります。

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【すき焼き正攻道】は、最初に牛肉を醤油と砂糖で焼く、関西風のすき焼きを正統派とするグループです。チャイコフスキーの『ピアノ協奏曲第1番』や『くるみ割り人形』をCDで聞きながら、玉子を割って、すき焼きを食べる「チャイコフすき焼きの宴」を開いています。乾杯の挨拶では、

「チャイコフスキーは、1840年に生まれて1893年に亡くなっています。『ピアノ協奏曲一番』が発表されたのは1875年。すき焼きが好きだった福沢諭吉が『肉食之説』で牛肉推奨の宣伝文を書いたのが1870年。日本で牛肉文化が花開きかけていたとき、チャイコフスキーは哀愁を帯びたメロディーを作り続けていたのです。同じ時代の日本とロシア。1904年には日露戦争がおこってしまいますが、「チャイコフすき焼き」の会というネーミングにも、歴史ロマンを感じますでしょう?きょうは、チャイコフスキーと福沢諭吉に乾杯!」

これまた、かなり盛り上がります。肉を焼き始めると、誰も音楽を聞かなくなりますが。笑。

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京都で、すき焼きと言えば、まず思い浮かぶのは寺町三条下がったところにある【三嶋亭】です。創業は明治6年。西暦1873年です。まさにチャイコフスキーが生きていた時代。明治時代の香りをまとった木造建築の建物で、仲居さんが鉄鍋にまず砂糖をひきます。次に牛肉を置き、秘伝の醤油ベースの割り下を加えて焼きます。まずは肉だけを焼いて玉子にくぐらせて、醤油と砂糖の焦げた香りごと食べる。これぞすき焼きの王道。うまいなあ。

 そのとき、ある「?」がわきました。

三嶋亭のすき焼き鍋は八角形をしています。どうして八角形なのでしょうか?八角形の鏡や腕時計は、風水術のDr.コパさん制作のグッズで見たことがありますが...すき焼き鍋が八角形...。ネットで検索しても情報は載っていません。そこで、調べてみることにしました。

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Pクリエイティブ食事術その2

【料理店や料理、料理法、道具などについて、「?」「どうして?」という疑問を持って、調べてみる】

今からリサーチしますので、その結果は次回の連載に。

■ 「三嶋亭」

三嶋亭 本店
〒604-8035 京都市中京区寺町三条下る
三嶋亭 高島屋京都店
〒604-8035 京都市下京区四条通河原町西入ル真町52
三嶋亭 大丸京都店
〒600-8520 京都市下京区四条通高倉西入ル立売西町79
https://www.mishima-tei.co.jp/

本郷義浩ほんごうよしひろ

1990年から料理情報番組「あまからアベニュー」を8年間担当。2001年4月、現在も継続中の「水野真紀の魔法のレストラン」を立ち上げる。料理人のドキュメンタリー「真実の料理人」は、毎年制作。京都、奈良の名刹を舞台にした「音舞台」シリーズは、2000年から担当し、2017年は「金閣寺音舞台」。2018年は「東大寺音舞台」。2006年「美の京都遺産」を立ち上げ、2016年4月、後継番組である「京都知新」を立ち上げる。京都の和装と洋装のファッションショー「ファッションカンタータfrom KYOTO」の番組制作も2015年から手がけている。