BLOG京都美酒知新2021.10.28

カクテルが飲みたくなる話「ギムレット」

ウイスキーなどお酒には、歴史や醸造の苦労話などさまざまな物語があります。「京都美酒知新」では、カクテルとウイスキーにまつわるお話をご紹介していきます。
美しいカクテルをつくり、解説してくださるのは、全国にファンのいる名バーテンダー 「K6」の西田稔さんです。このお話を読むと、カクテルが飲みたくなるに違いありません。

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■西田稔(にしだみのる) 

京都木屋町二条「Bar K6」、「cave de K」、「keller」のマスターバーテンダー。
2020年開業の「ザ・ホテル青龍 京都清水」内の「Bar K36」を監修。自らもカウンターに立つ。
京都生まれ、同志社大学卒業後、東京のバーで経験を積み、1994年に「Bar K6」を開業した。シャンパーニュの将校、グラッパの騎士、クリュッグアンバサダー、ウイスキーコンテスト審査員

ギムレット
カクテル言葉「遠い人を思う」

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1980年ごろ、イギリス海軍の軍医だったギムレット卿が、将校たちが戦艦内で配給されるジンを飲み過ぎることを憂慮し、健康維持のためにライムジュースを混ぜて飲むことを提唱し、それがこのカクテルの起源だとされています。
突き刺すような味わいから「ギムレット(gimlet)=錐(キリ)」と命名されたという説もあるようです。

ギムレットというと、「ギムレットには早すぎる」という名台詞を思い起こされる方もいるのではないでしょうか?
これはレイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説「長いお別れ」のなかにでてくる台詞で、英語の原文は「"I suppose it's a bit too early for a gimlet," he said.」。主人公の探偵フィリップ・マーロウに対して友人のレノックスが言った言葉で、その後、二人の間には深い友情が育まれたそうです。

作品の中には、「本当のギムレットは、ジンとローズ社の(コーディアル)ライムジュースを半分ずつ。ほかには何も入れない」とも書かれていて、甘口のカクテルだったことがうかがわれます。

100年の時を経てなお愛されるのは、カクテルの味わいはもちろんのこと、これら背景にあるストーリーの魅力もあるのでしょう。

甘いライムジュースを用いられることが多かったことから、女性でも飲める食前酒としてもてはやされました。けれど今、日本で好まれるギムレットは、その味と比べると、ずいぶんドライで男性的になっているように思います。
Bar K6」では、小説に登場するローズ社のライムジュースを使います。

カクテル言葉は「遠い人を思う」。
「ギムレットには早すぎる」、いつか言ってみたい台詞ですね。

カクテルレシピ

エギュベルジン 45ml
ライム 2カット
ローズライムジュース 10ml

10月のウイスキー

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山崎
ミズナラ樽貯蔵モルトや、ワイン樽貯蔵モルトをはじめとした様々な山崎モルトが出合うことで生まれたのが、シングルモルトウイスキー山崎です。
やわらかく華やかな香りに潜むイチゴのような香りは、ワイン樽熟成モルト原酒が、そして甘くなめらかな広がりはミズナラ樽熟成モルト原酒が加わることによって生まれるのです。

ノンヴィンテージの「山崎」は、その若々しい風味を愉しむためにも、水割りかロックで味わうのがおすすめです。少しずつ冷たくなっていく過程で、このウイスキーがもつ辛味がまろやかな甘みへと変わっていきます。

山崎蒸留所
1923年、サントリーの創業者である鳥井信治郎は、輸入品ではない国産のウイスキーにこだわり、山崎の地で日本初のモルトウイスキー蒸溜所の建設に着手しました。
以来、山崎蒸溜所の歩みが日本のウイスキーの歴史を創り、シングルモルトウイスキー山崎をはじめとする数多の名酒を生み出してきました。
ウイスキーづくりに適した理想の気候・風土と名水、そして脈々と受け継がれてきた職人の情熱と技。山崎蒸溜所は、日本最古のモルトウイスキー蒸溜所であり、世界に誇るジャパニーズウイスキーの聖地です。

サントリーHPより

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■Bar K6

京都市中京区木屋町二条東入ル ヴァルズビル2F
075-255-5009

撮影協力:Bar K36/撮影:ハリー中西