ウイスキーなどお酒には、歴史や醸造の苦労話などさまざまな物語があります。 「京都美酒知新」では、カクテルとウイスキーにまつわるお話をご紹介していきます。 美しいカクテルをつくり、解説してくださるのは、全国にファンのいる名バーテンダー 「K6」の西田稔さんです。このお話を読むと、カクテルが飲みたくなるに違いありません。
■西田稔(にしだみのる)
京都木屋町二条「Bar K6」、「cave de K」、「keller」のマスターバーテンダー。
2020年開業の「ザ・ホテル青龍 京都清水」内の「Bar K36」を監修。自らもカウンターに立つ。
京都生まれ、同志社大学卒業後、東京のバーで経験を積み、1994年に「Bar K6」を開業した。シャンパーニュの将校、グラッパの騎士、クリュッグアンバサダー、ウイスキーコンテスト審査員
アイリッシュコーヒー
カクテル言葉「あたためて」
アイリッシュコーヒーが誕生したのは、1943年の頃だと言われています。アイルランドの西にあった水上飛行場で作られました。当時、アイルランドを含めた大西洋の航路は、主に飛行艇と呼ばれる水上に胴体着陸する大型の水上飛行機を利用していたのです。
今に比べて飛行機の航続距離は短く、給油のために途中着陸する必要がありました。乗客たちはそのたびに飛行艇から降ろされ、ボートで移動して待合い室へ行く。極寒の時季に外に出される乗客は凍えながら待合い室のラウンジへと急ぎ、アイリッシュコーヒーを飲んだのです。
底冷えの京都でバーホッパーたちが次の店に移る際に、アルコールを自分のために給油。そして次の店で「あ~寒かった!」とオーダーするのが、このアイリッシュコーヒーです。
カクテル言葉は「あたためて」。なんとホットなカクテルでしょう。
ウイスキーを注いだ角砂糖に火をつけてグラスに入れ、そこにホットコーヒーを注ぎます。ホイップクリームを上から重ねればできあがり。バーテンダーがつくる様子を眺めているだけで、身も心もあたたまります。
カクテルレシピ
アイリッシュウイスキー 40ml
ホットコーヒー 1杯(180ml)
生クリーム(ホイップ) 45ml
ベイリーズ 10ml
角砂糖
11月のウイスキー
ブッシュミルズ ブラックブッシュ
熟成させたモルト原酒を80%以上使用し、少量生産のグレーンウイスキーとブレンド。シェリー樽熟成由来の熟した果実の香りと重厚な味わいが特徴です。
ロックグラスに氷をひとつ、静かにブッシュブラックを注ぎます。シェリー樽のニュアンスがある熟成したふくよかな風味は、最初は強く、そして徐々に溶け出す氷と混ざりながら口の中に広がります。寒くなる時期にオンザロックで飲むことで、体の芯をあたためてくれます。
アイリッシュコーヒーのベースとして味わうのもおすすめです。
ブッシュミルズ蒸留所とは
アイルランド島の北端、冷たい海に面したイギリス領北アイルランド・アントリム州。この地に立つブッシュミルズ蒸溜所は、1608年創業とも言われるアイリッシュウイスキー最古の蒸溜所のひとつです。
アイリッシュウイスキーの伝統的な製法である3回蒸溜を守り、モルト原酒の原料には100%アイルランド産のノンピート麦芽を使用することで、軽やかでスムースな口当たりを実現。それでいてモルトの味わいがしっかりと感じられるのが特徴です
アイルランドで1850年代に麦芽税が施行されると、多くの蒸溜所では未発芽大麦を使用するようになりましたが、ブッシュミルズは大麦麦芽(モルト)にこだわり続けています。
(アサヒビールHPより)
撮影:ハリー中西
■Bar K6
京都市中京区木屋町二条東入ル ヴァルズビル2F
075-255-5009