BLOG京のほっこり菜時記2019.03.15

「山菜」

By中井シノブ

飲食店取材1万軒を超える京都在住のライターが、時々の「うまいもの」を歳時記的につづる【京のほっこり菜時記】。 今回はほんのり苦味がおいしい「春の山菜」についてお伝えします。

「春は苦味、夏は瑞々しさ、秋は香り、冬は甘味」
以前、ある料理人さんに「四季の食材の魅力は?」とおうかがいしたとき
かえってきたのが、この言葉だった。

食材には四季それぞれの個性や特徴があって、それを味わうことが大切なのだと。

苦味のある春の野菜を食べることで、いろんなものを貯め込んだ「冬の体」から軽やかな「春の体」へと移行できる。
実際に、ポリフェノールなど苦味のもとが、細胞を活性化して新陳代謝をうながしてくれるそうだ。

だが、体にいいから「山菜」を食べるのかというと、私はそうでもない。
春の苦味が好きだから。
子供のころはちょっと苦手だったうどやたらの芽、ふきのとうを、いつしか美味しいと思うようになった。
そして、苦味のある山菜を口にすると、「春が来たなあ~」と心がしんみり潤うのだ。

うど、ふき、ふきのとう、こごみ、木の芽、タラの芽、つくし、ワラビ、たけのこ、あしたば、あけび、いわぶき、かたくり、うるい、クレソン、せり、ぜんまい、みつば、あざみ、コシアブラ、行者ニンニク・・・

小さい頃は、鴨川付近でもつくしが生えていて、母に褒めてもらいたい一心で、たくさん摘んで帰ったりした。
今も、深泥池付近にはみつばやせり、岩倉幡枝町にはぜんまいやわらびなどが生えているそうだ。

山菜料理.jpg

春に食べたい山菜料理はたくさんある。
「山菜の天ぷら」「わらびの炊いたん」「せりのおひたし」・・・。
そんな料理が品書きに並ぶと必ず注文してその風味を楽しむ。
セリのおひたしは、シャクシャクとして歯ごたえがいい。
友人の店で出す、「海苔とせりのおひたし」は、何度も食べているのに夢中になる。
お揚げと一緒にちょっと甘めに炊いたわらび、タラの芽やうどの天ぷらは、サクッと噛むと、いやというほど香りと苦味が満ちる。

昨年11月に綾小路御幸町近くの路地にオープンした「お酒と食事 うり」は、季節の小料理で飲めるお気に入りの店だ。

店主のもんちゃんこと上門邦彦さんとの出会いは、彼が以前料理長を務めていた煮込みの店。シンプルでいて旨味や火入れの勘所を抑えた料理が美味しくて、何度も通った。

あるとき、もんちゃんに「どこで料理を身につけたの?」と聞くと
「半年や1年で辞めた店もあるから、どこどこで修業したと言うほどじゃない」と言う。
それでもと、無理やり聞き出した店は、京都の名料亭や有名料理屋だった。
見た目は優しげな感じだが、潔い人だなあと思った。

山菜料理2.jpg

そんなもんちゃんが揚げてくれる天ぷらは薄すぎず厚すぎないほどよい衣。
カラリと揚がっているから、するする食べられる。
この日は「うどがあったから」と、天ぷらにしてくれた。
噛むとふくらむ独特の青々しい香り、春の苦味が口のなかにゆっくりと広がっていく。
サク、ふわ、サク、ふわ・・・
なんだか優しい気持ちになる。

うり品書き.jpg

ほかにも、絶品のぬか漬けやポテサラ、おでんなど定番料理、その日のおすすめ料理もあって、じっくり飲める。

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〆には小皿のカレーライスかおでんだしの中華そばをぜひとも注文してほしい。

うり外観mini.jpg

■ お酒と食事 うり

京都市下京区足袋屋町317-15
075-344-7899
17:00~23:00
定休日:月曜

中井シノブ

京都の情報誌編集長を経てライターに。飲食店取材1万軒。外飯、外酒がライフワーク。著書に『京都女子酒場』(青幻舎)、『京の一生もん』(紫紅社)などがある。