BLOG京の会長&社長めし2021.07.26

株式会社KASEYAの社長が通う店「赤垣屋」

京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は株式会社KASEYA社長の綛谷武史さんが通う居酒屋「赤垣屋」です。

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■綛谷 武史(かせや たけし)さん 

Maestro/株式会社KASEYA代表取締役社長
2009年、京都に設立した完全提案型の花。庭の作成、内装・外装の装飾、自然の成果物をマテリアルに空間・環境のデザインを行う。
2015年9月、法人化する。
2017年AGINGをテーマとし、枝の表情に焦点を当てた「枝と技」をスタートする。
2019年9月、中目黒にてグリーンショップ「quartetto」をオープン。
2021年3月、初の実店舗となるカフェを併設したフラワーショップ「Maestro」をオープン。

味良し、雰囲気良し、値段良し。昭和な雰囲気と大人の酒場文化に浸る、京の名居酒屋

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三条京阪から川端通を北へしばらく歩くと、赤ちょうちんに縄のれん、ネオン看板の歴史を感じさせる建物が見えてくる。川端二条の「赤垣屋」といえば、京都はもとより全国から酒好き、居酒屋好きが訪れる名店であり、予約が取りにくいことでも知られる。週に何度も飲みに行くタイプではないという綛谷さんも、定期的に足を運んでいる一人だ。

「10年以上前、知り合いのお客さんに連れて行ってもらったのが最初ですが、それ以前から京都で一番古い居酒屋だとか評判を聞いていて行きたかったお店でした。店の佇まいや雰囲気がよくて、旬の魚など料理もお酒も安くておいしい。居酒屋の系譜というのか、こういうことが大事なんだと思いましたね。その後、店の若大将と共通の知り合いを通じて親しくなったこともあり、通うようになりました。今は2~3カ月に一度は行かせてもらっています」(綛谷さん)

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4代目店主の伊藤剛氣さんによれば、「赤垣屋」の創業は戦前で、今の場所より少し南にあったそうだ。
「昭和24年に祖父母が氷屋だった建物を買ってこの場所に移ってきたようです。祖父母がやっていた頃は、苦学生やお金のない日雇い労働者の方向けの居酒屋でした」

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店は駅から少し離れた場所にあるが、常連客たちで開店早々から席が埋まる。当時のままの風格を感じさせる店内は、カウンターや小上がり、座敷、中庭など、昭和のノスタルジックな佇まいが味わい深い。カウンター以外は予約可能で、綛谷さんはいつも座敷や小上がりの席を予約して楽しんでいるという。

「綛谷さんにはいつも可愛がっていただいています。綛谷さんはスタッフの方やお仕事関係の方と一緒に来られた時も、皆さんに対してきめ細かく気配りをしていらっしゃいますね」と伊藤さん。

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ここは独特の凛とした雰囲気の中、背筋を伸ばして飲む大人の酒場だ。好き勝手に楽しめばいいわけではなく、店とお客との間に暗黙のルールがある。

「例えば、大きな声でしゃべらないとか、他のお客さんに絡みすぎないとか。基本的に常連さんに向けた店でありたいので、店の空気に合わない方はご遠慮いただいています」と、伊藤さん。店で感じる居心地の良さも長年常連客と共に築き上げてきたもの。それを崩さないために、節度を持って楽しんでほしいと話す。

「料理も接客も雰囲気も、すべて常連さんが正しい答えを持ってはると思うんです。常連さんが居心地悪く感じるのは何かが違っていて、居心地がいいなら店の空気は守れているのかなと」

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伊藤さんが店を継いだのは約10年前。それまで継ぐつもりはなかったが、父である先代が高齢になったこともあり、好きなアパレルの仕事を辞め、勉強の期間を経て家業に入ったという。
「小さい頃から跡取りと言われたり、店の手伝いをしたりしていたのが刷り込みになって。常連さんの顔も全部知っているので、なくしてしまうことはどうしてもできなかったですね」

それだけに、老舗の居酒屋として受け継いだものを守り伝えていきたいという思いがある。
「せっかくこの看板をいただいているのだから、飲み手と店の関係性とか、店の文化を伝えていくことは、僕らの役割かなと思っているんです」

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「ここの料理は全部おいしい。造りから旬のものにいって、あとはおでん盛り合わせなどの定番を頼みます。胡麻豆腐は最高だし、イカゲソ塩焼きは絶対食べます。いつも注文しすぎて腹いっぱいです」(綛谷さん)

お客の一番の目当ては、やはり定評ある旬の魚をはじめ、毎日市場で仕入れる新鮮な食材を使った料理の数々。名物のしめさばやおでん、鴨ロースなどの定番に、夏なら鱧の落し、水ナス、茄子にしん煮など、四季折々の一品が並び、皆が美味い肴と共に思い思いの時間を楽しむ。品書きに値段はないが、料理23品に3杯飲んで4000円程度と手頃だ。

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綛谷さんのお薦め、特に若者に人気の「鴨ロース」。
「肉厚でボリュームがある。味付けもいいし、すべてにおいてバランスがいいです」(綛谷さん)
フォアグラ用の希少品種「マグレカナール」を使用した鴨ロースは、やわらかくジューシーで臭みがない。食べ応えも満点だ。

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綛谷さんが、「料亭と変わらないぐらいのクオリティで、おいしい」と、絶賛する「胡麻豆腐」は、先代の時からの人気メニュー。程よいくちどけ感のある上品な味わいで、胡麻の風味もしっかり感じられる。

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ここで飲むならやはり日本酒を。店のお薦めは伏見の「名誉冠」。燗酒でも冷酒でも楽しめるが、「燗で飲んでもらえるとうれしいですね」と、伊藤さん。

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「スタッフもたくさんいてすぐに来てくれるし、挨拶などしっかり教育されているなと感じます。雰囲気も、お酒も、料理も、全部が魅力。どこへ行こうかとなった時に、この店なら間違いないという安心感があります」
と、綛谷さん。その言葉からも、店とお客の信頼関係が窺える。

「やっぱり店のことを愛してくださっていると思える人を大事にしたいし、そういうことが文化になっていくと思っているんです。うちは常連さんが日常の中で当たり前に過ごす店でありたい。だから、居心地良く過ごしてもらえるよう、凛とした空気感を大切にしています。カジュアルな感じではなく、お客さんと心地良い緊張感を共有しながら、おもてなしをしていきたいですね」(伊藤さん)

撮影 エディ・オオムラ/文 山本真由美

■赤垣屋

京都市左京区孫橋町9
075-751-1416
営業時間 17時~23時
定休日 日曜