BLOG京の会長&社長めし2019.10.16

株式会社宮脇賣扇庵の副社長が通う店「祇園割烹 匠庵(しょうあん)」

京都にある会社の会長&社長は、どんな店でどんな料理を食べているのでしょうか? 彼らが通う一見さんお断りの超高級店から大衆店までご紹介する【京の会長&社長めし】。今回は宮脇賣扇庵(株)副社長の南忠政さんが通う店、「祇園割烹 匠庵」です。

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■南忠政(みなみ ただまさ)さん 

1976年生まれ。5代目宮脇新兵衛の孫で、株式会社宮脇賣扇庵 副社長。大学卒業後、母方の実家である同社に入社し、京扇子の製造・販売に携わり、扇文化の継承に努めている。自分から新しい店を開拓するのは、苦手なほう。外食でよく足を運ぶジャンルは、中華とイタリアン。最後の晩餐は、「中華のサカイ 本店」のオムライス。

大将の人柄と繰り出す料理にファン多数。リニューアルも楽しみな人気割烹

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京都の割烹と聞くと、やはり敷居の高さを感じてしまうもの。それが祇園となると、なおさらだろう。今回南さんが推薦する「祇園割烹 匠庵」は、そんな気負いを感じさせず、楽しませてくれる一軒だという。

「"お米マイスター"の山下治男さんに紹介してもらい、3年ほど前から通っています。大和大路通から路地を入った奥にある隠れ家のようなお店。ここは知らなかったという人も多いと思うんですけど、一緒に行った人には気に入ってもらえますね。今度、同じ祇園に移転されると聞いています」(南さん)

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「南くんはうちが取引しているお米屋さんの社長の後輩で、いろんな会合なんかで使ってもらったりしていますね」と、店主の小谷(おだに)匠さんは言う。「匠庵」を始めたのは20092月。もとは木屋町にあり、約6年前に四条大和大路に移転。数寄屋造の建物に桜の一枚板のカウンターや個室の座敷、中庭などを配した落ち着いた空間で、季節の京料理をおまかせコースや一品が楽しめるこの店は、多くのリピーターを獲得してきた。

開店から10年の今年、店は10月にいったん閉店し、11月に祇園の北側の自社ビルに場所を移してリニューアルオープンすることになっている。

「今度の店は町家風の構えで、中は12席のカウンターのみになる予定」と、小谷さん。かねてから考えていた一品主体のカウンター割烹のスタイルにするという。

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南さんは、料理もさることながら、小谷さんの人柄もこの店の大きな魅力だと話す。「大将は、どこかロック魂というか、気風のいい男気を感じるようなところがいいですね。そんなロックな感じの人なのに、作られる料理は繊細で可愛らしかったりします」

南さんの言葉に、「料理もロックやろ」と小谷さんは笑う。ちなみに小谷さんが仕込み中にかける音楽は、ロックユニット「B'z」の曲。ボーカル稲葉浩志氏と同じ高校の卒業生という縁から応援しているといい、「営業中はジャズを流すけど、気心の知れた常連さんばかりだと『B'z』の曲をかけることもあるよ」と、小谷さん。

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「カウンターで食べるときは、炊き合わせとか出し巻きとかも頼みます。ちょうどいい味付けでどれもしっかりおいしいです」(南さん)

小谷さんは、滋賀のホテルの和食部門や京都の料理旅館、割烹などで京料理の腕を磨いた料理人だが、一品で出される日替わりのメニューには、例えば造りや鯛のあら炊き、賀茂茄子田楽、出し巻き、丸鍋などの料理に加え、ビフカツなど和食以外の品も登場。お客のリクエストでメニュー外のものを作ることもしばしばで、「お客さんが望むものなら何でも料理してあげる」という。お客を楽しませるためのフレキシブルさも、この店の特徴だ。

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「こちらでお刺身とお酒を楽しむのが好きで、その日おすすめの魚介を盛り合わせで頼むことが多いです」と、南さん。店自慢の海鮮料理は、鰹や貝類など、毎日高知から直送される天然ものを中心に、あとは産地を限定せず、その時々のいい鮮魚を使用する。写真は「造り盛り合わせ」の一例で、トロ、コチ、ハマチ、マアジ、北海道産うに。「夏の鱧とかはあえて造りでは出さず、椀物とかほかの食べさせ方にします」(小谷さん)

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日本酒は25種類ほど揃う。「お酒は結構珍しいものも揃っているので、特にお酒好きな人は楽しめると思います。僕は十四代があるといつも頼みます」と、南さん。

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そして、多くの常連が頼むという意外な名物が、「匠庵の〆のアレ!」と名付けられた自家製ラーメン。「本格的なラーメンがあるのが面白い。行くとやっぱり食べたくなって頼んでしまいます」と、南さん。無類のラーメン好きの小谷さんが、研究を重ね、完成させた自信作で、「最初は裏メニューで出してたけど、お客さんからすごく好評でメニューとして出したら、ということになって」と小谷さん。鶏ガラと豚骨など厳選した材料を使って78時間煮込んだスープに、もちろんチャーシューも自家製。スープは細めのストレート麺によく絡み、しっかりコクがありながら、後口はすっきり。一味と豆板醤の辛みがアクセントになって、シメに食べるのにはぴったりのおいしさだ。

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カウンターならではのサービスといえるのが、写真のイワシの甘露煮と酒盗と鮎の塩辛和えなど、料理を待つ間に出される酒肴。「対面なので、料理を出せないときに、どうぞ、とちょっとしたお酒のアテとして出してあげる。カウンターの良さはそこなんよね。座敷だとそれができないから」と、小谷さんは話す。大将とのそうしたやり取りの楽しさもあって、常連客は皆、カウンターを選ぶそうだ。

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「新しい店では、ほんまの俺のやり方がそのままだ出せるかなと思う」と小谷さん。一品の内容はほぼ変わらないが、ポーションが小さいものも用意するなど、カウンターを生かしたメニューを計画中で、予算は1万~15千円程度を想定。祇園の風情ある雰囲気の中、「マジック好き」という小谷さんが、その遊び心でどのようにファンを楽しませてくれるか注目だ。

撮影 エディオオムラ  文 山本真由美

■祇園割烹 匠庵

京都市東山区祇園町北側347-87
075-525-0288
営業時間 18時~25時(予定)
定休日 不定休
http://www.shouan.co.jp