食知新ブログ
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BLOG美人&イケメンスイーツ
2018.11.01
『シェ・ラ・メール』の「お菓子の木」と「バルカノ」
推薦人:服部真三未さん(「服部織物」若奥様)寺町通に店を構える洋菓子店「シェ・ラ・メール」。京都生まれ、京都育ちの服部さんはこの店に中学生の頃から通っていたという。丁寧に愛情込めて作られたケーキの数々。「中学生の頃は、ただ美味しくて大好きでしたが、大人になって、その本当の素晴らしさと価値に気づきました。それはケーキをお作りになっている方、人こそがケーキの魅力を作っているということです。実は、オーナーの塩津さんに会いに行っていたのかも知れません」(服部さん)。 オーナーの塩津千穂子さんは、当初160人もの生徒数を誇るケーキ教室を主宰しながら、オーダーメイドのケーキを製作していた。1982年、多くのファンの期待を受けて、富小路六角にお菓子の店を構え、その後、20年程前に、ここ、寺町通りに移転した。「当時は女性のパティシエなどほとんどいない時代。風当たりも強かったですが、お客様の"美味しかった!"という笑顔に勇気をもらって、頑張ってこれたと思います」と微笑む。現在は、息子の正則さんと妻の千秋さんが店を切り盛りするが、昔と変わらず「毎日食べたくなる、お母さんがつくるおばんざいのような、優しい味わいのケーキ」という千穂子さんのコンセプトを受け継ぐ。店名のラ・メールは、フランス語で海の意味。甘やかで、優しくて、心豊かになれるまさに母なる海のような「シェ・ラ・メール」の味は、今も健在だ。色とりどりの花々が入り口を飾って訪れる人を出迎えてくれる。扉を開けると、お菓子を焼くあの甘い香りが鼻腔を優しくくすぐる。この店の代表格、「お菓子の木」(594円)。メレンゲにチョコレートを加えて、外側はカリッ、中はしっとり仕上げたスポンジで、カスタードクリームとたっぷりのフルーツをくるりと巻く。きらきらと豪華な断面は、見ているだけ幸せな気分に。パイシューの先駆け的存在、バルカノ(594円)。シュー生地をさらにパイ生地で包んで焼き上げる。折り込み式パイの幾重もの層がパリパリと香ばしく、たっぷり詰まったカスタードクリームと一つに重なった味わいは、シンプルでいてとても奥深い。紅茶は多種類揃うが、冬場のみ紅玉りんごのアップルティー(540円)が登場する。フレッシュなりんごの皮をたっぷりと入れた紅茶は服部さんの思い出の味。甘酢っぱい香りに満ちて、冬の訪れを感じさせる。女性らしい柔らかな感性が満ちる店内は、どこか懐かしくほっこりとした雰囲気。女性だけでなく男性客も多く、皆、ゆったりと寛いでケーキとお茶を楽しんでいる。色とりどりの焼き菓子も人気。旅のお土産に買って帰る人が多い。創業者の塩津千穂子さんと二代目の正則さん、奥さんの千秋さん。家族経営の和やかな雰囲気も店の魅力になっている。撮影 菊地佳那 文 郡麻江■ 「シェ・ラ・メール」京都市中京区寺町通夷川上る西側☎075-241-0765営業時間/10:00〜18:00定休日/水曜(火曜不定休)
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BLOGクリエイティブ食事術
2018.11.01
「本Pのクリエイティブ食事術」 第1回
僕は、『あまからアベニュー』から『魔法のレストラン』『真実の料理人』まで、料理情報番組を30年近く制作してきましたので、必然的に、料理、料理店、料理人の皆さんと接する機会が多々あり、食べる側、グルメな人々とのネットワークも構築できてきました。食に関して、日々、あれこれと考えているわけですが、ひとつのシンプルな結論は、「食事の時間をより楽しく、面白くする工夫をする方が、人生はより楽しくなる」ということです。その方法を「クリエイティブ食事術」と名づけていて、この連載で具体的に紹介していきたいと思います。本Pクリエイティブ食事術その1【特定の料理にスポットを当てたグループを結成し、それぞれのグループで食事会を企画する】グループや食事会のネーミングを考えること自体が面白く、食べものの嗜好が似ている人、食に関する金銭感覚が近い人とは、経験上、他の価値観も共有しやすく意気投合しやすいのです。単なる名刺交換会では得られない利害関係のない「友達」を作ることができます。「おいしいなあ、楽しいなあ」という時間を共有できる仲間を作ることが、目的の1つでもあります。たとえば、【小金持ち★鰻道】は、Facebook経由で集まった鰻好きが、昨今値段が上がった鰻にお金を使えることをお互いたたえ合いながら、鰻のフルコースを食べるグループです。鰻ざくや鰻巻き、八幡巻きをアテにビールや冷酒を飲んで、鰻丼でしめます。鰻屋にたのまれて、「丑の日だから、うのつくものを食べると縁起が良い」という語呂合わせを考え、「土用の丑」の日に鰻を食べる習慣を作った日本最初のコピーライターとも言える平賀源内リスペクトの会でもあります。【粉食決算倶楽部】は、お好み焼き、焼きそば、たこ焼きなど、いわゆる粉もんを愛するグループです。ふんしょくけっさんくらぶと読みますが、漢字は、粉食。"粉飾"ではありません。笑。年度末の3月に開催しています。友人の個人事業主や会社社長も参加。「みなさん、年度末ですけど、粉飾決算してませんか?大丈夫ですか?きょうは思う存分粉まみれになって、営業収支を忘れましょう」と挨拶すると盛り上がります。【すき焼き正攻道】は、最初に牛肉を醤油と砂糖で焼く、関西風のすき焼きを正統派とするグループです。チャイコフスキーの『ピアノ協奏曲第1番』や『くるみ割り人形』をCDで聞きながら、玉子を割って、すき焼きを食べる「チャイコフすき焼きの宴」を開いています。乾杯の挨拶では、「チャイコフスキーは、1840年に生まれて1893年に亡くなっています。『ピアノ協奏曲一番』が発表されたのは1875年。すき焼きが好きだった福沢諭吉が『肉食之説』で牛肉推奨の宣伝文を書いたのが1870年。日本で牛肉文化が花開きかけていたとき、チャイコフスキーは哀愁を帯びたメロディーを作り続けていたのです。同じ時代の日本とロシア。1904年には日露戦争がおこってしまいますが、「チャイコフすき焼き」の会というネーミングにも、歴史ロマンを感じますでしょう?きょうは、チャイコフスキーと福沢諭吉に乾杯!」これまた、かなり盛り上がります。肉を焼き始めると、誰も音楽を聞かなくなりますが。笑。京都で、すき焼きと言えば、まず思い浮かぶのは寺町三条下がったところにある【三嶋亭】です。創業は明治6年。西暦1873年です。まさにチャイコフスキーが生きていた時代。明治時代の香りをまとった木造建築の建物で、仲居さんが鉄鍋にまず砂糖をひきます。次に牛肉を置き、秘伝の醤油ベースの割り下を加えて焼きます。まずは肉だけを焼いて玉子にくぐらせて、醤油と砂糖の焦げた香りごと食べる。これぞすき焼きの王道。うまいなあ。 そのとき、ある「?」がわきました。三嶋亭のすき焼き鍋は八角形をしています。どうして八角形なのでしょうか?八角形の鏡や腕時計は、風水術のDr.コパさん制作のグッズで見たことがありますが...すき焼き鍋が八角形...。ネットで検索しても情報は載っていません。そこで、調べてみることにしました。本Pクリエイティブ食事術その2【料理店や料理、料理法、道具などについて、「?」「どうして?」という疑問を持って、調べてみる】今からリサーチしますので、その結果は次回の連載に。■ 「三嶋亭」三嶋亭 本店 〒604-8035 京都市中京区寺町三条下る三嶋亭 高島屋京都店 〒604-8035 京都市下京区四条通河原町西入ル真町52三嶋亭 大丸京都店 〒600-8520 京都市下京区四条通高倉西入ル立売西町79https://www.mishima-tei.co.jp/
本郷義浩
毎日放送制作局 チーフプロデューサー
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BLOG京都グルメタクシー
2018.11.01
おいしい京都案内 | フランス料理「祇園MAVO」
こんにちは。京都グルメタクシードライバーの岩間孝志です。車に乗るだけで、あなたにとっての「おいしい京都」をご案内いたします。2010年から開設した京都グルメタクシーは、おかげさまで8年目に突中しました。私の好みではなくあくまでご乗車いただいた方のお好みを尊重する、いわばグルメコンシェルジュとして好評を得ています。テレビやグルメ雑誌、そして飲食業界、食通の方々の情報をもとに精査しておしみなくご紹介する貸切タクシーのある一日をご紹介いたします。一通のメールが私のもとにきました。「京都の古き良きグルメ、そして新しきグルメを織り交ぜて案内してほしい」とのお問い合わせ。実はそういった具体的なご要望でもお受けすることができます。設定時間は6時間。それでは仮想「京都グルメタクシー」出発です!!まず最初は「進々堂京大北門前店」(左京区)へ。京都にはこの屋号のお店は沢山ありますが、実はここが創業(昭和5)の地でしかも日本におけるフランスパン発祥の地でもあります。「自家製カレーパンセット」でロールパンとサラサラカレーで目を覚ましましょう♪朝食の後は少し離れた下鴨神社の糺の森で神秘的な森林浴を楽しみ、神社で参拝を済ませると美味しいお店が点在する下鴨本通りにでます。2018年8月30日にOPENしたばかりの「LaKLASSIQUE」(左京区)へ。5月末に閉められた名店「パティスリー オ・グルニエ・ドール」で17年もつとめられた加藤さんのお店で本格的なフランス菓子を楽しめます。「レモンケーキ」「ミルリトン」を購入しお土産に。もちろんグルメタクシー車内で食べることもできます♪味噌、醤油、湯葉、生麩など京都の料理人も使う調味料を調達するなら、やはり上京区が便利です。創業から百八十余年変わらぬ製法でお酢造りをされている「孝太郎の酢」(上京区)。そのお店が「Myぽん酢」(要予約)なるサービスをはじめられました。じっくり熟成されたお酢と上質な一番出汁を調合したベースに、柚子やスダチなどの果汁と加えながら好みの味の一瓶を作ることができます。ラベルも自家製で楽しくなりますね。さて、前半は拝観、体験もしまして、やはりランチタイムが恋しくなる時間ですね♪グルメタクシーはランチも手配いたします。本日はフランス料理で世界初となるお茶ペアリングコースを堪能できる「祇園MAVO」(東山区)をメールでご相談受けたときから早々に手配。宇治茶(日本茶)を主軸とした飲み物で、お酒を飲めない方にも楽しめます。フランス料理の領域に独自の創作を加えて革命的なテクニックで作り続ける西村勉シェフの作品に共鳴し、後半のグルメ探検への鋭気を養いましょう。 フランス料理を頂いて幾分体を動かしたくなったら近くの八坂神社や円山公園の散歩も素敵ですね。ふと、参道を見ると子供連れの観光客が楽しまれています。そういえば私にも幼い時代があったのねと。お客様、それならば!そのノスタルジックな気分をさらに助長してくれるお店が二条城の南エリアにあります!大正元年創業「格子家」(中京区)の玄関には「うれしなつ菓子」と暖簾にかかれています。その名の通り自家製の昔ながらの駄菓子が勢ぞろい!山幸とかいて「しゃんこ」の商品として名物の「どろぼう」は米や粟などの穀類を黒砂糖で固めたもの。泥棒したくなるぐらいの懐かしい甘味は、やはり少年時代の古き良き時代に、舌のタイムスリップができます。二条城を横目に2キロある城郭をゆっくり一周しながら徳川家康の偉業のオーラに浸りましょうか♪そしてランチの次のグルメタイムがデザートの時間ですね。アシエットデゼール(お皿に盛りつけられたデザート)で京都でパイオニア的存在の「デセール ラ・フラムブルー」(中京区)で経験豊富な鈴木シェフの至高の美食時間を堪能しましょう。デザートは三段階、本日のお楽しみの一皿、そして伝統的なクレープ・シュゼット、最後はお茶菓子盛り合わせでとどめと言わせる完璧な構成でこれでもかと上品な甘みを楽しめます。ディナーまでの時間、近くの寺町通りや錦通りでグルメ三昧なお買い物をグルメタクシー乗務員のガイド付きでお楽しみください。京都の夕暮れが近づいてまいりました。そろそろ京都グルメタクシーとのお別れの時間がやってまいりました。夜のご馳走は「広東御料理 竹香」(東山区)で予約ができる定番5000円のコース料理を手配しておりました。「ふかひれスープ」「春巻き」「酢豚」などお馴染み定番をふくめた充実のコースが、京都の中に溶け込んだ見事な京風中華の解釈を教えてくれます。 以上、京都グルメタクシーの「古き良き、新しきグルメ」コースのお味はいかがだったでしょうか?実は毎日のようにグルメなお店やお土産を探しておりまして、益々情報は増え続けております。あなたにあった「おいしい京都」これからも探し続けますので是非一度ご乗車していただければと思います。京都の美味しいお店は皆様をまっています!是非お越しくださいませ♪
岩間孝志
京都グルメタクシー
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BLOG京のほっこり菜時記
2018.11.01
「ぐじと秋鯖」
大阪生まれの京都暮らし、厳密には「京女」とはいえないが、イケズなかんじやはんなり感は身につけた(あくまでも自己申告)。20年以上京都の飲食店を取材しているから、「京都の食には詳しい」のがウリ(笑)。そんな私が想う京の菜時紀を、ここでは語っていこうと思う。京都の秋のご馳走というと「松茸」を挙げる人が多いだろう。丹波で採れた松茸を濡れ布巾でさっとぬぐって手で割き、七輪の上で焼く。軽く焦げ目がついた頃合いに口に運ぶと、なんとも芳しい。シャクっとした歯ごたえも心地よくて、思わず目をギュッと閉じてしまう。ただし京都産の松茸は「山のダイヤ」と称されるほど高額で、そうそう味わえるものではない。江戸っ子なら、嫁を質に入れても食べるのだろうが(いまどきないか、笑)、京女(ここでは私限定)は、それほど豪儀ではなく。自分の懐具合を考えると、私レベルのご馳走はぐじ(アマダイ)や秋鯖が精一杯。決して、ぐじや鯖が安物だと言っているわけでない。コストパフォーマンスの高いものに、つい走ってしまうということだ。ぐじ塩焼きぐじなら「塩焼き」、鯖なら「きずし」が私好み。ちなみに、ぐじとはアカアマダイのこと。主に福井県若狭で水揚げしたものが京都に届く。なんといっても「塩焼き」がメジャーだが、造りで食べられる店では、私は細造りにしてもらうことも多い。その身はねっとりとして甘く、飲みこみたくないと思うほど美味。山葵をちょんとのせて味わったり、醤油を軽くつけたり。変化を楽しみながら、一皿の細造りを味わう楽しみ...。ぬる燗をちびちびやると、これ以上の幸せはないと思えるのだ。「塩焼き」はなんといっても焼き加減が肝心で、鱗のついた皮はこんがり過ぎるほどパリッと、身はふんわりしているのが最高だが、なかなかこれが難しい。私史上、「ぐじの塩焼き」ナンバー1は、『蛸八』(中京区蛸薬師通新京極西入ル)の先代・掛谷陞さんが焼いたものである。『蛸八』に初めて足を向けたのは、おそらく20年以上前。新京極と寺町の間、ひっそりと白い暖簾がかかる店は渋すぎて、当時の私には入りにくい店だった。品書きに並ぶのは魚の名前だけ。「ぐじ」と書かれていても、どんなふうに食べればいいのかもわからない。寡黙で頑固そうな店主の掛谷さんが、「ぐじなら塩焼きですよ」と助け船をだしてくれた。串を挿して焼き場に置き、ほかの料理をつくりながらも焼き場から目を離さない。繊細に焼き加減を目と鼻と手で見る。焼きあがったぐじは、驚くほど美しかった。皮はサクッと音がするほどこんがり焼け、その下から現れる身はふかふか。しっとりとして旨味がジュワッと広がっていく。「これほど美味しい焼き魚を食べたことがない」と思ったものだ。何度か通ううち「大将」と呼べるようになり、ぽつぽつと言葉を交わした。役者にしてもいいような男前、板前の鏡のような人だった。残念ながら数年前に逝かれたが、その料理は息子の浩貴さんに受け継がれている。きずし秋になるとグッと脂がのる鯖は、焼いても煮ても美味しい魚。だが、あえて私は「きずし」を注文する。「きずし」は関東でいうところの「しめ鯖」。この料理も酢〆加減が味を左右する料理。人によって好みは違うが、私はレアめの「きずし」が好き。正面本町にある『東寿し』(東山区正面通本町西入ル)の「きずし」は、いつ食べても最高の〆具合。売り切れていることもある人気メニューだ。生姜をとけこませた酢をつけて食べると、口の中にじわっと脂が広がっていく。新鮮な青魚独特の清々しい香りと旨味。鯖寿司とはまた違う、ダイレクトな鯖の美味しさを味わえる。聖護院かぶらや秋茄子、栗など、ほかにも美味しいものはたくさんあってすべては食べきれない。だから、これだけはと「ぐじ」と「秋鯖」に狙いを定め、お目当ての店に足を運ぶ。そんな食の歳時記を自分の中にもっていると、京都の食がより楽しくなる。第2回は「コッペ」です。
中井シノブ
ライター
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BLOG酒のふと道
2018.11.01
我が愛する背徳の昼酒聖地3軒
このために生きてる!と実感できる昼間の一杯初めまして。沖縄出身・京都在住のフリーランスライター、泡☆盛子と申します。雑誌やWEBで主に酒食をテーマにした記事を書くのが生業で、公私ともに飲んで食べる暮らしを続けた結果、京都在住の20数年間で体重が48kgも増加。このコラムでは、こんな私が京都の街で「もっと太ってもかまわないから食べたい! 行きたい!」と思う旨きもの・良きお店をご紹介させていただきます。お見知り置きのほど、どうぞよろしくお願いいたします。今回は、昼酒を楽しめる大好きな3軒をピックアップしました。昼酒の魅力を教えてくれたいぶし銀酒場。京都で昼酒といえばまず名の挙がる『たつみ』は、河原町OPAの裏にある正午オープンの居酒屋。15年ほど前に酒飲みの先輩に連れて来てもらって「京都にこんな渋いお店があったのか!」と感激し、そこから勇気を出して1人でも訪ねるようになりました。壁一面を埋める魅惑の短冊メニュー、きびきびと働く店員さん、私と同様この空間が好きで通うお客さんのゴキゲンな顔。そして、明るいうちから飲めるという嬉しさとほんの少しの背徳感。とにかくすべてが、な〜んともイイ感じなんです。入り口側に立ち飲みカウンターと着席カウンターがあり、奥がテーブル席と小上がりになっているのですが、最初はカウンターに居並ぶ常連さんがいかにも"鉄火場"な雰囲気で怖くって(ウブだったのね、アタイも)なかなか近寄れなかった。1人でも奥のテーブルばっかり。ここ数年でやっとカウンターで立ち飲みができるようになったのが本当に嬉しくて、毎回心の中でニヤニヤしながら飲んでいます。いつも最初に頼むのが「おひたし」。でぶって普段から脂っこいもの食べがちなので、酒場にこういうメニューがあるのはとてもありがたい。しかもたつみのおひたしは季節ごとの野菜が数種類ミックスされているから「オクラが入ってる。夏やなぁ」、「そろそろ寒くなってきたし根菜入りになってる」などと季節感も感じられるのがいいんですよね〜。瓶ビールかハイリキでシュワッと喉を潤しつつ、壁やら冷蔵庫やらに貼り巡らされた短冊メニューを眺めて次の一手を考えるのはとてもシアワセな時間。焼き鳥ではなく天ぷらになったねぎま(辛子醤油で)、刻みが野菜たっぷり練り込まれたつくね、旬野菜の天ぷらあたりがお気に入り。冬になると、「いいんすか!?」と聞きたくなるほどリーズナブルなてっさや、具だくさんの粕汁でひや酒をやるのがまたたまらんのです。ぐふふ。小1時間ほど過ごすと、我が体重を支える膝が「あの......そろそろ一旦休ませてほしいんですが......」と訴えてくるのでそれが移動の合図。外へ出ると昼間の日差しに酔眼を覚まされ、「まだまだ飲める♪」と次は椅子のある店を目指すのがいつもの流れです。小粋な"蕎麦前"が憎いほど旨い。前出『たつみ』の1筋西にある『そば 酒 まつもと』はカウンター7席だけの蕎麦屋。一見無愛想だけど実はそれほど怖くない(と思う)店主の松本宏之さんが1人で営んでいて、(でぶが大抵苦手とする)洒落た空間なのになんだか落ち着けるところが好きなんですよね。通し営業の日曜以外は営業時間が昼夜に分かれているため、遅めの昼か早めの夕方に行くのが狙い目。手打ちの十割蕎麦はもちろん、松本さんが選んだ地酒が進みまくる酒肴がどれも美味しくて、行くたびに「今日はどんなんがあるかな」とワクワクさせられます。例えばある日のラインナップは......。開店以来の名物・わさびとのり長芋ポテサラ(ジャガイモではなく長芋を使っていて食感軽め)、蒸し鶏黒豆納豆だれ、秘伝豆おひたし、鴨出汁おでんなどと字面だけでもヨダレものの羅列。1人でもあれこれ食べたいタイプなので、「肴おまかせ3種」を頼むことが多いです。これだけでもだいぶお酒が捗ってしまうのが危険だけど。合間にドライなレモンサワーをはさんだりして、気づけば周りのお客さんが2周くらい入れ替わっているなんてことも。そしてさらに気づけば蕎麦を食べずに帰るなんてことも......。だってまだまだ飲みに行きたいんです。松本さん、堪忍ね!朝から飲めるおかずケース食堂。昼酒どころか、朝酒だってできてしまう夢のようなお店。それが、七条七本松にある『村上食堂』。京都中央卸売市場の近くにあるため早朝から営業しているのです。こちらの目玉はなんといっても"おかずケース"を埋める手作りのお惣菜。魚の煮付けや焼き魚、オムレツ、フライ各種、おひたしなどがずらりと並ぶ様子にコーフンを抑えきれません。おっと、冷蔵ケースにはお刺身もありますよ。その下にある瓶ビールもセルフでね。市場関係の人が多いからヘタなもん出されへん」とご主人がおっしゃる通り、魚の鮮度もボリュームも満点であります。ほっくりと身がはずれるカレイの煮物は絶対に食べて欲しい逸品。自分ではなかなか作れない、やや甘めな味付けがたまりません。中にたっぷりとミンチが入ったオムレツはビールにぴったり。ウスターソースをかけるのがまた合うんですわ。締めには、マグロのお造りを軽くヅケ風にして、サービスのお新香と一緒にご飯にのせれば簡易ヅケ丼もできちゃいます。11時頃からおかずケースの品揃えがピークを迎えるので、そのちょっと前に席をとって早めの昼酒を楽しみ、まっとうな世間様がランチをとりにくるころにはおいとまするのが理想的。街中からは離れているけれど、目指してくるだけの価値は多いにあります。昼酒を始める頃は、殊勝にも「今日は夜は飲まずに早く寝よ! 健康的や〜」と思ったりもするのですが、気づけば日が暮れてそのまま普通に夜ごはんというか夜の酒へとつながっていたりするのですよね......。 ほんで帰りは泥酔してコンビニで爆買いしたりするんですよね......。でもやめられない。やめる気もない。昼酒ラブ! (今日も朝のうちにこの原稿を書いたので......ムフフ)
泡☆盛子
沖縄出身・京都在住のフリーランスライター
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