2026年5月20日
【5月20日は世界ミツバチの日】
大阪のビル屋上から生態系を守る!「梅田ミツバチプロジェクト」が教えてくれる、私たちにできること5月20日は「世界ミツバチの日(ワールドビーデー)」。私たちの食卓や豊かな自然を陰で支えてくれているミツバチの大切さを見つめ直し、行動を起こす日です。
「都会の真ん中でミツバチを育てることで、街の環境を変えられるかもしれない」
——そんな風に、大阪・梅田のビル屋上から街の未来を塗り替える壮大な挑戦を続けている団体があります。それが「NPO法人梅田ミツバチプロジェクト」です。
今回は、NPO法人梅田ミツバチプロジェクトの小丸和弘理事長にインタビューを実施。素人3人での立ち上げから始まったプロジェクトの歩み、ミツバチが担う驚きの役割、縮小する都市の緑化に対する取り組み、そして私たちが今日から始められる一歩についてお話を伺いました。

(写真)NPO法人梅田ミツバチプロジェクト 小丸和弘理事長
始まりはパリの雑誌記事。大阪のビル屋上で始まった「都会養蜂」梅田ミツバチプロジェクトのきっかけは、立ち上げメンバーの1人が目にした海外のインテリア雑誌の小さな記事でした。そこには「パリの都会でミツバチを飼い始めた人がいて、街に変化が起きている」という驚きの内容が書かれていたのです。
実は、ミツバチは環境変化や農薬、大気汚染に非常に弱い生き物。「それなら、逆に農薬を撒く人が少ない都会のほうが安全なのでは?」という仮説からパリでの養蜂が始まり、見事に無農薬のハチミツが収穫できたといいます。さらに、ミツバチが受粉を媒介することで屋上農園が豊かになり、鳥が飛来するなど、都市の生態系が循環し始めるという素晴らしい相乗効果が生まれていました。
国内の先行事例である銀座の視察を経て、「緑が少なく『真っ茶っちゃ』な大阪の街に、生態系の循環を取り戻したい!」と決意。現在もレストラン設計事務所のプランナーとして街づくりに携わる理事長は、2011年にヤンマーと共にプロジェクトをスタートさせました。
その後、持続可能な運営体制を確立するためにNPO法人として独立しましたが、現在もヤンマーは強力なパートナーとしてプロジェクトを支え続けています。茶屋町にある同社本社ビルの屋上庭園に設置された巣箱は、まさにその固い絆の象徴。都会の真ん中という心強い拠点をベースに、現在はNPO法人として、外部企業や行政とも広く連携しながら活動を拡大しています。
「ミツバチが全滅すれば4年後に人類も滅亡する」——生態系におけるミツバチの重要性なぜ、そこまでミツバチにこだわるのでしょうか?
「世界の主要な作物の7〜8割は、ミツバチの受粉に依存しています。『もしミツバチが全滅すれば、4年後には人類が滅亡する』と言われるほど、彼らは地球にとって重要な存在なんです」
しかし現在、化学物質や農薬などによる環境破壊の影響で、この10年の間に北半球のミツバチは約4分の3にまで減少しているという深刻な現状があります。
かつては街中でミツバチの群れが見つかると「怖いから駆除してほしい」と言われることがほとんどでした。しかし、プロジェクトの地道な啓発活動により、最近では「駆除ではなく、なんとか助けられないか」という“レスキュー”の相談が増えるなど、人々の意識にも確かな変化が生まれています。
コンクリートの街に緑を。「ミツバチと植樹」の切っても切れない関係ミツバチを育てることは、単にハチミツを収穫することだけが目的ではありません。大阪の街に「花が咲く木、実のなる木」を増やすきっかけを作ることこそが、本当の狙いです。
ただ義務的に緑を増やす(管理のいらない常緑樹を植える)のではなく、ミツバチが蜜を集めに来るような環境を作ることが、都市の自然を豊かにします。
現在プロジェクトでは、梅田の茶屋町を中心に、都市部でも管理がしやすくミツバチが好むハーブを植える「ビーガーデン」計画を進行中。今後はハチミツを集めるだけでなく、自ら「蜜源(みつげん)」を創り出すことで、さらに豊かな緑化を目指しています。
「怖くないよ!」出張授業で見せる、子どもたちの素直な反応環境を守る未来の主役たちを育てるため、プロジェクトでは子ども向けの環境教育プログラム『BEE SCHOOL(ミツバチ勉強会)』に力を入れています。学校への出張授業や養蜂場での課外授業など、最初は「ハチは刺すから怖い!」と身構えていた子どもたちも、安全な観察箱に入ったミツバチを目の前にすると、その健気な姿にたちまち釘付けになるそうです。
授業の最後、理事長は「今日からミツバチを守る応援団(BEE KEEPER)になってね」と呼びかけ、日々の暮らしの中でできる約束を交わします。
●食べ物を残さず、買いすぎない(食育):ミツバチの受粉のおかげで実った恵みに感謝し、大切に食べる
●ゴミを減らし、正しく分別する(環境教育):地球温暖化などの環境破壊から、ミツバチの住処を守る
●むやみに殺虫剤をかけない:見かけても怖がらず、そっと見守る優しさを持つ
小さなミツバチを通じて、自分の生活が地球の環境や食卓とつながっていることを学ぶ子どもたち。この意識の変革こそが、将来の大きな環境改善の種となっています。
今日からできる!私たちにできる小さな一歩「世界ミツバチの日」の今日から、私たちも小さなアクションを始めてみませんか?
●花の咲く木や実のなる木を植えてみる:ベランダのたった一鉢でも、都会を飛ぶミツバチの大切な「蜜源」になります。
●子どもたちとの約束を、大人も一緒に心がける:「食べ物を大切にする」「ゴミを減らす」という意識を、日々の暮らしに少しだけ取り入れてみます。
●日常の中で、ほんの少しミツバチに意識を向ける:特別なことをしなくてもそれだけで、子どもたちと共に未来を守る立派な第一歩になります
日常的にミツバチを意識できる街づくりを目指して梅田ミツバチプロジェクトが目指すのは、誰もが日常的にミツバチを意識できるような街づくり。
大阪のビルの屋上から始まった小さな羽音は、今、着実に街全体、そして未来を変える大きなうねりとなっています。
今日からあなたも、ミツバチたちの暮らす環境に少しだけ目を向けてみませんか?
【取材協力】NPO法人 梅田ミツバチプロジェクト