京のとろみ
料理を撮影し続け40年。京都の食事情を知り尽くした食いしん坊カメラマンが、好物のとろみ料理を披露する新企画。和食のあんかけ料理をはじめ中華の甘酢餡、カレーうどんやデザートまで。ハリー巨匠撮影、シズル感たっぷりの写真とともにご紹介します。
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2021.07.31
「芙蓉園」の鳳凰蛋
芙蓉園は1955年創業の京都中華の店。ニンニクを使わない出汁の効いた優しい中華料理が提供される。場所は京都市内のど真ん中、四条河原町にある。客層は近所の家族連れから観光客、芸舞妓、サラリーマン、OLなど幅広い。鳳凰蛋(ホウオウタン)とは鶏肉入り玉子焼きのこと。ここ芙蓉園の名物料理だ。具材は鶏肉、卵、玉ねぎとシンプル。出汁の効いた鶏スープでこれらの具材を半熟卵でとじてある。印象は甘めで親子丼のアタマのようだ。なので、ごはんにめちゃくちゃ合う。酒より絶対ごはん。春巻きや焼売、カラシそば、酢豚などを紹興酒で楽しんでいても鳳凰蛋が出てきたら、たとえ序盤であってもごはんを注文しなくてはならない。そして、ごはんに鳳凰蛋をぶっかけ親子丼にして食べる。これが一番旨い食べ方!是非一度、試してみて欲しい。更に私はチャーハンにも鳳凰蛋をぶっかける。本当はこれが一番旨い!
ハリー中西
料理カメラマン
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2021.06.30
「相生餅本店」のひややまそば
西洞院と新町の間、四条通りに面した北側に相生餅本店はある。30年以上前、すぐ近くのデザイン事務所に居候していてこちらには昼ごはんを食べによく来ていた。当時は中華そばばかり食べていた。中華そばは優しいスープに柔らかめの細麺、蒲鉾も入ってコショウは最初からかかってる食堂の正統派。入り口のショーケースには赤飯やおはぎが並び、そそられる。店内はけっこう広く歴史を感じる内装。お茶は小ぶりなやかんごと出してくれる。麺類、丼物、定食、ぜんざいやかき氷などメニューはかなり多い。ちなみに「麺類一式」というのはうどん、そばだけでなく中華麺もあることを言うらしい。この日、注文したのは冷やし山かけそば。厨房には「ひややまそば」と通る。黒い蕎麦の上にとろろ芋、卵黄、ネギ、刻み海苔、わさびが乗る。ミシュラン掲載店のこだわりの蕎麦も大好きだけどこういう食堂の蕎麦がホッとする。全部一気に混ぜてズルズルっと啜るのが気持ちいい。蕎麦の香りと言うよりも喉が喜んでる。今からの季節、欠かせないメニューだ。おいなりさんも忘れずに。
ハリー中西
料理カメラマン
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2021.05.31
「とん吉」のクリームコロッケ
ラーメン激戦区!京都一乗寺にとんかつ店「とん吉」はある。一乗寺は全国的に有名なラーメンの街。有名店が軒を連ね、とん吉の隣もラーメン店だ。とんかつが人気のとん吉だがクリームコロッケのファンも多い。とんかつとクリームコロッケがセットになった定食もある。私はこのセットの定食を注文することが多いのだが、今回はクリームコロッケのみの選択でオーダー。小さめとんかつとコロッケ、とんかつ2枚のダブル、とんかつ・エビフライ・コロッケの盛り合わせなど定食の種類も豊富だ。そして定食に付いてくる豚汁がめちゃくちゃ旨い。サクサクの衣の中には程よいとろみのクリームがたっぷりと入ってる。これだけでも充分に旨いのだが、かかっているソースがたまらなく良い。野菜と果物を煮込んで作ったソースは少しとろみがかりご飯との相性バツグン。とんかつもコロッケも、ソースは共通でご飯が進みまくる。このとろみのある魔法のソースを瓶詰めして売り出したら大ヒットするだろう!ソースはたっぷりとかかってくるので、コロッケはもちろん千切りのキャベツに絡めてもご飯のおかずになる。このソースを一滴も残したくない私は、2個目のクリームコロッケはソースと共にご飯に乗せてコロッケ丼にして食べる。クリームコロッケ丼!最高だ!
ハリー中西
料理カメラマン
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2021.04.29
「篠田屋」の皿盛
カツカレーに見えるけどこれはカツカレーではない。117年続く食堂「篠田屋」の皿盛という料理だ。皿盛とはごはんの上に絶妙な薄さのトンカツが乗り、とろとろでプルプルのカレー風味の餡がかかったものである。出汁の効いた餡には牛肉と九条ネギがたっぷり。硬めに仕上がった餡は食べ終わるまで熱々をキープしてくれる。ラードで揚げたカツはサクサクで餡との相性が素晴らしくこれ以上分厚くても薄くてもバランスが悪くなるであろう完璧な厚み。店内の雰囲気はほんまもんのレトロで落ち着く。こあがりのテーブルがあるのもいい。壁や床、厨房、おばちゃんの接客、すべてが昭和の食堂のまんまである。餡にはたっぷりの七味、カツにはドボドボとウスターソース。これが私の食べ方だ。是非一度、試してみて欲しい。
ハリー中西
料理カメラマン
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2021.04.01
「龍鳳」の天津麺
この連載の6回目に登場した京中華の鳳舞系。何軒かある鳳舞系の中で私が一番よく行くのがこちらの龍鳳さんで、最も町中華っぽい庶民的なお店である。11時半から19時半までの通し営業が本当にありがたく新京極に来たら素通りはできない。なんなら食後でもお店に吸い込まれる(笑)カラシそばを目当てに来るお客が多いが、私はこちらでは天津麺の一択。私の友人はチャンポンばかり食べているし、ここのヤキメシが大好きな奴もいた。焼きそばや酢豚も旨い。天津麺も天津飯と同じく日本で生まれた中華料理で中国には存在しない。とろみのある中華スープが美味しいから、天津飯ではなく天津麺がいい。こちらの天津麺の卵は、硬めにしっかり焼かれていて私の好み。細く切られたタケノコの食感もいい。とろみのあるスープは食べ進めるとサラサラになり最後は一滴残さず飲み干せる。今日も旨かった。赤いカウンターは裏切らない。
ハリー中西
料理カメラマン
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2021.02.28
「茶の間」のカレー
京都御所の西側に「いのしし神社」として親しまれ、足腰の守護神として有名な「護王神社」がある。その神社の北側の道、下長者町通りを少し西に進むと喫茶「茶の間」がある。御婦人おふたりで営業されている喫茶店の店内はソファーから、床、壁、天井などすべてが昭和のまんま。ゆっくりと時間は流れているのだがモーニングサービスの時間が終わり、ランチタイムに入るとこちらのカレー目当ての客で店内はすぐ満席に。喫茶店のカレーと舐めてると痛い目に合う。辛さはマイルド・普通・辛口・大辛まで4段階あって選べるのだが、普通でもかなり刺激的!辛さに弱くない人でも汗が噴き出すことになり、セットで付いてくるサラダのポテトサラダに救われる(笑)が、ただ辛いだけではない。目で確認できる具は牛肉と玉ねぎだけだが奥深いコクがあり、大汗をかきながらもスプーンは止まらない。しかも、ライスと別々で提供されるポットに入ったカレールーは、サービスでおかわり出来るので違う辛さも楽しめる。一杯目が普通で二杯目を大辛にするのもいいだろう。こちらには午後2時過ぎに行かれることをお勧めする。ランチタイムの喧騒が終わり、ゆっくりとした時間が戻ってくる。常連のご近所のおばちゃんの世間話と店内に流れるクラシック音楽が、実に心地いいBGMになる。ただ、カレーが売り切れてしまうことがあるので悩ましい。
ハリー中西
料理カメラマン
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2021.01.29
「更科本店」のたぬききしめん
新京極商店街にある更科本店さん。こちらは京都では珍しい「きしめん」のお店だ。外観や店内の雰囲気も味があって居心地がいい。メニューにはうどんや蕎麦もあるがやっぱり看板のきしめんを頼んでしまう。そして冬場は迷わず「たぬききしめん」一択!関東で「たぬき」と言えば天かすの入ったうどんやそばのことで関西では揚げの入ったそばのことを指す。揚げの入ったうどんは「きつね」である。ところが!京都で「たぬき」と言えば揚げの入った餡かけのうどんやそばのことになる。ややこしい・・・なので、更科本店さんで「たぬききしめん」と注文すると「揚げ入りの餡かけきしめん」が出てくる。濃いめの出汁にとろっとろの餡、たっぷりのおろし生姜。きしめんとは言え、そこは京都!コシとは無縁のやわやわの麺がしっかり出汁を吸いまくる。だしを飲む感覚で麺が喉を通っていく。そして凄いのが揚げの分厚さである。こちらも出汁を吸いまくりまるでよく煮込んだおでんの厚揚げみたい。京都の冬には欠かせない「たぬき」うどんやそばもいいけど是非とも「きしめん」を試してみて欲しい。「たぬききしめん」癖になります。
ハリー中西
料理カメラマン
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2020.12.29
「楽酒菜はづき」の鴨山椒あんかけ
新町三条にあった「まゆめ」が今年の8月「楽酒菜はづき」となって河原町松原に移転オープンされた。まゆめ時代から日本酒が豊富で日本酒好きに愛される店だったが、はづきになっても厳選された日本酒が楽しめるのが嬉しい。そして何よりもニュースなのは12時から23時までの通し営業になったことだ。日替わりランチを食べているサラリーマンやOLに交じって、昼間からしっかり日本酒や焼酎と共に夜のメニューが楽しめる。夜の一品メニューはお酒が進みそうな料理がずらりとならんでいるが、この時期惹かれるのはやっぱりとろみたっぷりの餡掛け系である。小芋や南瓜のそぼろ餡掛けは具材を素揚げしてから餡がかかっているので、表面がカリッと仕上がりとろとろ餡との相性がいい。この日いただいたのは「鴨山椒あんかけ」。そのままでも充分美味しい鴨ロースに山椒たっぷりの餡がかかっている。添えられている九条ネギを餡にからめ鴨ロースで巻いていただく。鴨と山椒とネギ、そら旨いわ!燗酒が止まらなくなる。これを昼間からいただく罪悪感がたまらない(笑)
ハリー中西
料理カメラマン
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