京都美酒知新
全国にファンのいる名バーテンダー西田稔さんに、その月にちなんだクラシックカクテルとウイスキーをご紹介いただきます。それぞれの歴史や醸造にまつわる物語、西田さんとの出合いなど、読んで楽しくためになるお話を散りばめていきます。
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2021.07.29
カクテルが飲みたくなる話「モヒート」
■西田稔(にしだみのる) 京都木屋町二条「Bar K6」、「cave de K」、「keller」のマスターバーテンダー。2020年開業の「ザ・ホテル青龍 京都清水」内の「Bar K36」を監修。自らもカウンターに立つ。京都生まれ、同志社大学卒業後、東京のバーで経験を積み、1994年に「Bar K6」を開業した。シャンパーニュの将校、グラッパの騎士、クリュッグアンバサダー、ウイスキーコンテスト審査員モヒートカクテル言葉「心の渇きをいやして」ヘミングウェイが、「わがダイキリはフロリディータで、わがモヒートはボデギータで」という言葉を残すほど愛飲したカクテル「モヒート」は、今も世界中で飲まれています。エリザベス1世の時代、海賊フランシス・ドレイクの部下リチャード・ドレイクが、モヒートの前身といわれる「ドラケ」を、キューバに伝えたのが起源だそうです。「ドラケ」は、アグアルディエンテ(サトウキビが原料の蒸留酒でラムの前身)と砂糖、ライム、ミントを合わせたものだったと伝わります。19世紀後半には、バカルディ・ラムがキューバ国内で流行し、ドラケに使われていたアグアルディエンテをバカルディ・ラムに切り替えた「モヒート」が人気カクテルになりました。 1931年発行の『Sloppy Joe's Bar in Havana』のカクテルブックにも、この「モヒート」が紹介されています。ただし、バカルディ社がキューバ革命に伴ってキューバから撤退したこともあり、以降キューバで飲まれる「モヒート」には、ハバナ・クラブが使われています。今回ご紹介したのは、「Bar K36」のために考案したレシピです。ミントを擂り潰さず、叩くだけで香りを出し、フローズンで提供することによってミントが持つえぐみを抑えるのが特徴です。冷えたジュレップカップに注いでミントをたっぷりと盛り、その上に上品な甘みの和三盆をふりかけました。爽やかなこの「モヒート」で喉と心を潤してください。カクテルレシピバカルディ(ホワイトラム)45mlライム 2カットライムシロップ 15mlプレーンシロップ 10mlソーダ 40mlアンゴスチュラビターズ 1dasミントリーフ 適量和三盆 適量7月のウイスキータリスカー 10年ピートと強烈な潮の香り、スモーキーなモルトの甘い風味が口に広がる個性的なシングルモルトです。海水を思わせるほのかな塩味や生ガキの香り、柑橘系の甘味が特徴。煙るようなスモーキーさとともに力強いモルトの香味やドライフルーツのような豊かな甘みも感じてください。「タリスカー10年」は、タリスカーを代表する商品として世界中で愛されています。ハイボールにして、最後にぱらりと黒コショウをかけると、より引き締まった味わいを感じられます。タリスカー蒸留所1982年当時、タリスカー蒸留所を所有していたDCL社は40程度の蒸留所を所有していました。その当時、スコッチウイスキーといえばそのほとんどはブレンデッドスコッチウイスキーであり、タリスカーもジョニーウォーカーなどの貴重な原酒として重宝されていました。シングルモルトの個性的な味わいを広めたいとタリスカー8年がリリースされます。しかし、当時はシングルモルトにほとんどの人は見向きもせず、DCL社は買収されてしまいました。新しい所有者であるユナイテッド・ディスティラリーズ社(現在のDIAGEO社の前身)は必ずシングルモルトの時代が来ると、所有する蒸留所から各地域を代表する6つの蒸留所をボトリングした"クラシックモルトシリーズ"を1988年にリリースします。その際にアイランズモルトの代表として選ばれたのがタリスカー蒸留所です。タリスカーオンラインより■Bar K6京都市中京区木屋町二条東入ル ヴァルズビル2F075-255-5009撮影協力:Bar K36撮影:ハリー中西
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2021.06.25
カクテルが飲みたくなる話「ダイキリ」
■西田稔(にしだみのる) 京都木屋町二条「Bar K6」、「cave de K」、「keller」のマスターバーテンダー。2020年開業の「ザ・ホテル青龍 京都清水」内の「Bar K36」を監修。自らもカウンターに立つ。京都生まれ、同志社大学卒業後、東京のバーで経験を積み、1994年に「Bar K6」を開業した。シャンパーニュの将校、グラッパの騎士、クリュッグアンバサダー、ウイスキーコンテスト審査員ダイキリカクテル言葉「希望」「ダイキリ」は、1986年キューバのダイキリという鉱山で働いていたアメリカ人技師、ジェニングス・コックスが、灼熱の地で清涼感を求めてキューバのお酒ラムにライムと砂糖、氷を入れて作ったのが始まりとされています。「希望」というカクテル言葉が生まれたのは、鉱山で働く抗夫たちが、厳しい労働に耐えながらも、未来に希望をもっていたことから付けられたそうです。厳しい時があったとしても、必ずいつかは光が差す。そんな明るい未来を感じさせてくれるカクテルです。ますます暑くなるこれからの季節、ルーフトップバーなどで飲むフローズンダイキリも最高です。作家のアーネスト・ミラー・ヘミングウェイがこよなく愛したことでも知られるこのカクテル。彼の作品を思い浮かべながら...なんていうのもいいですね。カクテルレシピバカルディー(ラム) 45mlライムジュース 15ml(フレッシュ10ml、コーディアルライム5ml)シュガーシロップ 10mlハバナクラブ ダーク 1tsp(フロート)6月のウイスキーグレンモーレンジィ 10年ウイスキーの本場、スコットランドでも最も高さのある5.14メートルにもおよぶポットスチル(蒸留器)を使用して造られる「グレンモーレンジィ」。この高さはなんと、大人のキリンと同じくらいなのだそうです。比重が重いアルコール蒸気は、ポットスチルを昇り切ることができないため、蒸気のなかでも軽やかなフルーティーでフローラルな成分だけが抽出できるのです。華やかなアロマとエレガントな味わいをもち、柑橘やバターのニュアンスがあるので、オレンジピールを最後に加えるオレンジハイボールで味わうのがおすすめ。今年は丑年グレンモーレンジィの年ですよ!!グレンモーレンジィ蒸留所「グレンモーレンジィ蒸留所」は、スコットランド・ハイランド、ドーノック湾を臨むテインの町の北西に位置する蒸溜所です。1843年に、 William Mathesonが1738年に設立されたモーレンジ醸造所を購入、蒸溜所へ改装して設立したのがグレンモーレンジィ蒸留所だと伝わります。追加熟成のパイオニアとして尊敬され、個性にさらなる厚みと複雑味を与える最高級の樽を求めて、ウイスキー・クリエイターたちが世界中を旅するとか。良質な樽を選んでウイスキーを熟成させるだけでなく、2回までしか使わないのも大きな特徴。樽の要素を最大限に抽出し、まろやかでなめらかな味わいを得るためです。MHD(モエ ヘネシー ディアジオ)HPより■Bar K6京都市中京区木屋町二条東入ル ヴァルズビル2F075-255-5009撮影:ハリー中西
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2021.05.26
カクテルが飲みたくなる話「マルガリータ」
■西田稔(にしだみのる) 京都木屋町二条「Bar K6」、「cave de K」、「keller」のマスターバーテンダー。2020年開業の「ザ・ホテル青龍 京都清水」内の「Bar K36」を監修。自らもカウンターに立つ。京都生まれ、同志社大学卒業後、東京のバーで経験を積み、1994年に「Bar K6」を開業した。シャンパーニュの将校、グラッパの騎士、クリュッグアンバサダー、ウイスキーコンテスト審査員マルガリータカクテル言葉「悲恋」ロサンゼルスのレストラン「テール・オ・コック」のバーテンダー、ジャン・デュレッサー氏が創作したとされるカクテル「マルガリータ」。1949年のUSAカクテルコンテストで3位に入選した作品です。カクテル言葉の「悲恋」が表すように、このカクテルには、彼の悲恋が潜んでいます。若き日、恋人のマルガリータと二人で狩猟に行った際、彼女が流れ弾にあたって亡くなってしまいます。その女性を偲んでつくったのが、このカクテルだといわれているのです。本来ならば、グラスのリム(縁)全体に塩をつけるところ、今回は、半分はインスタントコーヒーを付けた特別バージョン。ベースになるテキーラにコーヒーの香りがとても合う。少し濃いめの「ネスカフェ・エクセラ」が私のおすすめです。よく冷えた材料と氷をシェイカーに入れて混ぜ、塩とインスタントコーヒーをリムに付けたグラスに注ぎます。最初は塩が付いた部分から口をつけて飲み、その後コーヒー側で味わうと、その違いがよく分かります。塩とコーヒーが付いた境目の部分から飲むのもいいでしょう。ほろ苦い、悲恋の味を感じてください。カクテルレシピパトロンシルバー(テキーラ) 40mlコアントロー 15mlレモンジュース 15ml塩とコーヒーをリムに付けたグラス5月のウイスキー白州 ノンヴィンテージ南アルプスの清冽な水と自然の恵みに育まれた、清々しい香りとすっきりした味わいのシングルモルトウイスキーです。白州蒸留所が持つ多彩な原酒の中から、ブレンダーたちが理想のモルトを選び抜いて生まれました。森の若葉のように瑞々しく、軽快な味わいが特徴。ほのかにスモーキーフレーバーを備えたモルトと、複雑で奥行きのある原酒が合わさっています。ソーダ割にして、ミントの葉を添えることで、より青い森の香りが広がります。白州蒸留所サントリーが、山崎蒸溜所とは異なるタイプのモルトウイスキー原酒を求めて全国各地を調査して出合ったのが、日本有数の名水地である"白州"です。1973年、サントリー第2のモルトウイスキー蒸溜所が"白州"に開設されました。長い年月をかけて、南アルプスの山々をくぐり抜けた地下天然水は、ほどよいミネラルを含むキレの良い軟水で、この水で仕込まれた原酒は軽快で穏やかな味わいを持っています。白州蒸溜所におけるウイスキーづくりの特長は、大きさや形状の異なる蒸溜釜を使い分けるほか、貯蔵(熟成)工程でも様々な樽を使い分けるといった世界にも類を見ない多彩な原酒のつくり分けです。発酵工程では、保温性に優れた木桶発酵槽にこだわり、乳酸菌などの微生物の働きによって、白州ならではの独特な風味を生みだしているのです。サントリーHPより■Bar K6京都市中京区木屋町二条東入ル ヴァルズビル2F075-255-5009撮影:ハリー中西
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2021.04.28
カクテルが飲みたくなる話「ジントニック」
■西田稔(にしだみのる) 京都木屋町二条「Bar K6」、「cave de K」、「keller」のマスターバーテンダー。2020年開業の「ザ・ホテル青龍 京都清水」内の「Bar K36」を監修。自らもカウンターに立つ。京都生まれ、同志社大学卒業後、東京のバーで経験を積み、1994年に「Bar K6」を開業した。シャンパーニュの将校、グラッパの騎士、クリュッグアンバサダー、ウイスキーコンテスト審査員ジントニックカクテル言葉「強い意志」「ジントニック」を飲めば、そのバーのお酒に対する姿勢がわかると言われます。世界中で愛されるカクテル「ジントニック」は、最も多く飲まれるカクテルと言っても過言ではありません。ジンとトニックでつくられるこのカクテルは、家庭でも飲めるものでありながら、シンプルがゆえに、バーデンダーにとっては難しいカクテルでもあります。そういう意味では、バーデンダーの力量が試されるものなのです。「BAR K6」をはじめ、これまで手がけてきたバーそれぞれで、「ジントニック」は、レシピを変えてお出ししています。なぜなら、「あのジントニックを飲みたい」とお客様の記憶に残していただきたいからです。「BAR K6」のジントニックのレシピは開店から25年以上変えていません。昨年オープンした「BAR K36」のレシピとももちろん違います。それぞれの味があるからこそ、その店に行く楽しみがあるのです。カクテルレシピタンカレーNO10 40mlライム 2カットトニックウォーター 80mlソーダ 40mlヒルドタンブラーライムスライス4月のウイスキーザ・グレンリベット12年の水割りザ・グレンリベットはシングルモルト初心者の方におすすめのウイスキーです。スコットランドで生まれ、今では世界中で飲まれています。シングルモルトでありながら優美な味わい。マイルドで飲みやすいのが特徴です。グレンリベットは、ゲール語で「静かな谷」という意味、グレンフィディックに次いで、世界で2番目に売れているシングルモルトウイスキーです。バーテンダーが水割りの練習をする際に好んで用いられるウイスキーでもあります。ザ・グレンリベット蒸留所ザ・グレンリベット蒸留所はリベット渓谷の山岳部に位置しています。1824年、創業者ジョージ・スミスは、ザ・グレンリベット蒸留所をスコットランド初の政府公認蒸留所としてスタートしました。ザ・グレンリベットの歴史そのものがスコッチ・ウイスキーの歴史といえるでしょう。ザ・グレンリベットは、花のようなエレガントな香りがあり、バランスがとれた深みのある味とシャープな切れ上がりがなんともいえない一本。創業時から変わらぬ伝統の製法と風土、選び抜かれた原材料と200年変わらぬマザーウォーター、そして熟練した職人たち、どれ一つ欠けてもザ・グレンリベットは生み出されません。ザ・グレンリベットHPより■Bar K6京都市中京区木屋町二条東入ル ヴァルズビル2F075-255-5009撮影:ハリー中西
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2021.03.26
カクテルが飲みたくなる話「ソルティドッグ」
■西田稔(にしだみのる) 京都木屋町二条「Bar K6」、「cave de K」、「keller」のマスターバーテンダー。2020年開業の「ザ・ホテル青龍 京都清水」内の「Bar K36」を監修。自らもカウンターに立つ。京都生まれ、同志社大学卒業後、東京のバーで経験を積み、1994年に「Bar K6」を開業した。シャンパーニュの将校、グラッパの騎士、クリュッグアンバサダー、ウイスキーコンテスト審査員ソルティドッグカクテル言葉「寡黙」「ソルティドッグ」の名前の由来は、イギリス海軍で使われる「甲板員」を意味するスラング。甲板員は、潮風や波浪を浴びながら仕事をすることから"塩辛い野郎"と呼ばれていたそうです。イギリスで生まれた当時の「ソルティドッグ」は、現在とはずいぶん違ったレシピでつくられていました。ベースはジンで、そこにグレープフルーツジュースを加え、塩をひとつまみ加えてやわらかにシェイクし、カクテルグラスに注ぐというもの。これが塩辛い野郎です。現在のように、ウォッカをベースにしてグラスの縁に塩をつけるようになったのは、アメリカに渡ってからだといわれています。うちのソルティドッグは、原型ともいえるクラシックなレシピでおつくりしています。今回ベースにするのは、ジャパニーズクラフトジンです。「六(ROKU)」などジャパニーズクラフトジンの多くは、ボタニカルのひとつに抹茶を使っています。抹茶が放つ出汁のようなニュアンスとカクテル内に潜ませた塩が響き合い、スムースでいて個性ある最高のカクテルに仕上がるのです。速いリズムではなく、ゆるーくシェイクするのが美味しさの秘訣です。カクテルレシピ六 45mlフレッシュグレープフルーツジュース 90ml塩 ひとつまみ3月のウイスキースプリングバンク10年のロックスプリングバンク10年はキャンベルタウンで唯一安定したウイスキーづくりを行うスプリングバンク蒸留所のメイン商品です。ウイスキー愛好家の間では、「モルトの香水」と称されるほど薫り高く、港町独特の気候環境から「塩辛い(Briny)」味わいを帯びたシングルモルトに仕上がります。爽やかな柑橘系のフルーティさやシロップのような甘い香りもあり、そのユニークな複雑味が魅力です。芳醇で個性的な味わいをあますことなく堪能できるロックでどうぞ。スプリングバンク蒸留所スプリングバンク蒸留所は、スコットランドの南西にあるキャンベルタウンにあります。キャンベルタウンには、かつて30以上の蒸留所があり、ウイスキーの都と呼ばれていましたが、現在では3つの蒸留所が残るだけになりました。3つのうちのひとつがスプリングバンク蒸留所で、1828年にレイド家が創設してまもなく財政難に陥り、現在のオーナーであるミッチェル家に買収されました。生麦からボトリングまでを蒸留所内で管理し、全ての麦芽をフロアモルティングでまかなう貴重な蒸留所です。19世紀にアーガイル公キャンベルが、ウイスキー蒸留のために作った人口の貯水池「クロスヒル湖」の水と敷地内の井戸水を用いて醸します。■Bar K6京都市中京区木屋町二条東入ル ヴァルズビル2F075-255-5009撮影:ハリー中西
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2021.02.22
カクテルが飲みたくなる話「ウイスキー・アレキサンダー」
■西田稔(にしだみのる) 京都木屋町二条「Bar K6」、「cave de K」、「keller」のマスターバーテンダー。2020年開業の「ザ・ホテル青龍 京都清水」内の「Bar K36」を監修。自らもカウンターに立つ。京都生まれ、同志社大学卒業後、東京のバーで経験を積み、1994年に「Bar K6」を開業した。シャンパーニュの将校、グラッパの騎士、クリュッグアンバサダー、ウイスキーコンテスト審査員ウイスキー・アレキサンダーカクテル言葉「初恋の思い出」「アレキサンダー」は、ブレイク・エドワーズ監督のアメリカ映画『酒と薔薇の日々(Days of Wine & Roses)』に登場することでも知られるカクテルです。この映画では、「アレキサンダー」を酒好きの夫から薦めれた妻が、その口当たりの良さに惑わされ、次第に夫婦そろってアルコール依存症に陥っていく姿が描かれています。「アレキサンダー」は、ジンやブランデーをベースにつくることが多いカクテルですが、このコーナーでは、アイラウイスキーをベースにしてスモーキーな香りをまとわせました。生クリームやカカオリキュールを入れるのでまろやかで甘味があり、映画のヒロインではありませんが、つい飲み過ぎてしまいがちなカクテルです。オーセンティックバーでこのカクテルを注文すると、目の前でナツメグをすりおろしてカクテルに入れるバーテンダーを見ることがあります。ところがこれは、日本だけのレシピ。実は、終戦直後の日本では質の悪い生クリームが出回っていて、その生臭さがカクテルに影響を及ぼすことがあり、臭み消しのためにナツメグを入れていたのだそうです。そのレシピが今も残っているのでしょうね。 時代は移り、今は逆に、上質な生クリームの美味しさを感じられる一杯になりました。ひんやりと口当たりのいい「アレキサンダー」は、珠玉の一杯です。とはいえ、飲み過ぎは禁物。ほどよく飲んで、ほろ酔いの心地よさを愉しんでください。カクテルレシピアイラウイスキー ラガヴーリン16年 30mlカカオリキュール 15ml生クリーム 15ml2月のウイスキーラガヴーリン16年をストレートでラガヴーリンはオークカスクの中で最低でも16年熟成させる完成度の高いシングルモルトウイスキーです。ドライでスモーキー、ヨード臭と潮の風味がうまくまとまり、セカンドフィルシェリー樽からくる甘味やフルーティーさが同居しています。口にするとスモーキーでピーティー、正露丸のようなヨード香と磯の香が一気に押し寄せます。けれど、それら薬品香の奥には花の蜜が潜んでいて、最後にドライフルーツ、バニラの甘味と香りがしっかりと感じられる。ラガヴーリン蒸留所のスタンダードウイスキーにして傑作です。ラガヴーリン蒸留所蒸留所は「ホワイトホース」の生みの親ピーター・マッキーの手に渡ったこともあり、ブレンデッド・ウイスキー「ホワイトホース」のキーモルトとして長く使用されている事でも有名です。ストレートでそのまま、香りや味わいを感じていただくのがおすすめですが、ハイボールフロートにしても個性を楽しめます。 ラガヴーリン蒸留所シングルモルトの産地アイラの中でも真っ先に名前が挙がるのがラガヴーリン蒸留所。1816年に農業経営者で蒸留職人でもあったジョン・ジョンストンが、かつて島々の王が根城としていたダニヴェイグ城を望む場所に最初の蒸留所を創業しました。1年後にはアーチボルド・キャンベルが二つ目の蒸留所を創業。ジョンストンの死後、この2つの蒸留所が統合されるなど紆余曲折を経て、ラガヴーリン蒸留所が確立されます。アイラ島の中でも、蒸留に最も長い時間をかける蒸留所として知られ、蒸留時間は最初の蒸留で約5時間、二度目の蒸留で9時間以上を費やします。この製法がラガヴーリン独特の個性をつくりだしている要因の一つと言えるでしょう。戦時中の麦芽不足による一時閉鎖など様々な苦難を乗り越え、2016年、創業から200年を迎えました。■Bar K6京都市中京区木屋町二条東入ル ヴァルズビル2F075-255-5009撮影:ハリー中西
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2021.01.29
カクテルが飲みたくなる話「ウイスキー・マティーニ」
■西田稔(にしだみのる) 京都木屋町二条「Bar K6」、「cave de K」、「keller」のマスターバーテンダー。2020年開業の「ザ・ホテル青龍 京都清水」内の「Bar K36」を監修。自らもカウンターに立つ。京都生まれ、同志社大学卒業後、東京のバーで経験を積み、1994年に「Bar K6」を開業した。シャンパーニュの将校、グラッパの騎士、クリュッグアンバサダー、ウイスキーコンテスト審査員Whisky Martini ウイスキー・マティーニカクテル言葉「知的な愛」1979年に出版された『ザ・パーフェクト・マティーニ・ブック』には、268種類ものマティーニのレシピが掲載させれているそうです。マティーニはまさに「カクテルの王様」といえる存在でしょう。映画『007』シリーズのなかで、主役のジェイムス・ボンドが「Vodka Martini, Shaken, not stirred(ウォッカマティーニを。ステアせずにシェイクで」とセリフを決めるシーンがあります。本来ならばジンでつくるマティーニをウォッカで、それもシェイクして、かつ混ぜないでとオーダーするのです。この意表をついたカクテルがうけ、ウォッカマティーニが流行しました。その後も、『007』シリーズでは、このカクテルが定番になったのです。また、2006年に公開された『007 カジノロワイヤル』では、ボンドが「ゴードンジン3、ウォッカ1、キナリレ1/2をよくシェイクしてシャンパングラスに注ぎ、レモンと皮を入れてくれ」と細かなレシピでマティーニをオーダーします。このマティーニは、そのときに登場したボンドガールの名前から、ヴェスパー、あるいはヴェスパー・マティーニと呼ばれるようになりました。昨年、初代のジェームス・ボンドを演じられたショーン・コネリーさんが逝去されました。彼は、長年スコットランドの独立運動を支持したことでも知られる愛国心の強い方でした。そんなショーン・コネリーさんを偲び、今回はスコットランドにある蒸留所のウイスキーを使ったマティーニをつくりました。カクテルレシピ季の美 45mlアランウイスキー10年 15mlオレンジビターズ 2dash1月のウイスキーアラン10年でつくるウイスキーソーダスコットランドのアラン蒸留所でつくられる「アラン10年」は、ファーストフィル(ウイスキー熟成に始めて使う樽)のバーボンバレルで熟成させた原酒をメインに、シェリーホグスヘッド(容量220~250lの樽・豚一頭分の重さに近いことからこの名がついた)で熟成させたシングルモルトを、バランスよくヴァッティング(大きな樽でモルトウイスキー同士を混ぜ合わせる)させ、10年間寝かせたもの。あたたかみのある金色で、香りはハチミツのほか、砂糖漬けのシトラス、リコリス、バタースコッチと多彩。アランの特徴でもある清らかでフルティーなモルトの味わいを感じられるフラッグシップウイスキーです。グラスにまずは氷を入れてアラン10年を注ぎ、軽くステアして温度を下げます。そこに冷えたソーダを加えてステア。温度差を少なくすることで、ウイスキーとソーダをうまくなじませることができます。アラン蒸留所1995年にスコットランド・アラン島のロックランザ村に誕生した蒸留所です。独立資本経営で、ブレンド用の原酒づくりではなくシングルモルトウイスキーのみを生産する数少ない蒸留所です。昨今、世界各地で産声を上げるクラフト蒸留所のパイオニアとして知られ、4基の小型蒸留器で丁寧に蒸留を行います。■Bar K6京都市中京区木屋町二条東入ル ヴァルズビル2F075-255-5009撮影:ハリー中西
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2020.12.29
カクテルが飲みたくなる話「マンハッタン」
■西田稔(にしだみのる) 京都木屋町二条「Bar K6」、「cave de K」、「keller」のマスターバーテンダー。2020年開業の「ザ・ホテル青龍 京都清水」内の「Bar K36」を監修。自らもカウンターに立つ。京都生まれ、同志社大学卒業後、東京のバーで経験を積み、1994年に「Bar K6」を開業した。シャンパーニュの将校、グラッパの騎士、クリュッグアンバサダー、ウイスキーコンテスト審査員マンハッタンカクテル言葉「せつない恋心」みなさんもご存知のようにマンハッタンは、ニューヨーク州ニューヨーク市にある5つの行政区のひとつ。ニューヨーク市の中心街でもあるマンハッタンは、都会の代名詞ともいえる場所です。ところが、この場所は、かつては先住民族のレナペ族の持ち物だったそうです。1926年、オランダの西インド商会が、酒を飲んだことがないレナペ族の酋長にビールを飲ませて酔わせ、土地譲渡書にサインをさせ、たった24ドルで買い取りました。酔いのさめた酋長が、「マンハッタン(酔っ払い)状態でサインさせた契約は無効だ」と主張しましたが、すべては後の祭り。マンハッタン区の名前は、このレナペ族の言語「泥酔」が由来だったのですね。 カクテルの「マンハッタン」は、「カクテルの女王」と呼ばれる、クラシックのなかでもひときわ名高いカクテル。ウイスキーをベースにベルモットとビターズを合わせます。バーテンダーによって使うウイスキーはさまざまですが、私はライとトウモロコシをブレンドしたカナディアンウイスキーを用います。つまり、同じレシピであっても、どんなウイスキーを使うかで味わいが変わるということ。バーテンダーの匙加減が肝心だということでしょうか。京都でも、今年は大人数での忘年会や新年会は難しいですが、家族や親戚とプライべートで食事をする機会は増えるかもしれません。くれぐれもマンハッタンにはならないよう、お気をつけくださいね。カクテルレシピカナディアンウイスキー 45mlスイートベルモット 15mlアンゴスチュラビター 1dash12月のウイスキーカナディアンクラブ 20年世界中のウイスキーラバーに「C.C.」の愛称で親しまれるカナディアンクラブは、カナディアンウイスキーの先駆者といえる存在。上品ですっきりとした味わいが魅力です。カナディアンウイスキーは、ライ麦を主に使ったウイスキーと、トウモロコシから作ったウイスキーをブレンドしたもの。ウイスキーとバーボンの良さを合わせもつ味わいは、マンハッタンに最適です。「カナディアンクラブ 20年」は、濃い琥珀色。キャンディ、レーズン、スモモ、リンゴの花のような芳醇で極めて強い香り。スムースでクリーミーテイストを極めたピュアな風味。ナッツとスパイスをミックスしたような感覚が特徴です。ロックもいいですが、寒い時季にはストレートで、その芳醇な味わいをじっくりと愉しんでください。カナディアンクラブ蒸溜所のあるカナダ・オンタリオ州ウィンザーは、清冽で豊かな水脈と自然に恵まれ、穀倉地帯にも近く、ウイスキーづくりに最適な環境にあります。カナディアンクラブの誕生は1858年。たちまちにしてアメリカ東部を中心にした紳士が集まるクラブで、洗練された品格あるウイスキーとして人気を獲得しました。当時、アメリカでよく飲まれたライウイスキーやバーボン、さらにはスコッチ、アイリッシュにもない爽快なタッチ、新しい感覚のテイストだったからです。この人気は、現在につづくカナディアンウイスキー全体の香味特性を決定づけるほどの多大な影響を与えました。(サントリーHPより)撮影:ハリー中西■Bar K6京都市中京区木屋町二条東入ル ヴァルズビル2F075-255-5009
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