2025年02月21日(金)公開
【オンラインカジノ】日本で拡大の背景に「日本人はギャンブル好き」という面も!?専門家は「国側の対策が遅い」と指摘
解説
M-1グランプリ2連覇を達成したお笑いコンビ「令和ロマン」の高比良くるまさんが、『オンラインカジノ』を利用していたことを認め、謝罪しました。去年の摘発者の数が過去最多となるなど、近年急増している「オンラインカジノ賭博」。なぜ日本で広がっているのでしょうか?国際カジノ研究所・所長の木曽崇さんの解説です。◎木曽崇:国際カジノ研究所所長 カジノ専門研究者 ネバダ大学でカジノ経営を学ぶ アメリカ大手カジノにて内部監査職を経験
日本からアクセスして賭博をするのは違法
―――高比良くるまさんがオンラインカジノでの賭博をするようになったきっかけは、大学時代の知人の誘いで、「違法ではない」と説明を受けたと話していますが、改めて、日本ではオンラインカジノによる賭博は違法ですよね?
「そうですね。海外で合法的に運営されている場合でも、日本からアクセスして賭博をすると、日本の法律が適用されるため違法となります。オンラインカジノでの賭博は日本では合法化されていないので、賭けができるものについては違法だと思ってください。サイトに、それぞれの“カジノ事業者が立地している国”では『合法』で、その旨を『合法です』と書かれている場合もありますが、日本の法律上ではないので、そこが難しいところです」
賭博罪は50万円以下の罰金または科料、常習賭博罪は3年以下の懲役となります。河西邦剛弁護士は、今回の高比良さんの場合、「おそらく書類送検→不起訴となり、逮捕はされないのでは」という見解です。高比良さんがオンラインカジノを利用していたのは2019年末からの約1年間で、時効が過ぎているのではと指摘します。時効の最終判断は検察が行うということです。
『半数以上の人が違法だと思わずに手を出してしまう』という調査結果も
―――オンラインカジノの国内利用者は、2023年~2024年の1年間で推計346万人(調査・国際カジノ研究所)。20代・30代の男性が多いということです。木曽さんはこの数字をどのようにみますか?
「どんどん急増している状況です。やはり20代・30代というインターネットに親和性のある世代が中心になっています」
―――利用者が広がる要因として、木曽さんは『違法性の認識が低い』という見解です。違法性を認識しているのが44%(2023年)というデータもあるようですね。
「半分以上の人が“グレーゾーン”もしくは“適法”であると認識していて、違法だと思わず手を出してしまう場合が多いようです。数年前、“無料版”という体でオンラインカジノのCMがテレビやラジオでうたれたことがありました。実際に検索してみると“有料版”と並んでヒットし、見分けがつかず有料版へどんどん誘導されていくということがありました。現行では、サイトに送った客の負け額からキックバックをもらう、いわゆる『アフィリエイター』に対して摘発が始まっています」
拡大の背景に“日本人はギャンブル好き”?
―――オンラインカジノ拡大の背景として、まず、自宅で過ごす時間が増えた「コロナ禍」があると。そして、「日本人はギャンブル好きで経済規模が大きい」→世界のオンラインカジノ業者が日本に進出、ということですが、日本人は比較的ギャンブルが好きな人が多いのでしょうか?
「経済規模から考えると、ギャンブル消費額でいうと世界トップクラスです。例えば、宝くじの市場規模とかも世界一ですね」
―――世界のオンラインカジノ業者は、中国でのマーケットを狙うも厳しい制限で断念したと?
「もともとオンラインカジノは欧米圏から始まるわけですが、欧米圏の市場が満たされたあと、2010年代ぐらいから非欧米圏に入ってきました。そのときに最初に“狙われた”のが中華圏でした。ところが、中国は習近平政権がものすごく厳しい規制をかけ始めたんです。そして次のマーケットを狙おうと見たときに、お隣にいい国があるじゃないかと日本に来た。その時期がコロナ禍と重なりました」
―――警察庁によりますと、オンラインカジノ客の摘発は2023年が53人でしたが、2024年は162人(暫定値)となりました。木曽さんによりますと、実態調査や対策強化など政治的要請、そして匿名・流動型犯罪グループ“トクリュウ”の摘発強化、そういったことが理由ではないかということですね?
「市場がどんどん大きくなってくるにつれて、例えば、山口県阿武町の誤送金問題では、振り込まれた人物がオンラインカジノでお金を全部使ってしまったと。そのようなケースが社会に出てきたことによって、政治側が調査・対策をしなければいけないという流れがきている。また、警察庁としては、“トクリュウ”と呼ばれるSNSなどで緩やかにつながっている犯罪グループの資金源や関与があるのではないかということで摘発を急いでいる」
―――国によって規制が違うことで混乱もあるようですが、日本ではオンラインカジノによる賭博は違法です。しかしそれが周知できていないようにも思えますが、なぜでしょうか?
「そもそも国側の対策はむちゃくちゃ遅くて。実はオンラインカジノでの賭博が犯罪であるという認知普及は、2022年の末ぐらいに国として始めたので、まだ数年しか経っていないんです」
考えられる今後の対策は?
―――今後の対策について、国内での法整備としては、接続制限できる「ブロッキング規制」という方法が考えられると。これはどういうことでしょうか?
「日本国内のインターネットアクセスプロバイダに、海外の有害サイトへのアクセスを遮断するように指示をするような制度です。ただ、新しい法律を作らなければいけないので、とても難しいです」
―――また、有害サイトに誘導する行為に罰則を設ける「リーチサイト規制」という方法も?
「これはブロッキング規制よりももう少し緩やかなもので、海外の有害サイトに誘導する行為、例えばリンクを貼るとか、そういった宣伝をする行為に罰則を設けるようなものですね。海外のアニメの海賊版対策はこちらの対策が今とられています」
―――ユーザーのトラブルなどは木曽さんはどのようにみていますか?
「現状では、依存症対策の窓口はあります。“依存しているわけではないがトラブルの中にいる”という人に対する対処窓口というのは明確には定められていないので、窓口を設けるというのはひとつの工夫かもしれないですね」
改めて『日本ではオンラインカジノによる賭博は違法』です。
2025年02月21日(金)現在の情報です